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公園で遊ぼう!
桜の10日と、残りの355日
大きな余白を実験場に

「午後からは公園で遊びたいと思います」

取材前の打ち合わせ、当日の段取りを知らせるメールには、そんな一文が。

学校遠足の連絡事項みたい!と楽しみにしつつ、「まさかそんなことは…」と思って訪ねたら、メールの通りの取材になりました。

実際に走り回ったりはしていないのですが(笑)、今回紹介する仕事、もしかしたら子どものころに公園で遊んだ原体験がヒントになるかもしれません。

募集するのは、茨城県那珂市で活動する地域おこし協力隊。東京ドーム2.5個分の大きな公園を使った観光事業を考えるのがミッションです。合わせて、農業分野で活動する隊員も募集します。



那珂市は茨城県の真ん中よりちょっと北、水戸市やひたちなか市に接しているまち。東京からは電車で1時間半ほどで到着する。

最初に向かったのは、上菅谷という駅から歩いて15分ほどのところにある市役所。静かな住宅街を抜けて大きな道を歩いていく。

那珂市で協力隊を採用するのは今回がはじめて。今年の春に実施が決まってから、半年足らずで募集にこぎつけたのは、政策企画課の古茂田(こもた)さん。

「ゼロベースからめちゃくちゃ研究しました。今、僕はもう寝ても覚めても協力隊のことを考えてますよ」と話す古茂田さんは、とにかく明るい。

初年度になる2020年は、まず観光と農業の分野で協力隊を募集する。

「那珂市の観光協会の仕事は実質的に市の商工観光課の職員が担っているんです。だから今回の協力隊の活動を通じて、最終的には自分で主導して観光協会の運営を担っていけるような人が来てくれるとすごくいいなと思っていて」

自分で観光協会を運営していく。

今までにイベント企画や運営、PRや広報の経験がある人は、そのノウハウを活かせるかもしれない。

ただ、ゼロベースでのスタートだから、ある程度自分で考えて動ける人のほうがよさそうですね。

「そうなんですよ。できればまちのなかにどんどん出て、動いてほしくて。だから何時から何時まで市役所の机で仕事してください、みたいな拘束はしません。勤務日数も週4なので、自由度も高いんです」

「ある程度キャリアがある人を想定しているので、手当の部分も予算取りから頑張りました(笑)。かなり尖った条件だと思いますよ」

自治体によって協力隊に期待される役割はさまざまだけど、那珂市の場合、特に観光担当にはプロジェクトづくりの力が求められる。

具体的には「静峰ふるさと公園」の活性化というのがミッションになる。

公園までは市役所を出て車で10分ほど。

日本桜の名所100選にも選ばれるほど、春にはその広大な敷地にさまざまな種類の桜が花をつけ、市内外から訪れる人でにぎわうらしい。ただ、今日は11月半ば。遊具で遊ぶ子どもたちもまばらで、ひっそりしている。

花はないけれど、園内には綺麗に手入れされた木がたくさん生えている。池などの水辺もあって、これくらい人が少なくても、利用者としては広々して気持ちよさそう。

今のままじゃダメなんですか?

「この公園、親子連れからお年寄りまで多世代が集える拠点とするためにリニューアルした場所なんですね。遊具を入れたり、ノルディックウォークのコースを整備したりしているんですけど、いかんせん交通の便が悪くて集客に課題があって」

桜の季節以外にも、商工観光課の企画で雪遊びや天体観測などのイベントを実施しているものの、まだ年間を通した賑わいは生み出せていない。

この公園がずっと市民のための憩いの場であり続けられるように、収益性のある事業も視野に取り組んでいきたい。

そのためにはもっと本腰を入れて、この公園の活用に取り組んでくれる人が必要なのでは? というのが、今回の協力隊の募集の背景なのだそう。

なるほど、思ったより目標は大きいかも。

これをしてください、という具体的な仕事は決まっていない。とりあえず公園のなかを歩きながら、実際にどんな活動をしていけそうか、ブレストしてみることに。



ここで視察に加わってくれたのが、株式会社えぽっく代表の若松さん。

若松さんは、もともと茨城県の地域おこし協力隊として活動していたOB。今はそのときの活動を事業化して、地域のインターンや副業など、人材コーディネートの仕事をしている。

今回の協力隊の受け入れ条件なども、若松さんがアドバイスしながら決めていったのだそう。

「協力隊って、ほかの自治体の人とかいろんな人と関わりを持ちながら活動したほうがいいと思うんです。地元のなかだけにいると、窮屈に感じることもあると思うので」

若松さんは茨城県内のプレイヤーともつながりが深いので、新しい協力隊員にとっては心強い存在になるはず。

この公園、若松さんだったらどんな活動を提案しますか?

「最初は小規模に、何回か試しながらイベントを続けていくのがいいんじゃないですかね。知り合いのアーティストに声をかけて、音楽イベントをするとか」

たしかに。いきなり大きな収益を出すことを考えるより、まずはこの公園の認知度を上げるイベントの企画やPR、発信から取り組むのがよさそう。

たとえば、静峰ふるさと公園には単体のWebサイトがないので、SNSアカウントをつくって発信するとか。協力隊が着任する春は桜の最盛期だから、スタートするにはもってこいだと思う。

まずはあまり予算をかけずに、というのもポイントかもしれない。

しばらく歩いていくと、小さな建物が見えてきた。

古茂田さん、これは…?

「もともとは農業関係者さんのためにつくった建物なんですけど、今は誰でも使える休憩所っていうことになっていて。ノルディックウォークとかグラウンドゴルフの道具もここで貸し出しをしています」

「ちょっと入りにくいわ〜(笑)」とツッコミを入れる若松さん。

たしかに、カーテンも閉まっているし、一般の人が入っていい場所だと思わないだろうな。

中には和室や給湯設備があって、わりと広い。使いようによっては、もっと活用できそう。

公園にはこんなふうに改善の余地のありそうな設備がちらほら。そのままでは使いづらいけど、工夫次第ではうまく活かせるはず。

公園はとにかく広い。丘陵状の道の一番上にあるグラウンドゴルフのコースを目指しながら、さらにブレストは続く。

高いところから公園の反対側を眺めながら風に吹かれる。気持ちいいなあ、と思っていると、古茂田さんからあるアイデアが。

「あ、サバゲー! サバゲーやろうよ。ここで。山と山で撃ち合うの、よくない?」

「BB弾落ちたらゴミになるからダメだよ」

「じゃあ、肥料にしよう。土に落ちたら肥料になる弾を開発して、サバゲーやるほど桜がきれいになる、みたいな。これ、よくないですか!」

景品は何にする?とか、記事には書けないような冗談も交えつつ「鬼ごっこの聖地化」案は盛り上がる。

そういえば、子どものころはこうやって、何もない公園で楽しく遊ぶ方法をよく考えていたな。

鬼ごっこをビジネスにする。冗談みたいなテーマだけど、企業で普通に働いていたらできない挑戦。地域おこし協力隊の期間中なら、3年間試行錯誤して実現できるかも…?

「あとは、今農家さんたちが『いぃ那珂マルシェ』っていうマルシェを定期的にやっているので、そういう食のイベントをここでやってもいい。そうすると、隊員同士の横のつながりもできるし」



観光と合わせて募集する農業分野の協力隊。たしかにお互いの仕事が重なる部分もあるとよさそう。

マルシェの運営に携わっている、農家の会沢さんにも話を聞かせてもらう。はつらつとした話しぶりの会沢さん。みんなからは「留美さん」と呼ばれている。

「いぃ那珂マルシェっていうのは、私たちが2年前からはじめたもので。今は月1回、図書館でやっているんです。野菜とか、味噌のような加工品、近くのレストランでつくったケーキなんかを並べてね」

ところで、留美さんの畑には見慣れない野菜がたくさんありますね。

「こっちはコールラビ、これはプンタレッラ、これはもものすけ。もものすけはカブの仲間で、こうやって手で皮を剥いて食べられるのよ。食べてみて」

聞きなれない名前に戸惑っている間に、留美さんは手際よく「もものすけ」を剥いて食べさせてくれた。

わ、ジューシーでフルーツみたい。

「夏にはここが全部トウモロコシ畑になるの。白いピュアホワイト。あれも生で食べるのが美味しいんだけど、つくりはじめたころは売れなかった。ただ置いているだけじゃダメね。マルシェに出るのは、試食を通して野菜を知ってもらうためなんですよ」

今は、近郊のレストランからとても重宝がられているという留美さんの野菜。

今後はWebでの販売も考えているものの、日中は畑仕事が忙しい。

協力隊には、マーケティングや販路拡大を一緒に考えてほしいのだそう。

「あとは情報発信。今はかなりレベルが低いですから。SNSで動画とか、どんどん発信してほしい。今日はどこに行って、何を手伝って、こんなふうに野菜ができましたっていうのを毎日のようにあげてくれる人がいると一番いいかな」

「そのためにも、まずは一度農業を体験してほしい。その実感を発信するという意味では、経験のない人のほうが面白いと思います」

農業も観光も、「発信力」というのは共通のキーワードのよう。

魅力を見つけて発信する仕事だから、外部の視点でものを見られる人だとよさそう。地元の人が気づきにくい違和感を指摘してくれるとか。何もかも整った状態ではないけど、だからこそやりがいを感じてくれるような人。

まちづくりって、そういうところのほうがチャンスは多い気がする。

担当である古茂田さんにも、どんな人に来てほしいのか尋ねてみた。

「カチコチのお役所仕事ができるだけの人では何もうまれない。僕は今回の協力隊を、起爆剤にしたいんです!」

「協力隊の経験を生かして起業した若松さんもいるし、留美さんやほかの地域のキーマンとつなぐサポートは僕たちが一緒に考えていく。この公園の仕事を通じて起業してくれるようなスーパーマンが那珂市から出たら最高なんですけどね!」

スーパーマンって、またそんな…。

どこまで本気なのか、古茂田さんはやたら高い目標を課してくる。でも本当は、ちゃんとこの事業の大変さもわかっているはず。

「静峰ふるさと公園」は率直に言って、誰もが子どものころに学校の遠足で行ったことがあるような、郊外の普通の公園だと思う。

ただ、こんなふうに遠慮なく意見をぶつけ合える仲間と、公園を楽しくする仕事。ほかにはない気がする。

めちゃくちゃ楽しいアトラクションがあるわけじゃないけど、誰かが鬼ごっこをはじめたら、だんだん仲間が増えてくるような。公園って本来、そんな場所だったはず。

何もないところで「遊ぶ」を考える仕事。頭で考える前に、もっと本質的なところにヒントがありそうな気がします。

12/6(金)には、公園を一緒に回った那珂市の古茂田さんと、えぽっくの若松さんがリトルトーキョーでしごとバー「賑わう公園つくらナイト」を開催します。本当に鬼ごっこはビジネスにできるのか、など、わいわい話しましょう。

(2019/11/14 取材 高橋佑香子)

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