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北のフロンティアで
未来の事業をつくる

北海道・下川町(しもかわちょう)。

面積の9割を森林が占める、人口3300人の町です。

2018年、この小さな町が「SDGs未来都市」に選ばれました。

きっかけとなったのが、60年前から続く独自の循環型森林経営。山に木を植え、育て、伐採し、また木を植える。採った原木は町内で製材して、使えない端材や残材は木炭にして販売したり、木質バイオマスエネルギーの原料として活用したりする仕組みです。

同年、町はSDGsを下地に「2030年のありたい姿」を行政と町民とで話し合い、独自の目標を町の総合計画のなかで掲げました。

そんな取り組みに惹かれるように、下川町を選んで移住する人は近年少しずつ増えていて、全国から3人の起業家も地域おこし協力隊としてやってきました。

起業型の地域おこし協力隊、通称「シモカワベアーズ」です。

ベアーズのミッションは、自分で新規事業を立ち上げること。町はサポートチームを組んで起業を後押しします。

今回募集するのは、4人目のベアーズです。

2030年に向けて町が掲げた「持続可能なまち」という目標に向けて、ともに挑戦する仲間を探しています。



旭川空港から車を北に2時間ほど走らせると、下川町の看板が見えてきた。

気温は15度。10月上旬の下川町は、薄手のコートではもう肌寒いくらい。

町に到着してまずお会いしたのは、麻生翼さん。

森林環境教育などを手がけるNPO法人「森の生活」の代表と、木材加工会社の業務に携わるほか、首都圏で行われている起業家支援プログラムのファシリテーターも務めている方。

シモカワベアーズには、選考から採用後のサポートまで携わっている。

「ベアーズは今年で4期目の募集です。1期1名ずつ採用が決まって、今は3人のベアーズがそれぞれ起業に向けて動いています」

地域で自ら仕事をつくる人をサポートする、ローカルベンチャー育成事業に取り組んできた下川町。

シモカワベアーズは、その流れを汲むかたちで始まった、起業型の地域おこし協力隊だ。

ベアーズのミッションは、自分でやってみたいことを事業化すること。

「ベアーズは、行政が募集をかけて選考するかたちではなくて。『タウンプロモーション推進部』という主に移住をサポートする任意団体と、僕たちNPO、そして行政の3者でチームを組んで、募集から採用後のフォローまで行なっています」

選考段階から応募者一人ひとりにサポートチームがつき、伴走するという。

具体的には、最終面接までの約1ヶ月間、メールやオンライン、ときには対面で麻生さんたちが聞き役となって、候補者と一緒に事業プランを固めていく。

何を掘り下げて考えるべきか、実際に地域でできそうなこと、求められていることは何か。「壁打ち」のなかで、プランが磨かれていく。

「これじゃダメですよって突き放すんじゃなくて、どうやったら実現できるか、一緒に対話を重ねながら考えて。プランをまとめて、最終選考に進みます」

採用後は、月に1度、面白法人カヤックやNPO法人ETIC.といった外部のサポーターを迎えて行う個別事業相談会があったり、個人事業主として行政と契約を結べたり。

起業したい人にとっては、かなり恵まれた制度だと思う。

「自由だけど結果は自己責任、という起業のシビアさはありつつ、町ぐるみでちゃんとサポートする。その潔さがベアーズの面白さだと思っています」

エゾシカの利活用、出張型DIY、アロマや漢方を扱う店舗経営の準備。

3名のベアーズは、それぞれのフィールドで活動している。

そして4期目となる今回の募集。麻生さんは「ちょっと攻めてみたい」と話す。

「下川は去年から新しいまちづくりを進めていて。今回はとくに、町と同じ課題意識とビジョンを持って、一緒に解決に向けて取り組んでいけるメンバーを募集してみたいんです」

昨年、下川町は国のSDGs未来都市に選ばれた。

SDGsとは、すべての国連加盟国によって採択された「持続可能な開発目標」の略称。

2030年に向けて「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」など、17の行動指針を示している。

下川町は、森林を無駄なく活用することで資源・お金・雇用が地域内で循環する「循環型森林経営」に過去60年間取り組んできたことや、木質バイオマスによるエネルギー自給を目指す姿勢が評価され、SDGs未来都市に選出された。

それをきっかけに、新たな取り組みもはじまっている。

「去年は、SDGs未来都市部会や町民有志の会が立ち上がって。行政も民間も一緒になって、『2030年に向けて、下川町はどんな町を目指したらいいだろう』という視点で話し合ってきました」

その結果生まれたのが、下川オリジナルの7つの目標。

“1. みんなで挑戦しつづけるまち
 2. 誰ひとり取り残されないまち
 3. 人も資源もお金も循環・持続するまち
 4. みんなで思いやれる家族のようなまち
 5. 文化や資源を尊重し新しい価値を生みだすまち
 6. 世界から目標とされるまち
 7. 子どもたちの笑顔と未来世代の幸せを育むまち”

この7つの目標は、町の総合計画の基本構想となった。

部会のリーダーを務めてきた麻生さん。「これは僕個人の考えでもあるんですけど」と前置きしたうえで、想いを語ってくれた。

「人口もGDPも減っていく日本で、下川町の高齢化率は全国平均の40年先を行っていて。ローカルこそ、これまで通り売上を追ってどんどんモノを消費する方法とは違う、新しいあり方を考えないといけないと思うんです」

「再生可能エネルギーや循環型資源利用の分野で歴史的蓄積がある下川なら、可能性があるんじゃないかって。10年、20年先にも通用するような事業を4期目のベアーズと一緒に描いて、ここ下川から発信していきたいんですよね」

今回の募集は、「7つの目標のいずれかに紐づいた事業を立ち上げること」が条件。

サポートチームでも、それぞれの目標に紐づいた事業案の例を考えて、ホームページに掲載している。“除雪を楽しく無理なく行うための事業”“下川を象徴する木質バイオマスボイラの余熱を活用した事業”など、福祉から教育、産業まで幅広い。

もちろん、ここに掲載されていない事業案を提案することもできる。

自分のやってみたいことと、下川町のビジョン。重なるところに、どんな事業が生まれるだろう。

「過去に自分で事業を立ち上げたことのある方にも応募してほしくて。自分のプランがローカルでどれくらい受け入れられるかを試してみたい、くらいの気持ちで全然いいんです」

「もし『なんかこの先ちょっとまずくないか?』って思っている方がいたら、その違和感を下川に持ち込んでほしいなと。それを乗り越えるための最適なアクションを一緒に考えられる仲間が、ここにはたくさんいると思うんですよね」



ここからは、ベアーズのみなさんにも話を聞いてみる。

1期生の山田泰生さんは、エゾシカを利活用した事業を立ち上げようとしている方。

「前職は航空機設計のプロジェクトマネジメントをしていました。ただ漠然と、社会の課題を解決できるような事業をいつか自分でつくりたいとは思っていて」

2年前、麻生さんがファシリテーターを務めていた事業構想プログラムに参加したことをきっかけに、下川町でエゾシカのローストに出会う。

「町の喫茶店で鹿肉を食べて、こんなに美味しいのかって驚いたんです。マスターに聞いたら、実は下川で獲れた鹿ではないんだよって教えてもらって」

下川の鹿はというと、自家消費用の利用はあるものの、飲食店などに食肉として出まわることはない。また、総捕獲数の約半数の鹿は駆除され、そのまま廃棄しているのだそう。

「廃棄される鹿を資源として活用できたらいいな、みんなが下川の鹿製品にアクセスできるように産業化できたらなと思ったのが始まりでした」

そこで考えたのが、「20年間使われていなかった町内の肉処理施設を再稼働させ、さばいた鹿肉を販売する」というプラン。

ベアーズに採用されれば、3年間活動費を得ながら自由に時間を使える。起業する選択肢の一つとして応募した。

ところが、採用後すぐに当初のプランが実行できなくなってしまったそう。

「下川に来て2ヶ月で、処理施設を使えないことが決まって。20年前に比べて保健所の認可基準が厳格になったんですよね」

「プランが崩れ去ったので、あらためてエゾシカに関わるデータを調べ直して、食品学も勉強して。行政の人にも、農業や酪農を専門にしている研究機構や大学の先生を紹介してもらいました」

一年かけて、プランを練り直した山田さん。試行錯誤の結果、鹿肉のプロシュートを製造・販売することに。

「実は下川って、鹿がそんなに獲れないんです。少ない頭数で収益を立てるためには付加価値をつける必要がある。付加価値のもっとも高い肉製品は何かというと、プロシュートでした」

「下川はプロシュート加工に欠かせない低温・乾燥という環境条件もクリアしているし、たとえすぐに売れなくても熟成させるほど美味しくなる。必要以上の資源やエネルギーを使わずに生産できるし、持続可能な事業だなと思っています」

今は試作第一弾のプロシュートを熟成しているところ。今後は、革やほかの部位も有効活用できる方法がないか考えていきたいと話してくれた。



山口駿人さんは、昨年着任したベアーズ2期生。

大学で木材や木造建築について学んだのち、札幌の会社に就職。いつかは山に近いフィールドで活動したいと考えていたところ、下川町とベアーズを知ったそう。

「今は、地域の木材を活用して、出張型DIY木工房を始めています」

下川町は木材のカスケード利用やバイオマス活用などで高い評価を受ける一方、日常生活で木に触れる機会はまだまだ少ないそう。

木を使ったものづくりを気軽に体験できる場をつくろうと、今年の5月から町内の施設や店舗でDIYの場をひらいている。

「世の中に既製品が溢れているなかで、わざわざ自分の手でつくる。その経験は生きる自信になるし、モノの消費に対する意識も変わると思うんですよね」

「本当は 『自分の手で暮らしをつくる』っていうところまで伝えたいんですけど、今はまだ一般的な木工ワークショップになってしまっていて。越えるべきハードルは高いですね」

今回は7つの目標に紐づいた起業家を募集するんです、と伝えると、少し考えてこう話してくれた。

「一つ思うのは、自分の考えたビジネスモデルで下川を救おう、というような上からの姿勢で来るのは違うな、ということで。応援してくれる下川の人たちと“仲間になる”ってスタンスがいいと思うんです」

「僕、正直地方にはあまり良いイメージがなかったんですけど、ここの人って僕みたいな外から来た若者の挑戦でも応援してくれるんですよね。その挑戦によって地域がどう変わっていくか、みんなが関心を寄せてくれる町なのかもしれません」



10年、20年先、この町はどうなっているだろう。

ともに挑戦する人や応援してくれる人がいるのは心強いこと。それに、長年持続可能なまちづくりに取り組んできた町ならではの、アイデアを形にしやすい土壌がここにはあると思います。

4人目のシモカワベアーズとして、まだ見ぬ未来を見据える起業家を、この町は待っています。

(2019/10/8 取材 遠藤 真利奈)
一部写真提供:下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部

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