求人 NEW

持ちつ持たれつ
暮らしとともに歩む
高原トマトの後継者

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

全国には、その土地土地に根づいた産業があります。

農業もそのひとつ。担い手の高齢化や人手不足が進むなか、新しく就農したい人をサポートする仕組みがあまり表立って知られていない現状があります。

興味はあるけれど、どうやって関わり始めたらいいかわからない。

そんな人にとって、今回紹介する仕事は一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。

奈良県宇陀郡曽爾村(そにむら)。

奈良と三重の間に位置するこの村で、地域おこし協力隊として働く人を募集します。

募集するのは、村の特産品である高原トマト農家の後継者。

田舎で生業を持って暮らしていきたい。そんな思いを持っている人にはぴったりの仕事だと思います。



曽爾村へは、三重県の名張駅からバスで1時間ほど。東京方面からだと遠く感じるけれど、大阪からだと2時間弱で行くことができる。

山あいの道をバスに揺られ、曽爾村役場前で下車。役場へ入ると、地域おこし協力隊のサポートを担当している高松さんが迎えてくれた。

「曽爾村では、昔から農業と林業が盛んで。特に農業では、高原野菜としてトマトなどを他県に売り出してるんですよ」

曽爾村は、標高約400メートルの山あいに位置し、水も豊か。寒暖差の大きい気候ときれいな湧き水のおかげで、味の濃いトマトが育つそう。

トマトの栽培は50年ほど前から始まり、最盛期にはトマト農家だけで60軒ほどあったものの、農家の高齢化や後継者不足により、一時は5軒ほどにまで減少してしまった。

最近は地域おこし協力隊制度の活用もあり、若い世代のトマト農家も出てきているところ。今回募集するトマト農家の後継者も、農業振興を現場で担っていくことになる。



「まずはトマト農家の先輩に会いにいきましょうか」と、連れて行ってもらったのは、ハウスがずらっと並んだトマト畑。

2016年に地域おこし協力隊として曽爾村にやってきた中野さんが、雪がちらつくほどの寒さのなかで作業していた。

2年前に協力隊期間を終えて独立した中野さん。

「以前は大阪の銀行で、営業をしていました。土地活用の仕事に関わっていたんですけど、空き家が増えている今の日本で、必要かどうかわからない建物をつくり続けるのって、未来のためにならないんじゃないかと疑問に思うことがあって」

「それよりも、野菜を育てて食べものをつくる農業のほうが、未来のために土地を活かす一番の方法なんじゃないかって思ったんですよね。自分の手で食べるものをつくるって、すごい仕事だなって」

農業を始めるため、移住フェアや地域おこし協力隊の説明会へと足を運ぶうちに、曽爾村のことを知った。

「地元の大阪からも車で2時間弱の距離やし、任期の3年間で農業を学べて、その後の独立に向けたサポートもしてくれる。これはええなって思いました」

曽爾村では、就農を希望する地域おこし協力隊に対して、3年間の育成プログラムを組んでいる。

1年目は、奈良県にある農業大学の短期研修に通いつつ、先輩農家のもとで基本的な作業を学ぶ。2年目になると、先輩農家のハウスを一部まかせてもらいながら、1年間を通じて実践。

そして3年目に自分の畑を持ち、先輩に見守られながら自力で栽培をしていくそう。

「土地も農林業公社の人が一緒に探してくれて、ビニールハウスも建ててくれるんですよ。費用は独立後に補助をいただきながらリース契約で支払っていけばいいので、初期費用がだいぶ抑えられる」

「農業を始めるのに一番大変なことって、農地の準備とハウスの初期投資なんですよね。それをクリアできるように村が集中的にサポートしてくれているのは、すごくありがたいです」

トマト栽培は、3月の種まきからスタート。5月に定植し、7月頭から10月ごろまでは収穫が続く。栽培期間中は、ほぼ毎日畑の管理や収穫作業などを行なっているそう。

一方で冬の期間は、ハウスの片付けや土づくりなど、次の年へ向けた準備の時期。畑でずっと作業があるわけではないので、中野さんは別の仕事をしながら、合間で畑仕事をしているという。

「冬は、和歌山のみかん農家や、奈良県内の酒蔵に行ってお手伝いをしています。農閑期に収入を得るっていうのはもちろん、トマト栽培にも活かせることが多いと思っていて」

たとえば、みかん農家ではおいしいみかんをつくるための土づくりの工夫。酒蔵では、発酵のプロセスを肌で学び、土の環境をよくするためのヒントを得ているそう。

新しく来る人も、農閑期には中野さんのように別の仕事にチャレンジしてみるのもいいかもしれない。中野さんも、自分次第で柔軟な働き方ができるところに惹かれてトマト農家を選んだという。

「やっていることの多くは、はたから見ると地味な作業なんですよ。たとえば、トマトが成長していく段階で出てくる脇芽を、手作業で一つずつ取っていくとか」

「そういう地味な作業を、どれだけコツコツやっていけるかやと思うんですよね。ちゃんと一手間をかけてあげられるかどうか。それが結果としてトマトの味にあらわれてくると思っているので」

真っ赤な色に、甘味と酸味のほどよいバランス。コクがあって、トマトらしいしっかりした味わいが、お客さんから評判だそう。

「箱に詰めると、開けたときにトマトの青っぽい香りがするんですよ。注文してくれる人のなかには、味はもちろん、僕の働き方とか、ほかの分野から取り入れた工夫とか、いろんな要素を踏まえて選んでくれる人もいるんです。それはすごくやりがいになりますね」



ここで中野さんが、「親方」と呼ぶトマト農家の先輩、寺前さんを紹介してくれた。

両親からトマト農家を引き継ぎ、20年以上トマト栽培に携わっている。JAのトマト部会の部会長も務めている方だ。

「曽爾村も過疎化が進んでるし、後継者がいないっていうのは大きな問題やと思うんよ。ただ、何かしていかなあかんっていう思いはあっても、一農家だけやとできることも限られてくる」

「だから国の制度を活用して、外から人が来てくれるのはええことやなって。学校の先生じゃないから100%の正解を教えられるわけじゃないけど、今まではこんなふうにやってきたよっていう経験は伝えることができるから」

栽培の細かいやり方は、それぞれの農家によってさまざま。伝えられたことを受け止めて、自分はどうやって実践していくか。それを考え続けることが大切なのだと思う。

「農家って、『農業が好き』だけではやっていけない、シビアな世界なんよ。ちゃんと収穫できたら収入もしっかりあるけど、逆のときもある。趣味とはちがうっていうことは覚悟して来てほしいかな」

「あとは、曽爾村で暮らすことを楽しんでくれたら、どんな人でもええと思うよ。お祭りとか近所づきあいとか、持ちつ持たれつの関係があってこそ暮らしが成り立つ場所やから。役場も俺らも、最大限受け入れる気持ちがあるからね。そこに溶け込んでくれたらええよね」



取材から1年後、協力隊に赴任して活動しているおふたりにもオンラインで話を聞かせてもらった。

左から高林さんと村山さん。ふたりとも、トマト農家見習いとして寺前さんのもとで研修をしている。

「今は根を引いて枯らしたトマトの樹を燃やす作業を毎日していますね。ここ一ヶ月くらいはずっと外で火をみながら過ごしてます」

そう話す高林さんは、もともと大阪で販売員の仕事をしていた。生まれが奈良だったこともあり、曽爾村の募集に興味を持ったという。

「現地の説明会に行ったときに、寺前さんと初めて話したんです。なんていうのかな、面白いというか… 雰囲気ですかね。お人柄の良さみたいなものを感じて、なんかいいなって」

印象に残っていることを聞いてみると、こんなことを話してくれた。

「しっかり食べやって言われたのをめっちゃ覚えてます(笑)。私は去年の6月から来たんですけど、その時期は苗を運んだり、支柱の束を運んだりといった準備の作業が多くて。販売員時代も大きなコンテナを運んでいたので、体力には自信があったんですよ」

「けど、農業で使う資材の重さとか、外で太陽を浴びながらの作業とか。慣れない作業の大変さに、実際やってみると気づいて。『高林さんペラペラやけど大丈夫? しっかり食べなあかんで』って。心配してもらいながらがんばりましたね」

寺前さんだけでなく、村のいろんな人たちが日々の生活から気にかけてくれるそう。高林さんのようにひとりで移住してきた人にとっても、安心できる環境なのだろうな。

一方、となりで聞いていた村山さんは家族5人で移住してきた。前職では建築業などに携わっていたそう。

「土を触るのが好きで、農業っていいなと思ったのがきっかけですね。家族で来たので、村の人もすごく気にかけてくれて。あいさつをちゃんとするとか、そういった一つひとつのコミュニケーションは、すごく心がけています」

高林さんと村山さんは、今年から研修2年目。

3年目から自分のハウスを持ってのトマト栽培がスタートするので、早い段階から自立する意識で日々の作業に取り組むのが大事だそう。

「出荷するトマトって、色を均一なクオリティに保つことが大事なんです。その分、色が少しわるくて淘汰されてしまうトマトも、かなりたくさんあって」

「いま、その規格外のトマトを活用する方法を高林さんと考えているんです。たとえば加工品にすることができたら、夏だけじゃなく通年で曽爾の高原トマトを提供できる。高林さんとのコンビで、お互いの視点を活かした新しいことも提案していきたいなと思っています」

最近では、ふたりで運営するインスタグラムを開設して、曽爾村での生活やトマト農家の日々を発信しているそう。

トマト栽培を学ぶのはもちろんのこと、どうしたら曽爾村の農業がより良くなるか、たくさんの人に興味を持ってもらえるか。広い視点で考え、行動していくことも大切なんだろうな。

村山さんはどんな人に来てもらいたいですか。

「僕は前職までいくつかの職を経て、曽爾村で農家になる道を選びました。過去に積んだ経験は農作業でもなにかしら活きるし、強みになるんじゃないかなと思いますね。だからある意味、どんな人でも」

すると、高林さんも続く。

「来てみたら、想像以上のことがたくさんあるので。興味とやる気さえあれば、来たらなんとかなる(笑)。だから、どうしようって考え込むより感じてもらうのがいいと思います。ちょっとでも気になったら、ぜひ曽爾村に一度来てほしいです」



一時的に力を貸してもらうだけではなく、曽爾村で長く暮らしたいと思ってもらえるように。

そんな受け入れる土壌があるからこそ、移り住んできた人たちは、自分ごととして村の暮らしに向き合っていけるのだと思います。

3月6日には、現地での説明会もあるそう。興味がある人は、ぜひ一度訪れてみてください。農業以外にも多分野の協力隊が移り住んでいて、いい流れが生まれている場所です。

(2020/2/6 取材、2021/2/1 再編集 稲本琢仙)

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