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テストでは測れない
学びや経験を
海まちの学校で

「偏差値や進学先といった一律のものさしで生徒を評価するのは、もうやめないと。生徒一人ひとりがいろんな経験をして、勉強や就職する意味を見つけて、ふるさとを愛する気持ちを育んで卒業する。ここでは、そんな教育をしていきたいんです」

そう話してくれたのは、愛媛県立三瓶高等学校の先生方です。

愛媛県西予(せいよ)市。おだやかな海に面したこのまちの高校に、今年の春、新しい塾が生まれます。

基礎学力をつける学習指導や、地域を舞台にした課題解決学習など。生徒が社会へ踏み出すための力やヒントを授けることが、この塾のミッションです。

今回は、地域おこし協力隊として塾を0からつくっていくスターティングスタッフを募集します。

前向きな気持ちがあれば、教育の経験は問いません。



羽田空港から、飛行機に乗って1時間半。「まもなく着陸します」というアナウンスが流れて窓の外をのぞくと、そこにはおだやかな瀬戸内海が広がっていた。

松山空港を出て、レンタカーに乗り換える。道路沿いにはたくさんの実をつけたみかんの木が連なっている。「さすが愛媛県!」と思いながら車を走らせること、およそ2時間で西予市役所に到着。

市長の管家(かんけ)さんが迎えてくれた。

このまちで生まれ育った管家さん。「海もみかんも、わたしが子どものころから変わらない当たり前の光景やけんね」と笑って話す。

江戸時代の建物が残る町並み、宿場町として栄えた歴史、古くからお遍路さんを受け入れてきた人々。県内有数の米どころで、おいしい日本酒も有名だ。

そんなまちに惹かれてUIターンを決めた人もいる。ドレスデザイナーや和紙作家、そして地域おこし協力隊など、さまざまな人がいるという。

「ただ、やっぱり変わっていったものもあって。それが今回取材してもらう高校です。わたしの学生時代はみんな地域の高校に通っていたんやけど、今は中学生の半分以上が、市外の高校に進んでいるんです」

3つの県立高校をもつ西予市。

野菜や草花について学べる学科や、牛や豚を育てる畜産科など、ユニークな学びを設けている学校もある。

その一方で、市外の学校にも電車で通えるため、より進学率の高い学校や部活の強豪校に年々人気が集まるように。

市内の3校に通う生徒数は、ゆるやかに減りつづけている。

「なかでもとくに強い危機感を持っていたのが、三瓶高校でした」

愛媛県立三瓶高等学校。全校生徒69名と、全日制高校としては県内でもっとも小さな高校だ。

ピーク時には1学年に240人が在籍していたものの、今年の新入生はついに20人を割り込んだ。

来年度からは制度上「分校」となることが決まっていて、新入生が31人を下回る年が3年続くと、募集停止になってしまうという。

「市でも打開策を模索していたなかで、三瓶高校の先生から『生徒の勉強をサポートして、将来についても考えられる公営塾をつくりたい』とアプローチをうけたんです」

「それだけ熱意を持ってくれているんやなって。市として高校をバックアップして、塾をつくることを決めました」



塾が生まれる三瓶という地域は、どんなところだろう。

市役所のある市街地を出て、20分ほど車を走らせる。田んぼや畑が広がるのどかな風景を抜けると、海が見えてきた。

ちょうど夕暮れどき。目の前の海にゆっくりと沈んでいく夕日に、思わず目を奪われる。

車を置いて向かったのは、まちの焼き鳥屋さん。

お店の扉をあけると、「おー、来た来た!」と声をかけられた。三瓶高校の藤原教頭先生だ。

今回の取材のために、PTAや地域に暮らすみなさんにも声をかけ、こうしてざっくばらんに話せる場を設けてくれた。

「三瓶はみかんや魚もうまいんやけど、ここの焼き鳥もとにかく絶品です。景色もきれいやったでしょう? 海も静かで、マリンスポーツに最適。ジオパークにも選ばれているんです」

「生徒たちも、地域のガイドさんに協力してもらいながらジオクルーズガイドを体験したり、三瓶のみかんをつかったお菓子や、地元産の豚肉を巻いた『豚の腹巻きおにぎり』をつくったり。地域に大切に育てられています」

来年度、創立100周年を迎える三瓶高校。

以前に比べて生徒数は減ったものの、生徒一人ひとりが活躍を見せている。

「野球部も他校と連合チームを組まないといけないんやけど、一所懸命練習して、一昨年の秋の県大会では甲子園常連校にも勝って。今年は、陸上競技部の3年生がインターハイに出場したんですよ」

現在は、生徒7人あたりに先生2人がつくようなバランス。

学習進度や希望に応じて少人数制授業やマンツーマン指導をおこなったり、就職希望者には全教員が面接練習をしたりと、サポートはとても手厚い。さらに、ICT教育もいち早く導入している。

「卒業後の進路もさまざまです。今の3年生も、大学でAIを学びたいと国公立大のAOに合格した子もいれば、英語教師を目指す子もいます」

「人数が少ないほど、生徒一人ひとりの顔がわかる。『将来、どうしようか?』ってとことん向き合える。それが三瓶高校のよさなんですよね」

話を聞く限り、三瓶高校は十分魅力ある学校に感じる。

それなのに、三瓶高校を選ぶ生徒は減って、存続の危機にある。そのギャップは、どうして生まれているんでしょう。

「そうやね…。ぼくが思うのは、偏差値や大学進学率っていう一律のものさしで測る教育がまだ当たり前なんやなって。でも、今はまさに教育が大きく変わろうとしているタイミングやと思っているんです」

教育が変わろうとしている?

「そう。『どれだけ知識を得られたか』で生徒を測るんやなくて、これからは『どんな知識や経験をもとに、自分はどう考えたか』を重視しないと。三瓶高校にはその素地が十分にある。そのよさを伸ばして、広めていくために塾をつくりたいと思ったんです」

今年の春に、高校のなかにできる公営塾。今回は、この塾を0からつくっていくスターティングスタッフを募集したい。

塾は、基本的に自学自習スタイル。

三瓶高校の生徒であれば誰でも通えて、放課後、勉強を教えてもらうことができる。

学習指導の面では、各地で高校魅力化プロジェクトの立ち上げを支援してきた株式会社Prima Pinguinoからのサポートも受けられる予定なので、経験はなくても大丈夫。

そして、塾の大事な役割がもう一つ。ここ三瓶を舞台にした地域学習だ。

「三瓶にはこれだけ豊かな自然があるし、オープンな人柄の人が多いけん、大人たちとも協力しながら、この地域の課題を自分たちで見つけて、解決していくような学習もやっていきたいです」

たとえば、三瓶に当たり前にあるみかんや魚。

まちにとって大切な産業である一方で、近年は事業者が減少している。

そもそも三瓶では、なぜ一次産業が中心なのだろう。衰退が始まった理由は?

そんなふうに自分たちが暮らす地域を題材に、地元の大人に話を聞いたり、資料にあたったりしながら、自分たちなりの答えを出していく。

三瓶高校では、1年次から「総合的な探究の時間」を使って三瓶の人口問題をリサーチし、地元企業にインターンシップで入り込んで、その企業のPRビデオを自作するなど、すでに取り組まれていることもある。

また一昨年は、地元の大工さんや主婦の方と一緒に6次産業化にチャレンジ。地元産ヒノキのかんなくずを使って、『かんなフラワー』というフラワーアートを作成した。

すでに高校が地域とのつながりを持っているのは心強いこと。こうした既存の取り組みもヒントに、進めていけるといいかもしれない。

「いろいろと考えるなかで、6次産業化に取り組んだらどうやろうってアイデアが出るかもしれないし、何か新しいPRの方法を考えようってなるかもしれない」

「それこそ偏差値では測れない、本当の生きる力。中学生には『三瓶高校に行きたいな』と、卒業生には『いつか三瓶に戻ってこようかな』と思ってもらえるような高校にしたいです」



三瓶高校は、来年度から全国募集もはじめる。

学校と塾で思い切り学んで、いろんな経験をして。成長していく生徒たちの姿を地域内外に発信することも大切。

地道な積み重ねが三瓶高校の存続にもきっとつながっていくだろうし、なにより生徒たちの自信にもなっていくはずだ。

「うちの娘も、塾を楽しみにしているんですよ」と話すのは、市内で水産業を営む宇都宮さん。

娘さんは、三瓶高校の1年生。

大学進学を視野に勉強しながら、「地域や高校を盛り上げたい」と、生徒会に入って活動したり、学校祭でも「三瓶高校の魅力をもっと発信しよう」と発表したり。

今の自分にできることや、将来の夢を考えている真っ最中だそう。

「ぼくが仕事で、三瓶のアジのブランド化をしていて。そんな姿を見とるけん、わたしも地元のために何かできんかな、ってずっと思っていたみたいです」

「塾ができたら、地域のことや将来についてもまっすぐ向き合える機会をつくってあげられるんやないかなって。好きなことをどんどんやれるとええなって、期待しているんですよ」

地域や高校の声をもとにはじまったプロジェクト。期待がかかるぶん、プレッシャーも大きいはず。

とはいえ、まずは身近なお兄さんお姉さんとして接してくれるスタッフがいるだけで、生徒たちにとってはいい刺激になると思う。

「大学ってこんなところだよとか、世の中にはこんな仕事があるんよとか。まだ16の子やから、いろんな話をどんどん吸収すると思います」

「ずっと顔なじみのなかで育ってきた子たちが、あたらしい人と出会ったらどうなるんやろうって。環境が人を変えることも、きっとあると思うんです」

まずは、生徒一人ひとりと打ち解けるところから始めてみる。たとえ教育現場での経験はなくても、自分の経験を言葉にして伝えていける人なら、きっといい伴走者になれる気がする。

そして三瓶高校での取り組みが軌道に乗れば、ほかの2校への出張授業も始めるそう。そんな横展開も、このまちならではの面白さかもしれない。



一律のものさしでは測れない力。好きなことに向かっていく姿勢。自分で課題を見つけて、解決していくこと。

“生徒一人ひとりに向き合い、個性を伸ばしていこう”という意志が、その根底にはあります。そして、今回の公営塾の立ち上げに関わっている三瓶のみなさんは、そんな意志を共有しながら一歩ずつ進んでいるように感じました。

プロジェクトは、春からの始動に向けて土壌を耕している真っ最中。正解はありません。

ともに挑戦する人を待っています。

(2020/01/16 取材 遠藤真利奈)

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