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生きる時間と働く時間が連続していくと、ともに働く仲間は家族のような存在になるのかもしれない。
そんなことを思う取材でした。
株式会社サイプレスは、主力ブランド「築地食堂源ちゃん」を中心に全国76店舗を展開する、飲食と飲食プロデュースの会社です。
今回募集するのは、各店舗の接客担当と調理担当。経験は不問です。
“家族のような”といっても、仲良くワイワイというだけではありません。親身に思うからこその厳しさも、真剣さもある職場だと思います。
それに加えて、サイプレスが大切にしているのは「おいしさ」の探究。どれだけ会社の規模が拡大しても、クオリティは落としたくないし、コミュニケーションもおざなりにしたくない。
やさしくて、こだわりの強い人たちに出会いました。
東京メトロ南北線の六本木一丁目。
駅から連続したマルシェのような空間を抜け、5分ほど歩いてアークヒルズ仙石山森タワーに到着。このビルの40階にサイプレスのオフィスがある。
エレベーターであがってみて、驚いた。東京の街の向こうに山が見える…!
普段なかなか見慣れない景色に、少し緊張しながら打ち合わせスペースへ。
「すごい眺めですよね。最初、ぼくもびっくりしましたよ」
そう気さくに話しかけてくれたのは、人事採用教育課の荒木さん。今回の募集の窓口となっている方だ。
今や社員280名、パート・アルバイトスタッフ約1000名を数えるサイプレス。
1996年、東京・池袋に一軒の居酒屋を出店するところからはじまった。
その後、都内各地に店舗を展開。築地市場から直接仕入れた海鮮を武器に、少しずつ規模を拡大していく。
転機となったのは2006年。宅配寿司の「すし屋の源さん」からスピンオフする形で、現在の主力ブランド「築地食堂源ちゃん」が誕生した。
「創業時から力を入れてきた鮮魚に対するこだわりと、『築地』という誰もが知っている場所の活気あるイメージがうまくはまったんだと思います」
「そして何より『食堂』という言葉には、あらゆる食のジャンルを超えられる懐の深さがあるんですよね」
喫茶店で刺身定食を食べられたり、ラーメンを出す和食処があったり。築地場外市場には、いろんなものを食べられるお店がたくさん存在していた。
同じような雰囲気を、ぎゅっと凝縮して体感できる店をつくりたい。
そのため「源ちゃん」には、グランドメニューのほかに、特色を出した“黒板メニュー”を用意している店舗も多い。
こだわりの海鮮を軸にさまざまな料理を楽しめる「源ちゃん」がヒットし、全国に展開。その波に乗って、洋食やカフェなどの別業態やハワイへの出店、東京ビッグサイトのフードコート「Eat iT!」をプロデュースするなど、会社としても事業の幅を広げているところ。
現在の店舗数は、全業態を合わせて76。代表の東さんは将来的に1000店舗を目指しているという。
「今、採用募集をかけたときに来てくださる方の数は、おかげさまで多いと思います。ただ一方で、辞められる方の数も多いのがこれまでのサイプレスでした」
その要因って、どんなところにあったんでしょうか。
「飲食業は過酷というイメージもあるかもしれません。その側面もありつつ、単純に労働時間が長いとか、きついということだけではなかったと思うんです」
以前は飲食の全国チェーンに19年ほど勤めていた荒木さん。グループ会社間の上下関係など、いわゆるムラ社会的な閉塞感の中にいた立場からすると、サイプレスは以前からオープンな会社ではあったという。
とはいえ、規模が拡大していくことによって、本社スタッフと現場との距離はどうしても開いてしまう。
そこで月に一度、社長と現場スタッフとの対話の場を設定。各地の店舗を回り、直接面談する機会をつくったり、Webサイトの採用ページを刷新して現場スタッフの声を拾い上げたり。
また、社内研修や勤怠管理システムの見直しなど、働きやすい環境や仕組みづくりにもここ2〜3年力を入れてきた。
今回募集するのは、全国の店舗で接客や調理を担当するスタッフ。その人の経験やビジョンと現場の空気感を照らし合わせながら、どの店舗でどんなふうに働くのか、一緒に考えていきたいそう。
「一度挫折を経験しているスタッフが多いんです。社会に出てうまくいかなかったり、学校を途中で辞めちゃったり」
「当たり前にレールに乗ってきた方だけじゃなく、どう生きるのか?を悩んでいる方って、世の中たくさんいると思います。経験は問わないですし、そういった方にもぜひ飛び込んできてほしいです」
オフィスをあとにし、荒木さんとともに移動。「築地食堂源ちゃん」の東京ビックサイト店でお昼を食べ、豊洲市場内の加工場へと向かう。
仕入れたばかりの食材の下処理を手早く行い、首都圏の店舗へと送る。いわばサイプレスの心臓部のような場所だ。
この場所を取り仕切っているのが、仕入れ統括本部長の四戸(しのへ)さん。
「社長自身が起業したときから、市場に通って、目利きして。その次が今の専務。一緒に勉強されて、仕入れして。ぼくが3代目をやってる。仕入れのときはいつも緊張するよ。専務や社長に見抜かれちゃうからね」
「逆に言えば、専務や社長が知っていればこそ、支払いの面についても柔軟に決済がおりやすい。うちでは会社の支払い期日にあわせて振込をするのではなくて、“現金払い”。生きたものを買うって、そういうことだろうと。うちみたいにお店と仕入れがつながっている会社はまずないと思う」
仕入れと販売が一貫していることで、お店での注文やお客さんの声を素早く仕入れの量にフィードバックしたり、料理人の腕を活かせるような食材を仕入れたり、前向きなコミュニケーションがとりやすくなる。
「面白いのが、たとえばカジキマグロを各店舗に送りましたよと。そうしたら、照り焼きやフライにする店もあれば、グラタン、鉄板焼きにする店もある」
「うちには和食の職人もいれば、中華やイタリアンをやってきた職人もいる。自分の経験を上乗せしてどんなメニューをつくってもいいんですよ。『おいしい』っていう答えが出ていればね」
ひとつのジャンルにこだわることなく、事業を広げてきたサイプレス。
代表の東さんが腕を見込んで、髪を切りに通っていた美容室スタッフの独立を支援した事例もある。
本当においしいものをつくれる人が来れば、将来的にラーメン屋さんやパスタ専門店をはじめることだってあるかもしれない。
「まずは店で経験を積んでもらって、うちの色に染まって、その先に夢が実現するかもしれないよって。そういうことだよね」
「経験はなくてもいいよ。駆け出しの人、定年が近い人、どんなところからでもうちの会社で面倒見るから。その代わり遅刻しちゃダメだよね。あと性格悪い人もダメ。一生懸命ひたむきに働く人を雇っていきたい」
荒木さんも四戸さんも、一緒に働く人に対して家族のような距離感で関わっていることを感じる。
「うちは『家族まで幸せになれる会社にしよう』ってずっと言い続けていて」
「これから会う立臼(たちうす)って男は、ぼくが前の会社から引き抜いてきた男なんです。うちの会社にいる限り、一生面倒見るって決めているんだよね」
四戸さんの運転で、豊洲から「源ちゃん」の晴海トリトン店へ。
お店に入ってすぐ右手側にオープンキッチンがあり、明るい笑顔がのぞく。料理長の立臼さんだ。
このお店で働いて15年。「気づけば仕事のことしか頭にないです」と笑う。
「ほぼほぼ仕事漬けという言い方はおかしいですけど、ここで過ごしている時間が一番長いので。5年も一緒に働けば家族みたいなものだし、休みの日もやっぱり気にしちゃいますもんね」
キッチンのなかは料理長である立臼さん、ホールは店長が管理。役割分担を明確にしているという。
「お店によると思いますけど、うちはお互いにあまり口を出しません。表の装飾とかは店長が好きなようにやってますし。もちろん、ダメだと思うことはハッキリ言いますけどね」
この仕事で大変なときって、どんなときですか。
「ぼくはあまりないですね。お客さまがたくさんいらっしゃるときは大変ですけど、やらなきゃしょうがないので。常に楽しむ気持ちは持つようにしています」
店舗ごとの違いも感じてほしいとのことで、最後に訪ねたのはうどんのお店「伊吹や」秋葉原店。
ホール主任の鈴木さんに話を聞いた。
「以前は7〜8年自分でお店をやっていて。それを辞めて次何やりたいってときに、ここの求人を見つけました。魚関係のことがやりたかったし、店舗もどんどん面白い場所に増やしていて、この会社は勢いがあるなと」
フランス料理から立ち食い蕎麦屋まで、幅広く経験を積んできた鈴木さん。ちょうど数日前までハワイ店に出張し、調理オペレーションやサービスのマニュアルづくりをしてきたところだそう。
「たとえばそこに手順を説明する写真があります。うちはほかの店舗に比べて外国人のスタッフも多いんですけど、これがあることで感覚的に説明しやすいですよね。自分のモットーは、ちゃんと理由を添えて怒らずに伝えることです」
お店ごとの個性がさまざまだから、統一のマニュアルはとくにないそう。
それはある意味大変でもあるけれど、自分たちで考えながらお店づくりをしていける余地があるとも言える。
「会社からこうしなさいって言われることは少ないですし、そのへんの自由度は面白さだと思います。自分のこれまでの経験をそのまま活かせるので」
一人ひとりの経験や持ち味が、会社としての幅の広さにつながる。
そんな柔軟さを持ちながら、真ん中には「おいしさ」の追究という軸が通っている。だからこそ、サイプレスという会社はぶれることなく成長を続けてこれているのかもしれない。
取材後の帰り道、荒木さんはこんなふうに話していました。
「どれだけ人数が増えても、一人ひとりにちゃんと光が当たる会社にしていきたいんです。単純に働くってことだけじゃなく、どう生きていくかまで深掘りして、大事にしたい」
何かにつまずいた人や、生きづらさを抱えている人、これから自分の可能性を切り拓いていきたい人も。
いろんな人たちを受け止める会社でありたいという想いが、今回の募集の背景にはあるようです。
そして、どの場所で話を聞いても出てきた「家族のような関わり」という言葉。
なぜそんな関わりが生まれているのかと聞くと、みなさんおっしゃっていたのは、「自分も家族のように受け止めてもらったから」ということでした。
受け止めてくれる人がいるからこそ、挑戦できる。
飲食の世界に飛び込みたい方にとって、ここはいい入り口になると思います。
(2018/12/17 取材 中川晃輔)