求人 NEW

地域のハブを目指して
ゲストハウスを
一からつくろう

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

周囲をかこむ山々に、町を縫うように走る清流。ふもとには田んぼや畑が広がっていて、家々が寄り添うように並んでいる。

福島県・矢祭町

東北地方の最南端に位置する自然豊かなこの町が、今回の舞台です。

矢祭町では今、住民の声をきっかけに、3軒のゲストハウス立ち上げの話が持ち上がっています。

舞台となるのは、個人商店が集まる町の中心部・東舘(ひがしだて)地区、『東北の秘境』とも呼ばれる東山地区、のどかな田園風景が広がる内川地区です。

プロジェクトはまだ始まったばかりで、今はそれぞれの地域の人たちがゲストハウスについて一から学んでいるところ。

そこで本格的にプロジェクトを進めていくために、ゲストハウスの立ち上げから関わる人をそれぞれの地区で募集することになりました。

立ち上げに必要な資金集めや開業準備といったノウハウは、専門家から習得できる体制を町が整えていきます。

特別な資格や経験は必要ありません。地域の人と一緒に本気になって取り組める人を探しています。



東京から電車を乗り継いで、水戸駅へ。ここからは福島県行きの各停電車に乗ってのんびり北へと進んでいく。

東京を発っておよそ3時間半、矢祭町の東館駅に到着。線路の脇には田んぼがどこまでも広がっている。

小さな駅舎をあとにして、駅前通りを歩く。

個人店が並ぶメインロードはのどかな雰囲気。人通りは少なく、シャッターを閉めているお店も多い。

『まちの駅やまつり』で合流したのは、町役場事業課の高橋さん。

福島県の最南端、茨城県との県境にある矢祭町。

住んでいる人から見て、ここはどんな町なんでしょう?

「ひと言で表すと“ザ・田舎”ですね。新幹線の駅、空港、高速道路までいずれも1時間と少し。交通網のはざまにあるので、面的な開発が進んでいないんです」

「チェーン店も少ないし、コンビニも2軒だけ。田舎っぽさがそのまま残っている町ですね。誰でも着飾らずに来てほしいという意味で『東北の勝手口』と名乗っています」

特産品は柚子とイチゴ。ほかにも少量多品目で農作物をつくっていて、どれもおいしいのだそう。

春には桜やツツジが花を咲かせ、秋には山が一斉に色づく。

町には清流・久慈川が流れていて、鮎釣りのメッカとしてもよく知られている。空気が澄んでいるから夜空も美しいのだとか。

「何か個別に特徴を挙げるよりも、全体的な自然がこの町らしさかなって思っています」

そんな町にゲストハウスの話が持ち上がったのは、昨年の冬のこと。

住民から『地域で何か新しいことをはじめたい』と相談が寄せられたことがきっかけだった。

「豊かな自然がそのまま残っている一方で、どの地区もだんだん人が減って、なんとなく元気がなくなって。昔のような賑わいをもう一度取り戻したいけど、何をしたらいいかは分からない。そんな状況でした」

そんなときに出会ったのが、まちのハブとして機能しているゲストハウスだった。

「まちづくりの専門家の話も聞きながら全国の先進事例について学んでいくうちに、地域と人を結びつけているゲストハウスがあると知りました」

人と人の交流が生まれる場として。地域の人が、外から来たお客さんをもてなす場として。さまざまな人が行き交い、活気が生まれているゲストハウスが各地にあった。

「地域の人も巻き込みながら、こんな新しい場をつくっていけたら。矢祭が直面する課題の解決策として、ゲストハウスを導入すべきなんじゃないかと強く思うようになりました」

「この話を地域の人にしてみたら、いろんな人が興味を持ってくれて。この夏からいよいよ動き出したんです」

今は、専門家からゲストハウスの基礎知識を学んだり、各地区の人が集まってどういう場をつくりたいかアイデアを出し合ったりしているところ。

少しずつ体制を整えているとはいえ、地域の人たちはそれぞれ自分の仕事を持っているため、ゲストハウスの立ち上げに専念するのは難しい。

そこで今回、地域おこし協力隊として地域に入り込み、立ち上げから運営まで中心となって担っていく人を募集することになった。

着任後は、町がサポートするかたちで専門家による研修や支援を用意する。そうして活動期間の3年でゲストハウスを軌道に乗せて、任期後もそのまま経営していくことが目標だ。

ただ、0から1を生み出す仕事。自ら起業するぐらいのスタンスでないと難しいと思う。

「そうですね。ゲストハウスの経営者を探す気持ちで募集をかけています」

「それに3つの地域にはそれぞれ特徴があるので、相性を見ながら担当を決められたらと思っていて。今から見に行ってみましょうか」



そういってまず訪れたのは中心部の東舘地区。地区の商店会長、宗田さんに話を聞く。

「もともとうちの地区には、地域の溜まり場のような焼き鳥屋があったんです。その店に行ったら誰かがいて、飲み食いしながらくだらない話や真面目な話をして。それがすごく楽しくてね」

そのお店が昨年末に町外へ移転してしまった。地域にぽっかり穴が空いてしまった感覚だという。

「今回のプロジェクトで、もう一度地域の心とお腹を満たす場所をつくりたいんです」

ゲストハウスには飲食スペースを設けたらどうだろう、誰でも入れるオープンな空間もつくりたい。アイデアは次々に出てくる。

「地域で商売をやっている僕らは、夢を語ることは得意なんだけど、意見は十人十色。新しく来る人には非常に苦労をかけると思います」

個人商店が軒を連ねる東舘地区は、一人ひとりがアイデアマン。いろんな人の話を聞いてまとめていける人がいいかもしれない。

「こっちも、本気でいい場所を一緒につくっていきたい。運命共同体を探しているんです」

「目標は『東舘には、いつも煙突から煙が立ち上っている熱い場所があるぞ』って話題になることですから。とにかく熱い人に来てほしいですね」



中心部をあとにして、次に向かったのは東山地区。

青々とした緑を眺めながら車に揺られること数十分。地区の食事処『滝川の里』にお邪魔する。

話を聞いたのはお店を運営する佐藤さん。温かいお茶と味噌田楽を用意して待ってくれていた。

「ゲストハウス、いいと思うよ。でもどうしたらいいかはまだよくわからないのが正直な気持ちかなあ」

およそ100世帯が暮らす、こぢんまりとした東山地区。高齢化が進み、若者も少しずつ減っている。

一方で、町内でとくに観光客の多い地域でもある。

特徴はなんといっても自然の豊かさ。全長3kmにわたって48もの滝が連続している滝川渓谷遊歩道は、東北最南端の秘境と呼ばれている。その終点にあるのがここ『滝川の里』で、地元産のおいしい十割蕎麦を食べることができると評判なのだそう。

「こんな小さな地区だけど、秋を中心に2万人もお客さんが来るよ。紅葉に新そば祭り、あと野菜直売所もあるからね」

ゲストハウスを立ち上げるには、地区を楽しめるようなソフト面を用意することも肝になると思う。

ここなら豊かな自然を生かして、ほかの季節も楽しめるようなプログラムを考えることもできそうだ。

「難しいことは分かんねえよ。でも、周りの力添えがなきゃやっぱり難しいだろうからね。ここさ住んでみたいって人が来てくれたら協力するよ」



実は、矢祭には移住者として地域に根ざしながらすでに場づくりを進めている人もいる。

内川地区の小泉さん。去年の春に移り住み、今は役場で働いている。

都市部で生まれ育ち、東京で働いていた小泉さん。いつか自然豊かなところで暮らしたいと思っていたときに、矢祭町を知ったそう。

「ネットで『田舎暮らし』と検索したら、一番上にこの町の空き家がヒットしたんです」

試しに見学に来てみると、とても気持ちのいい場所だった。さっそく別荘として購入し、毎週末を矢祭で過ごす生活を2年半続ける。

「地域でも、毎週末草刈りをしている変な子がいるって話題になっていたみたいで(笑)。近所の方が『手伝うか?』って声をかけてくれたんです。このことをきっかけに、地域の人と関わりを持ちはじめました」

「しばらく経って、その方に『仕事があれば移住したい』とぽろっと言ったら、今の仕事を紹介してくれて。こんなに自分を気にかけてくれる方がいる地域なら、という気持ちもあって移住を決めました」

移住1年目から地元の人たちと一緒に農泊事業を立ち上げるなど、どんどん地域に溶け込んでいった小泉さん。

「畑作業や魚のつかみ取りとか、年間を通してイベントを企画していて。今は家族や知り合いへの声かけを通して、村の外からお客さんを呼んでいます」

これがなかなかの人気で、毎月通ってくれる熱心なリピーターもいるという。

「新しくゲストハウスができれば、泊まりたいというお客さんを案内しやすくなると思っていて。もしそこに広いキッチンがあれば、地域のお母さんたちがつくった料理を提供できるな、とか。お互いに助け合いたいなと、いろいろ考えているところです」

今回募集する人と同じように、地域の人たちと場づくりを進めている小泉さん。

先輩として、こんなことを話してくれた。

「ゲストハウスをつくるって、都会でもできることだと思うんです」

たしかに、矢祭はまだ観光地としてあまり知られていない。そんな場所でゲストハウスをひらくのはそう簡単ではないと思う。

「この地域に昔から暮らす人も『何か新しいことをしたいけど、こんな田舎じゃ人も来ない』と思っていたそうなんです。でも私から見たらここは魅力が本当にたくさんあると思っていて」

その魅力、詳しく聞いてみたいです。

「たとえば朝は川のせせらぎで目を覚まして、夜は近所のおばちゃんにご飯をご馳走になって。田植えの直後に水に映る空はすごくきれいですし、泥だらけになって土いじりをするのだってワクワクします」

その感想を地域の人に話したところ、『そんなこと思ったこともなかった』と驚かれたそう。

「この町の人にとって当たり前のことが、外から来た人には価値なんです。『きっとお客さんを呼べるから一緒に何かやってみましょう』っていうやりとりが、農泊事業をはじめたきっかけだったんですよね」

そのプログラムに今、いろんな人が参加してくれている。この地域に魅力があって、求められている証かもしれない。

「本当にすてきな場所で、すてきな方々が大勢いらっしゃるので。ぜひ新しい風を吹き込んでくれる方がいればうれしいです」

「あと、もし興味を持ってくれた人に言うとしたら『悩む時間ももったいないので、一緒に悩みながらつくっていきましょう』ってことですかね」

プロジェクトへの期待や不安は地域それぞれ。まずは一から丁寧に関係性を築いていくことが必要だと思います。

新しいものを生み出す苦労もあるはず。けれど地域の人と試行錯誤しながらつくったゲストハウスは、きっと町の新たな魅力になると感じました。

(2019/08/27 取材 遠藤真利奈)

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