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日々のよろこびを染めて
使いこむほど、新しい
てぬぐいの世界

一尺×三尺の平らな布。

日本人の生活に古くから馴染んできたてぬぐい。

昔からほとんどかたちが変わっていないのに、今のライフスタイルでも現役で活躍し続けている。

手を拭くだけでなく、包んだり、飾ったり。絵柄で季節を味わい、気持ちを伝えることもできる。

株式会社かまわぬは、日本の伝統的な染色技術である注染を大切にしながらてぬぐいの魅力を伝え続けてきた会社。

最近では、三分の一サイズの小さな「まめぐい」や、てぬぐい生地を生かした小物など、さまざまな形でその魅力を伝えています。



向かったのはかまわぬの本店がある代官山。駅から歩いて5分ほど。一本路地へ入ったところで、木に吊るされたてぬぐいが風にそよいでいるのが見えた。

日本家屋の玄関のような入り口から中に入ると、ずらりとてぬぐいが並んでいる。

白と紺の伝統的な文様や、ゆらぎやグラデーションを生かした鮮やかな柄、アルファベットを模様のように並べた柄もある。

どっちを向いても、色と模様が溢れるような空間。

お店で迎えてくれた代表の加藤さんに、ブランド全体で何種類くらいあるのか尋ねてみた。

「毎年500柄ほどのてぬぐいを染めていて、クライアントからのご依頼で染めるオリジナルデザインのてぬぐいも含めると、全部でどれくらいでしょうね…。最近はお客さまのほうから、『こんな柄ありますか』っていう質問をいただくこともあって。ここだったらどんな柄でもあるんじゃないかと期待していただけることはうれしいですね」

30年前にお店がオープンしたときに扱っていたのは、麻の葉や青海波といった、150柄ほどの古典文様。

オリジナルデザインの柄をつくるようになったのは2000年に入ってからだという。

昔ながらのゆらぎやぼかし、伝統的な小紋のような構図を取り入れながら、自転車やメガネなどの現代的モチーフを描く。

オリジナルデザインには、ユーモアや親しみを感じます。

「古典の模様も、もともとは竹籠の網目のような、普段使っている道具や身近な動物など日常で目にするものに先人たちが美しさを感じて生まれているんですよ」

「創業当初から変わらないのは、てぬぐいを日常生活のなかで使っていただきたいということ。オリジナルデザインを手がけるようになった背景には、現代の生活で身近に感じられるものも取り入れてみたいという思いがありました」

人の生活が変わることで、道具としてのてぬぐいの使われ方も変化してきているという。

裏庭の竹竿にいつもてぬぐいが干してあるような日本家屋は少なくなってきたけれど、Tシャツの襟元に合わせたり、ペットボトルを包んで持ち運んだり。

ユーザーのライフスタイルの変化に寄り添う柔軟さも、てぬぐいのよさだと思う。

「近年は、海外の展示会などでてぬぐいを紹介する機会も増えました。最初のころは、柄の意味や製法を全部英語で伝えようとして、すごく構えていたかもしれません。でもあるとき、そうやって努力すればするほど、笑顔がなくなっていたことに気づいたんです」

加藤さんの意識を変えたのは、パリで出会ったあるお客さま。

その方にとって、はじめて目にするてぬぐい。真っ先に尋ねられたのは、「これがあると、私の生活にはどんな変化がある?」ということだった。

「いろいろ話をしていくうちに、ペットボトルを包む使い方を思い出して。ホームパーティに行くときに、これでワインボトルを包んだらどうですかとご提案したんです」

紙袋と違ってゴミが出ないし、たくさんの柄のなかから相手の好みに合わせて選べる。

ワインをプレゼントしたあとは、頂いた方がスカーフやバンダナのようにして使うこともできる。これはパフォーマンスが高いアイテムだと、とてもよろこばれた。

「そのときに気がついたんです。柄の意味とか染色技術とか、伝えたいことはたくさんあるけど、それよりもまずは笑顔や、相手の声に耳を傾けるっていうことのほうが大切なんですよね。それは店舗での接客にも通じることだと思います」

たしかに、自分が知っていることばかり伝えようとすると、その場での発見を見逃してしまうこともある。

自分たちとは異なる気候や文化のなかで暮らす人と出会うたびに、新しい魅力を発見できると加藤さんは言う。

「てぬぐいってすごく変わった道具だと思うんです。何かを包んだりテーブルに敷いたり、いろんな使い方ができる。それほどハイスペックではないんだけど、一枚あるとなんとかなる。どこまで可能性があるのか、私自身もよくわかっていないほどです」

日本で古くから使われてきた道具でありながら、まだまだ発見の多いてぬぐい。

近年は、従来のてぬぐいの枠を超えた新しい業態のお店も生まれている。



続いて話を聞かせてもらった宇田川さんは、まさにそんな新しい楽しみを伝えるお店で働いている人。

宇田川さんは、三分の一サイズの小さなてぬぐい「まめぐい」を扱うお店の店長さん。普段は、東京駅構内のグランスタで働いている。

「東京駅構内ということもあって、お土産に買っていかれる方も多いですね。お店には『まめぐい土産』という小さな飴やあられやお茶などの食品があって、お客さまが選ばれた食品をまめぐいで包んでお渡しするんです」

かまわぬのものづくりのベースには、言葉にならない思いを媒介するツールになるようにという思いがある。それは文様に込められた意味かもしれないし、包むものに表れるかもしれない。

どこかへ向かう目的を持った多くの人が行き交う東京駅だからこそ、てぬぐいを通して思いを添えられるギフトの提案をしたい。

そんなコンセプトから生まれたまめぐい。実際に、包むところを見せてもらった。

「箱を包んでいく途中で模様が隠れる瞬間もあって、お客さまは心配そうな顔をするんですが、後でちゃんと見えてきます。結び目が模様とつながったり、生地をめくると動物の顔が出てきたり。完成したら『ああ!』って、みなさま表情が明るくなるんです」

お店で味わった楽しさをお土産として携えて、この駅から遠くへ旅立つ人たち。

懐かしい家族や新しい友人と一緒に包みをほどいたあとは、自分たちでもう一度結んでみたりするのかな。
「久しぶり」「初めまして」の時間をまめぐいが和ませているところを想像すると、なんだかほほえましい。

日々多くの人が行き交う東京駅。代官山のお店とは雰囲気も違いますね。

「電車に乗る前のわずかな時間で来られる方もいらしゃるので、気持ちが焦ってしまうこともあります。大きな駅でとても忙しいのですが、いろんな人が来て、朝昼晩とそれぞれ全然違う表情がある。こんなに変化を楽しめる場所って、ほかにないと思うんです」

働きはじめて6年目になるという宇田川さんは、この場所に愛着を感じている。

決まった時間に訪れる常連さまもいて、「まめぐいを家に飾ったよ」と写真を見せてもらうこともあるのだそう。

「通勤の時間帯はみなさま足早にお店の前を通り過ぎていくのですが、横目でディスプレイを目にとめてくださっているんじゃないかなと思います。駅のなかではあるけれど、まめぐいを通じて季節を感じてもらえたらいいなと思って工夫しています」

1日に多くの人が訪れるこの場所。大きなターミナルの店長になるということに、プレッシャーはなかったですか。

「たしかに不安もあったのですけど、スタッフが緊張していると、お客さまにとっても入りづらいお店になってしまう。引っ張っていかなきゃっていう気持ちだけじゃなくて、自分も楽しむことが大切だって、最近思えるようになりました」

「お店には20代から40代までいろんなスタッフがいるのですが、みんなてぬぐいが好きで。こんな使い方がかわいいんじゃない?とか、日々アイデアを出しあっています。ちょっとした工夫を一緒に喜べる仲間がいるから仕事を続けてこられたのだと思います」



店舗で働く人にとって、心強い先輩のような存在になるのが、本社で店舗運営の仕事をしている清水さん。

担当店舗の店長やスタッフの相談に乗りながら、かまわぬの魅力を伝えるお店づくりに取り組んでいる。

かまわぬのお店がある場所は、代官山のほか都心や郊外、浅草のような観光地などさまざま。

業態としても、てぬぐいを専門に扱うかまわぬ直営店のほか、まめぐい、さらには身近なアイテムを通じて東京の魅力を伝え、シェアしていきたい、そんな想いから生まれたコンセプトショップ「SHARED TOKYO」など、ますます多様化している。

「お店の環境によって求められる対応も違うし、本当にいろんな個性を持ったスタッフがいるんです。だからなるべく全員と話して、みんなが生き生きと働けるように背中を押すのが私の役割かなと思います」

「売ることだけにこだわるんじゃなくて、お客さまが何かひとつでもてぬぐいのよさを感じられるように、接客してもらえたらいいですね。かまわぬっていうのは、『何もお構いできませんけど、気軽にお越しください』っていう意味だから」

新卒で入社し、産休を挟んで今年で18年目になるという清水さん。

最初は馴染みのなかったてぬぐい。仕事を通じてそのよさを知り、今では生活になくてはならないものになっているという。

「かまわぬのてぬぐいは、使い込むほど糸が膨らんでふわふわになっていくんですよ。子どもが、色褪せた古いてぬぐいを好んで使っているのを見ると、やっぱりそっちがいいよね!って、うれしくなって」

本社で働く人たちも、それぞれてぬぐいに対するこだわりがあるのだそう。

「大掃除のときは、みんな頭に巻いたり口に巻いたり首から下げたり、さらに古くなったてぬぐいを拭き掃除に使って。それぞれ個性にあったいろんな柄を選んでいて、おもしろいなと思います」

長く仕事を続けていても、てぬぐいへの関心や愛着は変わらない。

だからこそ、お客さまから「てぬぐいってどうやって使うんですか」と聞かれるたびに、まだまだ頑張らないと、という気持ちになるそう。

「これから一緒に働く人も、接客がうまくいかなくて落ち込むことがあっても、自分の扱っている商品はいいものなんだっていうことは忘れないでほしい。社内には同じようにてぬぐい好きの人がいて、そんなチームの一員なんだよって」

取材中、てぬぐいのよさを力説するスタッフのおふたりに、代表の加藤さんが思わず笑ってしまう場面がありました。

社長さんを照れさせるほど、ずっと愛着を持てるもの。

自分ごととして語れる仕事って、いいなあと思います。

(2019/6/25 取材 高橋佑香子)

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