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社会を変える仕組みや、常識を超えた新しいサービス。それを空想するだけでなく実現するために近道なのは、化学変化を起こしている人たちとの出会いだと思う。
Impact HUB Tokyo(以下、IHT)は、そんなイノベーションのハブになっているコミュニティです。
国内外の起業家やアーティスト、会社員、NPOなど400名を超えるメンバーがこのスペースやコミュニティを起点として様々なプロジェクトを生み出し、社会課題の解決に向かう活動をしています。

今回は、IHTの広報兼秘書とコミュニティ・ビルダーをそれぞれ募集します。
目黒駅から権之助坂を下りて10分ほど。目黒川を渡ってしばらくすると、住宅街の中にIHTが現れる。

扉を開けるとすぐ右手がカフェ、左手はイベントスペース、奥にコワーキングスペースが広がっている。
メンバー登録をしているコワーキングの利用者だけでなく、地域の人たちがカフェにふらっと訪れたり、外部の人がイベントを主催することもある。中央にはメンバーなら誰でも使えるキッチンがあり、交流の場にもなっている。
この場所は、どんなふうに育ってきたのだろう?
まずは、共同代表の槌屋さんに聞いてみる。
「表面的にはコワーキングスペースなんですけど、私はコミュニティづくりができる人材や地域イノベーターを育成していると思っていて」

槌屋さんがこの仕事を始めたきっかけは、2005年にイギリス・ロンドンで初めて開設されたImpact HUB(IH)との出会い。
当時はコンサルタントとして、途上国の起業家と日本の多国籍企業をつなげる仕事をしていた。
地域に新しい価値を生み出そうという共通の価値観をベースに、多様なメンバーが集まり、コラボレーションが加速していく様子を目の当たりにしたという。

「たとえば仕事帰りに、異業種同士の飲み会や勉強会に参加して。その夜は熱く『本当はこういう事業をやりたい』『こんな商品をつくりたい』って話すのに、次の日には平然とした顔をして会社に出社する。そんな人が多いなという印象だったんです」
想いを持つ人の居場所がない。それがImpact HUB Tokyo立ち上げのきっかけとなった。
槌屋さんは帰国と同時に会社を辞め、仲間たちと創業。
ただ、最初は順調な経営とはいかなかった。チームも入れ替わり、現在の共同代表であるポチエ真吾さんと2人経営体制に。
「当時の日本では、まだ見ぬ社会の実現のために、お金を払う人は少なかったんです。それにコミュニティをつくることや、起業家を育てるという経験を積んだ人材もいなかった。立ち上げを後悔することも多かったです」
「それでも、18ヶ月で採算を取ることは決めていて。私たちのフィロソフィに基づいてコミュニティづくりを続けてきました」
IHTでは、2013年の7月から起業家育成プログラム「Team360」を実施。
国内外の起業プロセスを研究し、チーム・ラーニングの考えをもとに改良を重ねながら、これまでに約90名の卒業生を輩出してきた。
ほかにも、失敗談をカジュアルにシェアするFuckUp Nightsというイベントを開催。餃子づくりや映画の上映会など、メンバー同士が気軽に楽しめる機会もつくってきた。

各メンバーの事業の進度や課題を把握し、メンバー同士をつなげたり、イベントを企画したり。起業家に伴走しながら事業の成長をサポートしている。
「その中で気づいたのは、イノベーションは限られた地域や人だけのものではないということです」
どういうことでしょう?
「私たちは“イノベーションを民主化する”って言っているんですけど。シリコンバレーみたいなところじゃなくても、カリスマ起業家じゃなくても、インパクトは起こせると思っていて」
「これまで6年間、起業家の育成やコミュニティの立ち上げを通じて培ってきたカルチャーやノウハウを、必要としている人たちに移譲することを始めています」
その一つが、長野県塩尻市にできた拠点「スナバ」の運営支援だ。コワーキングと貸オフィスが一体になった場で、市役所の職員が常駐しコミュニティ・ビルダーの役割を果たしている。

すごくフレキシブルですね。
「そう。コワーキングの同僚になるんですよね。その地域をよくしたいという価値観でつながっているので、コラボレーションも加速します」
「それって私たちがImpact HUBで最初に見たことと同じことが起きているんです。これは企業の組織の中でも起きるだろうし、これからどんどん試したい化学反応です」

「うちのチーム、実はあんまりメディアが得意じゃないんです。媒体のテイストに合わせて、間違ったイメージで伝えられたこともあって」
一方で、地方からはもっと早くIHTの存在を知りたかったという声も増えてきた。
広報担当者の仕事は、IHTに合うメディアを見つけ、関係をつくるところから。槌屋さんをはじめとするチームメンバーから想いや考えを引き出し、IHTを必要としている人に届ける。そのプロセスの構築も含めて、担当してくれる人を探している。
働き方によって、担当する仕事の幅は柔軟に変わっていく。
「正社員の方なら私の秘書まで領域を広げてもらって、メディアリレーションだけということなら業務委託でもいいですし。リモート、時短も大歓迎です」
実は、槌屋さん自身も東京を離れ、長野の戸隠で子育てと仕事を両立しながら生活している。上京は週に1回程度。必然的に、社内との連絡はリモートで取り合うことになる。
「私がライフスタイルに合わせて働き方を変えているので、みんなももっと変えていいと思っています。ライフスタイルやジェンダーの違いも全部含めて、多様な状態で均衡を保つことを今は目指していますね」
こんな多様な世界で、一緒に働くことになるのが柏木さん。
彼女もまた様々な経験を積んだ人で、ハリウッド映画の製作やテレビ番組制作などをしてきた。広報の人にとってはとても頼りになる存在だし、一緒に仕事をしていくことも多いと思う。

ポチエさんの秘書兼プロマネとして打合せに同行したり、IHTではチームやコミュニティ内の文化を維持する担当として、コミュニティ・ビルダーチームのデスクで勤務することも多い。
「ここでの働き方は、少し特殊ですね。中途でIHTに来ると、多様性を目の当たりにしてカルチャーショックを受けると思います。チームに上下関係はないし、仕事の向き不向きをジャッジされることもありません」
「聞かれるのは、『この仕事をやりたいと思うか?』ということ。そこが合意できたら、チームのフォローを受けながら、自分で時間と仕事を組み立てていきます」
やりとりはslackを使い、ほとんどリモートで行われる。
遠隔のコミュニケーションで、伝わりにくいことはないですか?
「リモートですが、スピード感はかなり早いです。槌屋もポチエもざっくばらんに話を聞いてくれますし、会ったときには『なんか空気違うんじゃない?』とか、メンバーやチームの空気感にもすぐ気付いてくれます」
「褒めることも諌めることも、活発にやりあうチームですね。相手と異なる意見も、率直に言います」
IHTを支えるのは、現在正社員5名、パート10名。年齢も働き方もバラバラだけど垣根はないのだそう。
自分のやるべきことができていれば、自由度はかなり高い。柏木さんも、スタッフ特典の一つであるイベントスペース無料利用を使って映画監督の友人を招いたワークショップを開いたり、IHTのメンバーたちとごはん会をしたりすることも多いのだとか。

「どんな方でも歓迎ですよ。でも、受け身だとその人自身も面白くないんじゃないかな。ここで起きることを楽しみながら、自分からどんどん動いていけるといいと思います」
最後にもう一人紹介したいのが、新谷さん。

やわらかな雰囲気で、こちらの問いかけに丁寧に答えてくれる方。
IHTで働き始めて約1年半。印象的だった海外の方とのやりとりを話してくれました。
「イベント開催と飲食物の手配を希望されていたんです。日本で買い物をした経験もなくて相場がわからないだろうと思ったので、手がかからず一番いいものをご案内できるよう考えました」
相手の要望を汲みつつ、すべて英語での細かいやりとり。さらに決済がうまくいかない、海外からの送金など、ハプニングも続発したそう。
「私にとって初めてのことばかりだったんですが、自分なりにリスクなどを想像して。ビジネス英語を指導する仕事をしているIHTのメンバーさんに、相談したこともありましたね」
なんとかすべての課題を解決して、無事にイベントの日を迎えた。依頼者からも感謝の言葉をもらったのだそう。
「今思えば、本当に必死でした。なりふり構わず助けて!っていろんな人を巻き込んだけど、協力してもらいながら、ひとつ、私なりにやり遂げたなっていう感覚はありましたね」
「海外の人と自分の感覚は全然違うんだって感じられたのも大きかったです。文化の違いとか対応の温度差とか、そういう感覚をじかに味わうのも仕事のうち、というか」
コミュニティという目に見えないもののなかで、どんなふうに働いていけばいいのか不安に感じる人もいると思う。
それでもIHTにいると、いろいろな働き方があっていいのだと思えてくる。

多様な価値観、文化と交じり合いながら、摩擦や協働を繰り返すうちに、少しずつ自分らしいあり方が見えてくると思う。
誰も正解を知らないことにチャレンジする楽しさがあると思いました。
(2019/1/10 取材 並木仁美)