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なつかしくて、ほっとする
おかえりなさいの場づくり

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島根県出雲市。

縁結びの神様で有名な出雲大社があることで、その名前を知っている人も多いかもしれません。

その出雲市の東部に位置するのが、古い街並みが残る出雲市平田町の木綿街道。

この街道に、元造酒屋(つくりざかや)の建物を活用した宿が12月にオープンしました。

プロジェクトの中心を担っているのは、これまで全国各地で古民家再生を手がけてきた株式会社NOTEと、商業施設の活性化事業などに取り組んできた株式会社サウンドプラン。

2020年には、平田町のほかに出雲市内でさらに2ヶ所の宿をオープンさせる予定。

今回は、それぞれの宿で運営の中心となる運営マネージャーと、料理をつくるシェフを募集します。



羽田空港から飛行機に乗り、出雲空港へ。宿がある平田町は、空港から車で20分ほどの場所にある。

古い街並みが残るこの地域一帯は、かつて木綿の交易で栄えていたことから、木綿街道と呼ばれている。街道沿いには創業100年を超える醤油蔵や酒蔵があり、昔の趣を感じられる。

それらの建物に隣接する形で12月にオープンしたのが、「NIPPONIA出雲平田 木綿街道」。

もともとは石橋酒造という造酒屋だったこの建物。

中に入ると、まず大きな酒樽を再利用してつくった円卓が目に入る。酒蔵に残っていた樽をそのまま使っているらしい。

大きな柱や梁も、当時のまま。表面を触ると、経年変化ですべすべになっていて気持ち良い。長い年月を過ごしてきたことが感じられる。

250年ほどの歴史があったという石橋酒造。2008年に廃業したあとは、多目的に使える公共空間として、また地域の人たちの憩いの場として維持・利活用されてきた。

まず話を聞いたのは、その中心となって活動してきた平井さん。木綿街道振興会というまちづくり団体の専務理事を務めている。

「廃業後、建物は市の所有物になったので、すぐに壊されることはなかったんです。でもこのままでは、歴史ある建物が使われないまま老朽化してしまう。それはもったいないと思って、なんとか活用できないかと考えるようになりました。」

平井さんはまず、国の補助金を元手に、廃墟のように荒れていた建物を補修。地元住民のボランティアも募って、清掃活動を行なった。

毎年開催している木綿街道の町歩きイベントでは、出店やコンサートの会場として利用したり、大学生が古民家活用のフィールドワークで訪れたり。

木綿街道振興会の事務局もここに置いたことで、まちづくり活動の拠点として、次第に地域内外から運営に関わってくれる人の数が増えていった。

しかしその後、消防法や市の条例などにより、イベント会場や事務局として活用し続けることが難しくなってしまう。

「そのとき、関わってくれていた多くの人が応援してくれたんです。署名を集めます!って言ってくれる人もたくさんいて。その気持ちはすっごくうれしかった」

「でも一方で、署名が集まっても結局は法律が変わるわけじゃないっていう現実もあって。みんなの気持ちをうまく形にするにはどうすればいいんだろう…って考えてたときに思いついたのが、“恋するフォーチュンクッキー”だったんですよ」

えっ、AKB48の楽曲の?

「そうそう(笑)。ちょうど当時、“恋チュン踊ってみた”って動画を投稿するブームが始まった頃で。日本中からたくさんの人が参加して踊るっていうコンセプトが、応援してくれるみんなの気持ちを形にするのにちょうどいいんじゃないかって思ったんです」

「あのミュージックビデオって、地域の人や裏方のスタッフも加わって、一緒に踊ってるんです。支えてくれる人がいるって素敵なことなんだなとか、歌詞にある未来はそんなにわるくないよ、ってこととか…。それってまさに、当時の私たちが表現したいことと同じだなって感じたんですよね」

動画を見ながら、「この人はね…」とうれしそうに話してくれる平井さん。地域に住む人や、これまでイベントに協力してくれた人、大学生、建築関係の人など…。木綿街道に関わりのある全国各地の人がそれぞれの場所で踊ってくれた様子を“木綿街道バージョン”としてまとめて、ひとつの動画にした。

その後、動画をきっかけに石橋酒造を知った事業者から、この場所を活用したいという申し出もあったそう。結果的に、縁あって株式会社NOTEとのつながりが生まれ、石橋酒造はNIPPONIAとして生まれ変わることになった。

平井さんの想いは、宿となった今も着実に受け継がれている。

「柱とかを見てもらったらわかるんですが、造酒屋だった頃の姿をできるだけそのまま残してるんですよ。宿というふうに形は変わっても、昔の雰囲気とか、関わってきた人の気持ちを大切にしてくれていることを感じるので、私たちもちゃんと協力してより良い場所にしていきたいなって思います」

平井さんは今後も、宿のマネージャーに地域のことを知ってもらう研修をしたり、宿泊者の朝食提供を地元の人と一緒にしたりと、いろんな形で運営に関わっていくそう。



そんな平井さんたちの想いを受け継いで、宿の運営業務を担当するのが株式会社サウンドプラン。代表の迫中さんに続けて話を聞いた。

普段は本社のある大阪にいて、毎週のように平田町を訪れているという。

関西を中心に、不動産事業や商業施設の管理運営に携わってきたサウンドプラン。どうして宿の運営に関わることになったのでしょう。

「僕らが一番大切にしてきたのは、それぞれの地域独自の魅力を発掘して、光をあてること。単純に売り上げ第一の商業施設をつくるのではなくて、地域の人が喜んでくれるような場所をつくりたいと思っていて。」

「NIPPONIAをつくったNOTEさんも、古民家を残すことで、地域の歴史や文化を伝えていきたいという想いを持っている。その部分で、僕らと親和性があると思ったんです。」

兵庫・丹波篠山に拠点を置く株式会社NOTEは、空き家になった古民家など、地域に眠る資源を活かした地域再生を数多く手がけている会社。

再生・保存だけでもコストがかかってしまう古民家を、単に改修するだけでなく、宿やレストランなど持続可能なビジネスの場として活用する仕組みをつくってきた。

経年で色が不均一に変化した土壁や天井板、傷のある柱。建物や地域の人々の文化や歴史をそのまま体感できる宿をつくり、NIPPONIAブランドとして各地に展開している。今回の宿もそのひとつ。

まずは12月に平田町で一軒目のNIPPONIAをオープン。今後は海側の漁村地域と、出雲大社の近くの2ヶ所で宿をオープンする予定だという。

「平田町は特に、地元の人の熱量がすごいんです。石橋酒造が廃業したあとに何も手を入れてなかったら、廃墟のようになって取り壊されていたかもしれない。平井さんをはじめ多くの人が、掃除をしたり、建物を残す方法を考えたりしてきたからこそ、今回の宿のプロジェクトにつながったわけで。」

「その歴史も泊まる人に伝わったらいいなって思うんです。なのでここで働いてくれる人にも、地域のことを知ってもらいたくて。経験というよりは、地域の一員としてこの街に加わってくれるような、そんな心持ちでいてくれる人だったら、すごく合っていると思います。」



NIPPONIAでは、12月からのオープンにあたって4名のスタッフが働いていて、全員が出雲出身だそう。

工事の現場監督にアパレル販売員、カメラマン、保育士と、それぞれの経歴もさまざま。

安食(あんじき)さんは、前職では現場監督をしていた方。

「みんなで宿のコンセプトを考えたときに、平田町っておばあちゃん家に帰るみたいな、ほっと安心できるような感覚があるよねって話になって。『ただいま』『おかえり』って言い合えるような雰囲気の場所にしようって決めたんです。」

「なのでスタッフも、かっちりとしたホテルマンではなく、それぞれが自然体でいるのが一番だと思っていて。近所の人にこんにちはーって、普通に挨拶できるとか、他愛のない立ち話ができるとか。そういうことのほうが大事だと思うんですよね。」

予約管理やフロント業務、部屋の清掃など。宿を運営する上で必要な基本業務に取り組んでもらいつつ、出雲ならではの体験ができるような仕掛けも一緒に考えていきたい、と安食さん。

たとえば、平田周辺は柿が有名で、その柿を使って柿渋を手作りし、防腐剤として塗布する文化を受け継いでいるそう。

柿渋をつくって塗る作業は想像以上に労力が必要で、街道の人だけでは難しくなっている。その一連の作業をコンテンツ化できれば、旅行者にとっても新鮮な体験になるし、地域の方にとってもうれしいはず。

また街道沿いには、生姜糖づくりや日本酒づくりの体験など、手仕事の体験コンテンツが豊富に存在している。これらを連動させて、宿泊客向けのツアーも組めるかもしれない。

「あとは、石橋酒造でつくっていた日本酒銘柄を復活させることができたら面白いなって思っていて。近くの酒造さんと協力すれば可能かもしれないねって、最近話してたんですよ。」

単純に宿の仕事だけではない、地域を丸ごと舞台にしていろんなことにチャレンジできる環境だと思う。

今回、宿のマネージャーと同時に募集するシェフも、それは同じ。

新鮮な日本海の魚介類、宍道湖(しんじこ)のシジミ、出西(しゅっさい)生姜や島根和牛など。宿泊した人に、地元の食材を生かした料理を提供していきたいそう。

現在は、業務委託で地元の料理人の方が厨房に立っている。引き続き協力してもらいつつ、今後は新しく入る人を中心にメニューなどを考えていきたいとのこと。

ひとりですべてを考えて決めるというよりは、コミュニケーションをとりつつ、土地の良さがもっとも生きる料理を柔軟に考えていける人がいいかもしれない。

「今いる4人のスタッフは、すっごい仲が良いんですよ。新しく来てくれる人とも、家族のような親しい関係性で一緒にやっていけたらいいなって思っていて。」

「みんなで探りながら、こうしようよって提案しあっていくような。そんな雰囲気で一緒に楽しんでいきたいですね」

平田町の宿はオープンしたばかりだし、これから新しくオープンする宿もある。1からつくっていく過程は大変なことも多いと思います。

でも、円卓を囲んでワイワイと楽しそうに話すみなさんの様子を見ていると、それぞれが心から楽しんでいるのが伝わってくる。経歴も、宿で働くことになった経緯もバラバラな4人がこうして集っているのは、縁結びの神様の街として、いろんな人たちを受け入れてきた土地柄も関係しているかもしれません。

土地にゆかりはなくとも、宿で働いた経験がなくても、新しくはじめるにはいい機会だと思います。

(2019/11/25 取材 稲本琢仙)

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