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汗も苦労も、覚悟のうえ
一流を目指す
ガラス工場

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

日本で長年育まれてきた、ものづくりの文化。

繊細な職人仕事が注目される一方で、人手不足や価格競争など、厳しい状況にあるメーカーも少なくないといいます。

「ものづくりで一流を目指し続ける限り、楽になることはないと思っています。ましてやこの衰退産業、大変じゃないわけがないんです」

「だからこそ突っ張って、尖ってやっていかないと絶対に成功なんてできない。僕らは全員で、本気で上を目指していきたいんですよ」

松徳硝子の代表、齊藤能史(よしふみ)さんはそう話します。

松徳硝子株式会社は、ガラス食器を生産する工場です。

社名に馴染みがなくても、「うすはり」の会社といえばピンとくる方もいるかもしれません。

今回は、グラスの検査や出荷管理を担当するスタッフを募集します。



よく晴れた、真夏の東京。

錦糸町駅を出て5分ほど歩いていくと、小さな工場が点在する地区に出る。

ビルが立ち並ぶ駅前とは打って変わって、昔ながらの下町感が漂うエリア。

その一角に、松徳硝子の工場はある。

近づくと、カシャン、カシャンとガラスの触れ合う音が聞こえてくる。少し中をのぞいてみようと足を踏み入れたとたん、ムワッとした熱気に包まれた。

「先月まで冷夏だって言われたのに、8月に入ってすっかり暑くなっちゃって。設備も古いから、汗かいちゃってすごいでしょう」

こちらに気づいて話しかけてくれたのは、代表の齊藤さん。事務所に移動して話を聞いた。

松徳硝子は大正11年に創業した会社。およそ100年間、墨田の地でガラスをつくり続けてきた。

「もともとうちはメーカーの下請けで電球用のガラスをつくっていたんですよ。ただ時代が変わって、機械に取って代わられるようになった。仕事がなくなり食器をつくるようになった、ってわけです」

電球用ガラスをつくるなかで培ってきた、ガラスを薄く均一に吹く技術。

そんな繊細な職人仕事から生まれたグラスの数々が、今の会社を支えている。

とくに看板商品「うすはり」は全国のセレクトショップに並び、ビールのCMなどにも採用されるほど。最近では海外でも高い評価を得ている。

わたしも、うすはりを愛用している一人。薄い飲み口は滑らかで、手にすると飲みものの冷たさがひんやりと伝わる。

まるで飲みものを直接持っているような、ちょっと特別なグラスだと思う。

「実際に使っていただいて、そう言ってもらえることが一番嬉しいんですよ」

「ただね…」と苦笑いを浮かべる齊藤さん。

どうしたんですか。

「実際の現場は苦労の連続で。今日はもう、うちの良いところも悪いところも全部話したいと思っています」

まず齊藤さんが教えてくれたのは、手づくりガラス業界のこと。

「今、世の中にある大半のグラスはマシンメイド。じゃあ手づくりガラスって何かというと、嗜好品なわけです」

最初に齊藤さんが話してくれたように、ガラス製品は手仕事から機械へと次々に移行している。

30〜40年前には都内近郊に100社あったというガラス工場も、今や吹き工場は都内に2社しかない。いわば、衰退産業だ。

そんな厳しい環境のなか、松徳硝子はうすはりを柱にブランドを確立してきた。

ただ、決して楽な経営状況とは言えないという。

「市場では高くご評価いただいていますが、自分的にはまだまだで。ブランドとしてはやっと芽が出たくらいかなと。じゃあ何に苦しんでいるかというと、質と量、つまり生産力です」

「とにかく、うちの手づくりガラスって大変なんですよ」

最高1500度ほどにもなる窯の火で、一晩かけてガラスの原料を溶かす。そのガラスを薄く吹いて形をつくり、冷やしていく。

グラスの形に整えたのち、一個ずつ丁寧に口部を研磨する。滑らかになるよう飲み口を溶かし、最終検査を通過したグラスだけが出荷される。

工程のほとんどが繊細な手作業によるもの。生産可能時間も年間で決まっているので、一日に生産できる量もおのずと限られてくる。

「なにも意地で手づくりを続けているんじゃなくて、機械では同じ品質をつくれないんですよ。それに『頑張って手でつくったから買ってください』なんて、お客さまには通じない。値段以上の価値があるものをつくってはじめて買っていただけるんです」

「じゃあ俺らが何をやっていくかと言ったら、機械じゃできない仕事をとことん追求していくしかないわけで」

機械じゃできない仕事、ですか。

「松徳のグラスで飲むと本当にうまいとか、ビールもお茶も水でもおいしく感じるとか。とにかく『何これ、全然違う!』って体験ができるものをつくりたいんです」

「衰退産業だなんだって言い訳や愚痴を言ったってしょうがないでしょ。自分たちは『大変だけど稼げるぞ』って好例になりたいんですよ」

より質の高いものを数多くつくって、お金を稼いでいく。

目指す地点が高いからこそ、日々の仕事に求められるレベルも高い。

「生産だけが工場の仕事ではありません。全員が昨日より今日、より早く、確かな仕事をする。そしたら出荷のスピードが上がるし、納期も縮まって売り上げも増えていきますよね」

ただ、その厳しさやレベルについていけずに辞めていく人も多かった。今回募集するグラスの検査・出荷管理の部門も、過去には1週間以内に辞めてしまった人もいるという。

「みんな、ものづくりやガラスが好きだと言って入ってくるんです。でも多くが『厳しい、大変、叱られる』と辞めてしまう。ガラスのプロになるのと、なんとなくガラスが好きなのは違うんですよね」

社員全員が手づくりガラスのプロとして、少しでも成果を出そうと取り組んできた松徳硝子。

ただ、長年のスローガン「利益はみんなで分配する」は、全く実現できていないという。

「昇給は毎年なんとかやりくりして行えていますが、2年間賞与を出せていません。本当に申し訳なく思っています。ポテンシャルを秘めているだけに、この現状は経営陣として不甲斐ないし、恥ずかしいし、本当に情けない」

「この仕事は人ありきですから、このままじゃ絶対にいけない。大変なのは変わらなくても、その対価として、一般企業と比べても『稼げる』ってことを本当に叶えていかないといけないんです」

そのための道筋も、少しずつ見えてきている。

たとえば働く環境。隔週で週に2日休めることを目標に、営業カレンダーを工夫し始めている。

7月には商品の値上げに踏み切った。影響はほぼなく、今年の業績も、現時点では予算を上回ったところで推移しているという。

「この工場も、来年移転するんです。東京の東部地区で、駅近の土地をなんとか見つけられて。新工場では、夏は暑くて冬は寒い今の労働環境をとにかく改善しようと」

「失敗したらやべえぞ、って大きなプロジェクトなんだけど。でもこの仲間とならなんとかできるんじゃないかなって、ずっと思っているんですよね」

実は齊藤さん、もともとは世界的に有名な包丁メーカーで働いていた方。若くして営業所長や宣伝広報を担当するなど、第一線で働いてきた。

ボランティアとして松徳硝子のブランディングや広報を手伝ううちに、「次はここで働いてもいいかもしれない」と思うようになったそう。

「誰一人サボっているように見えないし、すごい頑張ってるし。こんな工場あるんだって驚いたんですよね」

「確実にまだまだ伸び代はあるんですよ。そうじゃなきゃ、会社のために身を粉になんかできないよね(笑)」

入社して10年目。今年から代表として会社を引っ張っていくことになった。

「うちは本気で一流を目指します。数人が奮闘したところで一流にはなれないし、誰もが一流に到達できるわけではないこともわかっています」

「大変じゃないわけがないんです。でもやっていることに価値があれば必ず生き残っていけるし、見合う収益、給料も得られる、一流に近づける。それを実現していきたいんですよ」



話が一段落したところで、再び工場へ。今回募集する販売チームの現場を見学させてもらう。

挨拶するのもためらわれる、ピリッとした雰囲気。

大量に並んだ製品を1個ずつ手に取り、布で拭きあげる。同時に照明の光に当てながら製品を上下左右に動かして、ガラスの状態が適正か、形状、厚さ、重さは規格内におさまっているかを確かめていく。

目視での確認はもちろん、手で触ったときやタオルを当てたときの感触まで。

五感をもとに、一個ずつ素早く見ていく。

「これ、どう思いますか?」「こっちはいいけど、そっちはだめだね」と言葉が飛び交う。素人目にはどれも同じように見えるけど、一つひとつ違うみたい。

ここで自分たちが「大丈夫」と判断したものが世の中に出ていく。ときには先輩から後輩へ厳しい声も飛び、作業をやり直す場面もあった。

そうして規格を満たしたものにだけ社名の印刷されたシールを貼り、ダンボールに詰めて出荷する。

見学し終わって、思わずほっと一息。緊張感のある職場だ。



あらためて販売チームのリーダー、三浦さんに話を聞く。

「仕事はグラスの検品、あとは出荷管理などですね。なかでも要は検品です。次から次へと商品が流れてくるので、終わりがないんですよね」

さっきも、すごい集中力でしたね。

「気は抜けないです。気温や風、窯の調子によって原料のガラスの状態が変わるし、手づくりなので毎日同じようにはつくれないんですよ。規格はあるけど、どこまで出荷してどこから壊すかって判断はロットごとに必要です」

基準は、価格に見合う価値が十分あるかどうか。

グレーゾーンの製品が大量に出たときは、役員と協議して出荷の可否を決めていく。

「やっぱり相談が大事。なんでも話せるような雰囲気を目指しつつ、仲良しクラブではないので叱るときは叱ります。備品がないとか、小さなことでも共有してもらえないと業務に関わりますから」

検品のほかにも、グラスを納める木箱の発注、在庫整理なども仕事のうち。

最初は一つひとつの作業を覚えることで精いっぱいになると思う。

「地味な仕事だと思うんですよね。力仕事もあるし、覚えることも多くて過酷。単純作業ではないので、わかりやすく楽で楽しい職場ではないし…」

短期間で辞めていく人を何人も見てきた三浦さん。新しい人が来ても辞めてしまうのではないか、という不安も正直に伝えてくれた。

「でも私はこの仕事が楽しいです。図面整理とか出荷管理とか、こうしたらもっと良くなるってことを一つずつクリアしていくのが面白くて」

「今日だってこんな暑いなか、みんな頑張っていて。じゃあ自分は何ができるかなって考えます。使命感って言葉が近いのかもしれないですね」



松徳硝子は今、大きな転換点にあると思います。

社員のみなさんが口を揃えて言うように、日々の仕事は「大変で当たり前」。この先の道だって平坦ではないと思います。

それでも、儲かる工場へ向けて黙々と取り組んでいる姿を見ていると、きっとこの工場なら実現できるんじゃないかと思えてくる。

一流を目指す松徳硝子の仲間として。ともに歩んでくれる人を待っています。

(2019/08/06 取材 遠藤 真利奈)

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