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わくわくしながら家族と選び、6年間をともに過ごしていくランドセル。
通勤や買いもの、お出かけに、いつも使うお気に入りの鞄。
使い込むことで身体にフィットし、質感や色味は深さを増していく。
革という素材には、使う人の生活に馴染み、一緒に思い出を積み重ねていく楽しさがあると思います。
職人の手によってつくりあげるランドセルや大人向けの革製品を、企画・製造・販売・修理まで自社で一貫して手掛けているのが、土屋鞄製造所。
働いている人たちから話を聞くと、愛着をもって革を育てるように、お店やブランド、そしてお客さまとの関係性を育んでいるようでした。
そんな土屋鞄のお店をつくりあげていく、店舗スタッフを募集します。
訪ねたのは、土屋鞄製造所 西新井本店。
ここには工房が併設されていて、「ダダダダダ」というミシンの音や「トントン」と木槌で革を叩く音が聴こえてくる。
ものづくりの現場の雰囲気を感じながら、最初にエリアマネージャーの小田さんに話を伺った。
小田さんは入社6年目。これまで名古屋店や西新井本店で店長を務めてきた。
「だんだんと、自分が責任者となるお店だけでなく、広く店舗全体にいい影響を与えられるような仕事をしたいと考えるようになって。今年4月からエリアマネージャーを務めることになりました」
現在は、担当7店舗の売上や人員の管理はもちろん、お店をより良く運営していくための場を積極的につくっているそう。
「模索しながらですが…。最近だと、新しく入ったスタッフでも製品のいいところをしっかりお客さまに伝えられるように、製品図鑑をつくろうと動いていて。あとは、店長に必要な力を身につけるための研修も企画しています」
エリアマネージャーになって3ヶ月。自分なりの挑戦を重ねているのが伝わってくる。
土屋鞄は現在、ランドセル専門店である童具(どうぐ)店や、大人向けの革製品をあつかうKABAN店を合わせると、全国に22の店舗を構える。
どの製品も、職人の手仕事によるもの。
素材となる革や使用する部位を選ぶところから、細やかな縫製まで、使う人のことを想う職人の技術と工夫がちりばめられている。
店舗は、土屋鞄のものづくりや背景にある想いを伝えていく場所。
「より多くの方と接点を持つために、今後も出店は続く予定です。9月末には東京・日本橋に新店舗がオープンします。最近は商業施設の中にあるインショップが増えていますね」
インショップにはさまざまな目的の人が訪れる。そのぶん、路面店とは雰囲気が異なるかもしれない。
「そうですね。お客さまの入れ替わるスピードがすごく早くて、いつでもじっくりお話できるわけではないので、ジレンマを感じる場面もあります」
それに、スタッフが増えればチームも多様になっていく。それぞれの価値観を尊重しつつ、同じ方向を向いていくにはどうしたらいいか。
店舗を取り巻く状況が変化するなかでも、変わらず大切にしたいことがあると、小田さん。
「インターネットでも買い物ができるのに、わざわざお店に足を運んでくださるって当たり前のことではないはずで。だからこそ店舗では、思い出になるようなひと時を過ごしてほしい」
「お客さまがどういう気持ちで来店して、どんなことを考えながら選んでいるのか、相手の気持ちに寄り添っていくこと。それは、どれだけ忙しくなろうと大事にしていきたいです」
お店で働くスタッフの方にも、普段の様子について聞いてみる。
入社3年目の大貫さんは、現在西新井本店で社員として働いている方。
以前はアパレル販売の仕事をしていたそう。
「そこはノルマもあれば、スタッフの売上ランキング発表もあって。だんだん、ご来店されたお客さまに商品を売りつけているような感覚が生まれてきて、販売職はもう辞めようかなと考えていました」
転職活動をするなかで、『土屋鞄製造所』という名前と、ランドセルをディスプレイしている写真に目が留まり、直感で“いいな”と思って応募したそう。
一度は離れることも考えた販売の仕事。あらためて土屋鞄ではじめてみて、どんなふうに感じているのだろう。
「ここではものを売るというより、お客さまと一緒に、長く使っていくという観点で考えながら製品を選んでいく感覚です」
「自分もいいなと思う製品の良さをお伝えして、お客さまの理解が深まっていった結果、購入につながっているなと感じています」
来店するお客さまの雰囲気はさまざま。大貫さんは、一人ひとりどうしたら心地いいと感じてもらえるか考えながら接しているという。
「はじめて来店するお客さまは緊張していることも多いので、まずは足を運んでくれたお客さまに対して『いらっしゃいませ』以外にも『今日は暑いですね。ゆっくりご覧ください』などご挨拶をして。製品をじっくり見たり、手に取って触れたりする時間を持ってもらうようにしています」
お客さまが興味を持った製品があれば、色のバリエーションや経年変化したサンプルを見てもらう。さらに、使いたい場面や普段の服装などを聞きながら、日常シーンでの使い方を提案していく。
会話のやりとりを重ねていくと、お客さまが少しずつ自分のことを進んで話してくれるようにもなる。
土屋鞄のお店では修理の受付も行っていて、なかには、長年使っているうちにファスナーが壊れたり、内装がはがれてきたりした製品を持ってくるお客さまも。
「新しく買い替えてもいいはずなのに、直してまた使い続けようとしてくれる。はじめのうちはどうしてそこまでするんだろう?と思いました。話をしていると、『大事な人からプレゼントでもらったんだ』『昔のこのデザインが使いやすくてずっとお気に入りなの』と教えてくれて」
「長くきれいに使いたいという気持ちがすごく伝わってくるんです。今はそれがうれしくて。お客さまが大事に想うものだからこそ、私も誠意を持って応えたいという気持ちでいます」
コミュニケーションをとりながら、いろんなことを知っていく。そうやって少しずつ信頼関係が生まれていくんだと思う。
一緒に働いている人たちとの関係性も、いいものにしたい。
そんな姿勢を感じたのは、童具店・南大沢の店長を務める大草さん。
大草さんは、2017年の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した方。
「店舗は基本的に、店長1人と社員1人、あとは“キャスト”というアルバイトやパートタイムスタッフで運営しています」
「長年勤めているキャストさんも多くて。最初のころは、みんなより社歴が浅い自分が指示を出すという状況に戸惑うこともありました。でも、経験豊富なみんなから学んでいこうと思って」
手の空いた時間には、お店の運営面で工夫できることについてよく話し合っているそう。
「たとえばここ最近だと、ほかのお店も見つつ選択肢の一つとして土屋鞄での購入を検討しているお客さまには、どんなところが魅力として伝わりやすいだろう?とお店のメンバーで考えてみました」
「これまでを振り返ってみると、色に興味を持ってくださることがよくあるよねと話して」
土屋鞄のランドセルのカラーバリエーションの中には、自然からインスピレーションを受けて展開しているものもあるそう。
大草さんたちは、それぞれの色の元になるモチーフまで伝えたいと考えた。ただ、その表現の仕方を全店舗統一のマニュアルとしてまとめるのは難しい。
「するとあるキャストさんが、自分はこんなふうに色味の伝え方を工夫している、という話をしてくれて」
たとえば、牛革プレミアムカラーシリーズのひとつ「ラベンダー」。
お客さまの中には、パステルの可愛らしい色に惹かれながらも、お子さんが6年間気に入ったままでいられるか心配する親御さんもいる。その気持ちは受け止めつつ、心配ごとを解消することで気に入ってもらえたらうれしい。
「身近にある色味の近いものを手掛かりに、色の見え方を想像してもらえたら、印象が変わるかもしれない。梅雨どきの最近なら、『紫陽花と照らし合わせてみても馴染むような、落ち着いた色味になっています』といった伝え方をしていると教えてくれて」
ほかにも、金具がアンティーク調で大人っぽい雰囲気を出してくれることも伝えていたそう。
伝え方の引き出しが多いほど、選ぶ側の楽しさも広がると思う。
「経験が浅い人も引き出しを増やせたらいいよねという話も出て。キャストさんが自分で考えた言い回しを、ノートに何ページも書き出してくれたんです」
「そうすると、ほかのスタッフも自分なりに考えていることを話してくれるようになって、みんなでアイデアを共有していく流れが生まれて。スタッフ同士のやりとりも、発見があって楽しいです」
店頭に立つ一人ひとりが自分で考え、工夫する。それが重なり合ってお店の空気感をつくりだす。
「土屋鞄らしいお店の在り方って、大枠の方向性は決まっているものの、そこから先は自分たちで探していく感じなんです。自由なところが良さでもあり、難しさでもあると思います」
そう話すのは、童具店・横浜の店長を務める上田さん。
上田さんは、6年前にアルバイトとして入社。これまで鎌倉と横浜のKABAN店、軽井澤工房店で勤務してきた。
契約社員、正社員とステップアップし、今年3月から童具店・横浜の店長に。
「お店ごとにコンセプトや客層は少しずつ異なっていても、各店舗にはたしかな統一感があって。何がそうさせているか、明確な答えってたぶんないんです。私なりに考えたのは、温かみがあるということ」
「いちばん大事なのは、その“温かみ”とは具体的にどういうことなのか、想像しながら行動することだと思います」
そう言って、軽井澤工房店に勤めていたときに印象的だったことを話してくれた。
「駐車場からお店の入り口まで、階段を上り石畳を歩いて数分かかるのですが、天気が悪くなって雨が降ってきた日に、傘を持っていないお客さまがいらして」
そのときあるスタッフは、お客さまが雨に濡れてしまわないようにと、駐車場まで付き添って歩いていったそう。
「もちろんそこまでするという決まりはありません。土屋鞄のスタッフとしてというより、その人自身が人としてこうしたほうがいいなと思って行動したこと。それが自然にできるってすごいなと感じて」
店長になり、店舗運営のマネジメントにスタッフのケア、本部とつなぐ役割と仕事の幅が広まった今でも、他のスタッフのいいところを積極的に取り入れ、自分でも接客する時間をつくっているという。
一緒に働く人たちと学び合いながら、自分たちなりのお店を表現していきたいと、上田さん。
人やモノとの関わりを大切にしていきたい。
その想いを形にしていける人なら、土屋鞄のお店をつくり育てていく一員になれると思います。
(2019/07/04 取材 後藤響子)