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楽しむから、楽しませられる
Teishoku & Dinerへようこそ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

あそこに行けば、誰かがいて、何か楽しいことが待っている。

そんな予感のする場所っていいなあ、と思います。

帰宅途中の道沿いなんかにあったらきっと毎日のように通ってしまうし、遠くにあっても、出張のたびに立ち寄りたくなるような場所。

東京・浅草の「Ashi」も、そんなふうに愛されてきた店のひとつです。

大分県の郷土料理がメインの定食と、気軽にコミュニケーションがとれるカウンター席。「Teishoku & Diner」という独自のスタイルで、海外からの旅行客や地元の人たち、出張で東京を訪れるビジネスマンなど、幅広い人たちに愛されてきました。

「フードビジネスの持つエンターテインメント性を大事にしています」

そう話すのは、代表の光永純史さん。

店内では、落語やジャズライブなどをたびたび開催。昨今のコロナ禍のなかでも、テイクアウトやデリバリーをはじめたり、家で過ごす人たちに少しでも笑顔を届けようとオリジナルキャラクターを展開したりと、遊び心とアイデアをもってこのお店の空気をつくってきた方です。

今回は、新たにキッチンスタッフを募集します。光永さんいわく、料理をつくることが大好きで、この状況下でも楽しんでお店を盛り上げてくれるような、頼もしい方と出会いたいとのこと。

“飲食店”の枠にはまらない、これからのお店のあり方をともにつくっていくような仕事だと思います。

(現地での取材は2019年12月5日に行いました。その後、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、2020年5月13日に一部内容を変更しています)

 

浅草駅を出て、大通りに沿って歩く。

ビルが並び、高速道路が走るすぐそばに、大きな隅田川が流れている。

下町の風情やものづくりの文化と、新しいカルチャーが混ざるまち。短い距離を歩くあいだにも、海外からの旅行客らしい人たちと何度かすれ違った。

最寄りの地下鉄浅草駅から歩いて3分ほどで開店前のAshiに到着。ガラス扉の向こうに、代表の光永さんの姿が見えた。

さっそくテーブル席にかけて話を聞く。隣にいるのは、ロゴやフライヤーなどのグラフィックデザインを担当しているマシュー・モスさん。

光永さんが以前働いていたカフェで出会ったおふたり。音楽の趣味や考え方がぴたりと合って、すぐに仲良くなったそう。

「彼もぼくも、ラップをやるんですよ。昔はミュージシャンになりたくて。音楽のために、アメリカの西海岸に行っていた時期もあります」

いろんな人種、音楽やアートが入り混じる、アメリカのミックスカルチャー。異分野同士が掛け合わさる面白さや、知らない世界に触れることで得られる刺激を、たっぷりと浴びながら過ごした。

「もうひとつ原点にあるのが、父のやっているお店で」

その店というのが、同じく浅草の喫茶店「葦」。もともと会社勤めをしていた光永さんのお父さんが経営を引き継ぎ、45年になるという。

「喫茶店なのに、定食を出しているんですよ。休みの日には、お店でジャズライブをやったりして。そういう姿を小さいころから見ていて、いいなあと思っていたんですね」

アメリカ西海岸のミックスカルチャーと、お父さんの店「葦」。

そのふたつから得たものを、掛け合わせて表現したい。そんな想いから4年前に立ち上げたのが、このAshiという店だった。

メニューを見せてもらうと、看板メニューの中津唐揚げをはじめ、“りゅうきゅう”や“胡麻出汁うどん”など、大分県のさまざまな郷土料理が並んでいる。

「今のシェフが大分出身で。ぼくの親戚も大分と縁があって、だんだん主軸になってきた感じですね」

食材にも大分産へのこだわりがあるという。

「お店で使うブリは“美人ブリ”というブランドで。養殖なんですが、天然モノよりおいしいとぼくは思います。餌に酒粕を混ぜているから、臭みがなく脂が乗っているんです」

Ashiには、海外からのお客さんもよく訪れる。日本食といえば寿司や天ぷらのイメージもいまだ強いけれど、光永さんが味わってもらいたいものは少し違っている。

「ぼくらの日常の“当たり前”なんだけど、“いいもの”を届けたいというか。普遍的なものをつくりたいっていう想いがあります」

その世界観を表すのが、お店のサブタイトルであるTeishoku & Diner(定食ダイナー)。名付けの親は、マシューさんだった。

店内を彩るアートワークの多くは、彼の手がけたものだという。

定食屋さんとして営業する傍ら、音楽仲間を呼んでDJイベントを開いたり、500円で各地の日本酒が楽しめる「Sake Saturdays」という企画を立てたり、店内で落語のイベントをやったり。

そんなことを続けているうちに、4年間で国内外のいろんな知り合いが増えていた。タイの3つ星シェフや、ロンドン在住のイギリス人の植木職人さん。

なかには、光永さんの紹介がきっかけで日本に就職したというオーストラリア人のお客さんも。

「マシューの展示を開いたり、植木職人さんと一緒にヨーロッパにしかない木で盆栽をつくって売ったり。ぼくの奥さんが今ベトナムに住んでいるので、彼女のセレクトで向こうの雑貨や食器のミニバザーをやるとか。和洋折衷なメニューも開発してみたいですね」

そんな矢先に、新型コロナウィルスの感染が拡大。

海外からの観光客も多い浅草では、1月ごろから影響が表れはじめていたそう。Ashiは3月30日から店内での飲食をお休みにして、テイクアウトとデリバリーのみの営業に切り替えた。採用自体をためらうこともあったという。

ただ、光永さんは決してマイナスなことばかりではないと考えているそうだ。

「テイクアウトやデリバリーをはじめてみて、毎日学ぶことがあるんです。今後お店のやれることが増えたという意味では、プラスになっていることもたくさんあると思います」

手づくりのチラシを配ったり、サービスでお弁当にクッキーを添えてみたり。地域内での認知度もあがり、新規のユーザー開拓につながっているという。

「最近は、新しい試みとしてオリジナルキャラクターに力を入れていて」

オリジナルキャラクター?

「うちの看板メニューの中津唐揚げにちなんで、Karaageman(カラアゲマン)っていうキャラをつくって。ケンタッキーにはカーネル・サンダースがいるし、マクドナルドにはドナルドがいるじゃないですか」

そうですね。ただ、ナショナルチェーンでもない限り、オリジナルキャラクターがいるお店ってかなり珍しいと思います。

「今こんな世の中だからこそ、お客さんを笑わせて楽しませたいんです。家で過ごすお子さんとかママさんに、クスッと笑ってもらえたらいいなと思って」

「アンパンマンみたいに、ほかのキャラクターやストーリーも考えてるんですよ。テイクアウトのお弁当に4コマ漫画がついてたら楽しいよなとか、フィギュアにしてガチャガチャもつくりたいなとか。…って、こんな話していて大丈夫ですかね(笑)?」

光永さんの話は、楽しく転がっていく。

その転がっていった先で、新たなアイデアや気づきが生まれる。どんな形になるかわからなくても、面白いと思ったらまずやってみる。そうして、独自の世界観がつくられていく。

それは光永さん個人の人柄にとどまらず、このAshiという店の個性にもなっていると思う。これから入る人も、そんな可能性や広がりを一緒に楽しめる人がよさそうだ。

 

今回募集するのは、キッチンスタッフ。調理全般を担うことになる。

そもそも光永さんにとって、お店で出す料理とはどういうものなんだろう?

「料理はお店の大事な構成要素のひとつですよね。空間やドリンク、デザインや接客…。飲食店はいろんな要素の掛け合わせによってお客さんを楽しませる場だと思うので。少なくともうちは、料理のことだけ考えていればいいというお店ではないと思います」

お店にはわざわざ訪れたいと思わせるような付加価値が必要、と光永さん。それは、人と人が出会うことであったり、楽しい空気を共有することだったり。演劇や舞台のような、エンターテインメントを提供する感覚が大切だという。

「新しく入る人のバックボーンを活かしつつ、わいわいディスカッションしながらお店をつくっていきたいんです」

経験については、どんなふうに考えていますか。

「もちろん調理経験のある方も歓迎しますし、過去に挫折してもう一度挑戦したい人、調理学校を出たばかりの新卒の人でもいいと思っていて。年齢や経験は問いません。外国人のお客さんも多いので、自分の料理で唸らせたいという人もいいかもしれない」

「うちはまだ小さなお店だけど、店舗の数も増やしたいですし、ゆくゆくは新しく入る人にAshiを任せたい、という気持ちもあります。お店の顔のような存在になってもらえるのが理想ですね」

日本食をベースにしつつ、アメリカのダイナーのような気取らない雰囲気で楽しんでもらえる店にしたい。そんな想いさえ共有できていれば、自由な発想で料理に打ち込むことができる環境だと思う。お店づくりについて、学べることもいろいろとありそうだ。

 

光永さんがそんな自由な社風をつくってこれたのは、経営者の先輩であるお父さんの背中を見て育ってきたことが大きく関わっているような気がする。

取材に同席していた父の明さんにも話を聞いた。

「昔、山小屋で小屋番をしていた時期がありまして。山をやる人は普通じゃないんですよ、みんな。そこでいろんな人に会うってことがすごく面白いなあと思って、店をやるきっかけにもなったんですね」

行きつけだった「葦」の経営を引き継ぐことになったのが、45年前のこと。いまだにお客さんを連れて山に登っている。

食材と器具を持っていって、山の中で鍋をすることもあるという。

「ぼくよりよっぽど生命力が強いですよね」と笑う光永さん。たしかに、こんなお父さんの背中を見て育ってきたら、何か自分でやってみたいと思うだろうな。

明さんは「そんな大したもんじゃないですよ」と控えめに応える。

「ただ好きなことをやっているだけ。我々が楽しんでないと、お客さんも楽しくない。やっぱり楽しいのが一番ですね」

明さんには、理想としているお店があるという。それは、『指輪物語』に登場する酒場「躍る小馬亭」。

村人や旅人、いろんな人がやってきて、毎晩宴会が繰り広げられる。そんな場所をつくりたいそうだ。

「あそこに行けば誰かがいるよ、っていうような、戻ってこれる店がいいですよね。うちは45年もやってますから、常連はみーんな年寄りですよ(笑)。この店もきっと、そんな場所になっていくんじゃないかな」

「これから入る人も、この雰囲気を楽しめる人だといいですよね。社長と従業員じゃなくて、ファミリーのように」

ジャンルは問いません。料理を通してお客さんを楽しませたい、その気持ちさえあれば、Ashiの仲間になれると思います。

(2019/12/5 取材 2020/5/13 再編集 中川晃輔)

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