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食べることは生きること
霧島から届ける
豊かな食の物語

「つくり手って、自分の商品や作物の魅力に気づいていないことが意外とあるんです。だから僕らが見つけて、一緒に磨いて発信していく。それがこれからの霧島の食に必要なことだと思うんですよね」

そう話してくれたのは、霧島市役所の今吉さん。

霧島市は、鹿児島県のほぼ真ん中に位置している県内第二の都市。焼酎の名前で「霧島」を知っている人も多いと思います。

このまちの産学官が連携して2017年に立ち上げたのが、霧島ガストロノミー推進協議会。

食に関する活動や特産品のブランド認定、ご当地料理の開発、展開など、霧島の食資源を活かし、地域経済の活性化や交流人口の拡大に取り組んでいる団体です。

今回募集するのは、霧島ガストロノミー推進協議会のホームページ運営に携わりつつ、霧島の食を広く発信していく人。

具体的には、生産者を取材して商品の背景にあるストーリーや魅力を、文章や写真で伝えていく仕事です。



羽田空港から飛行機に乗り、鹿児島を目指す。

実は、鹿児島空港があるのは霧島市内。ほかの地域からもアクセスがいい。

ロビーへ出ると、霧島市役所で働く今吉直樹さんが迎えてくれた。「せっかくだから気持ちの良い場所で話しましょう」と、空港から10分ほど車を走らせ、鳥の鳴き声や川のせせらぎが気持ち良い森のなかで話を聞くことに。

霧島PR課に所属し、霧島の食を広めていく活動に取り組んでいる今吉さん。霧島ガストロノミー推進協議会には立ち上げから関わってきた。

「もともと霧島って、食材や食文化がすごく豊かな土地なんですよ」

全国1位の評価を受けたお茶に、江戸時代から続く製法で生産される黒酢、豚や鶏などのお肉、豊富な果物、各地域に伝わる味噌や料理の文化など、食の魅力がたくさんある。

ただ、全国の産地と同様に課題も抱えている。

「農家をしている友達も、『農業は経済的にしんどい。就農したいって思ってくれる人にも、かわいそうだから勧めたくない』って話していて。食のことに本気で取り組まないと、そのうちつくり手もいなくなってしまう。それですごく危機感を持ちました」

食のブランド化や商品企画など、全国各地で取り組まれている地域おこしの事例を、現地に足を運びながら学んでいった今吉さん。

そのなかで出会ったのが、ガストロノミーという言葉だった。

「ガストロノミーって、簡単に言うと“食を通して豊かに生きること”。霧島はそれを体現できる土地だと思ったんです」

この土地で、なぜこの食材なのか?なぜこの調理方法なのか?歴史や文化、風土にいたるまで知っていくことで、暮らしも豊かになっていく。

食を軸にして、たくさんの人に自然や文化、歴史をまるごと味わってもらいたい。

霧島ガストロノミー推進協議会は、市民とともに「地産地消」「健康志向」「褒め合う食文化」など、霧島の食の方向性を示した『きりしま食の道10カ条』を提唱。これらを基礎に仕組みを整えていった。

10カ条に沿った活動や特産品を「ゲンセン霧島」としてブランド認定する制度や、霧島産食材を使用した包み料理「霧島つつみ」の展開など。

霧島の食を知ってもらうための仕組みを、2年間でじっくりつくり上げてきた。

「ここからが第二フェーズだと思っていて。ようやくつくり上げたこの形を継続するためにも、霧島の食材やつくり手のことを深く知ってもらうことに力を入れていきたいんです」

その第一歩として、霧島ガストロノミー推進協議会のホームページを新たに立ち上げる。今回募集する人は、その運営やコンテンツの作成に関わっていくことになる。

霧島市内の事業者や生産者のもとを訪ねて、商品が生まれた背景やつくる過程などのストーリーを掘り出す。そのストーリーを、ホームページを通じて発信していく。

たとえば、ライター経験者なら自分で記事を書いてもいい。協力者とともにプロデューサーのような立場でコンテンツを管理していくこともできる。

霧島の食の魅力を伝えられる方法を考え、実行していくようなイメージ。

「伝えるって、結局は人と人じゃないですか。だから、そこにいる人がどれだけ想いを持ってやれるかが大事だと思うんです。想いさえあれば、あとは立場が人をつくっていくような気がしていて」

「広報とかの経験も大切だとは思うんですが、一番は僕らの考えや活動に共感して、一緒にポジティブにチャレンジしてくれる。そんな人に来てほしいですね」

地域に入り込んでいろんな人に出会うことができる。食べることが好きな人、つくり手の話を聞きたい人にとっては、面白い仕事だと思う。



とはいえ、どんなふうにそのきっかけをつくればいいのだろう。すると今吉さん、「実際に会いにいってみましょうか」と、ある農家さんのところへ連れて行ってくれた。

到着したのは、えくぼファームという農場。ここでは農薬などの化学物質を使用しない有機野菜をつくっている。

話を聞いたのは、えくぼファーム代表の久保竜也さん。5年前に家族で大阪から移住し、霧島ガストロノミー推進協議会の活動にも関わっている方。

「もともと大阪で営業として働いていたんです。仕事は好きだったんですが、震災をきっかけに食べものをつくっている人の大切さをすごく感じて。自分もつくる人になりたいと思って、親戚が米農家をしていた霧島に移住しました」

「振り返るとすごい行動力だったなってあらためて思いますね(笑)。もちろん悩んだんですけど、悩んでいても進まないなって。やると決めて動いてしまったら、続けていくうちに自然と形って出来上がっていくんだなと、ここに来てすごく感じてます」

最初は市役所主催の研修に参加しながら、農業について学んでいった。現在はネット上で個人のお客さんに有機野菜を販売しつつ、県内外のさまざまなお店にも出荷している。

ここで、「野菜を見に行きましょう!」と、畑を案内してもらうことに。

着いたのは、一面に葉っぱが生い茂っているニンジン畑。そういえば、ニンジンの葉っぱってあんまり見たことがないかも。

「今はまだ時期が早いから、葉が残っているんです。収穫する頃には枯れてしまうので、見れるのは今だけなんですよ。ちょっと食べてみますか?」

目の前で掘り出してくれたのは、かわいらしいサイズのニンジン。

土をはらって食べてみると、少しパセリのような風味がしておいしい。ニンジンはセリ科なので、甘みが出る前の小さいものはパセリに似たさわやかな風味があるそう。

その場で食べることができるのも、有機野菜ならではですね。

「そうなんです。ここに来てもらうとよくわかるんですけど、農薬を使わないと草が生えてくるんですよ。それは人の手で抜いているし、ほかにもいろんな手間をかけている。そのぶん値段は高くなってしまうけど、背景を感じてもらったら、多くの人は納得してくれるんですよね」

「野菜の味や糖度って、温度差による部分が大きいんです。有機野菜だからおいしいというわけじゃなくて、こうやって手間をかけて育てているというストーリーがあるから、おいしいと感じるんだと僕は思っているので。それを知ってほしいなって思います」

えくぼファームでは、有機農業の体験プログラムも積極的に開いており、その活動が「ゲンセン霧島」にブランド認定されている。

すると、隣で聞いていた今吉さん。

「こうやって話を聞いて、感じたことを素直に伝えてもらいたいんです。今はまだパンフレットなどにブランド認定されたものがずらっと並んで紹介されているような感じなので、もっと内容を充実させていきたくて」

「どんな人が、どんな想いでつくっているのか。ニンジンを食べながら、『この葉っぱはね』って話したくなるとか、『今度はこの場所に行ってみたいな』って思ってもらえるような。そんな内容にしていきたいですね」

ブランド認定された事業者同士をつないで、新しい商品や企画を生み出すことも考えているそう。いろんなチャレンジができる環境だと思う。



最後にもう一人紹介したいのが、この日取材に同行してくれていた佐藤悠奈さん。今年の4月から地域おこし協力隊として活動している。

東京の大学でデザインの勉強をしていたという佐藤さん。卒業を控えた年に日本仕事百貨の記事を読んで興味を惹かれ、応募を決めたそう。

「地域おこしに関わる仕事をしたいっていう想いはずっとあったんです。そういう仕事って東京でも関われるとは思うんですが、実際にその場所で暮らして、土地の人と関わりながら取り組みたいと思って。霧島だったら、その働き方ができそうだなと思って応募しました」

大学での経験を活かして、霧島ガストロノミーに関係するポスターやチラシのデザインをしたり、ブランド認定事業者さんたちから頼まれるデザインの仕事を引き受けたり。今回募集する人とも、コンテンツ制作や取材にあたって一緒に動くことが多くなると思う。

佐藤さんは現在、3年ある任期の1年目。任期後も霧島に残ることを考えている。

「実際に住んでみて、霧島って食が豊かで歴史も深いなって、すごく感じるんです。都会とはちがう面白さがあるので、それを楽しめる人だったらすごく合ってるんじゃないかなと思います」

暮らしていくなかで、日々食べ物に向ける意識も変わるだろうし、おいしいものに対するアンテナも広がっていく環境だと思う。食べることが好きな人にとっては、すごくうれしい仕事だろうな。

「いまは今吉さんについていって、いろんな人に会わせてもらっているんです。そこから仕事につながることもあります」

今回募集する人も、まずは今吉さんについて、いろんな人に会うところから。出会いのなかで、ホームページの雰囲気や伝える切り口も、自分から提案していける。

最後に再び今吉さん。

「僕も先輩というよりパートナーみたいな気持ちでありたくて。来てくれる人の人生が豊かになるように伴走できればいいなと思ってます」

いろんな人と関わる仕事。大変なこともあるだろうけど、そのぶんやりがいもあると思います。

日々おいしいものを求めて、食べることばかり考えている。そんな人にとってはたまらない環境なんじゃないかなと思いました。

(2019/10/24 取材 稲本琢仙)

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