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ちょっと足を止めて
きっかけの1年を
地域で過ごしてみる

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季節を身近に感じられる環境や、満員電車のない暮らし。

都会で生活していると、ふとしたときに浮かんでくる、地方へのあこがれのような気持ち。

今のまま働き続けて、自分の人生これでいいのかな?このモヤモヤ、1年後に答えは出ているだろうか?

同じ1年間なら、まずはちょっと行ってみるのはどうだろう。

今回紹介するのは「緑のふるさと協力隊」というワーキングホリデーのような制度。1年間その地域でのボランティア活動に携わります。

農作業を手伝う日もあれば、お祭りの準備をしたり、近所のおばあちゃんと話しながら干し柿を仕込んだり。地域の人と一緒になって、悩み、考え、動いていく。

何か感じるものがあれば、その後の生き方を変える大きなきっかけになるかもしれません。


緑のふるさと協力隊を主催する地球緑化センターは「緑、人を育む」をテーマに、環境問題に対するさまざまな取り組みを行ってきた団体。

まずは緑のふるさと協力隊がどのようにして始まったのか、協力隊の事業を担当する山岸さんに話を聞いてみる。

「団体が発足したのは1993年。中国での植林活動や子どもたちへの環境教育活動、日本での森林ボランティアなど、環境問題に対して自分たちができることをしようっていう想いからスタートしました」

「活動を続けていくなかで、地球の環境っていうスケールの大きいことだけじゃなく、身近な場所にある緑や、そこに住む人たちとふれ合うことで、他人のことを思いやる気持ちを育む。そんな事業ができたらいいなと、緑のふるさと協力隊が始まったんです」

スタートしてから27年間で、約800人。20代から30代くらいの参加者が農山村に飛び込み、活動をしてきた。

参加した人の動機も十人十色。農山村での生活を経験したいという人もいれば、自分を変えるきっかけとして参加したという人もいる。

「大学生が就活の時期になって『自分が本当にやりたいことはなんだろう』と考えたり、都市部でバリバリ働いている人が、ふと『何のために働いているんだろう』と感じたり。そういう人って結構いるんじゃないかと思うんです」

「緑のふるさと協力隊として地域で活動するなかで、自分が本当にやりたいことや、面白いなって思える仕事、ここで暮らしたいなっていう場所。いろんな出会いや経験から、自分自身の可能性とか価値観を広げてもらいたいなと思っています」

緑のふるさと協力隊では、岩手や群馬、宮崎や沖縄など全国各地の地方自治体に派遣される。どの地域でも、1年を通してさまざまな体験ができるようにプログラムが組まれているそう。

たとえば、田植えや牛の世話など地域の産業のお手伝い、お年寄りや子どもたちとの関わり、お祭りやイベントなど地域行事への参加や、味噌づくりといった地域の手仕事体験など。お手伝いをしながら、農村での生活をまるごと体験できる。

さらに、緑のふるさと協力隊の特徴は、月5万円の生活費が支給されること。住宅や車、水道光熱費などは自治体が負担してくれるという。

「5万円って、決して余裕がある金額ではないと思うんです。でもそのなかで、一生懸命地域のために動いていると、周りの人が助けてくれるんですよね。食材をいただいたり、困ってることはないかって気にしてくれたり。協力隊として来ているのに、協力してもらっているような」

協力隊の存在が、地域を活気づけることにもつながる。協力隊も地域も、一緒になって成長していくような取り組みなのだと思う。


協力隊をサポートしてくれる人は、山岸さんのほかにもう一人。今年から新たに協力隊の担当をしている石川さんも紹介します。

「昨日はある協力隊の方から、車で事故を起こしてしまったっていう電話があって。派遣先は山道が多くて、運転に慣れないと事故につながってしまうことも時々あるんです。幸い大きなケガもなくてよかったなって、ホッとしました」

事故などの緊急の相談はもちろん、活動や暮らしのなかでの困りごとやコミュニケーションの行き違いなど、それぞれの地域で協力隊の人が安心して生活できるよう気を配っているそう。

「協力隊員には、印象に残った経験や心境の変化を、一ヶ月に一度レポートに書いてもらっているんです。なにをしたかというのはもちろん大事なんですけど、『これが楽しかった』とか、『こんなことがあって今落ち込んでる』っていうのも素直に書いてもらうようにしていて」

「電話で話すなかで何気なく聞いてみたり、協力隊員が話しやすいような雰囲気をつくったり。農山村での1年を安心して過ごしてもらえるように、一人ひとりの気持ちに共感して、寄り添っていける関係を目指しています」

レポートは定期的にまとめ、協力隊員みんなに送っているそう。隊員も活動前の事前研修や中間研修で顔を合わせる機会はあるけれど、活動中にもお互いの経験や思いを共有することで、良い刺激になっているという。


具体的にはどんな日々を過ごすことになるのだろう。今回は、実際に協力隊に参加したOBOGのおふたりに話を聞かせてもらうことに。

まず話を聞いたのが、人懐こい笑顔が印象的な中芝さん。協力隊に参加する前は、地元の岡山にいたという。

「田舎で暮らしたいと思って地元に戻ったんですが、なかなかうまくいかないことが多くて…。自分はダメ人間なんだって落ち込んでいたんです」

「そんなときに、ふと『そういえば私、昔は農業やりたいって言ってたな』って思い出して。緑のふるさと協力隊なら農業もできるし、もし派遣された地域が自分に合わなくても1年間なら我慢できそうと思って応募しました」

派遣されたのは、岩手県の一関市。県南に位置する地域で、訪れるまではどこにあるかも知らなかったそう。

「最初はいい子でいなきゃって、ちょっと構えていたところがあったんです。でも暮らしてみると、すっごく面倒見がいい人たちがいて」

面倒見がいい?

「ちゃんと生活できているかって、みんなが気にかけてくれて。近所のおじちゃんが野菜を持ってきてくれたり、家の周りの草刈りをやってくれたり。『そろそろ伸びたやろ』って、しれっと。いつも草を刈ってくれるから、自分で刈ったことが最近までなかったくらい(笑)」

役場と農家の連携で、いろいろな農業体験もできる。用意してもらったプログラムをこなすだけでなく、行く先々でつながった縁を頼りに、中芝さんはさまざまな場所に飛び込んでいった。

「たとえば共進会っていう、肉牛や乳牛の品評会があるんです。お手伝いに行った農家さんに、『共進会で牛を引っ張る役があるんだけど、やってみる?』って誘われて思わず『やってみたいです!』って」

「プログラムにはないことだったんですが、役場の人も快く見守ってくれて。ほかにも、神楽を舞ったり、大きな農業機械を運転させてもらったり。人とのつながりから、いろんなことを体験させてもらいました」

日々いろんな場所に顔を出してお手伝いする立場だからこそ、人とのつながりから生まれる体験もたくさんあるのかもしれない。

「いろんなことを体験させてもらえるぶん、1年間でちょっと足りなかったかなって感じて。神楽もせっかく覚えたから、もう少しやってみたいなとか。あとは、地域の人とのつながりもたくさんできたので、それを活かして何かできるんじゃないかっていう思いもありました」

そして中芝さんは1年間の任期を終えたあと、そのまま一関市に残る選択をした。

「どうしようかなって、ぎりぎりまで悩んだんです。でもいざ残ろうと思って地域の人に話をしたら、借りていた家にそのまま住めるように大家さんと話をしてくれたり、仕事を紹介してくれたり、みんなが助けてくれて」

「『無理に引き止めはしないけど、残りたいって思ってくれるんだったら全力でサポートするよ』って。それはうれしかったですね」

現在は、地域の農業法人とNPO法人のふたつで事務の仕事をしている中芝さん。住んでいる家は昔お店だった建物で、暇なときにはシャッターを開けてお茶飲み場所として人が集まれるようにしているそう。

協力隊として紡いできたつながりを活かし、今も試行錯誤しながら地域のために取り組んでいる。


次に話を聞いた野口さんは、緑のふるさと協力隊の任期後に、地域おこし協力隊として地域に残り、その後地元に戻った経験を持つ方。

大学卒業後に就職し、営業として働いていたそう。定年までこの仕事を続けるのはきついかもしれないと思い始めていたときに、友人が緑のふるさと協力隊に参加したと耳にしたのが最初のきっかけだった。

「もともと地域おこし協力隊も考えていて。お給料がある地域おこし協力隊のほうが、暮らしていくにはいいのかなと思ったんです。でも緑のふるさと協力隊を経験した友人から、『最初に地域へ行くなら緑のふるさと協力隊のほうがいい』とアドバイスをもらい、こちらに決めました」

印象に残っていることを聞いてみると、「これなんですけど…」と、恥ずかしそうに写真を見せてくれた。

「僕の行った山形県小国町では、年に一回、地域の人が歌舞伎の公演をしているんです。最初はなんでこんなに練習しなきゃいけないんだって思いながら参加していたんですけど、やってみると面白くて」

「公演までの4ヶ月間は、地元の方の指導を受けながら精一杯演技の練習をして。そのぶん公演を終えたときは、すごい達成感なんですよ。みんなで練習して、公演をやりきって、そのあとお酒を飲むっていう。お互いによかったねとか、あいつすごかったなとか言い合って」

「その話をしながら飲むお酒…あれはよかったですね」と言いながら微笑む野口さん。

任期後、地域に仕事としても向き合いたいと思い、今度は地域おこし協力隊として残ることを決めた。緑のふるさと協力隊として1年間過ごした経験を踏まえて、地域での様々な業務に携わり、現在は地元である埼玉に戻って働いている。

「10月末に歌舞伎の公演があるんです。今それを見に行くのがすごく楽しみなんですよ。ベタかもしれないですが、第二のふるさとみたいに感じていて」

「残る人も残らない人も、それぞれの人生でいいと思うんです。でもそうやって訪れることができる場所があるんだって心のどこかで思えるのは、自分の拠り所みたいなものになるのかなって」


1年間、自分だったらどんなふうに過ごすだろう。

心になにかが浮かんでいるのなら、一歩目はすでに踏み出しているのかもしれません。

(2019/10/11 取材、2020/11/04 再募集 稲本琢仙)

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