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目の前の人と、世界の人と
思いやり育む
これからのフェアトレード

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「僕たちのお店に並ぶ商品はどれもつくり手がいて、一つひとつにストーリーがあって。お店は、そんな商品の背景を丁寧に伝えていく場だと思っているんです」

これは、有限会社シサム工房の代表・水野さんの言葉です。

シサム工房は、京都を拠点にフェアトレード事業を展開している会社です。

フェアトレードの洋服やアクセサリー、雑貨にコーヒーなど。

遠くアジアに暮らす人たちがつくった商品を、お店やオンラインショップ、卸し先を通じて大切に届けています。

直営店は、関西と東京に8店舗。今回はそのうちの1店舗、東京・吉祥寺店の販売スタッフと、京都事務所で働く被服デザイナーを募集します。



訪れたのは、コピス吉祥寺に入る「vote for by sisam FAIR TRADE」。

やわらかそうなオーガニックコットンのニットや、あざやかな色柄のストール。革小物に真鍮のアクセサリーも。

たくさんの商品に、思わず目移りしてしまう。

こちらに気づいて話しかけてくれたのは、代表の水野泰平さん。

「お久しぶりです。このお店でお話しするのははじめてですね」

お会いするのは、今回で3度目。飾らない言葉で話してくれるから、こちらも思ったことを素直に伝えられるなあ、と会うたびに思う。

2年半前にオープンしたこのお店は、シサム工房にとってはじめての東京店舗。

「vote for」というブランドの1店舗目でもある。

「どんなお店にするか、一から考えました。店舗デザインをテーマカラーのブルーグリーンに統一したり、什器やポップはできるだけ天然素材のものを選んだり。紙袋も新しくデザインしました」

このお店をきっかけに、新しいことがはじまっているんですね。

「そうですね。僕たちの考えていることを、もっと伝えられる場にしたかったんです」

シサム工房が考えてきたこと。

それは、水野さんのこれまでの経緯とも重なる。

水野さんが今の道を選んだきっかけは、大学生のときに偶然観た映画。アパルトヘイトで差別を受ける人たちを知り、驚きとともに怒りを感じたそう。

弱い立場にある人を守るために、自分も何かできないだろうか。そんな思いから、バックパッカーとして世界中を旅することに。

「けれど旅の中で出会ったのは、ふつうの人たちのなんでもない日常で。厳しい環境でも当たり前に生きている、僕なんかよりずっとたくましい人たちでした」

音楽を聴いて踊る若者や、水汲みや薪集めをして家族を養うお母さん。自分で道具をつくって遊ぶ子どもたち。

「彼らは、かわいそうな人たちじゃなかった。守ってあげるとか、アドバイスするとかじゃなくて、よい形でつながっていきたいと強く思うようになったんです」

そんな思いを温めつづけて、20年前にフェアトレードを手がける会社としてシサム工房を創業する。

京都の一角ではじまった小さなお店は、少しずつ数を増やしていった。

「ただ、当時はまだフェアトレード=チャリティというイメージが強くて。『かわいそうだから買ってください』というふうに映るのはいやだったので、表立ってフェアトレードを打ち出していなかったんです」

「でも、自分は何のためにお店をつくったんだろうって考えたとき、今のままじゃだめだと思って。少しでも多くの人に、フェアトレードってかっこいいよね、って思ってもらえるようなお店をつくろうと決めました」

まずは社内にデザイン部署をつくって、商品の質やデザインの底上げを図るように。

世界フェアトレード連盟に加盟するNGOを訪ねて、現地の人たちが持つ技術や素材を知る。そうした伝統を生かしながら、販売スタッフの声を聞いてデザインしたものを、現地の人たちにつくってもらう体制を整えていった。

「大切なのは、お客さまに手に取ってもらえる商品をつくって、つくり手を継続的に支援すること。慈善事業ではないので『このクオリティではお店に出せない』と伝えることもありますし、彼らから意見をもらうこともあります」

そうして一度つながった人たちとは、できるだけ長く深く付き合っていく。

今では、扱う洋服のほとんどがオリジナル商品なのだそう。

「大変な環境で生きている人はいっぱいいて、そのなかでフェアトレードでつながれる人は本当に限られているんです。でも商品を通して、目に見えない人たちを思いやれるようになれば、きっと世界も少しずつ変わっていくんじゃないかな」

「そのためには、ただものを売るのでは足りなくて。目の前の人に、ものの後ろにあるストーリーを丁寧に伝えていくことが、とにかく大切だと思っています。シサムのお店は、そんな価値観を伝える場でありたいんです」



お店では、どんな人たちが働いているのだろう。

紹介してもらったのは、春からこのお店の店長を務める井手萌子さん。

日本仕事百貨の記事をきっかけに転職した方で、ふわりとした笑顔が印象的。

新卒で入社したのはまったくの異業種。働くなかで、自分の仕事が誰のためになっているのか思い悩むようになったそう。

そんなときに知ったのが、シサム工房だった。

「理にかなっているなと感じて。人として正しいことを大切にできそうな仕事だし、思い悩んでいたことに対する答えになるような気がして応募を決めました」

そうして2年半前に、オープニングスタッフとして働きはじめる。

働いてみて、どうでしたか。

「そうですね…ここでは、ちゃんと温度感を伝えないといけないんだなって感じました」

温度感。

「はい。お店のものには、一つひとつたくさんの情報が詰まっています。素材やお手入れ方法はもちろん、つくり手の想いも。それをお客さまに伝えるところまで含めて、一つの商品なんだろうなって」

商品を、どんな言葉や雰囲気で伝えるか。

まずは自分の言葉で説明できるように練習したそう。

「ただ暗記すればいいわけじゃないなって思いました。本心から言えるようにならないと、お客さまにも伝わらないんじゃないかなって」

「たくさん伝えたいことがあるから、ついつい喋りすぎちゃうこともあるんです。でもまずはお客さまの話をちゃんと聞いて、会話を広げていこうって思っています」

そんな井手さんには、心に残っている瞬間があるのだそう。

「お客さまに、手刺繍がたくさんついたお洋服をご紹介したことがあって。インドの女性が、その土地でずっと受け継がれてきた刺繍を使ってつくったものなんです」

ところが1枚だけ、本来無地のところにまで刺繍がほどこされているものがあった。

「1点だけ、ほかのものより刺繍がたくさんなんです(笑)。お客さまも気になったみたいで、どうして?って尋ねられて。手仕事だから、楽しくなってちょっと余分につけちゃったんですかねって伝えたら、すごく喜んでくれたんです」

今まで考えたことがなかったけれど、つくっている人がいるんだね、とその1枚を買ってくれたそう。

「ものの後ろに人がいるって、ちゃんと伝わったなあって。その感覚がはっきりとあって、すごくうれしかったです」



そんな吉祥寺店に、この春から加わったのが平川眞実さん。前回の募集記事を読んで、九州から上京してきた。

平川さんが初めてフェアトレードに出会ったのは、高校生のころだったそう。

「兄の通う大学の学祭に遊びに行ったとき、学生さんがフェアトレードの商品を販売していて。そこに並んでいたバッグに一目惚れしたんです。話を聞いたら、これはバングラデシュの方がつくったんだよって教えてくれて」

いいなと思った商品をきっかけに、背景にいるつくり手や社会問題に思いを馳せる。

その体験がずっと印象に残っていて、大学でもフェアトレードの団体に入ったり、海外留学を通して商品の生産者に会いに行ったりしていたそう。

「だんだん、海外のつくり手さんとの関係はもちろん、身近な人たちと密につながることもフェアトレードなんじゃないかなって思うようになって。シサムの記事を読んで、自分の考えていることとぴったり当てはまった感覚があったんです」

洋服や雑貨を売るお店で働いた経験は、ほとんどなかったという平川さん。

今は商品知識を覚えたり、先輩のもとでお店づくりを学んだりと、「特訓の毎日」だそう。

「たとえばディスプレイですね。わたしは結構、この場所にあの商品があったらいいなって感覚で並べちゃうんです。でも井手さんたちは売上やお客さまの反応を客観的に見ながら、並べる商品や場所を決めていて。ここはまだまだ勉強中です」

入社したてのころと比べて、知識も、任せてもらえる仕事も少しずつ増えてきた。

「入ったばかりのころは、商品知識も1点ずつ完璧に覚えなきゃ、って一人で焦っていました。でもいい意味で急かされない職場だったので、今は自分のペースで蓄えていこうと思っています」

「わたしは、気になったものを実際に自分で使ってみるスタイルが合っています。使いながら『お洗濯はどうするんだろう?』とか『どんなつくり手さんなのかな』って自然と知りたくなって、もっと商品が身近になるんです」

オーガニックコットンの洋服は、肌に優しく着心地がいいこと。ポケットの内側に隠れている、可愛らしいどんぐり柄のプリント…

接客では、お客さまの反応を見ながら何をどう伝えるか考えていく。

「まずは商品そのものをいいなと感じてもらえるように、機能性やデザインをお伝えして。興味を持っていただいたら『アゾフリーという発がん性を伴わない染料を使っています』とか『この写真の皆さんがつくってくれたんですよ』って、お客さまの関心に合わせてお伝えするようにしています」

「長く使えるいいものを選んだり、つくり手さんに想いを馳せたり。フェアトレードっていう言葉をぐいぐい使うよりも、その背景にある考え方や想いを伝えたいなって思っています」

働きはじめて半年。最近は「お店に馴染んでいるね」と言われることも多いそう。

「常連さんのなかには、『眞実ちゃん、会いにきたよ』って言ってくださる方もいらっしゃって。わたしも下のお名前で呼ばせていただいています。シサムではお互いにお名前で呼び合える関係のことを両思いっていうんです」

両思い! そんな親しい間柄になるんですね。

「そうなんです。近くに来たし、ちょっと顔を見に寄って行こうか、って思ってもらえているのかな」

「シサムの商品は長く使えるとか、環境にもいいから気に入っているとか。お客さま一人ひとりが、フェアトレードの想いに共感してくださっている気がして。そんな関わりがすごくいいなって思います」



最後に、代表の水野さんからのメッセージを。

「ここでフェアトレードをはじめて知った方でもいいんです。もし僕たちの考え方に少しでも共感してくれたなら、まずはぜひお話ししてみたいですね」

アイヌ語で、よき隣人という意味の「シサム」。

お店は、そんな血の通った関係をつむぐ場のように感じました。

(2018/10/15 取材 2019/10/7 再取材 遠藤真利奈)

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