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石巻、なんだかいいまち
農と人のある
暮らしを見つける

「石巻で暮らすの、なんだかいいかも」

地方に移住するのって簡単なことじゃないけれど、「なんかいいかも」と思えることが、最初の一歩になるような気がする。そんなふうに感じた取材でした。

訪れたのは、宮城県石巻市の一般社団法人イシノマキ・ファーム。

農業体験や食のイベントを実施したり、自分たちで野菜やホップを育てたり。新規就農者の相談やサポートを行う「石巻市農業担い手センター」の運営もしています。

そんなイシノマキ・ファームで、地域の農業を盛り上げていくためのイベント企画や情報発信、新規就農者や移住者をサポートするスタッフを募集します。

農業の知識や経験はいりません。もちろん作物の世話もするけれど、メインの仕事は農家の人たちのサポートや、農業に興味を持ってくれる人を増やすための企画をつくり上げること。「場づくりの仕事」というイメージが近いかなと思います。



仙台駅で新幹線を降りて、仙台と石巻をつなぐ仙石線に乗り換える。

住宅街を走りだした電車は、松島のあたりでぐっと湾に近づいたあと、内陸の田んぼのほうへ。景色の変化を楽しみながら電車に揺られていると、1時間ほどで終点の石巻に到着した。

イシノマキ・ファームのオフィスがあるのは、石巻市の北東部にある北上町。駅からは車で30分くらいかかる。

東北地方で最長という北上川沿いの道まで来たら、もうすぐ到着する合図。

震災の印象も強く、海沿いのまちというイメージを持っていた石巻。こんなに山に近い地域があるなんて知らなかった。実際に訪れてみないと、わからないことばかりだなあ。

イシノマキ・ファームの拠点は、田んぼに囲まれた集落にある、築100年以上の古民家。青い瓦の屋根だから“Village AOYA”という名前なんだそう。

リノベーションされた室内は、カラフルで温かい雰囲気。腰をおろして、代表の高橋由佳さんに話を聞く。

「この建物は事務所兼ゲストハウスになっていて。わたし自身、最近地元の仙台から本格的に移住してきて、ここに住んでいます。愛犬も2匹いるので、あとでここにお連れしますね」

由佳さんは、2011年から障がいを持つ人たちの就労支援を行うNPO法人の理事長を勤めてきた。

「石巻には昔10年ほど住んでいて、震災後にこの地域のことがすごく心配になったんですね。不登校や引きこもりの若い人が増えているという話も聞いて、心のケアを必要とする人はこれからもっと増えていくんじゃないかと思って。若者支援の事業所を2013年に立ち上げました」

事業所の活動のなかで、社会参加の一環として企画したのが農業体験のプログラム。

不登校やうつ病、障がいのある若い人たちが、地域の人たちと一緒に農作業をするというものだった。

「太陽の下で農作業をしていると、普段物静かな子や環境に馴染めなくて働けなくなっている若者たちが、すごく元気にコミュニケーションをとりはじめるんです。仮設住宅に住む地域のおじいちゃんおばあちゃんも農業経験者が多いから、やり方を教えることですごく生き生きとしていて」

「そういう場が醸成されているのを見て、農業には人をリカバリーさせる力がある、農業に関わる人たちを育成できる事業を本格的に行いたいと思いました」

そんな想いから3年前に立ち上げたのが、このイシノマキ・ファーム。今は5人のスタッフが働いている。

地域の人たちと協力して無農薬の野菜やホップを育てて販売したり、農業体験や食のイベントを企画したり、就農希望者の暮らしをサポートしたり。農業を通じたコミュニケーションの場を生み出すことを目指している。

「わたし自身、まったくの農業未経験者で。地域で何十年も農業をやってきた人たちに教えてもらいながら、日々試行錯誤しています。地域のおじちゃんたちがいなかったら、イシノマキ・ファームは成り立っていないと思います」

「そのぶん、わたしたちはイベントを企画したり、体験希望者の受け入れ体制を整えたり。ここをコミュニティのハブ的な場所にして、地域の農家さんと訪れた人たちをつなぐのがわたしたちの役割かなと思います」

地域の農家さんと、就農希望者をつなぐ。

そのための拠点となるのが、北上町のオフィスから車で20分ほど離れた桃生(ものう)町にあるシェアハウス。新規就農を志す人のための住居で、イシノマキ・ファームはここの管理・運営を石巻市から受託している。

今回募集する人は、この場所を活用して石巻の農業の活性化につながるような企画を考えながら、情報発信や就農者のサポートも行っていくことになる。

「今までは週末を中心に農業関連のイベントをやったり、就農希望者の短期宿泊所として貸し出したりしてきました。これからは平日もうまく使って、近所の人たちがお茶を飲めるようなスペースにするとか、もっともっと地域に開けた場にしていけたらと思っています」

「シェアハウスには、この春に近くの農家さんで働く人が県外から引っ越してくる予定です。新しくスタッフになる人は自分も地域と関わるのを楽しみながら、新規就農者の人たちを地域とつなげる役割を担ってくれるといいですね」

地域とつなげる役割。とはいえ、これから働く人自身が市外から石巻にやってくることもあると思う。

移住者自身が地域と新しい移住者をつなげるのって、すぐにはむずかしいですよね?

「そうだと思います。なので最初は、わたしたちのサポートに入ってもらうとか、地域のキーパーソンとなるような人を紹介することからはじめていきます。半年くらい経って、生活に慣れて知り合いも増えてから、だんだんと自分で生み出す側にまわってもらえたらいいですね」

「慣れてきたら『あの人と一緒にイベントをやりたい』とか『こんな企画をやったら地域の農業を盛り上げられそう』とか、きっとアイデアが浮かんでくると思うんですよね。そういう想いはわたしたちも大切にしていきたいです」



この仕事は、イシノマキ・ファームのなかだけで完結するのではなくて、どんどん外との関わりが生まれてくるものだと思う。

スタッフの加納実久さんの話を聞いていると、次から次にいろいろな人の名前が出てきて、混乱してしまいそうなほど。

「ここで働くなら、多様な人と出会うことに疲れてしまわない人がいいと思います。おせっかいな人も変わった人もいるし。みんな魅力的なんですけどね」

「わたしたちも地域にたくさん知り合いがいるけれど、その人自身も地域で自分の人脈を広げていってほしいです。そうするとイシノマキ・ファームとしてのネットワークが広がって、いろんな企画ができるようになるかなと思います」

加納さんは、1年前にイシノマキ・ファームの一員になった。

具体的にはどんな仕事をしているんだろう。

「たとえば、“石巻農学”というイベントを定期的に開催してきました。宮城県内の農家さんに依頼して座談会をしたり、その人が育てている野菜を使った料理を食べたり。少しでも農業に触れてもらう機会をつくろうと思ってはじめました」

ターゲットは、農業をはじめとする一次産業や食に興味がある人たち。わざわざ他県から話を聞きにくる人もいたし、近所で長年農業をやっているお年寄りも参加していたそう。

「ゲストは毎回知り合いの農家さんを招きました。企画を立てるところから、タイムスケジュールを決めて集客もして。当日は進行をしたり、写真を撮ったり、終わったらレポートを書いたりしました」

ほかにも、自分たちで育てたホップを使ったクラフトビール「巻風エール」のイベントを実施したり、移住促進イベントでPRをしたり、というのが加納さんの仕事。

「ビールは、休耕地を耕すところからはじめて、ホップの苗を植えて収穫して。ネーミングやパッケージもみんなで考えました。一緒に組んでくれる人を探して、東京でも試飲のイベントをやっています」

「ルーティーンの仕事はほとんどなくて、0から1を生み出す仕事や、それを10倍にするための仕事ばかり。今ある地域の資源や、これまでの経験を踏まえて、何ができるか日々考えています」

イシノマキ・ファームは、まだできて3年目でメンバーも5人の小さな組織。

走りながら臨機応変に対応していく必要があるし、自分でどんどん動いて、仕事をつくりだしていくような感覚が求められると思う。

実は加納さんは、石巻と地元の愛知県豊田市で二拠点生活をしている。

石巻との縁のはじまりは、2011年の4月。当時東京の大学院生だった加納さんは、ボランティアとして1週間石巻を訪れた。

「震源地に近い三陸沿岸の光景を見てきたら、普通の生活に戻りつつある東京の空気感にギャップを感じてしまって。その後も毎月のようにボランティアに通って、話を聞いて、修士論文も震災復興について書きました」

その後東京で就職したものの1年で退職し、石巻で仕事を見つけて移住。

石巻ではシェアハウスに住み、同年代にたくさん知り合いができた。まちづくりの団体に入って子どもたちと石巻の良さを発信する活動にも取り組んだ。地域の人たちのあたたかさに触れることで、自分の地元をもっと大切にしたいと、豊田にUターンしていた時期もある。

さまざまな人との出会いのなかで、人生の舵を切ってきた加納さん。

石巻で出会った人のなかでも、“食べものをつくる人たち”の存在は大きかった。

「2014年にはじまった、地元の料理人さんの集まるイベントに関わっています。地元の食材でコース料理をつくってもらって、生産者の方々もゲストに招いて期間限定のレストランをオープンするんです」

「消費者だけでなく、料理人の方でも生産者との直接のつながりってまだまだ少ないんですよね。なので、つくる人たちの顔が見えることで、どんな思いやこだわりを持っているのか、料理を食べながら感じられる場になったらいいなと思っています」

この活動や、シェアハウスでの暮らしを知っていた友人が、イシノマキ・ファームを紹介してくれたそう。

「わたしは自分で土をいじっておいしいものをつくる自信はないけど、農家さんを応援したいし、食べるのもビールも好きだし。行く行く!って(笑)」

地元にも関わり続けていきたいと、今は月の半分ほどは豊田で仕事をしている。

「移住支援の仕事をしているわたしが言うのもなんだけど…ここで働くからといって、石巻に固執する必要はないと思うんです。合わないのに無理に住み続ける必要はないし、もっとやりたいことが見つかるかもしれないし」

「ただ、どこか別の場所に移ったとしても、石巻から食材を取り寄せてくれたり、イベントを応援してくれたり、長い付き合いができたらいいなって。イシノマキ・ファームや石巻のまち、宮城、東北で過ごした時間を、自分の轍にしてほしいですね」



石巻に住んで、ここで働くことで、きっとたくさんの出会いがあるはず。

そのなかで興味を持ったことがあれば、農業でもイベント企画でもそれ以外でも、自分なりの形で仕事にしていけたらいい。きっとそれは、自分自身の今後にとっても大きな力になるような気がします。

「石巻、なんだかいいかも」。そう思えたら、一歩踏み出してみてください。

(2019/4/8取材 増田早紀)

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