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ひとりで考えるより、
一緒に踏み出してみない?
対話から、思いを形に

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

引き込まれるように、どんどん人が集まってきて、場の熱が高まっていく。

そんな場所をつくるのに欠かせないことって、なんでしょう。

美しい空間やおいしい料理、魅力的なコンテンツ…。いろんな要素があるなかで、その場にいる人の存在はやっぱり大きいと思います。

いきいきと活躍する人たちがいて、そこにいると自分まで元気になる。そんな場所に、人は引き寄せられるのかもしれません。

宮城県富谷(とみや)市。いわゆるベッドタウンのこのまちでは今、市民たちが主体となって、まちを元気にしていく動きが生まれつつあります。

その拠点の一つが、富谷市まちづくり産業交流プラザ「TOMI+(とみぷら)」。市民による起業やまちの活性化を目指してつくられた場所で、対話を基本にした起業塾「富谷塾」の運営などを通じて、市民の思いを形にしていくプラットフォームとして育っています。

さらに同じエリアでは、まちの人たちが活躍する場、そして市内外の人たちが交流し合う場を目指して、観光拠点をつくっている真っ最中。ここには、市民が出店するお店やイベントスペースができる予定です。

今回は、地域おこし協力隊として、富谷塾の企画運営を担うコミュニティマネージャーと、観光拠点の立ち上げを担う観光企画ディレクターを募集します。

 

東京から仙台まで、新幹線でおよそ1時間半。そこから地下鉄とバスを乗り継いで、TOMI+の最寄りの停留所へと向かう。

バスが走る4車線の大きな道路沿いには、自動車販売店や飲食店が並んでいて、その先の小高い土地に新興住宅地が見える。

30分ほどで降車し、停留所から歩いて5分もかからずTOMI+に到着した。

私がここを訪れるのは2回目。2018年7月のオープン直前に取材して以来だ

1階のラウンジには、机を囲んでなにやら相談している人たちの姿。2階には、コワーキングスペースでパソコン作業をする人や、個室のオフィスで働いている人たちがいる。廊下で「お、どうも!」とあいさつを交わす人たちも。

ちゃんとこの場所が活用されているんだな、とうれしくなる。

「おかげさまで、ここにはいろんな人たちが集まってくれているんです」

そう話すのは、TOMI+の立ち上げから関わってきた富谷市産業観光課の今野さん。

仙台市への通勤や通学に便利な富谷市は、ベッドタウンとして人口増加を続けているものの、転入・転出者の入れ替わりが激しいまち。市外にある職場と自宅を行き来するだけの人たちも多く、コミュニティが希薄化しやすいという課題を抱えていた。

「まちに愛着や誇りを持つ人を増やすためには、市民が自分ごととしてまちづくりに関わっていくことが大事。まちの人たちが主体的に声を発して、思いを形にしていく拠点をつくろうと、ここを立ち上げました」

箱をつくっただけでは意味がない。そこではじめたのが、起業支援のプログラム『富谷塾』。

富谷塾はここTOMI+で開かれていて、塾生同士の対話の場づくりをはじめ、事業企画やマーケティングなどが学べるセミナー開催も行っている。

参加条件はシンプルで、「富谷が好き」「何かやってみたい」という気持ちのある人なら誰でも歓迎。しかも参加費は無料なのだそう。

まちづくりや起業に興味のある市民が参加し、徐々に熱気を帯びはじめている。

「私たちが目指しているのは、新しいアイデアや解決したい課題を抱えた人たちが集まり、仲間をつくって、それぞれが一歩踏み出していくような場です」

「まちをよくするためのアイデアだけでなく、個人的な目標、自分の仕事や働き方についてでもいい。まずは思っていることを口に出してみて、対話することに重きをおいています」

コミュニティマネージャーも、市民の対話の輪に加わっていく。参加者の様子をよく見て、必要な場面で相談に乗ったりアドバイスをしたりしていくことになる。

やりたいことや事業プランが見えてきたら、ほかの参加者の前で発表。共感した人同士でグループを組み、プランを磨き上げて形にしていく。

たとえば今までには、どんな塾生がいましたか?

「市外から引っ越してきたある人は、『まちの情報をもっと見つけやすくしたい』と話してくれて。対話を重ねるうちに、地域のいろんなお店やイベントを取材して紹介する、市民目線の生活情報サイトをつくりたいと言って計画しはじめました」

文章を書くのは苦手だということで、今野さんたちはライター講座を企画。外部から講師を招き、ライティングについて学ぶ機会をつくった。

「そうして一人のやる気に火がつくと、まわりで応援する人たちも力が入るんでしょうね。デザインの得意な人が2日でホームページを立ち上げたり、イラストを描ける人がLINEスタンプのデザインを提供してあげたり」

「その思いに応えようと、発案者の方はますますがんばる。仕事や家事育児と両立しながら取材に行って、毎日新しい情報をアップし続けているんですよ」

一人では行動に移せなくても、切磋琢磨しあえる人がいたら、一歩踏み出す勇気が持てる。

コミュニティマネージャーの役割は、その最初のきっかけをつくること。

「手本になるような先輩がふたりいます。彼らのはたらきのおかげもあって、塾生たちがわいわい動き出しているんです」

 

そのうちのひとりが、こちらの木村さん。

木村さんはもともと富谷塾生で、2019年度から塾生をサポートする立場になった方。今は週3日TOMI+で働き、残りは自身の事業やNPOの活動をしているんだとか。

「私たちは、基本はここに常駐して、富谷塾の運営や塾生の相談窓口、イベントやセミナーの企画などを行います」

塾生から相談を受けたときは、2時間ほどかけて一対一で話し込むことも。

「その人が本当にやりたいことって、なかなか表に出てきづらいです。でも、そこを掘り起こすのが私たちの役割だと考えていて」

たとえば…と言って、ある塾生とのエピソードを教えてくれた。

「将来新しいビジネスモデルで独立したい、という人がいて。話を聞いていると、わざわざ会社を辞めなくてもできる気がしたんですね。ただ、そのことを伝えてみても、本人はやっぱり独立してやりたいと言う」

その思いの原点はなんなのか? 木村さんは、相手のしぐさや表情まで丁寧に見ながら、対話していった。

「彼が話しながら何気なく描いていた事業プランの端っこに、謎の絵があったんですよ。でもそれについては何も触れない。なんだろうなと思って聞いてみたら、実は、技術者集団による宇宙ビジネスをやりたいと」

へぇ、宇宙!

「そう。さらに話を聞いていくと、父親の影響を受けて、子どものころから宇宙が大好きで、『今は、種子島宇宙センターにめっちゃ行きたいんですよね』って話してくれたんです」

「そのときの顔が一番いきいきしていたので、『なにか宇宙に関わること、やってみましょうよ』って」

いきなりビジネスの形に落とし込まなくてもいい。できることから実行していくうちに、夢だったことがだんだん現実に近づいていくかもしれない。

木村さんたちは、一人ひとりが内に秘めているやりたいことを掘り起こすため、部活動をつくることにした。

「“宇宙部”をつくったら、興味を持った人たちが集まって。富谷特産のブルーベリーを、国際宇宙ステーションに届けようというプロジェクトが自主的に立ち上がったんです。というのも、石巻市のパプリカが野菜の生食の実証実験に取り入れられているから、それに続けないかって」

県庁に話を聞きに行ってみたところ、ロケット打ち上げの時期や日持ちの条件が合わず、実現は難しいということがわかった。それならスイーツはどうかと、今は次の企画を考えているところなんだそう。

宇宙部のほかにも、動画部、美容部、観光部、古いもの研究会など、20の部活動が発足している。塾生でない人も参加できるので、ふらりとやってくる人も多い。

こうした活動は口コミで広まり、今では140人以上が富谷塾に参加するまでコミュニティが広がってきた。

「十人十色の動機やアイデアが、まだまだ眠っていると思うんです。それらを掘り起こして、どんどん形にしていきたい」

「そのために、まずはコミュニティマネージャーから歩み寄ってみること。そして、自分自身も実験しながら動いていくことが大事かな。そういうなかで、信頼関係が築かれていくと思っています」

 

富谷塾を通じて、地域にはいろんな芽が出はじめている。

観光拠点にその流れをつなぎたいと話すのは、立ち上げに携わっている富谷市企画政策課の菅原さん。

新しくできる施設は、TOMI+から徒歩3分ほどのところに位置し、現在は工事を進めている段階。7月に完成、10月にオープンする予定だ。

「施設名もまだ決定していない段階で、今は仮称で『富谷宿観光交流ステーション』と呼んでいます。富谷宿とは、奥州街道の宿場町のひとつ。しんまち地区というこのエリアに江戸時代に開宿して、今年で400年目を迎える、歴史と文化が根づいた地域なんです」

富谷発祥の地で、まちの新たな魅力をつくり出し、地域を元気にしていきたい。

菅原さんたちは、市民や地域おこし協力隊たちと一緒になって、チャレンジを積み重ねていこうと考えている。

「入居予定のテナントのうち、3つは富谷塾生によるお店なんですよ」

ジェラートのお店と、地域の精肉店がひらく定食屋さん、もう一つは、地元富谷に店を構えたいという中華料理屋さん。

「みなさん、地域の活性化に一肌脱ごう!と声を上げてくれた方たちなんです」

「富谷はベッドタウンで、目立った観光資源がない。じゃあ何を魅力として発信していくか。私は、地域でいきいきと活躍する人たちこそ、富谷の資源だと考えていて」

人が、まちの資源。

「地域の元気な人たちに惹かれて、いろんな人がここを訪れて、関わり合う。そんなふうに、まちの魅力、そして地域で経済を回す仕組みをつくっていくことも、一つの観光のあり方なんじゃないかな」

観光企画ディレクターはオープンに向けて、菅原さんたちと一緒に施設運営の仕組みを考えたり、設備を整えたりしていく。

同時に、コミュニティマネージャーと連携して、イベントや体験プログラムの企画も進める。施設内にはイベントスペースもできるから、塾生たちと一緒にマルシェやライブなんかも企画できそう。

「観光企画ディレクターになる人も、オープンまでのあいだ、富谷塾での対話の場に参加してほしいです。そうしたら、自然と仲間もできてアイデアが広がるだろうし。任期の終わる3年後を見据えた、勉強にもなると思うんです」

「まだ何もないゼロの状況からつくり上げていくことになります。どうやったら人が集まる場になるだろう?と、自分で考えながら実験してみる。人と関わるのが好きで、前向きに取り組める人と一緒に仕事がしたいですね」

富谷市で一歩踏み出しつつある人たちの話を聞いていると、こちらまで背中を押される気持ちになる。

もし、動き出すきっかけを探しているのなら、ここはいい環境だと思います。

(2020/01/16取材 後藤 響子)

2/14(金)〜2/16(日)には、社会人インターンシップ「おためし地域おこし協力隊ツアー」が開催されます。まち巡りや交流会、イベント企画のノウハウを学ぶ講座などを通じて、現地の雰囲気を直に感じられる機会のようですよ。

詳細はこちらからご覧ください。

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