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自分だけの働き方を
カスタマイズできる町

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

“日曜日に市場へ出かけ、糸と麻を買ってきた〜”

日曜日から土曜日までの仕事を並べた、『一週間』という歌。

日によって違う役割を果たす。ある意味、いろんな顔を持って働くということ。熊本県の南小国町では、もしかしたらそれに近いワークスタイルが実現できるかもしれません。

今回募集するのは、この町ではじまる起業塾に向けたフィールドワークの参加者。

起業塾といっても、最初から完璧な事業プランを募集するものではありません。

自分のスキルと、町にあるものをバランス良く活かしながら人の輪を広げていくのが、南小国町が目指すローカルベンチャーのあり方。

「デザインと農業」、「経理と木工職人」のように、ときにはいくつかの仕事を掛け持ちしながら、町と自分、どちらにもちょうどいい働き方をカスタマイズしていく。自分だったらこの町でどんなふうに生きていけるか、まずは参加してみて考えるのもアリだと思います。

「半農半Xの進化版みたいな感じです」事前の打ち合わせでは、そんなキーワードも。どんな雰囲気の町なのか、南小国を訪ねてみました。


福岡空港から高速バスで2時間弱。平日にもかかわらず、バスは黒川温泉へ向かうらしい観光客で満席だった。

水の澄んだ川と並走するようにバスは走り、山道を抜けていく。再び家並みが見えてきたころに「南小国町役場前」の停留所に到着。

町を案内してくれたのは、株式会社SMO南小国の安部さん。起業塾の企画やフィールドワークの運営を担っている方。

「SMOはいわゆる地域商社で、ふるさと納税や、観光、人材育成など、この町のハブとして活動してきました。今は、起業を目指す人の受け入れ準備を進めているところなんです」

移住・起業によるまちおこし、ローカルベンチャーの支援に取り組む自治体はほかにもいろいろある。

根っこに深刻な過疎の問題がある場合も多いけど、南小国の場合は少し町の様子が違う気がする。お店もあるし、観光も安定しているように見えます。

「そうですね。この町の場合は、すでに町にある資源や人の時間になじむような事業を一緒につくっていきたいなと思っています」

あか牛など特産となる食材や、品目を問わず幅広く野菜づくりができる農地、温泉など、町の人たちも誇りに思っているような資源がたくさん。

ただ、一部では担い手不足で継続が難しい事業もある。

そこで安部さんたちが考えたのは、外から単純な労働力を求めるのではなく、都市で培ったスキルを活かしながら活躍できる、それぞれの仕事の形を考えていくプログラム。

起業型地域おこし協力隊の制度を利用しながら、起業を目指す人を受け入れたいと考えている。

「そもそも移住して一から仕事をつくるのはハードルが高いですよね。事業が軌道に乗るまでは心細いし。だから、まずは町で事業をしている方にパートナーになってもらって、兼業しながら自分の仕事をつくっていけないかなと思っているんです」

たしかに、起業して収益が安定するまでには時間がいるし、一緒に働くことで町にも溶け込みやすくなりそう。

パートナーになるのは、どんな仕事をしている人たちなんですか。

「仕事としては20種類くらいあって。無農薬でハーブをつくっている方とか、杉の木を切って『温泉手形』をつくっている方とか、なんなら私がそこで働きたい!っていうくらい魅力的な人たちですよ」

「ほかにも蕎麦屋さんなど、後継者を探している人はたくさんいるんです。自分たちで野菜をつくって飲食店を経営している姉弟のカフェもあるので、自分のお店を持ちたいっていう人には学びのチャンスがたくさんあると思います」

どんな野菜でも比較的育てやすい阿蘇の土壌。少量多品目といって、いろんな野菜を幅広く育てる農家さんもいるのだそう。

豊かな自然や、美味しい野菜。

5歳になる子を持つ親としても、この町に来てよかったと安部さんは話す。

「ただ、やっぱり都市部に比べると、幼児教育とか医療福祉の面での安心感は少なくて。そういう仕事に携わってきた経験を生かして、ここで仕事をつくってみたいっていう人も歓迎です」

イベントやワークショップを開きたいなら、町の中でSMOが運営するコワーキングスペースもある。

さらに山を少し上がったところにある廃校には、使えそうな教室がたくさん。

「場所とか仕事の種は本当にたくさんあって。ただ、誰かに『これやって』って言われるのを待っているのでは難しい。町を歩きながら、スキルの活かしどころを自分から探すような気持ちで来てくれたらうれしいですね」


どんな分野でも仕事をつくる機会はあるけれど、農業を希望する場合にはアグリコーディネーターの宮本さんがきっと相談に乗ってくれる。

忙しい農家さんに相談を持ちかけるときには、必ずその仕事を手伝いながら。そんな交渉スタイルを守ってきた宮本さん。

もともとトマトを育てる農家だった経験もあって、農家さんの気持ちを理解しながら、新規就農者や飲食など、さまざまな業態の人同士を繋いできた。


今回の取材でも、宮本さんが原木シイタケを栽培する農園を紹介してくれた。起業に挑戦する人にとっても、掛け持ちできる仕事の選択肢のひとつ。

60年続く農園の3代目の下城さんは現在26歳。「若いほうがいろんな挑戦ができるから」と、昨年お父さんから代替わりをしたのだそう。

「市場に出ているシイタケの93%は、米ぬかとかを混ぜて人工的につくった菌床で育てているんですが、うちのは原木シイタケ。木に直接菌を打ち込んでつくっているんです」

ちょっと匂いを嗅いでみてください、と下城さんはその場でシイタケをひとつ渡してくれた。

あれ、スーパーでよく買うシイタケとは少し違う。ほのかに木の匂いがする。

「食感も違うんです。この前、原木を持って町のイベントに行って、お客さん自身でもいで、焼いて食べてもらいました。そのとき来た500人には原木シイタケの良さを伝えられたと思うので、それを繰り返して1億人を目指しますよ」

シイタケの収穫から体験できる観光農園など、新しい挑戦をはじめようとしている下城さん。

この農園で、何かお手伝いできる仕事ってありますか。

「原木って結構重たくて、木を切ったりするのは危険な作業でもあるので、どの作業をお願いするかは会ってみてから考えたいです。一番は、ここでシイタケづくりを全部覚えて、独立してくれることかなあ。うち一軒では町の名物にはならないので」

一般的には春と秋など、穏やかな気候のときにしか収穫できない原木シイタケ。

下城さんの農園は山間の高冷地にあるので、夏も含めてほぼ一年中出荷ができる。こんなに恵まれた条件はなかなかないのだそう。

「これから新しい人が町に来るなら、いろんな話しがしたいですね。農業に詳しくなくてもいいので、ストレートに疑問をぶつけてほしい。商売とか経営とかの視点で話ができたらいいなと思って。一緒に七輪持ち込んで、焼いて食べて、研究するみたいな」

南小国町では、下城さんの家のように、先代から早々に代を譲り受けた若い事業主も珍しくないという。

自分たちの仕事をどうやってよくしていくか。若い世代を中心に、業種を超えて、そんな話ができたら楽しそう。


翌日訪れた町のコワーキングスペースMOGは、そんな集いの場にもなるはず。

もともと学習塾だった民家を改装したスペースで、大きなテーブルの置かれたミーティングルームとは別に個室がひとつあり、2階はレンタルオフィスになっている。

その一室をオフィスにしているのがデザイナーの伊澤さん。南小国町のおとなりの、小国町から通っているのだそう。

「以前は東京でインハウスデザイナーとして仕事をしていて、そろそろ独立を考えているときに東京という選択肢は思いつかなかった。むしろ東京と真逆の場所の方が可能性があるなって思ったんです」

移住セミナーで小国町のことを知り、家族で移住することを決めたのが3年前。ちょうど、熊本地震の直前だったという。

会社を辞め、荷物もまとめて、あと3日で引越しというタイミング。当時は奥さんも妊娠中で、被災地となった小国町に移住するべきか迷ったという。

「東京にいても震災のニュースばかりで、とりあえず様子を見に来たら、予想に反してみんなすごく元気で、おにぎりをつくったり野菜を分け合ったりしていたんですよ。東京で3.11を体験したときはスーパーで買い占めとかがあったのに、全然違うなって」

ここは生きる力が強い。

そう考えた伊澤さんは予定通り移住を決意。森林組合やJAの製品のブランディング事業に携わった。

「町での仕事をしているうちに、東京のクライアントからも声がかかるようになって、月に一回のペースで東京に行っています。今は2拠点での仕事ですが、今後は海外も含めて多拠点での仕事ができれば良いと考えています」

東京と小国町を往復しながら仕事をしている伊澤さん。

働く環境が変わって、仕事にもいい影響があったのだそう。

「東京にいると、無意識に人がデザインしたものの影響を受けてしまうんですけど、ここではインスピレーションを受けるものが自然や祭りなど土着的のものなので、とても心地よくクリエイティブな活動ができます」

「それに、自然を相手に農業をやっている人と出会って、諦める大切さみたいなことも知りました。煮詰まったときは仕事帰りに温泉に行って、そうすると新しいアイデアが浮かんだりするんですよね」

「最近東京に営業に行くと『ご機嫌だね』って言われるんですよ」と笑う伊澤さん。

仕事って、ニコニコしている人の元に集まってくるものなのかもしれない。

コワーキングスペースMOGの壁には、“一緒にチームを組んで働く人、募集”という伊澤さんからのメッセージも。

取材が終わったのはお昼どき。

ミーティングルームでは、安部さんたちSMOのメンバーやほかの人たちもテーブルを囲んで、ランチを食べながらの打ち合わせがはじまっていた。

最近読んだ本の話や、おすすめの動画の話から、新しいイベントのアイデアが生まれて…。

この町で起業を目指すならきっと、最初から完璧な事業プランはなくても大丈夫だと思う。

自分の関心のあること、得意なことをまずは口に出してみる。それから町の人の声を聞いて、いいところを知って受け入れてみる。

お互いの波長を感じながら、活かし合う。そんな形があっているような気がします。

まずは12月、ツアーで町を訪ねてみてください。

(2019/10/28 取材 高橋佑香子)

※11/16(土)には、記事でも紹介したSMO南小国の安部さんがやってくるしごとバー「いろんな顔を持たナイト」を開催します。ぜひ気軽に足を運んでみてださい。
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