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穏やかな海に、温暖な気候。しまなみ海道のうつくしい景色に、レモンやみかんといった柑橘類、おいしい魚。豊かな自然と食が息づく、瀬戸内しまなみ地域。いま、ここで新しいプロジェクトが動き始めています。
その名も、しまなみサンセバスチャンプロジェクト。

豊かな自然や食文化が息づき、美食の街と呼ばれているスペインのサンセバスチャンをお手本に、食や観光といった切り口で瀬戸内しまなみ一帯を盛り上げていこうというプロジェクトです。
中心となって動いているのは、株式会社ありがとうサービス。今治市を拠点に、飲食店やリサイクルショップのフランチャイズ事業に携わってきました。
今回はプロジェクトメンバーとして、温泉や宿などの施設運営に携わる人と、ハムやチーズなどのものづくりに関わる人を募集します。
まだまだ始まったばかりのプロジェクト。一から一緒につくり上げていくことができる場所だと思います。
今治市へは、東京から飛行機と電車を乗り継いで5時間ほど。
今治駅に着いてまず向かったのは、車で15分ほどの距離にあるサッカースタジアム「ありがとうサービス.夢スタジアム」。

ここは今治市を本拠地とするサッカーチーム、FC今治のホームスタジアムで、ありがとうサービスが投資して2017年に建設された。
特別にクラブハウスに入れていただき、ピッチを見渡せる部屋で話を聞かせてもらうことに。迎えてくれたのが、ありがとうサービスの代表を務める井本さん。

ありがとうサービスは、井本さんが2000年に設立した会社。モスバーガーやトマト&オニオンなどの飲食店や、ブックオフやハードオフといったリサイクルショップのフランチャイズ事業を中心に手がけている。
四国や九州、沖縄を中心に120店舗ほどを運営しており、リユース部門ではカンボジアやタイにも進出しているそう。
「もともとは父親がやっていた今治デパートという会社で、スーパーを運営していたのが最初やったんです。そこからいろんなご縁をもらって、飲食店、リユースと事業が広がっていきました」
飲食店を経営する知り合いが困っているからと、その運営を引き受けたり、新聞に書かれたブックオフの記事を見て、リユースをやってみようと思い立ったり。
スタジアムも、大学時代の後輩にFC今治のオーナーを譲ったことがきっかけで、投資することを決めた。

「人とのつながりや縁を大事に、ここまで進んできて。ひとりじゃおいしいハンバーガーもつくれんし、本を買ったり売ったりすることもできん。みんなに助けていただいて今があるっていうのは忘れたらあかんし、感謝する気持ちを大切にしたいから『ありがとうサービス』っていうんです」
そんな井本さんが、新たに始めようとしているのが「しまなみサンセバスチャンプロジェクト」。
食や自然を活かして瀬戸内しまなみ地域を豊かにしようというプロジェクトとのことだけど、どうして始めようと思ったんだろう。
「しまなみ地域って景観も素晴らしいし、食も豊かで温泉もある。素材は揃ってるし、個々の魅力はあるけど、ちょっとバラバラやなと思っていたんです。ちょうどそのとき、しまなみの大島にあるハム工房や、県内の温浴施設、直売所の運営を引き受けて」
「一つひとつが単独で動くんじゃなくて、全体でビジョンを決めてつなげていったらええなと言っていたら、ある人が『それってサンセバスチャンじゃない?』って教えてくれたんです」
サンセバスチャンはスペインの都市で、人口は今治と同じ約18万人。美しい景観と豊かな食で、世界中から人が訪れる美食の街として知られている。
「行ってみたら本当にいい場所で、たとえばレシピも隠さずに教えあうんです。どこか一つだけが頑張るんじゃなくて、地域全体で魅力を高めていこうとする文化があるからこそ、人が集まる街になったんやなって」
「しまなみ地域も、おいしい食や景観を体験できる場所をつくってつなげていったら、いろんな人が来てくれると思うんです」
プロジェクトの肝となるのは、おいしい食と、ゆったり過ごせる観光施設。
具体的には、運営を引き受けているハム工房や温浴施設。ほかにも、クラフトビールやワインの製造をはじめたり、宿として使えそうな古民家を譲り受けたり。
いまは最初のステップとして、これらの施設を魅力的な場にしていくことを目指している。
そこで今回、総合職として温泉や宿を企画・運営するスタッフと、ハムやチーズなどの製造を担うスタッフを募集することになった。
総合職は、温浴施設の運営スタッフとして、お客さんを迎えるところから。
たとえば、今治市内の鈍川温泉にある温浴施設「鈍川せせらぎ交流館」。
今年リニューアルしたばかりで、館内は昔なつかしい雰囲気の内装で統一され、お菓子やおもちゃを置いて駄菓子屋風に。地元の人や観光客が多く訪れる場所になっている。

今後は、全国各地で「おふろcafé」を手がける温泉道場とも提携して、鈍川温泉以外にも温浴施設を増やしていきたいそう。
「古民家を利用した一棟貸しの宿など、宿泊施設もオープンする予定です。土地だけ確保して、施設の中身を検討中という案件もいくつかあって。日々の運営だけじゃなく、どんな施設をつくるかという部分からも関わってほしいと思ってます」
そしてもうひとつ募集するのが、ものづくりをする人。
ハムやチーズ、ワインにビール…。しまなみの豊かな食文化を生かして、美味しい食べものをつくる仕事だ。

たとえばハムは、大島の「小原ハム」という手づくりハム工房で、職人さんに教わりながら製造を学ぶことができるそう。
あたらしく入る人は、自分の興味をもとに配属先を決めることになるという。

それぞれの施設が軌道に乗ったら、食材を温泉や宿泊施設で提供したり、ものづくりや自然の体験ツアーを組んだりしていく予定。
そうすれば、しまなみのおいしい食事や豊かな自然を、もっと満喫してもらうことができるはず。
「みんなのことを考えて、たくさんの人に喜んでもらう。そういうことが好きな人と一緒に、リラックスできる場所やおいしいものをつくっていきたいと思ってるんよ」
瀬戸内しまなみを盛り上げよう。そんなプロジェクトを面白がってやってきた一人が、中島さん。
ビールづくり担当として、昨年入社した方だ。

「ビールはもともと好きだったんですよ。前職の医療機器会社のときから、素人でも参加できる醸造所の研修に行ったりして、クラフトビールの勉強をしていたんです」
「そんなときに、ブルワーの募集を見つけて。ビールづくりに一から関わることができるのはいいなと思って応募しました」
そしてもう一つ、井本さんと会ったときの印象も、入社するきっかけになったそう。
「面接のときに、やめとけって止められたんですよ(笑)。奥さんと子どもがいる状況で、給料は前職より少なくなる。ええっ…って驚きましたけど、それだけ人のことを考えてくれてるんやなって」
「それに、このプロジェクトを通じて地域がワイワイ賑やかになっていく絵が見えて、楽しそうやなって思ったんですよね。夢物語じゃなく、一緒にかたちにしていきたいなっていうのは、すごく感じてます」
現在は、醸造免許取得のための書類を作成したり、全国各地で行われているビールづくりの研修に参加したりと、準備を進めている段階。

今年の夏には、今治駅から徒歩10分ほどの商店街で、最初のお店をオープンする予定だ。
「まずは愛媛らしく、柑橘類を使ったビールをつくっていきたいなと思っているんです。みかん、ゆず、かぼすとか。いろんな柑橘がとれる場所なので、手づくりのハムやチーズと一緒に月替わりで出せたらいいなって」
「未経験のことばかりで不安もありますけど、いい緊張感です。社長はもちろん、社内の人たちの力も借りながら、一緒によりよいものをつくっていきたいですね」
今回募集する人も、ビールづくりに興味があれば、中島さんと一緒に働くことになる。
「積極的な人がいいと思うんです。ビールやハム、温泉や宿。やれることはたくさんあるので。経験がなくても、一歩踏み出して一緒にチャレンジしていける人がいいのかなと思っていて」
「これをやったらおもしろそうだなってことを社長に話したら、やってみいやって、背中を押してくれる環境なんですよ。そんな雰囲気を一緒に楽しんでやっていけたらいいですね」

取材中も、リユースの店がカンボジアにあるという話から、「カンボジアでビールつくるのもおもしろそうですね」と中島さん。
すると、「それええな」と井本さんが続く。
「向こうで麦とかもつくれるやろうし。その気があるんやったらいっぺんカンボジア行ってこいや。今度カンボジア行ったときに向こうにおる人に言うとくわ」
つくるならどんなビールか、市場はどうか…。ちょっとした“おもしろそう”から、どんどん話が進んでいく。
こんなふうに新しいことが始まっていくのって、刺激的な環境だなあ。
そんなふたりを隣で見守っていたのが、社長室の立花さん。今回のプロジェクトを人事などの面からサポートしている。

「ものづくりや施設運営、プロジェクトデザイン、ほんとに取り組みが幅広くて。ピースはいろいろと揃ってきているので、一緒に面白がってやってくれる人がいいなって思ってます」
今回の募集も、応募してくれた人がどんなことに興味があるか、コミュニケーションを重ねていくなかで、関わり方を決めていきたいそう。
「レールの上をとことこ歩いていくんじゃなく、つくっていかなきゃいけないんですよね。自分で道をつくるのがおもしろいなと思える人がいいんじゃないかな」
「社長も“人としてどうなんや”っていう部分を大事に考えている人なので、人間的にも成長できる場所だと思うんです。もちろん努力しないといけないし、失敗もあると思いますけど、そこから学んでいこうっていう環境なので。本当におもしろいですよ」
しまなみから始まる、新しいチャレンジ。
みなさんの話を聞いていると、人が集い、おいしいものを食べながらよろこんでいる姿が、頭の中に浮かんでくるように感じました。
なんだかおもしろそう。その気持ちが一番のエネルギーになる場所だと思います。
(2020/1/23 取材、2021/9/17 更新 稲本琢仙)