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火の島で暮らす

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大きな湾にそびえ立つ山。ときおりドンッという音が響き、もくもくと煙が立ち上る。

鹿児島県の錦江湾にある桜島は、今も毎日のように噴火を繰り返す活火山。その麓にはおよそ3,800人の住民が暮らしています。

今回募集するのは、この桜島で地域おこし協力隊として活動する人。観光やまちづくりに長年取り組んできたNPO法人桜島ミュージアムが協力隊の受け入れ先になります。

3年間の任期で興味関心のあることを掘り下げ、ゆくゆくは事業として独り立ちを目指す。活動内容があらかじめ決められていない、いわゆるフリーミッション型です。

この場所で、自分だったらどんなことができるだろう。そんなふうに想像しながら読んでみてください。

(新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインにて取材を行いました。なお、現地の写真は提供いただいたものを使用しています)

 

桜島がある鹿児島市へは、鹿児島空港から薩摩半島側へ、車で40分ほど。さらに鹿児島港からフェリーに乗って15分で桜島に到着する。反対側の大隅半島とは陸でつながっており、空港からだと車で60分ほどで到着するそう。

今年の6月にも、30年に一度と言われる大きな噴火をした桜島。活火山でありながら、古くは縄文時代から人が住んでいたと言われている。火山と人が共生する場所であると同時に、年間200万人が訪れる観光地でもある。

ここで2005年から観光やまちづくり分野で活動しているのが、NPO法人桜島ミュージアム。

画面をつないでまず話を聞いたのは、桜島ミュージアム代表で、火山学者でもある福島さん。

「大学院にいた頃は、桜島のとなりにある姶良カルデラの研究をしていたんです。昔どんなことが起こって今の地形になったのか、地球で起こったことを推理していくような感覚が楽しかったんですよね」

大学院卒業後、研究者や火山ガイドの道を考えたものの、当時は働ける場所が少なかったそう。ないなら自分でつくろうと思って立ち上げたのが、桜島ミュージアムだった。

「桜島をまるごと博物館にしようっていうコンセプトで、2005年に立ち上げました。火山ガイドだけじゃなく、まちおこしのイベントをしたり、地域の人を巻き込んだ体験プログラムを企画したり。地域と一緒に歩むことを大事にしてきましたね」

福島さんによる火山ガイドツアーや、温泉の掘削体験、溶岩加工工場の見学ツアーなど。過去に企画した体験プログラムの内容は多岐にわたる。

さらには活動を続けるなかで、桜島の歴史や自然を学べる施設「桜島ビジターセンター」の運営を県から委託され、フェリーターミナルが新造された際にターミナル内の飲食店「ミナトカフェ」をつくって運営するなど、まちの信頼も得てきた。

今回はじめて地域おこし協力隊を受け入れることになったのも、桜島をもっと盛り上げていきたいという思いからだったそう。

「実は、今回の受け入れを決める前は、鹿児島市が協力隊を募集すること自体、あんまりよくないんじゃないかっていう気持ちがあったんですよ」

えっ、どういうことでしょう。

「10年ほど前に、地域おこし協力隊の前身の仕組みだった『田舎で働き隊!』を何度か受け入れていたんです。地域がもっと元気になればいいなと思って取り組んでいたんですが、当時は来てくれる人に対して、あなたはこれをしてくださいねっていう活動がすでに決められていて」

結果、任期後の移住にはあまりつながらなかった。活動する人にとっては、もしかしたらやらされている感があったんじゃないかと、福島さんは感じていたという。

「せっかく桜島で暮らしてもらうんだったら、もっと幸せを感じてもらえる仕組みじゃないといけないなって、すごく感じたんです」

「その苦い経験があったので、今回鹿児島市が地域おこし協力隊を募集するっていうときに、だったら過去の経験を生かしてうちが受け入れるのがいいんじゃないかって、名乗り出たんです」

協力隊を受け入れるに当たって福島さんが目指したのが、隊員自身が自由に活動を決められるフリーミッション型の募集。

鹿児島市とも交渉を重ね、隊員ができるだけ自由に活動できる仕組みを企画し、市にも認めてもらった。

「暮らしと仕事、両方の面からぼくたちがサポートします。最初からこういうことをしたいって思いを持って来てくれてもいいし、暮らしながら探すでもいいと思っていて」

まず1年目は、桜島ミュージアムが行う事業のサポートをしながら桜島の暮らしに慣れ、地域のことを知ってほしいそう。その関わりのなかで課題を見つけ、活動の種にしていくようなイメージ。

「たとえば、ビジターセンターで観光客とコミュニケーションを交わしながら火山のことを勉強したり、地元の人が働いてくれているカフェや地域の人と一緒に取り組んでいる体験プログラムのサポートをしたり」

「ミュージアムの事業のサポートは、週の半分くらいだけでもいいと思ってるんです。1年目はいろんな場所に足を運んで、活動の下地をつくってもらうことが重要で。私たちも地域とのつなぎ役になりたいと思ってます」

2年目、3年目でその種を育て、ゆくゆくはひとつの事業として成立するものを目指していく。0から桜島ミュージアムをつくり上げてきた福島さんがサポートしてくれるのは、活動する人にとってすごく心強いと思う。

「桜島っていう場所はやっぱり特殊なので、まずはここで暮らすことを面白がってくれることが一番大事だと思うんです。火山と暮らすって、一筋縄ではいかないことばかりなので」

 

火山と隣り合わせの生活って、どんなものなんだろう…。想像はするけれど、それよりも生々しい現実があるような気もする。

「たぶんはじめて桜島を訪れる人は、びっくりすると思いますよ」

そう話すのは、桜島ミュージアムで働く大村さん。11年前に神奈川から移住してきた。

「出身は神奈川なんですが、学生のころから田舎で地域を元気にする仕事がしたいなって、なんとなく思ってたんです。就職も地方や離島での募集を探しては応募して。桜島ミュージアムのことは、知り合いから紹介してもらって知りました」

「鹿児島に行ったこともなかったし、桜島のこともほとんど知らなくて。だから面接ではじめて鹿児島に行ったときに、すげえな!って、本当にびっくりしたんですよ」

何がすごかったんですか?

「海からどかーんって山が出ていて、噴火して煙がモクモク上がってる。そんな場所にこれから面接に行くって、なんか意味わかんないじゃないですか(笑)。すごいところに来たなって、一瞬で感じましたね」

桜島では、多いときで年間1,000回以上の噴火が発生している。一日に2、3度の噴火は当たり前で、鹿児島の天気予報では、噴火時の降灰予想エリアが毎日知らされるほど。

「地元の人と話しても、『おはよう』って挨拶した次に来るのが、『昨日はあそこに降ったねぇ』っていう火山灰の話なんです。これ冗談じゃなくて、本当にみんな言うんですよ(笑)」

「それも理由があって、たとえば洗濯物が干せるかとか、大きい噴火の予兆かもとか。日常生活に関わることから大きなリスクの話まで、いろんなことにつながっているんですよね」

ほかにも、島内を歩いていると石垣のある家を多く見かける。その石垣も、溶岩を活用してつくられた火山地域ならではのもの。

火山灰が降り積もった桜島の土壌は良質で、島で育った桜島大根や柑橘類などは全国でも有名。

噴火を自然災害という側面からだけ捉えるのではなく、資源として活用する。至るところに火山からの物語が広がっている島での暮らしは、なんだか面白そう。

今回募集する協力隊も、それらの資源を生かしていく方法を考えてみるといいかもしれない。

「桜島の特産品に、椿油があるんです。桜島ミュージアムでそれをブランディングして、今は店舗だけじゃなくオンラインでも売っていこうと、いろいろ試行錯誤しているところで。来てくれる人がもし椿油に興味があれば、一緒にアイデアを出しあって事業化できたらいいなと思ってます」

販売に加え、今後は生産の過程も工夫していきたいと考えているそう。

というのも、椿の種を集めてくれているのが、地元のおじいちゃん、おばあちゃんたち。種の採取や下草刈りなど、手仕事をどうやって効率化し、持続可能なものにしていくか。まだまだできることはたくさんあると話す大村さん。

ほかにも、代表の福島さんは「サイクル&カフェ構想」を思い描いている。

桜島にあるカフェをレンタサイクルでめぐるコースをつくり、立ち寄ったお店の人に地域を案内してもらったり、裏の畑で一緒に野菜をとったり。地元の人と関わるきっかけをつくることで、単純な観光とは一味ちがった体験を提供するというもの。

福島さんや大村さんのアイデアを一緒にかたちにしていくことも一つの方法だし、もちろん自分で1から事業のアイデアを考えて活動することもできる。

桜島で暮らすなかで、どんなことに興味が芽生えるか。来る人次第でいろんなことにチャレンジできる環境だと思う。

 

最後に話を聞いたのは、桜島出身の山下さん。2年前に大阪からUターンしてきた。

「僕は桜島ミュージアムのスタッフではなく、地域でいろんな仕事を手伝いながら暮らしているような人で。前職が広告業だったので、その経験を生かして企業の広報・ブランディングの担当とかをしています」

「協力隊の方に対しては、家探しや地域の人との関係性づくりなど、メンター的な立ち位置でお手伝いしたいと思っていて。暮らしの面でも、桜島の魅力を伝えていきたいですね」

地元の人にとって、桜島の魅力ってどんなところでしょう。

「火山と共生するまちっていう特殊性はあると思うんですが、船でちょっと行けば鹿児島市という大きな都市がある。手頃な田舎というか、暮らしやすい場所なのかなと思いますね」

「あとはなんといっても自然が豊かです。僕も子どもと一緒に野菜を育てたり、魚を釣ったりしていて。この前なんかは、クエっていう珍しい魚が3匹も釣れたんですよ。自然のきびしさと同時に豊かさも肌で感じられる場所ですね」

火山と暮らすきびしさと、火山があるからこその恵み。その両方が、暮らしを豊かにしてくれる。

最後に代表の福島さんがこんなことを話してくれました。

「僕は面白がり力っていうのが、すごく大事だと思ってるんです」

面白がり力。

「なにをするにしても、面白がることが一番の原動力になるんですよね。桜島には僕らも気づいていない魅力がたくさんあると思うので、それを肌で感じながら自分なりに見つけていってほしいなと思います」

 

火山の島で暮らす。桜島での暮らしはとても特殊なものだと思います。

「よくわからないけど面白そう!」

それくらいの気持ちで楽しめる人であれば、これほどチャレンジしがいのある場所はないように感じました。

8月には移住体験プログラムも開催される予定なので、興味がある人はまず参加してみてください。自分のなかの「面白そう」が見つかるかもしれません。

(2020/6/19 オンライン取材 稲本琢仙)

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