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時を越え、つないでいく
世界にひとつだけの宝物

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街ゆく人が何気なく身につけている腕時計。

その昔西洋では、腕時計はとても貴重な贅沢品で、代々受け継ぎながら使われていたそうです。

今回紹介するのは、そんなアンティーク時計の魅力を伝える仕事。

50年近く、時計やジュエリーなどの輸入販売を続けてきたシェルマン。バーニーズニューヨーク銀座店や、新宿伊勢丹店で販売スタッフとして働く人を探しています。

自分が生まれるずっと前につくられ、大切にされてきたアンティーク時計。そんな宝物を、お客さん一人ひとりに向き合いながら届けていくような仕事だと思います。

 

銀座駅を出ると、通り沿いにはハイブランドのお店がずらり。

それだけで、普段よりも少し背筋が伸びる感じがする。

駅から歩くこと5分、国内外のブランドアイテムがショーウィンドウを飾る百貨店、バーニーズニューヨークが見えてきた。開店直後の、まだお客さんの少ないフロアに足を踏み入れる。

すれ違うスタッフが丁寧に挨拶をしてくれる。高級感漂う雰囲気にどこかそわそわしていると、一階中央に、シェルマンの時計コーナーを見つけた。

ディスプレイケースを覗いていると声をかけてくれたのは、取材の依頼をくれた小島さん。気さくな雰囲気に少しホッとする。

普段は、ここから歩いて5分ほどのところにある銀座店で働いているという小島さん。販売の仕事をしながら、採用など総務の仕事も担っているのだそう。

「シェルマンでは、バイイングなどの仕事をしているスタッフも、みんな基本的にはいずれかの店舗でお客さまと接する仕事をしています。社長も店舗に立つことがありますからね」

1971年、まだ海外からの輸入品が珍しかったころから、西洋の骨董品などを仕入れて直接販売する会社として創業したシェルマン。

蓄音機やジュエリーなどいろいろな商材を扱っていくなかで、今ではアンティーク時計を中心としたお店を持つようになった。

アンティーク時計って、具体的にはどんなものなんですか。

「一般的にはアンティークは100年以上前の品物を指しますが、腕時計に関しては電池で動くクォーツ時計が広まる前の1970年代ぐらいまでのものを、当社ではアンティークと呼んでいます。お店にあるものの多くは、ゼンマイを手で巻いて時計を動かす手巻き式です」

何もしなくても日々動き続けてくれる電池式の腕時計と違って、アンティーク時計の場合は、毎日自分の手でゼンマイを巻き上げて使うのだそう。

「今の時計と比べると、手間に感じるかもしれません。けれど、僕はもう慣れてしまって、時計を巻くのが毎朝の儀式のようなものなんですよね。仕事に向けて気持ちを切り替えるいいスイッチになっているかな」

繊細な仕掛けで動く、アンティーク時計。

金など傷つきやすい素材が使われていたり、ダイヤなど細かいパーツがあしらわれていたり。

“時間を確認する道具”として使っている腕時計とは、扱いかたが少し異なるかもしれない。

「水に濡れてはいけないので、手を洗うときや汗をかく季節は少し気を使います。普段からぶつけないように注意して動くので、特に女性は仕草が綺麗になるかもしれませんね」

身につけることで、手先の所作やふるまいも、ちょっとエレガントになる。身につける人にとっては、アクセサリーに近いような感覚なのかな。

 

バーニーズニューヨーク銀座店の店長、岩本さんに、お店で扱っているアンティーク時計を見せてもらった。

ショーケースから出してくれたのは、ダイヤモンドの飾りがついたブレスレットのようなもの。

「見てください。これもアンティーク時計なんですよ」

ジュエリーみたいで可愛い…!

こんなデザインの腕時計、初めて出会いました。

「ダイヤモンドの飾りは、文字盤をおおうためのカバーになっています。カバーウォッチと呼ばれるもので、パーティーの時によく使われていたみたいです。上流階級の女性たちが着ていたドレスを想像すると、このゴージャスさも納得ですよね」

「アクセサリーを選ぶように、パッと見たときに自分が可愛いと思えるものを見つけてみてください」

この日岩本さんが身につけていたのもアンティークの時計。この仕事をはじめる前から愛用しているものだそう。

「初めてアンティーク時計と出会ったのは、高校生のとき。すごい可愛い!って衝撃を受けて。この時計が欲しい、と直感的に思ったんです。いつか働くようになったら、自分で買おうと決めていました」

以前はジュエリー職人として働いていた岩本さん。

実際に自分で時計を選ぶようになって、有名なブランドの新作時計もいろいろ見たけれど、初めてアンティーク時計に触れたときの衝撃を超えるようなものはなかったという。

ずっと好きだったアンティーク時計に関わる仕事がしたいと、シェルマンで働きはじめたのが6年前。ニッチな業界であるアンティークの世界で求人があるのはめずらしいことなのだそう。

憧れだった世界で働いてみて、どうですか。

「たくさんの商品に触れるなかで技術のすごさを実感しましたね。こんなに細やかなデザインができる職人さんは、今かなり少ないと思います。パッと見たときの華やかな印象は、目に見えないような細工が集まって丁寧に仕立てられているんですよ」

店頭に出る商品は、岩本さんたち販売スタッフが1本ずつ検査していく。

ダイヤモンドは本物か、金の純度に間違いはないかなど、機械を使って小さいピースを一つひとつチェックし、必要なものは鑑別に出す。

「歴史的にも価格としても価値の高いものを扱うからこそ、お客さまに誠実でありたい。お店のスタッフ一人ひとりが、責任を持って商品を届けていく必要があると思うんです。覚えることはたくさんあるので、一つひとつ勉強していくぞっていう気持ちが大切だと思います」

お店で扱う商品のなかには、美術館で展示されるような価値のあるものも。

それに、アンティーク時計は基本的にはすべて一点もの。偶然の出会いから、世界に二つと無い自分だけの宝物が見つかるかもしれない。

販売スタッフとして入社する人は、まずどんなことからはじめたらいいんだろう。

「まずはそれぞれの商品を見て、ほかのスタッフの意見も聞きながら、この時計の良さってどこだろうっていうことを一つずつ自分で見つけていきます」

今働いているスタッフも、販売の仕事は未経験からスタートした人が多いのだそう。経験を積んでいけば、ゆくゆくはバイイングなどほかの仕事を任せてもらえる環境でもある。

「知識は入ったあとから身につけられるので、あまり心配はいりません。それよりも、感性の高い人がこの仕事には合っているかなと思います」

感性の高い人?

「お客さまの好みを察する力、というか。お客さまの雰囲気を見たりお話を伺ったりしながら、この方だったらあの時計が合うんじゃないかなって、その人の好みを考えながら提案をしていくことが大切なんです」

「お客さまが自分から選んでいなくても、似合いそうだなっていう商品があればこちらから提案してみる。それがパキッとハマれば、一気に心を開いていただけることもあって」

心を開いてもらえれば、より自由な提案もしやすくなる。そうしていい循環が生まれていく。

お客さんとの信頼関係を築くために、ほかにも何か大切にしていることはありますか。

「なるべく気持ちを汲みとるようにしています。たとえば、まだ小さいお子さまがいる方なら、パーツの引っかかりが少ないような形のものをお勧めしたりとか。華やかさもあるけど、実用的で使いやすいですよって」

商品のことだけでなく、さりげなく趣味やプライベートの話をしながら、お客さんの好みを探っていく。

相手の話を聞くだけでなく、共通の話題があれば自分も少し話をしながら、お店での時間を楽しく過ごしてもらう。

とすると、いろいろなことに興味を持っている方がいいのでしょうか?

「引き出しがたくさんあるほうが、お客さまとの距離は縮めやすいと思います。あとは、好奇心旺盛な人であれば、相手にいろんな質問をしたくなって会話が弾むんじゃないかな」

「購入までに何度か足を運んでくださることも多いので、顔見知りのお客さまも増えていきます。これはあのお客さまが好きそうだなっていう商品が入ったら、こちらから連絡してご紹介することもよくありますね」

アンティーク時計は2〜3年に一度メンテナンスが必要なので、購入後もお客さんとの関係性を深める機会が多いのだそう。

「70代ぐらいのおばあちゃまが、娘さんとお孫さんの3人で来てくださったことがあって。可愛い時計が欲しいのよっていう相談を受けました」

お客さんの希望は小ぶりなデザインのもの。

けれども、あんまり小さすぎると文字盤が見づらいかもしれない。そう思った岩本さんは、コンパクトでありながら数字が大きく見やすいものを紹介したところ、「すごい素敵」と気に入ってもらえた。

「いつかは孫に渡せるからよかったわ、って言ってくださったんです。私の仕事は、時計とお客さまとのご縁を後々までつないでいくことなんだなって思いました」

購入する前も、手元に渡ったあとも。お客さんと関わるきっかけを、アンティーク時計はつくってくれる。

最初は、高級志向の人しか身につけられない印象があったけれど、お話を聞いていると身近なものに思えてきた。あたたかさや親しみも感じる。

「お若い方がつけていてもやっぱり可愛いですし、40代、50代の方なら本物を知っているなっていう感じが出る。おばあちゃまが持っていたら、まあおしゃれって。飽きのこない、デザインの揺るぎなさがありますよね」

「大事にしていただければ、一生どころか、次の世代の方にも使っていただけるものなんです。私にとってもアンティーク時計って、自分だけの宝物を、いつも手元に持っているようで、生きていくうえで気持ちの支えになっている気がします」

 

毎日ゼンマイを巻いたり、水に濡れないよう気を配ったり。

一見手間に思えるかもしれないことの積み重ねで、自分だけのものとして愛着がわいていく。道具というより、肌身離さず身につける宝物のような存在になっていく。

便利な今の時代に、アンティーク時計を選ぶ理由はそこにあるのかもしれません。

(2019/9/24 取材 鈴木花菜)

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