求人 NEW

地道にコツコツと
好きな人に届ける
日本酒づくり

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

「私たちのお酒を飲んで、おいしいと思ってくれる人がいる。その人たちの顔を想像して、目の前のことに取り組める人だったら、どんな方でも大丈夫だと思うんです」

広島県呉市。

この地で1875年から酒づくりを続けているのが、相原酒造です。今回は、ここで蔵人として酒づくりに携わる人を募集します。

経験は問いません。蔵人というと職人仕事のイメージがありますが、相原酒造ではまったく別の業界から来た人も活躍しています。

一つひとつの作業を丁寧に行い、感覚を磨き上げていく。その積み重ねが、おいしい酒づくりへとつながっていくようです。



広島駅から電車で約1時間。造船所で有名な呉を過ぎ、仁方(にがた)駅まで向かう。片側の車窓には海が広がり、反対側には山並みが続く、自然豊かな地域。

広島の酒どころと言えば西条が有名だけど、相原酒造のある仁方周辺も豊かな資源に恵まれ、昔から醤油や酒づくりが盛んに行われてきた。

相原酒造があるのは、仁方駅から歩いて10分ほどの場所。建物に近づくと、甘い香りがふんわり漂ってくる。

相原酒造の代表的な銘柄が「雨後の月」。地元で愛され全国にも根強いファンを持つお酒で、酒蔵が酒づくりの技術を競い合う全国新酒鑑評会では、現在9年連続で金賞を受賞している。

「続けば続くほど、毎年ハードルが上がっていくんやけどね(笑)」

そう話すのは、相原酒造の4代目である相原準一郎さん。

「山田錦」をはじめ、最高峰といわれる酒米を吟味して使用している相原酒造。

米を低温でゆっくり発酵させ、特有の香りを醸造させる。「吟醸づくり」とよばれる伝統的な手法の酒づくりは、すべて蔵人たちの手作業によるもの。

手間暇かけたお酒は、キレと飲みやすさが特徴で、ふだん日本酒を飲まない人でも楽しめるそう。

「雨後の月のコンセプトは、上品・きれい・透明感なんです。華やかな香りと、すっきりとした雑味のない味。つくっている自分が言うのもなんですが、とてもおいしいですよ」

そんな準一郎さんが会社を引き継いだのは1980年のこと。

当時はCMなどで高い知名度をもつ大手メーカーの酒が人気で、地方の酒蔵にとっては苦しい時代だった。継いだはいいものの、このまま酒づくりを続けていけるのか。準一郎さんはとても悩んだという。

「価格を下げて売ろうかとも考えましたが、そのためには原料である酒米の質を下げないといけない。そうすると味に直結するんです。自分たちがおいしいと思えないものをつくるんじゃ、酒づくりをする意味がない」

会社を畳むことも視野に入れていたとき、全国新酒鑑評会で「雨後の月」が数年ぶりに金賞を受賞。苦しいなかにも、わずかな光が見えた。

「金賞をとってもすぐにお酒が売れるわけじゃないんですよ。でもまあとったからにはもうちょっとがんばろうかって続けていったら、だんだん安定して金賞をいただけるようになって、いろんな酒屋さんから”取引させてくれ”と連絡が来るようになったんです」

金賞をとる酒蔵のお酒だったら、お客さんにも売れるだろう。そんな思惑から、味や酒づくりのこだわりとは関係なく、取引を持ちかけられる機会が増えていった。

「最初はありがたく売っていたんですが、だんだんとそれって違うなと思ってしまったんですよね」

違う、というのは?

「味やこだわりを見てくれない酒屋さんに売ってもらっても、ぼくらのつくるお酒が本当に好きな人には届かないんじゃないかって」

「ちゃんと評価してくれた酒屋さんは商品を大切に扱ってくれる。だからお客さんに良い状態でお酒を届けられる。それで取引する酒屋さんも選ぶようになりました」

信頼できる酒屋さんにだけ卸すことを続けてきたから、雨後の月はリピーターが多いそう。

「心からおいしいと思えるお酒づくりをして、その味を好きでいてくれる人に飲んでもらいたい。それが一番の想いなんです」

「そのためには、酒づくりも原料からこだわって、手間と時間をかける。働く人にとってはたいへんな仕事も多いと思いますが、その積み重ねが飲む人のよろこびにつながると信じています」



相原酒造では、どんなふうに酒づくりが行われているんだろう。

蔵のなかを案内してくれたのは、5代目となる相原章吾さん。

章吾さんは酒づくりの工程のなかで、「洗米」と「酒母」をまかされている。

「洗米」の作業を見学させてもらった。

洗米した酒米を水につけ、必要な量だけ水分を吸収させるこの作業。蓄積したデータを参考にしながら、最適なタイミングを目で見極め引き上げていく。

「洗い始めは毎回緊張します。米の品種ごとに水の吸い方が違うし、その日の気温でも変わってくるので」

相原酒造で扱う酒米の品種は15種類。産地や精米歩合の違いを含めると40種類にものぼり、使う用途によって毎回吸水率を変えていく。

一回目の米が引き上がった。目標の吸水率に対してその差なんと約0.1%。章吾さんもひとまずほっとした様子だ。

「たとえば吸水率が0.2%違うだけで蒸上がりの質感が変わってしまうんです。時間にすると1桁秒のシビアな世界。ここの出来次第でそのあとの工程がスムーズにいくか決まるといっても過言じゃありません」

繊細な味の背景には、精密な手仕事がある。

章吾さんが仕上げた米は蒸され、麹と酒母がつくられる。それらと蒸米と水を合わせて発酵させると醪(もろみ)になり、熟成した醪を搾ることで日本酒ができあがる。

大学を卒業して2年ほど東京で働いたのち、3年前に家業である相原酒造に戻ってきた章吾さん。

酒づくりの知識はまったくなかったため、最初は先輩たちの作業を見て覚えるところから。清掃や蒸米の運搬など、一つひとつ丁寧に取り組み、入社2年目から洗米をまかされた。

「ちょうど設備がガラッと変わったタイミングで、いままでのデータが参考にならなくなってしまって。自分じゃ良し悪しもわからなかったので、まずは杜氏の指示通りに吸水して、そのあとの工程からフィードバックして」

「最初はムラが出てしまうこともありました。米の種類によっては、うまくできるようになっても、すぐその米の期間が終わっちゃうこともあって、なんだよって(笑)。やっぱりどんな米でも一発目からベストの蒸米にしたいじゃないですか」

それからデータのとり方を工夫し、細かい条件を調整して地道に最良の方法を探していったそう。同時にいろいろな分析値と自分の直感をむすびつけ、感覚を磨いていった。

「今では自分である程度狙った結果を出せるようになりました。でも何がベストなのかってところは、ずっと探していくものなんですよね」



相原酒造では8人という少人数で酒づくりをしている。お互いにフォローできるよう、さまざまな仕事に携わっているそう。

入社して20年になるというベテラン蔵人の大西さんは、醪の管理などを担当している。

以前は大手の酒造メーカーに勤めていたという大西さん。相原酒造に来て、はじめて酒づくりの現場に関わったという。

「最初はねえ、大変でしたよ(笑)。夜も眠れないくらいで。なんていうかね…酒づくりって、こわいんです」

こわい。

「たとえば、麹の温度が上がらなかったらどうしよう、醪がちゃんと湧いてこなかったらどうしようって不安になる。昔は蔵人が泊まり込みで酒の世話をしてたんです。2時間おきに麹と醪の様子を見にいって、温度を確認して」

「酒づくりって、作業としては毎日同じことをするんですよ。でも、できあがるお酒は全部ちがうんです。タンク一つずつ、もっと言うと麹ひとつずつちがう。気温や湿度、米の状態…いろんな不確定要素をうまく調整して、最後に日本酒ができあがるんです」

「毎回新鮮で、だからこそ30年やっても飽きないですね」と話す大西さん。

同じ作業を日々続ける根気も必要だし、その瞬間ごとの変化を感じる注意力も大切なのだと思う。


「酒づくりを知らない人のほうが、かえって素直に知識や経験を吸収できるかもしれませんね。地味な作業も多いので、それをひたむきにできるといいなって思います」

すると隣で聞いていた章吾さんが続ける。

「掃除とか、一見地味なことが酒づくりで一番重要だったりするんです。でもそういうことって、お酒をつくっている実感がわきづらくて、もしかしたらつまらないと思ってしまうこともあるかもしれない」

「大事なのは、どんなことでも根拠をもってやることだと思うんです。この作業はなんの意味があるんだろう?とか、なんで他のやり方じゃだめなんだろう?って調べたり考えたり。そうするうちに、酒づくりの歴史や醸造理論、職人の勘所に触れることができる。そっからおもしろくなってくるんですよね」



そんなふたりの話を真剣な眼差しで聞いていたのが、入社2年目の深川さん。もともと建築関係の仕事をしていて、ものづくりへの興味をきっかけに、日本酒づくりにも魅力を感じたそう。

「入社前のイメージは、感覚や経験が必要で力仕事もあるっていう職人的な印象でした。でも実際には、感覚の部分を数値化したり、効率化できる部分は積極的に機械を入れたりしていて、それはいい意味でギャップでしたね」

器具の洗浄や作業の準備にはじまり、仕込みや麹づくりに携わってきた。

2年目になって、醪を櫂で混ぜる担当をしたり、洗米をまかされたりすることも増えてきた。

「日々の作業は、教われば問題なくできます。でも洗米や麹のことに関わらせてもらうと、簡単にはできなくて」

「そういうのって、やり方を覚えたらできることじゃなくて。五感を研ぎ澄ませて頭を使って判断することが必要になる。それはやっていて面白いしやりがいがありますね」

目の前の作業一つひとつに、どれだけ一生懸命向き合うことができるか。その姿勢が酒づくりには大切なのだと思う。

「入社してすぐ杜氏に言われたことがすごく印象に残っていて。『気がついて“やる”人になれるかが大事』って言ってもらったんです」

気がついて“やる”人、ですか。

「どんなことでもいいんです。ゴミが落ちてるとか、ちょっとした汚れが残っているとか。日常のなかでそういうことに気がつかない人もいるし、気がついてもそのままにする人もいる。たぶんそのままにしとく人って多いんですよね」

「だから、自ら進んでやるまでいかなくても、気がついたら行動に移せる人になるのが大事だって。自分がやれてるかはわからないですけど、まかせてもらえる仕事の種類も増えてきたなかで、そういうことが大事なんやなって実感してます」

まだまだなんですけどね、と笑う深川さん。未経験からはじめた蔵人の仕事はどうですか?

「たのしいですよ。一つひとつの作業の積み重ねでお酒ができるっていうのは、やりがいがあります」

「なにより、つくったお酒を飲むときは格別ですよね(笑)。一口飲んで、これをつくったんだよなあって。やりたかったのはこういうことだったのかなって、そう思います」

淡々と、日々試行錯誤するものづくり。

一緒に歩んでいく仲間をさがしています。

(2020/01/10 取材 稲本琢仙)

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