求人 NEW

川が運ぶものがたり
日本の技をつなぐ人たちに
出会う旅

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

工芸などの産業や、伝統文化、風景。

日本にあるたくさんの「いいもの」を、どうすれば守り伝えていけるだろう。

多くの地域が頭を抱えるこの課題に、体験の輪を広げるというアプローチで取り組んでいる人たちがいます。

岐阜市・長良川のほとりに拠点を持つNPO法人ORGANは、長良川流域に眠る文化を掘り起こし、伝える活動を続けてきました。

たとえば、イベントの企画開催やフリーペーパーの編集、和傘をはじめとする工芸品の販売など。さまざまな事業を展開してきたORGANが次に始めたのは、長良川流域で出来る体験をコンテンツとして打ち出した「長良川めぐるツアーズ」という旅行業です。

今回はツアーコーディネーターとしてこの仕事に関わる人を募集します。歴史や工芸など、文化が豊富なエリアなので、掘り起こし甲斐は十分にある。インバウンド向けのPRもあるので、英語ができる人なら力を生かせる機会も多いと思います。

同時に、ショップでの販売スタッフやデザイナーとして働く人も募集しています。地域の魅力を伝える仕事に興味がわいたら、ぜひ読んでみてください。



名古屋駅で新幹線を降りると、乗り換えるはずの東海道線が運休。予期せぬアクシデントも、名鉄への振替乗車でなんとか間に合いそう。アクセスが便利なところでよかった。

岐阜駅から15分ほどバスに乗り、長良川のそばの停留所へ。町家が並ぶ通りの一角にある「長良川手しごと町家CASA」で、代表の蒲さんとお会いする。ご挨拶のあと、早速和傘をひらいて見せてくれた。

閉じられている時は、漆の上品な光沢が美しい真っ黒な棒のように見える和傘。

蒲さんが手をかけると、滑らかにパーツが動き、日に透ける柔らかい和紙と糸がつくりだす色面あらわれた。

思わず「おおっ」と声が漏れる。

「ね、いいでしょ。和傘はね、閉じると竹、開くと花っていうんですよ。和傘は一本つくるためにいろんな工程が必要で、最近は若手の職人さんも育ってきていますけど、ろくろというパーツをつくれる人は、今岐阜に一人しかいません」

目を凝らすほど、細かい細工のよさが見えてくる。

竹、和紙、漆、さらに防水用の油をとるためのエゴマ。長良川流域には、一本の傘をつくるために必要な素材の産地が点在していて、どこかひとつでもバランスが崩れると、傘づくりを続けていくことが難しくなる。

「そうなったら、お座敷の芸者さんも、歌舞伎役者さんも、お相撲さんも、みんな洋傘を持つことなる。今、当たり前のように見ている日本の大切な風景がなくなってしまうかもしれません」

「長良川の流域には、ほかにも提灯や染物、下駄、川漁師など、日本の文化として後世に継承しないといけない『本物の文化』の担い手がいる。その人たちが生業として続けていけるだけのマーケットをつくろうというのが、僕たちの活動のはじまりなんです」

2011年からは、体験を通して流域文化を伝えていくために、秋に長良川温泉泊覧会(おんぱく)を開催するようになった。

伝統工芸にまつわるプログラムはもちろん、農村部の炭焼きや筏づくりなど、地元に暮らす人たちがホストとなって、まちのあちこちでお客さんに体験を届けていく。

「地域にはいろんな資源が眠っているんですよ。たとえばお盆に川辺で火を焚いて迎え火送り火をする行事のようなこと。地元の人は『やらないかんで、やっとるだけ』っていうんですけど、外から来た人にとってはおもしろかったりする」

「京都のようなところでは、そういう風俗も研究対象として守られていたりしますけど、地方都市だと今までそういうことがなくて。岐阜だからこそ生まれた長良川流域文化をもっと発掘して、分かりやすいかたちで伝えていきたいんです」

活動は、最初から順調なわけではなかった。老舗で伝統を守る職人さんたちから、初めは理解や協力を得られないこともあったという。

最近、協力者が増えてきたのは、おんぱくを8年続けるなかでリピーターを増やし、収益や実績を示せるようになってきたからこそ。

今年からは、さらに遠方の顧客にもリーチできるよう旅行業をスタートさせる。

旅行のコンテンツになるのは、おんぱくと同様、郡上市から美濃市、関市、岐阜市と下って、最後は伊勢湾に続く166kmの長良川流域文化。

YouTubeにアップされたPR動画を見ながら、蒲さんの解説を聞く。これが本当におもしろい。工芸や歴史が好きな人なら、きっとのめり込んでしまうと思う。

「美濃に行くと、紙漉きができるんですよ。これは落水紙と言って、漉いた紙に水滴を落としてレースみたいな模様をつくっている。麻の葉模様みたいな、細かいものもできるんです」

なんだか最近、風合いを似せた“工芸っぽい”ものを見慣れてしまっているけど、技と素材にちゃんと理由がある“本物”は、やっぱりかっこいい。

蒲さんは説明を続ける。

「こっちに並んでいるのは岐阜提灯。1950年代にこの地を訪れた彫刻家のイサムノグチが、提灯の技術を使って『AKARI』という照明のシリーズをつくったんです。ここ、見てください。小さな節が見えるでしょう。これは、本当に竹ヒゴでつくった提灯にしかできないものなんですよ」

外から来た人が再発見することで生まれた新しいプロダクトの価値が、竹ヒゴの製作技術を守ることにもつながっている。

蒲さんの話はさらに時代を遡り、桃山時代へ。

「秀吉が大阪で文楽を振興していくとき、指導に行ったのはこの河原の辺りに住んでいた傀儡子(くぐつし)つまり、人形遣いの宅平という人だったんです。ここはもともと、城下町から外れた非常民が暮らすエリアだったんですけど、権力者からも愛されるかぶき者がいたんですよね」

話に没頭しているうち、いつの間にか一時間半も経っている。実務の話ができていないですね。すみません、つい…。

「おもしろいでしょう、僕も好きなんです。いいんですよ。そういうふうに興味を持てる人に来てほしいから」



具体的に実務について教えてくれたのは、「長良川めぐるツアーズ」の主担当である淺野さん。2年前までは、名古屋の広告代理店で働いていた。便利な市街地と、山や川のような自然が近い岐阜の環境が気に入っているという。

「旅行業っていろんな業態があるんですけど、僕たちは地域限定旅行会社。国内外の旅行会社と協力しながら、現地パートナーとして活動するようなイメージです」

今はPRとして、海外のエージェントを招いて体験ツアーなどを実施している。

これから実際に旅行者を受け入れていくときは、法人内の別事業で育成した地元のガイドさんが現地での案内をしていく。

ツアーコーディネーターになる人は、受け入れの仕組みを整え、エージェント向けの営業や広報を担当する。インバウンドの需要もあるので、英語が話せる人だと助かるそう。

「このORGANという組織には、小売りやデザイン、編集など、いろんなプロジェクトがあるんです。できることは年々増えているんですけど、それを発信する広報があんまり上手ではなくて。効果的なタイミングや手法を検証しながら、取り組んでもらえたらいいですね」

さまざまな事業を展開している法人だから、現在いる10人のスタッフはマルチタスクに対応している。

「これから入る人も、ツアーのコーディネート以外の業務に関わることがあるかもしれない。ただそれは全部、長良川流域文化を伝えるという本質につながっていて。まったく別の事業に見えても、目的はつながっているというか」

淺野さん自身も旅行の仕事と並行して「移住定住」の事業を担当している。最初は移住というテーマについて、あまりピンときていなかったそう。

「いろんな人から情報を集めたりする作業もあって、結構大変だったんです。ただ、やっているうちに、空き家になっている町家とか、移住に関わるツーリズムとか、今の旅行業のヒントになる部分もあって」

外から来た人に魅力を伝える仕事だからこそ、自分自身も貪欲にインプットしていく姿勢が大切なのかもしれない。

「これから入社する人は、きっと秋のおんぱくの時期から仕事をスタートすることになる。取材を兼ねていろんなところに行くといいんじゃないかな」



おんぱくで生まれた地域とのつながりは、旅行業でも生かせることが多いはず。おんぱくの事務局の寺町さんに「せっかくだから、川を見に行きましょう」と誘ってもらい、外へ。

「打ち合わせでちょっと川向こうの施設に行くとき、橋の上から川を見ては、『は〜、いい職場』って思うんですよね」

岐阜市出身の寺町さん。口ぶりからも、まちへの愛が伝わってくる。

「最近は海外からのお客さんが増えてきましたけど、みんな『岐阜といえばこれ』というものが、よくわからないまま帰っているんじゃないかと思うことがあって。『静かでいいところだった』だけで終わるのはもったいない。その先の体験を伝えたいんです」

寺町さんは以前、ORGANの運営する「長良川デパート湊町店」というショップで販売の仕事をしていた。販売をしながら、自分も新商品を使ってみたり、休日に職人さんを訪ねたりするのが楽しみだったという。

「工房に行ってものづくりを体験させてもらって、自分が『すごい〜っ!』って思った感動を、そのままお客さんに伝える。おんぱくのプログラムづくりにも、そういう実感は生きていると思います」

伝統工芸士のような職人さんだけでなく、食や、着物のような日常の楽しみまで。「まちの普通の人」が長良川流域の魅力を伝えていく。このおんぱくでは、毎年100近くもの新しいコンテンツが生まれている。

「年配の職人さんも、『インターネットとかわからんけど、もっと若い子に知ってほしい』とか『実は弟子がほしいと思っている』っていう、潜在的な熱い思いがあるみたいで。私たちは、広報のためのテキストづくりや値段設定などの面でサポートをしています」

事務局が行うのはあくまでサポート。実際のプログラムの運営は、個々の事業者が自分で行う。

地元の人自身がノウハウを身につけ、外から人を受け入れられるようになれば、おんぱくの時期以外でも自分たちでPRや観光商品づくりを続けていける。それが、長い目で見ると流域文化を継承していくことにもつながってくる。

「プログラムも商品も、その向こうに人がいると思うと情が湧いてくるんですよね。私たちは、体験してもらうことで知ってもらうきっかけをつくる、長良川のストーリーテラーみたいなものなんだと思います」

より多くの旅人が訪れるようになれば、その体験は流域の外へ、海の向こうへも広がっていくかもしれない。

働く人自身も「おもしろい!」と純粋に感動する気持ちが、川の流れを大きく太くしていくのだと思います。

(2019/6/11 取材 高橋佑香子)

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