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想いを原動力に
まちの宝は
生まれ変わる

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鹿児島県いちき串木野(いちきくしきの)市。

鹿児島の西部に位置する、人口約3万人の小さなまちです。

このまちで、53年間にわたり地元のみなさんに愛され続けてきたのが、国民宿舎「吹上浜荘(ふきあげはまそう)」。

宿泊設備だけでなく、宴会場やレストランもあり、ここで結婚式を挙げる人も多かったそう。

そんな吹上浜荘は、鹿児島市に本社を構える有限会社コロンによって、今年の春にグランピング施設へと生まれ変わります。

今回は、この施設で働くスタッフを募集します。宿泊業の経験がある人ならすぐ力になれると思うし、未経験でも大丈夫。5月のプレオープンに向けて、これから施設ができていくところです。

「昔ながらの宿舎が、IT企業によってグランピング施設になる」

そんな新しい挑戦に興味を持ったら、ぜひ読み進めてみてください。

 

羽田空港から2時間。到着した鹿児島空港には、鹿児島の象徴である桜島のモニュメントと天然温泉の足湯があった。近づいてみると、湯気が立っていてあったかい。

調べてみたところ、空港に足湯があるのはここだけなんだとか。全国2位の源泉数を誇る温泉王国の鹿児島では、貸切風呂がある施設へ家族で遊びに行くことも多いそう。

グランピング施設ができるいちき串木野市までは、空港からさらに車で1時間ほど。

今回は、施設の企画を担当しているコロンの鳥居さんが迎えにきてくれた。到着するまでのあいだ、会社や施設について教えてもらうことに。

「コロンは、1998年に鹿児島で設立した会社です。モバイル向けのコミュニティサイトの運営から始まり、ブログ、SNSへとメディアを変えてきました」

サイト運営のほかにも、ソーシャルゲームプラットフォームの企画や運営、太陽光事業など、さまざまな分野に取り組んできたコロン。

東京や福岡、北海道にも支社ができ、会社の地盤も固まってきたなか、次に取り組もうと思ったのが、リアルな場でのコミュニティづくりだった。

「僕たちは、鹿児島に育ててもらった企業。地域に恩返しをしたいと感じていて。そこで考えたのが、『みんなの村構想』という、地域に根付く施設づくりでした」

「鹿児島では人口減少が進んで、昔ながらのお店が次々と閉まっている。昔の活気がなくなりつつあるなかで、何か元気を取り戻せるような場所があればと思っていたんです」

そんなときに耳にしたのが、いちき串木野市からの「吹上浜荘事業譲渡」の話。

宿舎を解体し、その跡地を使って新しい宿泊施設を運営してくれる会社を募集しているところだった。コロンはそこに名乗りをあげ、事業を任されることが決まった。

新しい施設の構想を進めるために、取り壊しまでの1年間、鳥居さんは吹上浜荘の運営に携わったそう。

「会社のある鹿児島市から、週に2〜3回は通いましたね。まちの集まりにも積極的に顔を出して。そうしているうちに、吹上浜荘が地元の人にとってすごく大切な場所であることがわかったんです」

1965年にオープンした吹上浜荘は、宿泊設備に加えて宴会場やレストラン、日帰り温泉も備えていた。

地元の飲み会といえば、吹上浜荘の宴会場。布団を敷ける広いスペースもあるので、保育園のお泊まり保育や高校の合宿でも使われていたし、昔は結婚式の会場にもなっていた。

「『実家に帰省すると、必ず家族でここのレストランに来てたんです』と話してくれるお客さんもいました。『ここから見える夕陽がすごく綺麗で、それを見るのが毎回楽しみだった』って」

まちの人たちの思い出がいっぱいに詰まった吹上浜荘。最終営業日に開催したクロージングセレモニーには、2000人を超える人が集まった。

「集まってくれた人や、長年ここで働いていた人たちの涙。市長の『まちの宝をお渡しします』という言葉は忘れられないです。より一層、新しい施設もいい場所にしなければという想いが強くなりました」

1年間、運営にも携わり、地元の人と深く関係を築いてきたからこそ、「吹上浜荘に込められた想いが自分ごととして伝わってきた」と鳥居さん。その言葉には、プレッシャーとわくわくする気持ちの両方がこもっているように感じた。

しばらくして、車は吹上浜荘のあった場所に到着。現在は完全に建物が取り壊され、更地になっていた。

そこにあったはずの風景を想像すると寂しい気持ちにもなるけれど、関わってきた人たちの想いを継いで新たにチャレンジできると思うと楽しみだし、何より心強い。

 

場所を移して話を聞いたのは、コロン鹿児島支社長の植田さん。

「吹上浜荘は、地元の人に愛されていた一方で、近年は経営がかなり厳しかったという現実もあって。長く続けていくためにも、新しい施設はもっと外からも人が来てくれる場所にしていきたいんです」

単に吹上浜荘と同じような場所をつくるのではなく、ここから新しい風を吹かせていきたい。プロジェクトメンバー5人で、いろいろな案を考えた。

どの案にも共通していたのが、吹上浜荘で初めて見た夕陽の光景を大事にしよう、ということ。

「吹上浜の白い砂浜と海面に、夕陽が反射してキラキラと輝くんです。同じ鹿児島に住んでいても、海沿いの地域でないと海に沈む夕陽はなかなか見られないんですよね」

「だから『こんな近くに、日常を忘れられるような場所があったんだ』って感動して。お客さんにも、『ここに来れば非日常を味わえる』と感じてもらえる場所にしようと思いました」

たくさんの宿泊施設を視察するなかで、行き着いた答えがグランピングだった。

宿泊棟や宴会場、レストランなどがあるホテルエリアのほか、テント、トレーラーハウスなど、さまざまなエリアからなる複合型の滞在施設。

さらには、キャンプファイヤーやBBQができるエリアや、屋外シアターも開設予定だという。

夕陽を見ながらのんびりご飯を食べたり、焚き火のもとでゆっくり語りあったり。日常の喧騒を忘れて、穏やかな時間を過ごせそう。

宿泊施設の開発は、今回が初めてだというみなさん。未経験のなかでここまで計画を進めるのは、大変だったんじゃないですか。

「そうですね。最初はわからないことばかりでした。そんなとき、地元の人たちがすごく協力してくれて。吹上浜荘でも使われていた寝具の会社を紹介してくれたり、施設の設備についてアドバイスをくれたり。そういうやりとりを通じて、このまちのよさを、より感じることができましたね」

「みなさん、新しい施設ができるのが楽しみだって言ってくれるんです。最初は、自分たちにできるのか不安もあったけれど、そういう声を聞いているうちに、私も完成するのがすごく楽しみになってきました」

「僕たちにとっても初めての取り組みだから、マニュアルもないですし、何かあったときに答えを提示できるような知識もない。トラブルもたくさんあると思います。何かあったときにどう対応していくのかも、今回募集する人と一緒に考えていけたらいいなと思います」

立ち上げから関われるよさのひとつは、他ではなかなかない失敗を経験できることだと思う。

ここで得た経験は、自分で何かはじめようと思ったときにきっと役立つだろうし、宿泊施設に限らず、場を運営していく力をつけることにつながっていく。

運営スタッフの仕事は、まずは予約の管理や接客など、日々の運営業務が主になる。慣れてきたら、よりお客さんに喜んでもらえるようなイベントも一緒に考えてほしい。

 

「イベントに関しては、この施設の取り組みが参考になると思います」と、植田さんに案内されたのは「市来(いちき)ふれあい温泉センター」。

現在コロンは、グランピング施設の立ち上げと並行して、温泉センターの運営も手がけているそう。

その両方に携わっている南さんに、温泉センターについて教えてもらう。

「ここは20年以上続く日帰り温泉施設で、大浴場に個室風呂、プールもあります。2年前に運営委託されてからは、大幅にリニューアルもおこないました」

トレーニングスペースを漫画コーナーに変えたり、新しくカフェをオープンしたり。地元で有名なうどん屋さんに、のれん分けもしてもらった。

「設備を変えることはもちろん、イベントもいろいろ企画してきました」

人気の移動ハンバーガー屋さんを温泉センターに呼んだり、地元の漁師さんに協力してもらって、マグロの解体ショーをおこなったり。

「このまちを盛り上げたい」という想いから、イベントは地元の人と協力したものにするよう意識しているそう。

「グランピング施設でも、このまちで知り合った人たちに協力してもらいながら、イベントを企画していきたいと思っています」

たとえば今考えているのは、グランピング施設のキャンプエリアでのマルシェ。

「地元農家さんの野菜や果物を、温泉センターの売店で販売しているんです。マルシェができたら、今お世話になっている農家さんにお願いして、もっといろいろな商品を紹介したいですね」

「ほかにも、グランピング施設に泊まってくれた方向けに、このまちで観光を楽しんでもらえるようなプランを考えたいと思っていて」

いちき串木野市には、テレビのロケで使われるような無人島がすぐ近くにあるほか、酒どころや老舗醤油工場など、観光スポットもいろいろあるそう。

施設の運営にとどまらず、イベントや観光プランの企画や運営まで関わることで、より多くのノウハウを身につけることができると思う。

「農業体験に取り組んでいる農家さんや、海でマーメイド体験のアクティビティを展開している方もいるんです。そんな方たちと一緒にグランピング施設をうまく使いながら、このまちのことをより多くの人に知ってもらいたいですね」

 

IT企業がグランピング施設をはじめる。

そう聞いたとき、はじめはなんでだろう?という気持ちもありました。でも、話を聞いていくうちに、根っこの部分は同じだということに気がつきました。

Web上でもリアルな場でも、人が集まる場には想いが積み重なっていく。それを残していく形が違うだけで、コロンがつくってきたコミュニティサイトも、地元で愛されてきた吹上浜荘も、その想いを継いでオープンするグランピング施設も、ぜんぶつながっているんだと思います。

ただ新しいものをつくるのではなく、たくさんの人の思い出やわくわくを受け止めて形にしていく。プレッシャーもあるかもしれないけれど、きっと楽しいと思います。

(2020/02/17 取材 鈴木花菜)

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