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満員電車に揺られて通勤していると、「自然豊かな場所でのんびり過ごしたいな」と思うことがあります。焚き火をじっと眺めたり、森のなかを歩いたり。日常の喧騒を離れて、心と体をリセットするような時間を過ごせたら。
そんな都会の企業で働く人たちのニーズを受け、長野県の東部に位置する小さな町・小海町で「憩うまちこうみ」という事業がはじまっています。
森の中でのセラピーウォークや瞑想、焚き火を囲んでのコミュニケーション。
小海の自然を活かした「リ・デザイン セラピー」と呼ばれるプログラムを通じて、本来持っている心と身体の健康を取り戻すことを目指しており、睡眠の改善や意欲の向上といった効果も実証されているそうです。
セラピストを務めるのは、小海町の住民の皆さん。専門家による講習を受け、レベルの高いセラピーを提供しています。
今回はこの事業のマネージャーを募集します。町役場の「憩うまちこうみ」チームの一員として、セラピストとの調整や都市部企業との連携を行う仕事です。3年間は地域おこし協力隊として参画しつつ、任期が終わった後も長くこの事業に携わってくれる人を探しています。
東京駅から北陸新幹線で約1時間半。佐久平駅からJR小海線へ乗り継ぎ、のんびり山々を眺めていると40分ほどで小海駅に到着した。
すぐ近くには千曲(ちくま)川が流れていて、ひんやりとした空気が心地いい。
駅から歩いて10分ほどの場所にある町役場でまずお話を聞いたのは、町長の黒澤さん。
2018年の3月に就任し、町の人たちからは「親方」と呼ばれ親しまれている。
「私は生まれてからずっと小海で暮らしてきました。ここは、自然が多くていいところですよ」
長野県の東部に位置し、八ヶ岳や松原湖など豊かな自然に囲まれている小海町。
夏は避暑地として、冬はスキーをしに多くの観光客が訪れるものの、都心からのアクセスが良いこともあり、日帰りの人が大半なのだそう。
そこで、数々の地域でコンサルティングをおこなってきた株式会社さとゆめとともに、2016年に共同プロジェクトとして始めたのが「憩うまちこうみ」事業だった。
憩うまちこうみ事業の核となる「リ・デザイン セラピー」は、研修や社員旅行などで小海に滞在する協定企業に対して、「リラックス」「コミュニケーション」「メディテーション」「デトックス」の4つの要素で構成された、さまざまなセラピープログラムを提供するというもの。
たとえば1日目は「リラックス」のメニューとして、セラピストと一緒に小海の森や湖畔を歩いたり、夜は満天に広がる星空のもと、焚き火を見ながら社員同士で話をする「コミュニケーション」の時間を過ごしたり。
2日目は、森や高原の教会で行うヨガを通して自分の体や心に目を向ける「メディテーション」。食事は普段の食生活を見直すきっかけとして、小海の食材を使った「デトックス」のメニューを食べてもらう。
こういった一連のセラピープログラムを通じて、参加者は心とからだの状態に気づき、日々の生活を変えるきっかけが生まれる。
「企画書を見たときに、これは絶対に形にしなければいけないと思いましたね。自然を売りにした観光はどこでもやっているけれど、セラピーっていうのは聞いたことがない」
今年の春から受け入れを開始し、東京のIT企業やシステム会社など、協定企業は5社まで増えた。年度末にはさらに2社増える予定だそう。
「企業さんからも『今までにないようないい研修ができた』とか、『いいガス抜きになった』っていう声をいただいています」
「それにこの取り組みは、町民のやりがいにもつながっているんですよ。来てくれた社員さんと実際に関わっているのは、セラピストである町民ですからね」
町民は森林セラピストやヨガセラピスト、町内の宿泊施設や飲食店は食を提供するセラピストとして活躍している。専門的な講義や実技講習ののち、セラピストとして正式に認定され、20代後半から60代まで、現在30名以上の方がセラピストとして活動中とのこと。
町民がセラピストになる仕組みって、すごいですね。
「外から来た人と地元の人が関わる機会って、ほとんどないんですよ。今までになかった交流ができて、町民の皆さんも明るく元気に取り組んでくれています」
プログラム後に、プライベートで小海町を訪れてくれる人も増えているんだとか。
「そのうち、協定企業の社員さんが小海に滞在しながらテレワークで仕事をする、なんてつながりもできるかもしれない。この事業は、小海の未来に向けていろいろな可能性があると感じているんです」
今回募集する事業マネージャーとして現在働いているのが、株式会社さとゆめの小松さん。
地域おこし企業人の制度を活用して、2021年の1月まで「憩うまちこうみ」事業に関わる予定の小松さん。新しく入る人は、まずは1年間小松さんと二人三脚で学んでいく。
企業への営業や広報活動、受け入れ当日の付き添いなど、業務は多岐にわたる。
「人とコミュニケーションをとりながら進めていく仕事が多いなと思います。企業の担当さんから電話を受けて、日程の調整をしてプログラム内容を一緒に考えるとか」
「協定企業さんは、社員がよりよく働けるよう考えている素敵な会社さんばかりで。この町での体験が社員の力になるんじゃないかと思って声をかけてくださる。だから真摯に対応したいし、希望にはできる限り応えたいなと思うんです」
要望があれば、セラピー以外に飯盒炊爨(はんごうすいさん)やゴミ拾いなどのプログラムを用意することもある。チームビルディングや地域貢献など、企業が力を入れたいテーマに合わせてプログラムを組んでいく。
「ときには、難しい相談を企業さんからもらうこともあって」
たとえばどんなことですか?
「農作業体験を4月にやりたい、という依頼を受けたことがありました。ただ、小海の4月って、東京でいう2月ぐらいの感覚。まだ寒くて野菜も育たないし、農作業ができる環境ではないんです」
それはまだできません。そう言ってしまうことは簡単だけど、まずはなんとかして形にできないか考えてみる。
「農作業は難しくても、土に触れて、田舎に来たって思える体験ができたらいいんじゃないかと思って。山菜であれば4月でも芽吹いているから、山菜採りはどうですか?と提案しました」
採れた山菜は天ぷらにして、みんなで食べた。参加者のおいしそうな表情が印象に残っているそう。
「どんな内容でもまずは一旦受けとめて、ノーと言わない。それが企業さんとの信頼関係にもつながってくると思うんです」
また、企業と同様に、セラピストである町民と関わる機会も多い。
スケジュールの確認など事務的なやりとりだけでなく、相談を受けることもあるという。
「事業マネージャーは、セラピストにとって一番身近な存在です。困っていることがあればアドバイスをしたり、思うようなセラピーができなくて落ち込んでいるときは励ましたりすることもあります」
「この事業の主役は、あくまでもセラピストの皆さん。私がサポートすることで、より輝いてくれたらいいなと思っていて。やりがいをもって取り組んでくれている姿を見ると、頑張ってよかったなと感じますね」
悩みや不安に寄り添うことは大切。一方で、マネージャーとして押さえるべきポイントをしっかり押さえておくことも必要だという。
「この事業は、企業からお金をもらってやっているもの。それだけの価値を感じ続けてもらうために、セラピーのクオリティは常に意識しています。セラピストにも、事業が果たす役割はきちんと伝えるようにしているんです」
セラピストと参加者、双方にとっていい場となるよう、間に立ってサポートしていく。
現在、役場のチームは小松さんを入れて4人。役場には異動がつきものなので、役場職員とは違う立場でこの事業に長く関わってくれる人を求めている。
「私が持っている人脈やノウハウは、1年かけてしっかり引き継ぎたいと思っています。そのあとは、新しく来てくれる人がこの事業の主力になる。その意識を持って来てくれたらうれしいですね」
役場の外に出て、最後に話を聞いたのは地域おこし協力隊の高橋さん。「彼は最年少のセラピストなんですよ」と小松さんが紹介してくれた。
夫婦で今年の6月に小海町に移住し、デザイン関係の仕事をしているそう。12月中にセラピストの研修を終えて、来年の春から森林セラピストとしてデビューする予定なんだとか。
「小松さんは、研修のときにセラピーの練習にも付き合ってくれて。セラピストと同じ立場に立ってくれているんだなって感じました」
「セラピストみんなの頼れるお姉さん、なんですよね。不安なことがあったらまず最初に顔が浮かんでくるんです」
そんな小松さんの後任となる事業マネージャー。高橋さんは、どんな人にきてほしいですか。
「笑顔で楽しく会話をしてくれることが一番かなと思っていて。仕事については、チームの皆さんやセラピストもフォローしてくれると思うんです。だから、まずはコミュニケーションをとることが好きな人だといいですね」
移住の先輩として、小海での生活についても聞いてみる。
「町の中には、生活のためのインフラは整っていて。コンビニも近くにあるし、生活面で困ることは特にないですね。でも少し歩けば、田舎の原風景が広がっていますよ」
以前は仕事が終わるのも遅く、夕飯はお菓子だけで済ませる日も多かったそう。
「ここに来てから、時間がゆったり過ぎているように感じます。ご飯をしっかり食べるようになったし、9時にはもう寝ている。人間らしい生活を過ごせるようになりました」
「夜になって窓を開けると、満点の星空が広がっているんですよ。それを見て、幸せだなあと思って」
ゆったりとした時間の流れのためか、町の人たちもおだやかな人が多いんだとか。
「親しみやすい人が多いですね。小海の人はみんな下の名前で呼び合うんですよ。親しい友達以外を下の名前で呼ぶって、小学生ぶりな気がする。距離が近くていいなと思いました」
地域の集まりや行事なども多い。そういう場にためらうことなく顔を出して、町の人と積極的にコミュニケーションをとっていける人だといいのかもしれない。
「同じ移住者として、何か困ったことがあればいつでも相談してください。移住には不安もあると思いますが、仲間がいると思って安心してきてほしいですね」
セラピープログラムのマネージャーと聞くと、何か専門的な資格やスキルがないと難しいと思うかもしれないけど、経験はまったく問いません。
都会に暮らしてきた経験や、そこで得た感覚がプログラムの運営にも活かせると思います。
下の名前を呼びあいながら、なごやかに楽しく会話を交わしていた皆さん。豊かな自然に囲まれて、みんながおだやかに暮らしている町のように感じました。
選考の過程には、小海町での暮らしや実際の業務を体験できるインターンシップの制度もあるようです。興味がわいたら、まずは小海のみなさんに会いに行ってみてください。
(2019/12/03 取材 鈴木花菜)