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過疎なのに育ち盛り?
大きな森と
ストーリーテラー

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「見ての通り、なんにもないところですよ」

岡山県西粟倉村の人たちは、よくそんなことを口にする。

兵庫と鳥取の県境に接し、両側を山に囲まれた谷あいで1500人ほどが暮らす過疎の村。

しかしその村には今、36社ものベンチャー企業があり、人口の1割を移住者が占めています。今年の春には、そのベンチャー企業だけで合同説明会が開催できるほど、雇用も増えてきました。

「なんにもないですよ」という言葉は、特別なリソースに恵まれなくとも、人の力で地域の経済を動かしていけるという自信の表れでもあるのかもしれません。

それにしても、本当に過疎の村で、地域経済を動かすことができるものなのか?

その実態を知りたいと、西粟倉村には視察や見学に訪れる人が増えています。

今回募集するのは、その人たちをアテンドして村の魅力を伝える仕事。

西粟倉村役場と連携しながら、村のベンチャー企業や移住者のサポートをしているエーゼロ株式会社の、広報・ツアーチームで働く人を募集します。

取材では、村のストーリーを紐解くポイントになるいろんな場所を巡りました。担当になって、この村を案内するところを想像しながら読んでみてください。


西粟倉村へは、姫路から鳥取行きの電車に乗り換えて1時間ほど。夏が終わり、田んぼには重たそうな稲穂が垂れている。

まず紹介するのは、エーゼロの代表・牧大介さんが西粟倉に来て最初に設立した、木材加工の工場「西粟倉・森の学校」。

案内してくれるのは、事業部長の坂田さん。現在は、エーゼロの仕事も兼務しているので、新しく入る人にとっては、同僚でもあります。

工場に到着すると、木のいい香りが。ヒノキ…ですか?

「これはスギですね。真ん中のところが赤いのはスギなんですよ」

森の学校では、間伐で得られた丸太から、フローリング材を製造・販売したり、燃料となる木材のチップをつくったり。

機械化によって地域のお母さんたちでも無理なく働ける環境をつくりつつ、村の面積の95%を占める森林を活用し、地域にさまざまな仕事を生み出してきた。

「エーゼロができる前は森の学校がハブとなって、ツアーや視察の受け入れをしていたんですよ。僕が村に来たのは10年くらい前なんですけど、そのころに比べると村の中で案内できることも増えてきたと思います」

過疎でありながら、成長を続ける西粟倉村。そもそものきっかけは2004年、村が合併をしないと決めたことだった。

森林組合のなかから初めての起業家が生まれたのが2006年。村をあげて森を育てることを決めたのが2008年。森の学校ができて、エーゼロができて…。

今、西粟倉には林業や木工などの在来産業だけでなく、食やファッション、デザイン、福祉までいろんなジャンルの仕事が生まれている。

仕事が生まれれば、人手がいる。人が移り住めば、住まいや、集まる場所がいる。

そのために不動産事業がはじまったり、廃業していた温泉施設がゲストハウスに生まれ変わったり。

生態系のようにモノやコトがつながりあって、コミュニティが成長してきた。

「西粟倉村って最近はちょっと有名になってきましたけど、この『村』でというより、やっぱり自分が何をしたいかが大切だと思います。それぞれの活動について、村の人みんなから賛同を得るのは難しいですから」

「それにまだいろんなところが未完成だから、それぞれが自分で考えて動いていく場面は多いと思います。新しく入る人も、自分でツアーの形を考えていく気持ちでいてもらえるといいですね」


ツアーの担当の先輩にも話を聞くために、エーゼロの事務所がある旧影石小学校の廃校舎へ。

「この教室、“廃校感”あっていいでしょう(笑)」と、明るく迎えてくれたのは、日本仕事百貨の記事を見て入社したという亀田さんと中田さん。

半年前に入社した2人は「ツアー・広報」という新しい部署を発足。今回は、そのツアー部門拡大のため新しいスタッフを募集することになった。

主にツアーや視察を担当しているのが、中田さん。

「今ニーズが多いのは、大手企業さんの研修で村を視察したいという依頼です。それはコーディネーターさんを通して話をもらうので、見学の希望や人数、旅程を相談しながら、見学先にアポを取ったり、宿の手配をしたり」

「あとは、代表の牧から紹介されたお客さんの案内とか。企画を立てて募集をするツアー以外にも、外から来る人のアテンドを担当しています」

先ほどの「森の学校」や、起業家たちの仕事場、村の原生林。この旧影石小の廃校利用について知りたいという声もあるので、ニーズに合わせて行程を組んでいく。

村の起業家や役場の担当者に話を聞きたいという要望があれば、スケジュールを調整して、レクチャーを依頼する。

「本当に段取りが8割の仕事だと思います。みなさん本業をしながら講師を引き受けてくださるので『やっぱり、その日は納期が厳しいから行けなくなった』っていうこともよくあって。そうなると、急遽次の人を探します」

今度新しく入る人もそうですが、中田さん自身も、移住したばかりで村を案内するのは大変だったのでは?

見学者から、いっぱい質問されちゃいますよね。

「本当にそう。最初はエーゼロがやっているうなぎの養殖とか、村の林業のこととか、わからないことばっかりでした。だから最初のうちは、役場の視察に同行させてもらって、話を聞きながら勉強しました」

ツアーや旅行業に関わったことがある人なら、その経験を活かせると思う。

ただ、経験やスキルよりも大切なのが、地域の人と話すこと。明るくコミュニケーションができる人に手伝ってほしいという。

「よく一緒に仕事をする役場の人も、すごくポジティブで。この前も、『失敗して今までの成果がゼロになっても、マイナスにはならん』って言われて。そんなことを言ってくれる役場があるっていい村やなと思いました。尊敬できる人が近くにいるっていうのが、やりがいなんですよね」

一つひとつ、視察やツアーの仕事を形にしてきた中田さん。

その業務をこれから入る人に任せて、今後は営業や新規開拓、新しいツアーコンテンツの企画に挑戦しようとしている。

入って1年目にして、すでに次の展開に。スピード感ありますね。

「ほんまですねえ…(笑)。まずは新しい人と仕事を分担しつつ、もうちょっと今の視察のコンテンツをブラッシュアップしていけたらいいなと思っていて」

「やっぱり遠方から来てもらうには、美味しい食事と快適な宿は大切だと思うんです。『いい村だな』って感じてもらうためのアプローチとして、押し付けがましくないじゃないですか。って、この前『カンブリア宮殿』見てて痛感しました(笑)」


「あー、そうだねえ」と、頷きながら聞いていた、広報担当の亀田さん。ツアーの実務にはあまり関わることはないけれど、「村のファンづくり」という同じ目的に向かって一緒に仕事をする広報・ツアーチームのリーダー。

今年の5月から、奥さんと1歳の息子さんとともに西粟倉での新生活を始めたところ。今は自社メディアや村内の施設の広報サポートなどをしている。

もともと大阪で広告制作やマーケティングの仕事をしていたそう。

現在担当しているのは、村の情報を発信するためのスマホアプリ「西粟倉アプリ村民票」やthrough meなど、自社メディアの運用や、地域の施設のチラシづくりなど。
広報はある意味同じ職種ではあるけど、規模感は全然違いますよね。

「たしかに、以前のほうが予算規模は大きかったですけど、制約も多かった。こっちの仕事は、今は世の中に対する影響力はちょっと小さいかもしれないけど、めちゃくちゃスピード感をもって進められる。決済ルートがシンプルで、楽やわ〜!って感じです」

「クライアントにはメールやLINE一本で済むし、自分の上司である牧は基本的には任せてくれている。自分の実力がそのまま形になってしまうから責任は大きいですけど、それだけ自分らしいところも出せるのかなと思います」

今回募集する職種に限らず、エーゼロのみなさんの話を聞いて感じるのは、マニュアルやノウハウが確立されていないことに取り組む機会が多いんだな、ということ。

新しく入った人も、若手でも、自分で頭をひねって仕事を形にしていく。

ベンチャー企業ならではの“成長痛”はあるかもしれないけど、手応えもありそう。


旧影石小を出て、今度は村役場へ。話を聞いたのは、萩原さん。ツアーでは、村の取り組みについて行政の視点から話をしてもらうのだそう。

西粟倉出身でもある萩原さん。地元だからこそ、ここ数年の変化に思うところもあるのでは。

「合併しないと決めたときは、正直この先どうなるのか不安でした。『森の学校』ができたときも、本当に続けていけるのか半信半疑で。本当に変化を実感できるようになったのは、ここ5年くらいですよ」

役場としても、新しい起業家の支援や、村の木を使った建築事業、森林資源を燃料とした再生可能エネルギーの取り組みなど、今「怒涛のように」新しい挑戦がスタートしている。

立ち止まって考える暇もないと萩原さんは言う。

「外から視察に来られた方に『西粟倉はエーゼロがあるからできるけど、うちはそんなの無理だ』ってよく言われるんですけど、僕は違うと思う」

「西粟倉って95%が森林で、ほかにはなんもないんですよ。観光資源も大きな産業もない。ないんだったらつくるしかないですよね。今の西粟倉は、この村の人の頑張りでできているんです。ないから諦めるんじゃなくて、一回やってみるっていうのが大事なんだと思います」


最後に、エーゼロのみなさんが「せっかく村に来たなら、ちょっと楽しいところに寄りましょう」と誘ってくれた。

向かったのは“八郎さん”の別宅。ツアーでも、休憩やレクチャーの会場として場所を貸してもらうことがあるのだそう。

八郎さんがDIYでつくったという家の中には、大きなソファとテーブル、スピーカー、レコードプレイヤー、油絵や木彫、楽器もたくさんある。たしかに、楽しい…!

ジャズのレコードを聴きながらコーヒーをいただき、ちょっと一休みさせてもらう。

ふとツアー担当の中田さんを見ると、八郎さんと何やら「大人数の食材を安く調達する方法」について相談していた。

今度、八郎さんの家の庭にある窯で、視察の参加者のためにピザを焼く計画らしい。そういえば中田さん、さっきも「食」にこだわりたいと話していたな。

マニュアルがないというのは、工夫を楽しむ余白があるということ。

新しく入ってくる人も、まだまだ枝葉を伸ばしていけるような気がします。

(2019/8/30 取材 高橋佑香子)
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