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カルチャーが生まれる場所
蒸留家がいる酒場で
ジンの話をしよう

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店主が好きでやってる。

個人経営の飲食店のおもしろさって、メニューにせよ空間にせよ、「やらされてる」感がないところだと思う。

自由さがブレない、だから似たような好みの人たちが集まって、空間が盛り上がっていく。

虎ノ門に新しく生まれるお店は、そんな雰囲気になりそうです。

お店の主役はクラフトジン。なんと、お店のなかで蒸留をしてその場で提供する。ライブ感あふれる酒場です。

運営するのは、株式会社ウェルカム。DEAN & DELUCAなどいくつもの飲食事業に実績のある会社です。

が、このプロジェクトを進めている人たちは「既定路線じゃなく、とにかくインディペンデントにいきたい」と熱を持って語ります。

今回はホールとキッチンのスタッフ、バーテンダーの募集です。未経験でもいいので、とにかく熱量を持ってこのプロジェクトに飛び込んでくれる人がいいと思います。


詳しい話を聞くために、東京・神宮前にある株式会社ウェルカムの事務所へ。

待っていてくれたのは、プロジェクト責任者の後藤さん。

「まだ公表前なんですけど、来年4月、虎ノ門周辺のビルに新しく飲食のフロアができるんです。うちはそこの一番広いスペースに、クラフトジンのお店を出す。ポットスチルっていう高さ3mくらいの蒸留設備をお店のなかに持ってきて…。今、写真を見せますよ」

新しいプロジェクトについて話す後藤さんは、とても楽しそう。

「八丈島の焼酎と、東京の水や近郊で採れるボタニカルを使って蒸留するんです。レギュラージンのほかに、季節ごとのボタニカルを使って香りを変えたシーズンジンもつくる。店内に蒸留家がいて、ジンをつくっている横でお酒を飲む。そんなお店です」

お店ができるのは、ビジネスの街というイメージも強い虎ノ門。

フロアのテーマは、意外にも「横丁」とのこと。ほかにも、焼き鳥屋やバル、エスニックなどいろんなお店が集まるらしい。

赤提灯の並ぶ狭い路地に、気の張らない仲間が集まってワイワイ飲んでいる。横丁というとそんな庶民的なイメージがある。

「あとは、店主の顔が見えるっていうのもありますよね。ジンをつくる蒸留家だけでなく、キッチンやホール、バーテンダーなどのスタッフも『この人がいないとダメだよね』って思われるようなお店にしたいんですよ」

お店に関して今決まっているのは、東京で採れる原料を使ってクラフトジンをつくることと、そのジンに合わせた料理を出すこと。

バーカウンターと100席ほどを備え、たくさんの人が一緒にジンを楽しむ空間になる。

「あとはシーズンごとに、全国各地の蒸留家ともコラボレーションする。たとえば、期間限定で鹿児島の蒸留家を呼んで、その土地の食材を使った料理を出す。期間中は音楽もその土地にゆかりのものを選んでくる。そんなイベントができたら楽しそうでしょう」

飲食店としてただ収益を上げるだけでなく、ジンというお酒を通してそのストーリーを一緒に楽しむ場をつくる。

そこで出会った人、過ごした時間のなかから文化が生まれるように。今は、そんな発想で企画を組み立てているところ。

これから入る人も、まだまだアイデアを出せるタイミングだと思う。

後藤さんはこれまでも、お店のなかでつくった新鮮なチーズを提供する「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」などの専門店を手がけてきた。

目指しているのは総合的なお店よりも、専門性を深く突き詰めたお店。

サービスとフードと、お酒。それぞれがプロとして話し合って、ひとつのお店をつくっていく。だからこそ、ときには意見がぶつかることもあるかもしれない。

納得していいものを提供するための意見なら、怖がらずストレートにぶつけてほしいと後藤さんは言う。

「僕らがつくりたいのは、まったく新しいブランドなんです。うちの会社に対する安心感とか、おしゃれなイメージとかいらないですよ。『ウェルカムのことはよく知らないけど、八丈島の焼酎でジンをつくるって聞いて、興味津々なんで来ました!』みたいな人が来てほしいね」

大きな会社の一部門としてではなく、自分たちで切り盛りする小さなお店のように。

予算や売り上げのことも、遠慮せずに言い合える。いろんな個性のスタッフが集まって、熱気のある空間をつくっていく。


その中心にあるジンは、どんなものになるんだろう。蒸留家としてお店に立つことになる方に電話をつないでもらった。

後藤さんが「てっちゃん」と呼ぶ一場徹平さんは、現在岐阜県郡上市で蒸留の修行中。

「今郡上に来て2ヶ月半くらいです。蒸留家の辰巳祥平さんの工房で一緒に仕事をしながらジンづくりを学んでいて、今日はできたお酒をタンクに詰め替えたり、度数の調整をしたり、そんな作業をしていました。こっちは山の中なので、もう寒いですよ」

もともと工場だった場所を改装した蒸留所のなかは、ジンの少し甘いようないい香りがするのだそう。

そこで修行をはじめた一場さんは、もともとウェルカムの事業開発部プロジェクトマネージャーとして働いていた。

虎ノ門にできる新しいお店も、最初は企画担当として関わっていたものの、クラフトジンのことを知っていくにつれて「自分でやってみたい」と、自ら蒸留家になることを決めたという。

「はじめて辰巳さんのお酒を飲んだときに、今までに飲んだことのある、いわゆるドライジンとは違った。ボタニカルの抽出方法によって香りが変わるっていうことは今まで知らなかったし、興味が湧いてきて。最近は周りにある植物とかでも『どんな香りがするんだろう?』って、原料として気になるようになりました」

その土地の水と空気がつくり出す香り。

ジンの原料になるのは、ジュニパーベリーという木の実。そこに数種類のボタニカルを加えて、蒸留していく。

柚子や金木犀など、郡上で採れる植物を香りとして取り入れることもあるのだそう。

果物や植物って、蒸留すると味や香りは変わるんですか?

「たとえば、桃のような果肉だと蒸留したものはすぐには匂いが出にくくて、なじんで香りが出るまでに一年くらいかかる。逆にオレンジとかレモンとか、皮を使う場合は匂いが立ちやすいです。そういうことも、実際にやってみてわかるようになりました」

味が気になる…! 実際のお店だったらここで、「ちょっと飲んでみますか?」みたいな展開になるんだろうな。

一場さんだけじゃなくて、ホールで接客するスタッフも一緒に伝える役割を担うわけですね。

「あんまり頻繁に機会はつくれないかもしれないけど、東京での蒸留がはじまったらスタッフみんなで、たとえば金木犀のようなボタニカルを採りに行くのもいいかなと思っています。やっぱり、自分で体験して知るほうが、お客さんにダイレクトに伝えられると思うから」

ジンは、東京の水と原料を使ってつくる予定。

おいしいジンをつくることで、お客さんに「東京にもおいしい水や原料があるんだ」ということを感じてもらえたら、と一場さんは言う。

「虎ノ門って、もともとはオフィスビルがたくさんある街だと思うんですけど、ここ3年くらいで昔の空きビルにベンチャーの人たちが入って、新しい動きが出てきている。お店を訪れる人と僕たちが、一つの共同体として、一緒になってカルチャーをつくっていけるといいかなと思います」

クラフトジン好きや蒸留にまつわるさまざまな趣味嗜好の人たちが、ジンを片手に出会い、まざり合う。

そんなふうにして、新しいカルチャーが生まれていくきっかけの場所になるかもしれない。

ホールで働くスタッフも一緒に楽しみながら、コミュニケーションを促していけるとよさそう。

現場のオペレーションなどを担う、エリアマネージャーの鈴木さんにも話を聞かせてもらった。

「新しくお店をオープンするってことは、絶対に大変なんですよ。メニューとかもこれから固めていく段階だし、スキルがあってもなくても、ここから学んで考えていくことがたくさんある。だから未経験の素人の方でも全然いいですよ」

「大切なのは、同じ思いに共感できるメンバーであること。お酒とか、酒場の雰囲気が好きで、一から一緒につくりたい。その思いがブレなければ大丈夫だと思います」

学生時代からずっとサービスの仕事をしてきて、ウェルカムで飲食に携わりはじめてからも10年になるという鈴木さん。

飲食の現場って、長く続けていくのが難しいという声もよく聞きます。鈴木さんは、飲食やサービスの仕事のどんなところに醍醐味を感じますか。

「それって、いい飲食店の条件とも重なると思うんですが、アドリブ力だと思うんです。マニュアルにはないことでも、思いやりとか、気配りを持って対応する。決まったものを出すだけじゃなくて、お客さんとその場で生まれる空気感を楽しむような」

お客さんとの関わり方を、自分で工夫する楽しさ。

たとえば、その日市場で手に入ったばかりの食材を勧めてみる。お客さんの好みに合わせて、ちょっとメニューをアレンジしてみる。

「常連さんなら『今ちょっと新メニューを考えているんですけど、試食してみてもらえませんか』みたいなやりとりができる、とか。敷居の高いお店ではなくて、デイリーユーズで気軽に立ち寄ってもらえる店にしていきたいですね」

「このジンはこのお料理と合わせるとすごく合いますよっていうペアリングとか、あとは蒸留所でジンをボトリングして持ち帰る『to go』とか、いろんな楽しみ方を提案できたらいいなと思うんです」

楽しみ方、おいしい味わい方は、一通りじゃない。

スタッフの数だけ提案の形があってもいい。まずは、働くメンバー自身がジンの魅力を深掘りし、この場所のファンになって、楽しみを伝染させていく。

「新しい商業施設で、新しいお店で、ここからお酒をつくっていく。いろんな意味で、ほかにはない体験をできる場所だと思うんです。何も経験がない人でも、ここから学びたいという意欲があれば、一緒につくっていけると思いますね」

カルチャーが生まれる場所、それは、純粋に何かを楽しむ熱量のある人たちのいるところのなのだと思います。

(2019/11/13 取材 高橋佑香子)
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