※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
場所は人なり。
働いている場所がその人に合っていたら、その人は生き生きと働くことになるだろうし、生き生きと働いている人がいる場所はいい場所になる。
そんなことを考えて、人と場所をすれ違いなく結びつけようとはじめたのが、この日本仕事百貨という求人サイト。
そんな僕らがつくった場所がリトルトーキョーです。
清澄白河駅から歩いてすぐ。1階は、昼は定食屋、夜は飲み屋になります。
ランチは毎週メニューを考えて、1つの定食をお出ししていている。夜になると飲み屋になる。
カウンター席は常連さんとはじめてのお客さんが程よく混ざる。ソファ席は読書をしたり、パソコン作業したり、打ち合わせしたり、ファミレス的に使う人も。
ご近所さんはもちろん、清澄白河で街歩きをしている人がふらりと入ってきたり、東京への出張時には必ず立ち寄ってくれる人もいたり。お祭り好きやデザイナー、編集者、広告マンなど、いろいろな生き方・働き方の人たちが集まっている。
まさに人種の坩堝。今回はここで食事をつくる人、食の編集者を募集します。昼と夜をつなぐ時間に働きます。
できれば経験者が望ましいとのこと。そんな経験者にとって、ここで働くメリットがあるとすれば、とにかくいろいろな人たちとつながることができることだと思います。
もし独立を目指しているのであれば、きっと応援してくれる人たちに出会うこともできるはず。人が大好きな人、人に喜んでもらいたい人はぜひ読んでください。
夜の22時過ぎ。リトルトーキョーの2階ではしごとバー、3階ではまた違ったイベントが開かれている。その人たちがだんだん1階に降りてきて、飲み足りない人はソファ席で会話の続きをはじめている。
入口にある本屋コーナーではお酒を飲みながら本を手に取っている人もいるし、目の前にある銭湯を出て、まっすぐお店の中に入る人も。
カウンター席には近所に住む常連の男の子に女の子、フリーランスのデザイナーに広告マン。みんな、なんとなく集まって、なんとなく会話している。どこのお店がおすすめだとか、あの映画は面白いとか、好きなランニングコースの話などをしつつ、お酒がなくなったら追加の注文。
そんな会話を聞きながらカウンターに立って働いているのが土井だ。元CM制作会社勤務で、全国大会出場経験もあるラガーマン。とはいえ、体育会系の営業マン、という雰囲気は一切なくて、ときどきお客さんにツッコミをいれる以外は、うなずくくらいの大人しい滋賀県出身の24歳。
仕事が落ち着いたときに、あらためてなぜここで働くことにしたのか聞いてみる。すると照れながらも答えてくれる。
「もともと学生時代から日本仕事百貨は読んでいたんですよ。就職活動のときはなかなかうまくいかなかったんですけど、先輩にCMの制作がしたいと相談したら入社することができて」
最初は楽しくてしょうがなかった。でも休みがない日々が続く中で、本当に自分がやりたいことはなんだっけ?と考えてしまった。
「そしたら父が他界して。そのときに、母が父と定年後にお店を出したいね、という話をしていたことを聞いたんです。それでなんとなくいつかお店を開きたいなと思いはじめて」
「葬儀が終わって仕事に復帰してからも、そのことが引っかかってました。自分だっていつ死ぬかわからないし、やりたいことをやりたいと思って」
そんなときに、ふと日本仕事百貨で「食の編集者」の募集を見つける。
「どうせなら生きると働くを一致させたいと思ったし、将来自分でお店を出すにはいい経験になるんじゃないかと思って」
働いてみてどう?
「楽しいですよ。お客さんをつなげるのは楽しいし、つなげられるのもうれしい。たとえば、ここで知り合ったお客さん同士で飲みに行くとか、仕事になるとか、自分を介して縁が生まれるのはうれしいことです」
印象に残っているのは、たまたまカウンター席に隣り合わせた2人が仲良くなって、しばらくしてから一緒に飲みにきてくれたこと。
この場所がきっかけになって、いろいろなことがよく起きるそう。
「もちろん、楽しいことばかりじゃなくて。つなげるにしても、誰でも構わずつなげればいいわけじゃない。相手はどんな人なのか、何を求めているのか、よく考えて接客しないといけないですから」
将来は地元の関西で、自分のお店をはじめたいと考えている。
「どんなお店にしたいかな。何かあったら、それを教えてくれるような関係がお客さんと築けたらうれしいですね。何も特別なことじゃなくてもよくて」
土井くんが独立するのはいつになるだろう?
ただ1つ言えることは、独立するときは全力で応援したいし、それはきっとここに来るお客さんたちも一緒だということ。関西出張するたびに、顔を出せたらうれしいだろうな。
翌日の12時過ぎに、またリトルトーキョーの1階を訪れる。木曜から日曜までランチ営業をしていて、この日はすでにほぼ満員だった。
家族連れに、街歩きをしているカップル、保育園が同じお母さんたち、昼休みの女性2人組、それにカメラマンや魚屋さん。
今週の定食は鰆を自家製の醤油麹に漬け込んだものと、長芋のバターソテー、ウドの梅肉和え、春菊のナムル、自家製のぬか漬け、ごはんと味噌汁。
今月は発酵をテーマにしているそうで、来週以降も発酵料理が続くようだ。
奥にあるキッチンの中で、せっせと鰆を焼いているのが女将の高橋だ。1階の飲食部門を統括していて、今回募集する人の上司になる。
ランチタイムのピークが終わってから話を聞くことにした。
「大学生のときから日本仕事百貨のことはよく知っていて、転職しようかな、と考えているときによく見ました」
「前職は雑貨屋で働いていて、その前は飲食店にいました。また飲食店で働きたいなと思っていたときに、リトルトーキョーの食の編集者の募集を知って。ここで働く自分がイメージできたんですよね」
読んでみると、自分がやりたいものに近かった。いつか立ち上げたい自分のお店のためにも、いい経験が積めるのではないかと考えた。
たしかにリトルトーキョーだと、自分が独立しているような感覚で働くことができるのかもしれない。なぜならどんな食事を提供しようか、どんなお店にしたいか、ほとんど自由に考えて形にすることができるから。
高橋さんも献立を考えるところから、仕込みや接客はもちろんのこと、ケータリングや物販、ワークショップなどの企画など、あらゆることを担当することができている。ただ、それが大きな負担になっているのも事実なので、新しい人に入ってもらいたいとのこと。
だから働いていて感じたことがあれば、積極的に関わることもできるし、少しでもいいからちゃんと利益を出す、とだけ言っているから、あとはスタッフでコミュニケーションして決めることができる。
そのほうが組織はうまくいくし、働いている人たちも楽しいし、お店もよくなっていく。
こんなチームをつくるには、それぞれが感じたことを気軽に共有できる風通しの良さをつくることが大切だと思う。トップばかり話していてはいけないし、何か間違った発言をしても許される環境をつくらないといけない。それぞれが相手を思いやりながら、気づいたことがあれば腹を割って話をするのが望ましい。
「私だけが考えるのではないお店にしたいです。一人ひとりがお店のことを考えて働くチームになったらいいなと思います。私だって、いつ独立するかわからないですし」
こんなにもフラットな組織にしようと考えたのは、お店をはじめたときにドタバタしてしまって、スタッフがすぐに辞めてしまったから。
そのときの反省を生かしてから、みんな生き生きと働くようになっていき、お客さんも増えていった。
なぜうまくいったのかと言えば、そこで働く人が中心にいるべきだから。
たとえば、1階の飲食店のテーマは「今日たべたいものをつくる」というもの。
この主語は食の編集者自身になる。
自分たちが食べたいものを考えて、自分たちが訪れたいお店をつくる。
それはもし自分がお客さんの立場で、近所に住んでいて、お店とはなんの縁もなくても、またお金を払ってでも来たい、と思える場所をつくるということ。
そうやって一人ひとりが自分の頭で考えて行動するには、お店のあらゆる情報を共有しないといけないと思う。お互いが考えていることも、お金のことも、すべてオープンにして、できる限り言葉にする。
もちろん、話すタイミングなど、相手を敬うことも大切。一緒にチームになって、お店をつくっていく。どうせならとことんやったほうが仕事は面白い。
そのために必要なのが編集者の心得。それは食の編集者に限らず、あらゆる編集者に共通することだと思う。
まず編集者というと、なんだか世の中にアウトプットしていくような仕事のように感じますが、何よりも大切なのが「インプット」。
もっと具体的に言うならば、人の話を聞くことができる人。相手のことを思いやることができれば、自然と相手は話をしてくれる。それはお客さんも同僚も同じ。
そして次に大切なのが「まずやってみる」こと。
完璧になってからはじめようと思ったら、いつまで経ってもはじまらないだろうし、やってみるからこそわかることが多い。それに完璧なものをつくろうと思っても、失敗することは多い。
だからまずやってみて、一緒に考えて、改善して続けることが大切。チャレンジした結果の失敗は責めません。何かトラブルがあったら、代表のナカムラが責任をとります。むしろチャレンジしないほうがよくない。
ある有名なカフェオーナーがこんな話をしていました。
「椅子やテーブルの配置、それに流す音楽まで現場に任せて、日々試行錯誤してもらっている」
はじめてみると「椅子をこっちの向きにしたほうがお客さんが増えた」とか「こんなニーズがあるんだな」というのがわかったりする。それは現場で働いているからこそわかること。
そうやって働いていれば、自ずといろいろな知り合いや仲間ができていくと思います。それは一生の友になるかもしれません。
もちろん、独立することが目的じゃない人もありがたいです。ずっと働いてくれたら、それもうれしい。
(2019/3/8 取材 ナカムラケンタ)