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佐渡の恵みを詰め込んだ
とっておきの
保存食専門店

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

沖縄本島に次いで、国内で2番目に大きな離島はどこでしょうか?

答えは佐渡島です。新潟県の沖合に浮かぶ島。S字のような形をしていて、面積は東京23区のおよそ1.5倍もあります。

かつて栄えた金山があり、野生のトキが棲んでいる。海と山に囲まれた、自然の恵みにあふれた島です。

そんな佐渡島の食材でつくるジャムや瓶詰めを中心に、全国のおいしい保存食を集めて販売しているのが「HOZON」。東京・清澄白河にある保存食専門店です。

今回はこのお店の運営を担っていく人を募集します。

日本仕事百貨のオフィスからほど近く、ときどきお店にも遊びにいきます。季節のジャムや選りすぐりの保存食はもちろん、目をひかれるのが商品に添えられたポップ。オーナーの菅原さんのワードセンスが絶妙で、つい食べてみたくなる。

オンラインストアにもその空気感があります。たとえば、『キウイと林檎のビネガージャム』に添えられているのは、こんな言葉。

「ああ、爽快。ごくごく飲めるジャム。酸っぱくて、でもしゃっくりとした林檎の中に甘さを感じる」

「おいしさ」って、言葉で伝えづらいもののひとつだと思うのですが、なんだか伝わってきませんか? 食べたことはないのに、想像が膨らむ。食欲も刺激される。

どのようにしてこのお店、そしてこんな言葉が生まれてくるのか。画面越しに話を聞きました。

(新型コロナウィルスの感染拡大を受け、オンラインにて取材を行いました。なお、現地の写真は提供いただいたものを使用しています)

 

「おとついが誕生日だったんです」

あら、おめでとうございます!

そんな会話から、菅原さんの取材がはじまった。お客さんとして何度かお店でお会いしたことはあるけれど、あらたまって話を聞くのははじめてのこと。

最近はECサイトに力を入れつつ、お店も開けているという。

「コロナ禍でとくに思ったのは、住宅街のなかにお店があってよかったなって。近所のお客さんに支えられてますね」

昔ながらのお豆腐屋さんや居酒屋と、新しいカフェや雑貨店などが一緒に並んでいる清澄白河。お祭りや地域活動も盛んで、地元のお客さんとの距離感も近い。

そんなまちの商店街から一本脇道に入ったところに、HOZONはひっそり佇んでいる。

もともとはこのお店も、「保存食」という切り口もなく、「佐渡の魅力を伝える」ことだけが決まっていた。

どんなふうに今の形になっていったんだろう?

「わたしが入る5年前までは、米粉を使った焼き菓子を販売していたんです。でも輸送時の割れがひどくてロスが多かった。かつ、地域の魅力を伝えたいのに、米粉しか使えないのはもったいないよねって」

そこで思いついたのが、ジャム。

野生のトキを保護する目的から、佐渡では島全体で農薬や化学肥料を低減した農業に取り組んでいる。面積が広大で気候帯も幅広く、農作物も多種多様。それらを一つひとつジャムにして販売すれば、佐渡の魅力を伝えられるんじゃないか。

こうして保存食ブランド「佐渡保存」が生まれた。

米粉以外扱ったことがなかったので、ひたすら生産者さんのもとを回った。最初は仕入れを断られることも多かったけれど、少しずつ関係性を築いていった。

佐渡の古民家を改装した工房で、ジャムを手づくりしては、イベントなどに出向いて販売する。東京と佐渡を行き来する生活が3年ほど続いたという。

「佐渡にいる間は工房に寝泊まりしていて。隙間風がひどくて、寒いんですよ。それで、朝起きたらすぐ工房入る、みたいな。さすがにこれはしんどいぞってことで、工房併設のお店を出すことになったんです」

東京・清澄白河に「HOZON」をオープンしたのは2年前。「佐渡保存」の商品に加えて、全国から選りすぐった保存食も一緒に並べている。

お店をやりたいという気持ちは、以前からあったんですか。

「ありましたね。保育園ぐらいから。おばさんが蕎麦屋、おばあちゃんが寿司屋をやってたんですよ。幼少期は寿司もらったりうどんもらったり、日々贅沢なものを食べて育ちました(笑)」

大学では設計やリブランディングを学び、北陸の日本酒を扱うお店で働いた。

ジャムをつくったり、HOZONの内装をDIYで仕上げたり、ブランディングを考えたり。これまでの経験が至るところで活かされているみたいだ。

オープンから2年が経ち、コアなファンもつくように。先日は新商品の『桜いちごミルクの素』が、販売開始から2分で完売してしまった。その後も立て続けに即完売。

お客さんを惹きつけているのは、菅原さんのつくる世界観だと思う。

何か商品を選んだり、つくったりするときに、基準にしていることってあるんでしょうか。

「おいしい、おもしろい。あとなんだろう、人にあげたくなる。そのあたりですかね。無添加とかは気にされる方も多いんですけど、余計なものが入ってなければ、そこまでストイックになる必要はないと思ってて」

ああ、なるほど。

ちょっと違うかもしれないけど、ローカルなヴィレッジヴァンガード感がありますよね。ポップの雰囲気とか。

「ああ、そうですね。立ち上げから一緒にやってきたスタッフの武田はDEAN&DELUCAのイメージだったみたいで、『ちょっとヴィレヴァンっぽすぎない?』とか言われながら。わたしは『おもしろいじゃん』って」

菅原さんの声で再生されるような、自然な言葉。でも実は、よくよく練られているみたい。

「Instagramに載せる文章とか、ちゃらんぽらんな内容なんですけど、すごく計算していて。自分のつくりたいものと売れるものって違うなと思うんです。もちろん、扱ってるうちに好きになっていくし、届けたい人のことを考えるのも楽しいですよ。でもそこは、自分のなかでは分けて考えるようにしています」

とはいえ、言葉や写真で飾り立てているわけではなくて、商品自体の個性も際立っている。『ゴボウと柚子味噌』や『パンプキンマーマレード』など、ちょっと意外な組み合わせにも興味をそそられる。

神保町の古本屋に入り浸っては、さまざまな国の調理法を吸収しているという。

「佐渡は海も山もあって、なんでもとれるんですけど、時期が限られていて。露地栽培が主なので、とくに冬場の食材があまりないんです。そんななかで武田が、何を思ったかゴボウを10キロ買ってきて、なんかできる?って。苦肉の策でゴボウのジャムを出したんですよ」

目の前にあるもので、何をつくるか。そんな発想から、ユニークな組み合わせが生まれる。

島の食材の旬が、そのまま商品の個性として表れているのもおもしろい。

「佐渡って専業農家が少なくて、だいたい兼業なんですよ。二毛作三毛作が当たり前で。国産では珍しいアーモンドをつくってみたり、カンゾウの花を食用に育てたり、チャレンジ精神旺盛な人も結構います」

「土地が豊かで、だいたいなんでもとれちゃうから、節操ないというか。そういうところが自分と似ていて好きですね(笑)」

新型コロナウィルスの影響で、今はいろいろな場面で制約がかかる。でも菅原さんは、制約があるときこそ、新しいアイデアが生まれてくるという。

「オンライン接客もやってみたいんですよね。セルフレジを導入して、商品知識さえ共有できれば、体に障害のある方も雇用できるだろうし。あとは佐渡の商品のリブランディングもしていきたい。2、3店舗目も出したいし…」

そうしたステップに向けて、今回はHOZONの運営を任せられる人を募集したい。

どんな人に来てほしいですか。

「オールマイティーな方がいいですね。商品企画をしたら、それをどう売るかまで考えられる人。仕込みも、接客もします。あとはECも充実させていきたくて。Webマーケティングのリテラシーがある方も来てもらえたらうれしいです」

なかなかハードルは高そう。

ただ、特別なスキルや経験はなくても大丈夫とのこと。

「決まっていることが本当に少ないので、逆に言えば自由になんでもできる環境だと思います。わたしも新しく入る人にどんどん任せたいと思っていて」

お店やブランドに自身の色が強く反映されていることを、菅原さんは気にかけているという。たしかに、菅原さんのつくるものだから買いたい、という人もいそうだ。

まずは今のお店やブランドの色に染まれる人がいいんじゃないかと思う。何かしら近い感覚を持っているだけでなく、それを伝えていくイメージも持てる人。普段の言葉遣いや、グッとくるポイントが菅原さんと似ているような人だといいような気がする。

いつか自分のお店を持ちたいとか、HOZONを一緒に広めていきたいというように、何かしらの目標がある人は、きっといい経験が積めるはず。

 

後日、スタッフの中野さんにも話を聞いた。

アパレルの会社に勤めたあと、全国の島々の食材を扱うお店「離島キッチン」で商品管理を担当していた中野さん。

「佐渡保存」の商品も扱っていたことから菅原さんと知り合い、昨年秋から二人三脚でお店を運営してきた。

「本当に、なんでもやる仕事ですね。新しいことを考えて企画することもあれば、ひたすらいちごのヘタをとったり、瓶詰めするだけの単調な日もあります」

梱包や仕込みのような、丁寧で淡々とした手仕事が求められる場面と、発想や実行力が求められる場面。どちらかしかできない、やりたくないという人だと難しい。

むしろ、うまく切り替えられる人にとっては、いい気分転換にもなると思う。

「わたしは仕込みも好きで。終わりが見えるじゃないですか。あ、鍋が空になった、みたいな。ちょっとした達成感が生まれるんですよね」

大量に剥いた玉ねぎの皮を持ち帰って、染めに使ったこともある。それが新しい商品開発につながるかもしれないし、そうでなくても、いろいろ工夫して楽しむ姿勢は大切。

コロナ禍によって外出が制限されていた間は、ECサイトの更新をしつつ、「HOZONの知りたい世界」というオンラインイベントも担当した。

「Instagramのライブ配信で、メーカーさんとつないで。醤油蔵を見せてもらいながら話を聞いたり、生ゆず胡椒を使ったレシピを教わって実際に食べたり」

「つくり手の方とお客さん、両方と関わっていたい気持ちがずっとあったんです。今回やってみて、一度にそれを叶えられるなってことに気づいて。オンライン配信の可能性を感じましたね」

制約や逆境を、あえておもしろがる。そんなところがHOZONで働くみなさんには共通しているように感じる。

実は中野さん、近々地元の北海道に帰る予定で、新しく入る人とは入れ違いになってしまうそう。

これまでの縁も活かしながら、北海道のおいしいものやそのつくり手さんのことを丁寧に紹介していくような仕事がしたいという。

「手作業で一から商品をつくる大変さを味わえたのは、すごくいい経験になりました。お客さんに伝えられることの幅も広がったし、メーカーさんや生産者さんの気持ちも、すべてではないけれどわかる、というか。日々めまぐるしいですけど、なんでも経験したいという人にはきっと楽しい仕事だと思います」

手仕事、店づくり、地域のプロデュース。東京の路地裏に佇む小さなお店には、いろんな可能性が詰まっているように思いました。

(2020/5/21 オンライン取材 中川晃輔)

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