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いいハプニングが
起きる理由?
飛び越えるデザイン学

異なる分野やバックグラウンドを持つ人たちが、領域を横断してものをつくったり、プロジェクトを進めたり。すると、専門家だけが集まっていたときには想像もできない結果や、面白いことが生まれることがある。

デザインを通じて、そんないい意味でのハプニングを起こす場となっているのが、KYOTO Design Lab(以下D-lab)。

D-labは、建築・デザインから先端科学技術分野まで、幅広い分野の研究・教育を行っている組織で、京都工芸繊維大学が運営しています。

最も大きな特徴は、国内外の大学や企業などと連携し、分野や立場などの垣根を超えてさまざまなプロジェクトを展開していること。さらにデザインの発想をもとに、とにかく試行錯誤してみるということ。

そうすることで社会に新しい価値を生み出している。

今回は、そんなD-labで、プロジェクトの潤滑油となるアシスタントディレクターを募集します。

 
京都駅から地下鉄烏丸線に乗り、20分ほどで松ヶ崎駅に到着。駅前には高い建物はなく、近くに畑や山が広がるのどかな場所。

道なりに歩いていくと、京都工芸繊維大学大学・松ヶ崎キャンパスが見えてくる。D-labは、講義が行われる教室とは別棟にあった。

2階にある入口から中に入ると、机を囲んでミーティングしている学生の姿が見られた。

ホールと呼ばれるこの空間は、レクチャーや大小異なる規模のワークショップ、ミーティングなどに使われているそう。

「2018年4月にオープンしたばかりなんです。居心地がいいから、私もここで仕事をしていることが多いですね」

そう教えてくれたのは、D-labでラボラトリー長を務める、京都工芸繊維大学の岡田栄造先生。

D-labは、世界に発信できる建築やデザイン分野の研究・実践の拠点として、2014年に立ち上げられた。

当時はまだ校舎の中に間借りしながら、どんな場にするかという構想を練っていた段階。

「みんなで議論しながら、新しいアイデアを形にしていくための場所とはどんなところか。思い描いたのは、仕切りがなくひとつながりになっている、倉庫のような空間でした」

学生たちも、D-labで使う家具の組み立て作業に参加しながら、一緒にこの場をつくっていったそう。

1階に降りると、3Dプリンターやレーザーカッターなどの機材が揃うデジタルファクトリーになっている。

オープンな空間だからコミュニケーションも取りやすいし、自由に使える道具も揃っているので、アイデアをすぐに試してみることもできそう。

「D-labが大事にしているのは、専門性を活かしながら領域を横断して、ともに学んでいくこと。そうすることで、新しいものを呼び寄せ、イノベーションが起きやすくなっていくと考えています」

 
D-labでは年間30以上のプロジェクトを実行している。

たとえば起業家育成プログラム「Kyoto Startup Summer School」という取り組み。

このプロジェクトを中心になって運営している、特任准教授のスシ・スズキ先生に話を聞く。

「僕たちは頭文字をとってKS3(ケーエススリー)と呼んでいるんです。これはさまざまな分野の起業家を育てるためのプロジェクトです」

開催時期は夏休みの約2週間。

国内外で活躍する起業家やコンサルタント、投資家、研究者などを講師に招き、資金獲得やネットワークづくり、プレゼンテーションなど、ビジネスに必要なテクニックを学ぶコンテンツもある。また、京都の街でフィールドワークをしたり、実際に起業した人たちと交流するイベントに参加したりすることも。

何より特徴的なのは、参加者が国際的なこと。

日本からの参加者よりも海外から来る人のほうがはるかに多く、17カ国から33名の参加者が集まった。

経営学や法学、デザイン、建築など参加者のバックグラウンドもさまざま。学生だけでなく、企業などで働いている人も。

参加者層の幅が広いからこそ、お互いに刺激を与え合うことができる。

たとえば、新しいサービスを考えるという課題に対しても、マーケティングの視点を持っている人もいれば、色や形を使ってパッケージデザインをする人、機械設計やシステム構築で考える人もいる。

「多様性を取り込むことで思考が複雑なものになり、自分自身の考え方や持ち味も磨かれていく。そのほうが面白い結果が生まれると思うんです」

「とにかく早い段階から、自分の考えていることをアウトプットしては検証し、試行錯誤を繰り返してものをつくっていく。そういうことを体感する場になればいいなと思っています」

KS3では、具体的な方法論だけでなく、ゲームのようなワークショップを通じて学ぶコンテンツもある。

たとえば、パスタでつくるタワーの上にマシュマロをのせ、その高さを競う「マシュマロチャレンジ」。

高いタワーをつくらなければ競争に勝てないけれど、高さにこだわりすぎると、マシュマロの重みでタワーが崩れてしまうことも。

だからといって、頭の中で考えてばかりいるだけでは形にならない。手を動かしてプロトタイプをつくり、検証を続けることが求められる。

「大事なことは、失敗を許容する文化と、失敗から学び次につなげていく姿勢を身につけることだと思います。さらにチームで協力して進めることで、チームづくりも学んでもらいたいです」

 
D-lab は、KS3のような学びの場だけでなく、研究機関としての実績も重ねてきた。

スイス・バーゼルに拠点を置く建築家ユニットとの共同プロジェクト「Food Shaping the City」では、京都の食文化を題材に、食材の流通や水環境について紐解きながら、継続的に都市文化の研究を行っている。

2019年、5年目となるこのプロジェクトは、これまでの成果やこれからの食文化のあり方への提案をまとめ、世界的なデザイン拠点であるドイツのヴィトラ・キャンパスで展覧会を行う予定。アシスタントディレクターもミーティングに参加し、準備を進めている。

ほかにも、京都の錦市場をリブランディングする活動など、京都というまちの特色を生かした取り組みもはじまっているという。研究する領域も幅広い。

D-labの魅力について、スシ先生はこんなふうに話す。

「デザインの考え方を軸に、領域の壁を取り払い、いろんな分野と共存できているのが、D-labの面白いところ。だからこそ、実際に社会に還元できる形を生みだせるんじゃないかと思います」

 
そんなD-labで、今回募集する人はどんな働き方をしていくだろう。

現在アシスタントディレクターを務める、南菜緒子さんに話を聞いていく。

南さんは、アメリカの大学で建築を学び、卒業後はフリーランスとして、芸術やデザイン分野で活躍するアーティストのイベント企画やコーディネート、通訳の仕事をしていたそう。

帰国を控えていたタイミングで、日本仕事百貨でD-labの求人記事を見つける。分野を横断しながら場をつくっていくことに興味を持ち、2017年8月からD-labのメンバーに仲間入りした。

アシスタントディレクターは、海外から招く研究者の支援、ワークショップのファシリテーションやコーチングなど、プロジェクトの運営に関わる仕事に幅広く携わる。

南さんが、あるプロジェクトの話をしてくれた。

「D-labが与えるテーマに沿って若手デザイナーが研究を進める『デザイン・アソシエイト』というプログラムがあります。そこに参加しているデザイナーのネスター・ペスタナさんによるワークショップのファシリテーションを行いました」

ネスターさんにD-labが与えたテーマは、「魔鏡」だった。

魔鏡は、日本で昔から使われているもので、姿を見るためだけの鏡とは違い、鏡面に光を反射させて裏面に彫られた模様を壁に投射できる道具なのだそう。

ネスターさんは、日本の文化的な「魔鏡」の理解と、物語の表現方法を探るために、参加者がアニメーションをつくるワークショップを実施しようと考えた。

どのようなアニメーションかというと、円板に絵を描き、回転させることによって、絵が動くというもの。

「参加者を集ってみると、アニメーションに馴染みのない学生がほとんどで。限られた時間の中でどうしたらより理解を深めてもらえるか、ネスターさんと意見を交わしながら、3日間のプランを詰めていきました」

ワークショップ会場を確保したり、必要な手続きを行ったり、道具や設備を揃えたり。

準備を整え、いざワークショップ本番。より有意義な学びの場となるように、状況を見ながら工夫していく。

「描いた絵がアニメーションとしてどう見えるかは実際に動かしてみないとわからなくて。やってみてイメージしていた動きとちがう…と参加者が頭を悩ませる場面が多く見られました」

「だからこそ、描いてテストして検証するという流れを、スピード感をもって繰り返し、改良していかないといけません。それに合わせて私もワークショップのサポートに奔走して。常に全体を見ながら、何が必要かを考えていく感じです」

ときには、迷ったり悩んだりしている参加者に対して働きかける場面もある。

そういうとき南さんは、具体的な改善方法を伝えるのではなく、新しい視点を投げかけるようなコミュニケーションを心がけているそうだ。

「ワークショップで私に求められている役割は、参加者自身が思考を進めていくための手助けをすることだと思っているんです」

プロジェクトによって、担当する教員や研究者、参加者は異なるから、その都度、求められるサポートの仕方は異なるそう。

また、各プロジェクトを円滑に進めていくためにも、D-labで行なわれているプロジェクト全体を把握しながらコミュニケーションしていくことも大切だという。

「自分がこうしたほうがいいと思うことは相談しやすい環境です。D-labのメンバー内でも、それぞれの持つスキルを理解して、得意不得意を補い合いながら仕事をしています。自由な雰囲気がありますね」

実は南さんは、D-labでの経験をきっかけに自分のやりたいことを見つけて、退職することにしたそう。

「D-labでは、プロジェクトを企画する先生の意図や関心も、参加者のバックグラウンドや求めているものもさまざま。それぞれが持つ価値観や哲学が行き交うなかで全体を俯瞰してプロジェクトに関わることによって、自分の視野も広がっていくのが面白かったですね」

「いろんな方向を向いている多様な人たちの間に立ち、実りあるプロジェクトにできるよう考えていくことは難しい。でもその分、面白くもあるんです。D-labの取り組みをもっと知りたいと思うような、好奇心のある人がいちばん楽しめると思います」

垣根を取りはらい、いろんな人や考え方に出会いながら、まずは手を動かしてみる。その先に、新しいことが生まれていく。

そんな場をつくっていきたいと考える人にとっては、刺激的な環境だと思います。

(2018/12/11取材 後藤響子)

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