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地元へ久しぶりに帰って、街並みの変化に驚いたことのある人は多いかもしれません。
わずか数年の間に、街の姿はどんどん変わっていく。
人知れず姿を消した古い街並みも、きっとたくさんあるんだろうなと思います。
「数百年先も残る、木の街並みを広めたいんです」
そう話すのは、チャネルオリジナル株式会社の関根さん。チャネルオリジナルは、木の外壁材や屋根材を中心に、自然素材の建築資材を扱う流通会社です。
月日が経つほど味わい深くなる天然木。そんな木を使った建築を街に増やすことで、味わいのある街並みをつくっていきたいと話してくれました。
今回は、2020年の5月に富山県入善町(にゅうぜんまち)に立ち上がった、チャネルオリジナルの北陸営業所で働く人を募集します。
未経験でも大丈夫。工務店や設計事務所に対してだけでなく、北陸に暮らす人にも、木の良さを広めていく仕事です。
東京駅から北陸新幹線に乗って2時間半で、黒部宇奈月温泉駅に到着する。
これから向かう入善町は、材木の町として知られてきた。森林資源が豊かで、昔は腕利きの大工や木材を提供する木挽き職人もたくさんいたのだそう。
あたりに広がる田んぼや山々を眺めながら車を15分ほど走らせると、大きな木の建物が見えてくる。ここがチャネルオリジナルのオフィスみたいだ。
外観は、カフェやコテージのようにも見える。
ドアを開けて中に入ると、ふわっと木の香りに包まれる。ほっとする香り。
「木の香りにはリラックス効果もあるんですよ」
そう声をかけてくれたのは、営業職の関根さん。
以前は飲料メーカーで働いていたという関根さん。昔から寺社仏閣など、木の建築物が好きだったそう。
「地元の埼玉から青森まで、自転車で建築物を巡る旅をしたこともあって。木の建物が日本にもっと増えたらいいなと感じていたときに、チャネルオリジナルと出会ったんです」
横浜に本社を置くチャネルオリジナルは、今年で設立25年目を迎える会社。主に工務店や設計事務所に向けて、木の外壁材や屋根材といった建築資材を販売している。
「うちの資材は、住宅はもちろん、保育園やクリニックなどにも使われています。木の建物にはあたたかさがあって、特に夜は、建物からもれる光がやさしいんですよね。素材がもつ癒しの力は、この営業所で働いていても感じます」
「木って、月日が経つと色がどんどん変化して、最終的にはグレーになっていくんです。年を重ねることで深みが増すのも、木の素材ならではだと思います」
たしかに神社や古都には、新築にはない魅力がありますよね。
「そう。ヨーロッパやカナダって、普通の住宅地にも200年以上の歴史をもつ伝統的な街並みが残っているんですよ。一方で日本は、観光地を除くと、古くから続く街並みってほとんど残っていないんです」
今の日本では、20〜30年経った住宅の資産価値はほぼゼロに近い。古い家は取り壊して建て直すのが当たり前になっているという。
「木の家は、きちんと建てれば何百年先にも残すことができます。そして、その古さは美しさにもつながる。僕たちは木の街並みを復活させて、未来に残る街をつくっていきたいんです」
長い年月が経っても、建物が安全で美しくあり続けるように。
チャネルオリジナルの外壁材や屋根材は、国内外の木でつくられている。
その一つが、カナダにある樹齢200年以上のウエスタンレッドシダー。なかでも一番丈夫な幹の部分を材料につかっていて、雨や直射日光を受けても、耐久性を保つことができるんだそう。
「ただ、『木の家って火事のときに危ないんじゃない?』と心配されるお客さんも多いです。そこで私たちの木製製品には、日本で唯一、炎の広がりを防ぐ特殊加工がされているんですよ」
木材なのに、燃え広がらないんですか?
「木の内部に、防火薬剤を入れているんです。火が当たると、表面から薬剤がでて炭化層ができる。炭化した部分は燃焼が進みにくいので、火がブロックされて広がりを防げるんです」
チャネルオリジナルでは、外壁や屋根のほかにも、さまざまな商品を手がけている。
「この営業所は自社製品をつかって建てているんですが、ウッドデッキは屋久島の地杉、フローリングは北海道産の広葉樹なんですよ」
北から南まで幅広いですね。
「それぞれの木に特徴があって。屋久島地杉は油分が多いので、雨に濡れても乾きがはやい。北海道産の広葉樹は、硬くて節が少なく色味も豊かなので、フローリングに適しているんです」
「ただ日本だと、国産材は柱に使われることがほとんどで、フローリングなどに使われるのは主に外国産かフェイク材。柱に適していない木材は、売れにくいという現実があって」
チャネルオリジナルで扱っている屋久島地杉や北海道産の広葉樹も、もともとはパルプや段ボールなどの加工材に使われていたという。
それでも外国産の安さには敵わず、ビジネスを続けていくのは難しい。結果、林業を離れる人も増え、手入れの行き届かない森林が増加している。
「私たちが木材を“製品”として適材適所で使い、新しいビジネスモデルを生み出すことで、日本の林業に少しでも貢献したいと思っているんです」
今回募集する営業職は、工務店や設計事務所のニーズを聞いて、数ある商品のなかから最適なものを提案していくのが仕事。
北陸営業所はオープン直後ながら、月に10件以上の問い合わせがあるそう。
「使ってみたいという声を多くいただいていますね。それに、北陸エリアには付き合いの長いお客さんもたくさんいるんです」
新しく入る人は、まずは関根さんに同行しながら仕事を学んでいく。その後は、既存のお客さんを中心に担当を引き継いでいくことになる。
「お客さんには、商品のストーリーをお話しするようにしています。たとえば、屋久島地杉は古くから屋根材として使われていて、お米の代わりに年貢として納めていたほど、貴重なものだったんですよ」
「ただ、亜熱帯の気候なので虫食いの跡も多いんです。木の耐久性には問題ないものの、そういった特性もきちんとお伝えするようにしています」
木の良さはもちろん、マイナスに感じてしまいそうな部分も、しっかり伝えることを心がけているという。
「木の経年変化や耐久性に不安があるお客さんには、数十年経った木造建築を見に、県外まで一緒に行くこともあります。実際にお施主さんへ説明をするのは工務店さんの役割なので、私たちの商品をきちんと理解しようとしてくれる方が多いんです」
素材への理解を深めるため、カナダや屋久島でおこなわれる視察ツアーに参加するお客さんもいるんだそう。
「私たちの商品を使うことが、工務店さんのブランド力にもつながればいいなと思っています。お客さんとはパートナーのような関係性を築けていて、実際に建物ができあがると、内覧会に呼んでもらえるんですよ」
お施主さんへの引き渡しの瞬間に立ちあうこともよくある。
「木の家にしてよかった、って声を直接聞けるのはやっぱりうれしいですね。資材会社でありながらそういう経験もさせてもらえるのは、本当にありがたいなって感じています」
働いていて、大変なことはありますか?
「最初は、専門用語や覚えることが多いなと感じるかもしれません。木材を活かしてもらえるように、専門的なポイントも頭に入れる必要があって。たとえば施工方法。釘の種類や釘を打つ間隔なんかも、耐久性に影響してくるんですよ」
それぞれの商品に、ストーリーや特性、施工上の注意点がある。
正しい知識を身につけるためには、自分から積極的に学んでいく姿勢も求められると思う。
「自分の関わった建物が、街に少しずつ増えていく。それを見ると、頑張ってよかったなって思います。木の色の変化を見ながら『こんなに月日が経ったんだな』って、建物に自分の成長も重ねていけるんですよ」
チャネルオリジナルには、大阪や福岡など全部で7つの営業所がある。そのなかでも北陸営業所は、2年前の5月に新しく立ち上がったばかり。
現在メンバーは、関根さんを入れて2人。立ち上げ当初から事務職として働いている大野さんにも話を聞く。
「実家が木の家だったので、昔から木に馴染みがありました。木の外観や香りが好きだったんですよね。私からも木の香りがするって友達に言われるとなんだかうれしくて」
「私は生まれも育ちも、ここ入善なんです。地元に木の街並みが増えたら本当に素敵だなと思って、入社を決めました」
新潟・富山・石川・福井の4県を担当している北陸営業所。そのなかでも、まずはこの入善から、木の街並みをつくっていきたいという。
「営業所のすぐ隣に、木の外壁の建物が二棟あって。そこは地域の人が集まるような場所にしていきたいねって話しているんです」
「たとえば、映画の上映や音楽イベント、バーベキューなんかもできるんじゃないかなと思っています。あとは、木材を使ったワークショップも企画していきたいですね」
この場所をどう使っていくか、具体的な計画はまだこれからの段階。新しく入る人と一緒に、アイデアを出しあっていきたい。
「ゆくゆくは、地域の人が何かやりたいって思ったときに、この場所を気軽に利用してくれるようになったらうれしいです。まずはここを気軽に使ってもらうことで、木の素材を身近に感じてほしいなと思います」
今後ニーズがあれば、営業所をシェアオフィスにしたり、カフェを開いたりすることも考えているそう。
アイデア次第でいろいろな可能性がある。まちづくりの分野にも興味のある人だったら、より楽しめるかもしれない。
「まちの人も、何か知らない建物ができたぞと思っているようで。『ここは何のお店ですか?』って声をかけてくれる人も多いです。地元の人に向けたお披露目会も早くひらきたいですね」
「将来を考えたときに、入善が木の街並みで有名になって、外からも人が来るようになったらいいなと思っていて。これから先何十年も続く営業所にしていきたいです」
そんな北陸営業所にとって、大切な3人目のメンバー募集。大野さんは、どんな人と一緒に働きたいですか?
「少ない人数で運営しているので、1人で働くような時間も多くなると思います。わからない部分は気軽に聞きあえるような、コミュニケーションしやすいチームでありたいですね。なによりも、楽しんで仕事をしてくれる人が来てくれたらうれしいです」
街並みをつくるのは、一軒の建物から。
ここから少しずつ街ができていく過程を、時間の変化を味わいながら一緒に楽しめる仕事だと思います。
(2020/8/17 取材、2022/10/24 更新 鈴木花菜)
※撮影時にはマスクを外していただいております。