求人 NEW

観光でも、移住でもない
瀬戸内ではじめる
地域との新しい関わり方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

香川県三豊市。

瀬戸内海に面するおだやかな町です。

この町を舞台に、「瀬戸内ワークス」という取り組みがはじまっています。

瀬戸内ワークスのことを端的に説明するのは難しいのですが、あえて一言で表すなら、さまざまな形で町の関係人口を生み出そうという取り組みです。

たとえば、あるときは町のナビゲーター、またあるときは宿のスタッフというように、地域の複数の企業やお店でいろんな肩書きを持ちながら働いたり、新たな事業の立ち上げに携わったり。自分のスキルや希望のライフスタイルに応じて、従来の型にはまらない、新しい地域との関わりをつくっていきます。

今回は、そんな瀬戸内ワークスの拠点である香川県・三豊市との関わりをつくっていきたい人を募集します。

まだかっちりとした枠組みは設けられていません。第一号のモデルケースになるつもりで、自分だったらどんなふうに関わることができるか、想像しながら読んでみてください。

 

羽田空港から高松空港へは、1時間と少し。朝が早かったのでうとうとしていたら、あっという間に到着した。

舞台となる三豊市までは車で1時間弱。

やがて最初の目的地であるUDON HOUSEが見えてきた。

うどんづくりを体験しないと泊まれない、素泊まりなしの体験型宿泊施設。昨年10月のオープンからほどなくしてアメリカのニュースサイトCNNに取り上げられるなど、海外からも注目を集めており、ちょうどこの日もアメリカから2人のお客さんが泊まりにきていた。

「こんにちは〜」と明るく迎えてくれたのは、代表の原田佳南子さん。瀬戸内ワークスの構想段階から今に至るまで、中心となって進めてきた方でもある。

もともと楽天株式会社のトラベル事業部で働いていた原田さん。

地域の隠れた名品を見つけ、世に発信していく内閣府のプロジェクト「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の担当になったことから、三豊市との関わりがはじまったそう。

「『瀬戸内うどんカンパニー』っていう地域商社を立ち上げて、CUO(Chief Udon Officer)の公募をかけたりして。事務局として、何度も三豊を訪ねていたんです」

そんななかでUDON HOUSEの構想が生まれ、楽天を退職し次の一歩を考えていた原田さんはUDON HOUSEを立ち上げるために移住を決意。この地で暮らし、働いてちょうど1年が過ぎた。

地域に飛び込み、事業をスタートしてみて、実感したことがあるという。

「東京にいたときは、“地域には仕事がない”と思っていたんです。でも実際にこっちに来てみたら、お店も企業も、みんな人手不足なんですよね」

「とはいえ人口減少が進んでいるなかで、人を奪い合っても仕方がない。どこか一企業だけで求人するのではなく、地域として面的に魅力を伝えたり、都市部の人にもっと自由な地域との関わり方を提案したりすることはできないのかな、と思うようになって」

たとえば、クラフトビールの醸造所やゲストハウスの立ち上げ、有人離島の買いもの難民を解決する事業、海岸一帯のパークマネジメントなど、三豊市内にはこれから生まれる新たな事業がいくつもある。

その企画・プロデュースや運営体制づくり、PRやマーケティングなどといった面で、都市部で培ったスキルや経験を活かせる人がいるかもしれない。

瀬戸内ワークスは、地域内外の人やリソースをうまくマッチングすることで、従来の雇用関係に縛られない、心地よい関わり合いを生み出そうとしている。

 

具体的にはどんな働き方ができるだろう。

ここUDON HOUSEでうどんづくりから町の案内までを行う「うどんナビゲーター」も瀬戸内ワークスの仕事のひとつということで、実際に一連の流れを体験させてもらうことに。

まずはうどんの歴史やつくり方のレクチャーから。

生地をこね、寝かせている間に、今度は畑に出かける。トッピングの天ぷら用の野菜も、自分たちで採りにいく。

UDON HOUSEに戻るころには、生地がもっちりと仕上がっている。

薄く伸ばし、専用の器具でカット。アツアツに茹で上がったうどんに、出汁をかけてトッピングとともにいただく。

食後には、一人ひとりに「修了証」が手渡される。数時間前まで見ず知らずの関係だった人たちと一緒に記念撮影をしているのが、なんとも不思議で面白い。

そのあとは部屋でゆっくり過ごす人もいれば、要望次第で地域を案内してもらうこともできる。この日は夕日を見るため、“日本のウユニ塩湖”とも呼ばれる父母ヶ浜(ちちぶがはま)へ。

瀬戸内ワークスの企画・プロデュースに関わっている古田秘馬さんが車で連れていってくれた。

国内外を飛び回り、「丸の内朝大学」や「レストランバス」など、さまざまなプロジェクトの立ち上げやプロデュースに携わってきた秘馬さん。

今、三豊に感じている魅力はなんだろうか。

「地域の若手プレイヤーが元気なんだよね。地元スーパーの3代目、海水から自分で塩をつくってる料理人、今日泊まってもらうUDON HOUSEの子もそう。どんどん挑戦しようぜ、失敗したらみんなでなんとかしようぜって空気感がある」

「瀬戸内ワークスはまだはじまったばかりだけど、こんなに面白い人たちが関わっているんだよってことを、今回はぜひ伝えてほしいな」

一夜明け、翌朝は地域のうどん店を回る「うどんホッピング」。お店ごとの特徴や、町のことを聞かせてもらいながら巡る。

そんなうどんづくしの1泊2日を演出するうどんナビゲーターには、うどんの知識だけでなく、町に対する感度やコミュニケーション力、英会話力なども求められる。

「雇用形態はもちろん自由だし、東京と三豊を行き来する多拠点居住の人でもいい。いつか自分で事業をはじめたいという人にも参加してほしいね。三豊は何かをはじめるにはちょうどいい環境だと思うから」

今は試行錯誤の段階だから、関わる人にはそれなりの柔軟性と、自分がモデルケースになるんだ、というぐらいの積極性が必要だと思う。

 

瀬戸内ワークスに関わる仲間はまだまだいる。

続いて、cafe de flotsという店を営む浪越弘行さんを訪ねた。

イタリアンや和食の現場で経験を積み、28歳で地元の三豊市仁尾町にこの店をオープンした浪越さん。

8年ほどで借金をすべて返し、お客さんもついて安定するように。ほしい車に乗って、奥さんと愛犬の散歩をして。理想の生活を手に入れた…。

そう思ったとき、少し虚しくなったそう。

「あれ、これで終わり?って。それが2012年、ちょうど地方創生が謳われはじめたときでした。これだ!と思って、仲間と一般社団法人『誇(ほこり)』っていう団体を立ち上げて。お店を半分閉めつつどっぷりとその活動に浸かっていったんです」

築100年を超える屋敷を活用したイベントや宿泊体験、地元食材を使った商品開発などに取り組んでいった。

その活動は後輩に託したものの、新しいことに挑戦する姿勢は変わらない。今は、瀬戸内海から汲んできた海水を手づくりの釜で焚き、塩をつくっている。

「このあたりはもともと塩業で栄えた町だったんです。目の前にある海の水からつくった塩なら、三豊の食材と絶対に合うだろうなと思って」

東京や高松の料理人から注文を受けて、オーダーメイドの塩をつくることもある。

「でも、単に塩をつくって売りました、だと面白くないですよね」

「今、全世界の塩の9割にマイクロプラスチックが入っていると言われています。それに、いい塩をつくるには山からのミネラルを含んだ水が必要で。そんなふうに、塩をきっかけに環境や生態系のことを考えるところまでいけたら面白いんじゃないかなって」

直近ではゲストハウスの開業も準備中とのこと。さらに、野草を料理に活かせないかとも考えている。

浪越さんのまわりで動きはじめているさまざまなプロジェクトに、関わっていくのも面白いと思う。

 

cafe de flotsから父母ヶ浜までは、歩いてすぐ。

海の目の前に佇む建物と駐車場の一帯は、今年から東邦レオ株式会社が市の指定管理を受けている。

話を聞かせてくれたのは、担当の片山隆史さん。

東京や大阪でマンションや団地の植栽管理、夏祭りなどのイベントの企画運営を行ってきた東邦レオ。

そのノウハウを活かし、地域の人たちを巻き込みながら段階的にコミュニティをつくっているところだという。

「町内放送で呼びかけて、一緒にこのあたりの芝をはったり、ロングテーブルをつくるワークショップをしたり。この建物の内装も、地域で出る古材やシーグラス、貝などを使っていく予定です」

夏以降は海の家として営業しつつ、砂浜でのビーチシネマや地域食材を使ったバーベキューなども仕掛けていきたい。

もともとしがらみの少ない地域ではあるけれど、外からの視点を持つ立場だからこそ実現しやすいこともある。それは今回募集する人も同じ。

 

「ぼくは“勝手な責任感”が大事だと思いますね」

そう話すのは、地元スーパーの3代目である今川宗一郎さん。

お祖父さんの代から続くスーパーのほか、地元で100年近く愛されてきたかまぼこ屋の事業を継承したり、父母ヶ浜のカフェを引き継いでかき氷屋をつくったり、本土からフェリーで50分かかる有人離島まで移動販売をしたり。

地域に必要とされる仕事を一手に引き受け、つないできた。

「やってくれと言われたわけではないんです。おれしかいないでしょ、みたいな。そんな感覚を持った人が多いのが、三豊のいいところだなって」

今は父母ヶ浜の目の前で、クラフトビールの醸造所とコーヒーの焙煎所をオープンしようと準備しているところ。いずれもノウハウがあるわけではない。

「知識も技術もこれからですけど、『あいつができるならおれにもできるんじゃないか』って思ってもらえるように、行動で示したい。地域の言い訳をなくして、仲間を少しでも増やしたいんですよ」

「新しくつくる会社の名前は、“スーパーを超えていこう”っていう意味を込めて『株式会社ウルトラ今川』です。『今川フードサービス』とかやっても面白くないでしょ?(笑)」

瀬戸内ワークスでは、どんな関わりができるだろうか。

「これまでは想いが先行して事業継承や新規立ち上げを進めてきたので、全体としてのブランディングや仕組みの整備を一緒に進めてくれる人がいると、すごく助かります」

「地元だけでできることって、限られているから。外から来る人の力を借りながら、今よりもっとチャレンジしやすい町をつくっていきたいです」

 

取材を終え、夜は瀬戸内ワークスに関わるみなさんと一緒にバーベキュー。

カフェオーナーやデザイナー、「家も仕事も決まっていないけれど、今日から移住してきました」という人も。今回の記事では紹介しきれなかった、これまた個性豊かなメンバーが関わっているようです。

7月17日には、東京・清澄白河のリトルトーキョーでしごとバー「旅して働く瀬戸内ナイト」を開催します。UDON HOUSE代表の原田さん、瀬戸内ワークスの企画・プロデュースに関わっている秘馬さんがゲストです。

また、7月20〜21日の一泊二日の日程で、現地での受け入れ企業体験・交流ツアーも開催されるそう。

自分が関わるとしたらどんなことができそうか、まだ具体的に想像できていなくても大丈夫。まずは人に出会い、現地にも何度か足を運ぶなかで、自分なりの心地いい関わり合いを築いていってもらえたらと思います。

(2019/5/16 取材 中川晃輔)

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