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デザインの仕事をしようと思ったら、きっとまず学校に行くだろう。そこでグラフィック、プロダクト、スペースなどそれぞれの専門分野に分かれて学び、社会に出ていく。
空間デザインをする人、VMDを考える人、広告を手がける人。
たとえば、“お店のプロデュース”という共通の目的に向かうときも、デザインの分野によってチームが縦割りになることも少なくない。
プロとして経験を積むほどに、その垣根を越えてものづくりの根っこの部分から携わりたいという思いが湧いてくるのではないでしょうか。
今回紹介する会社は、企画からグラフィック、スペースデザインまで総合的にクリエイティブを手がけるチーム。
ジョージクリエイティブカンパニー(GCC)で、スペースデザイナーとグラフィックデザイナー、またプロジェクトやブランディングなどの企画を担うプランナーと、総務経理の担当者も募集しています。
店舗やオフィス、フードやファッション、地方創生や医療のような領域まで、扱うジャンルの幅広さもこの会社で働く手応えになるはず。
クリエイティブ業界のなかでも珍しいポジションの会社だと思います。
東京タワーからほど近いビルの1階、コーヒースタンドの店内にいろんなドアが並んでいる中にGCCのオフィスへ繋がるドアがある。
オフィスの真ん中にはフルーツが実る大きなシンボルツリーが置かれている。
同じビルの2階は、放送作家の小山薫堂さんが代表を務めるオレンジ・アンド・パートナーズのオフィス。GCCにとっては、しばしば一緒にプロジェクトに取り組むグループ会社という関係にある。
共同で使用しているミーティングスペースをお借りして、まずは代表の天野譲滋さんからお話を伺う。
「僕は京都出身で、もともとは家具屋の息子です。平成元年に京都で立ち上げたのが、GEORGE’S FURNITUREっていう家具と生活雑貨のライフスタイルのお店。そこで現ウェルカムの代表の横川氏と知り合って、GEORGE’S、CIBONEやDEAN&DELUCAなどを一緒につくっていきました」
天野さんの手がけるショップに共通しているのは、ジャンルによってお店を定義するのではなく、ライフスタイルを提案する場であるということ。
「たとえば楽しく食事をするためには、料理だけじゃなく、食器、テーブルのような家具、場合によっては音楽やユニフォームを考える必要があります。ライフスタイルっていうのは、そういう空気感やシーンを提供するものだと思っています。」
その考えは、GCCのあり方にも表れている。
天野さんが立ち上げたGCCは、スペース、インテリア、グラフィック、プランニング、フードなど、これまで分業で進められてきた各分野のデザインをワンストップで進める仕組みを整えている。
だから、たとえばひとつのお店のデザインを考えるときにも、ハードからソフトまでトータルに提案することができる。
「GCCで仕事をする面白さって、場の空気感をつくれることだと思うんですよ。自分たちの思い描いたアイデアをゼロから具現化していくことで、場をつくるというよりは、ひとつのブームを生み出せる可能性もあります」
クライアントとのヒアリングにしっかりと時間をかけ、相手にとってどんなデザインが必要なのかを考えていく。
「だいたい最初は『何かおもしろい店やりたいんだけど』みたいな相談からはじまります。それに対して、内装やパッケージ、新商品のシリーズを提案することもあるし、立地開発とか、スタッフの採用みたいな部分にまで関わることもあります」
いろいろな視点でクライアントの求めるものを考えていく天野さん。何気ない雑談から、相手が本当に必要としているものに気づき、新しいアイデアが生まれることもある。
プライベートでも、いつも「これは仕事に使えるかもしれないなぁ…」という感覚でものを見ているという。
「いい意味で公私混同というか。いろんなものにアンテナを張っている好奇心旺盛な人が、チームになじみやすいと思います。あと必要なのは、やる気と体力かな」
これまでGCCで手がけてきたプロジェクトにも、その姿勢が感じられる。
たとえば、2015年から継続的に取り組んでいるのが、「White atelier BY CONVERCE」というお店のプロジェクト。
シューズメーカーのコンバースが、その世界観をエンドユーザーに直接伝えるための直営店をつくることになり、天野さんたちが企画から携わることに。
ECでも難なくものを買えるこの時代に、リアルなお店にわざわざ足を運びたくなるような仕掛けってなんだろう。
そんな問いから生まれたのが、白いキャンバスに見立てたホワイトコンバースにその場で自分で選んだデザインプリントができるサービス。
この原宿で生まれたお店が好評となり、その後、吉祥寺や福岡にも出店が続いた。
プロジェクトを支えてきたデザイナーの方たちはどんなことを感じているんだろう。グラフィックデザイナーの岡野さんにも話を聞かせてもらった。
「店内のサインやグラフィックはもちろん、シューズにプリントするデザインは、外部のアーティストやデザイナーとのコラボレーションもあるので、どんなクリエイターをアサインするか考えるのも私たちの仕事です」
ときにはプリントする機械について、業者さんと直接相談することも。
自分の担当領域だけでなく、プロジェクト全体を見ながら自分にできることを自主的に探して動いていく。それは、この会社で働くうえで常に必要な意識だと思う。
たとえば、フランスの冷凍食品メーカー「Picard(ピカール)」のプロモーションキャンペーンを担当したときのこと。
「ピカールの冷凍食品は、パンやチーズのような日常的なものから、エスカルゴやパイの包み焼き、お酒に合うアペリティフみたいなパーティ用のアイテムまであって、すごく楽しいんですよ。カット野菜でも有機のものが当たり前だったりして」
フランスでは、冷凍食品は家事の手間を軽減して自分の時間をつくるツールとしてポジティブに受け入れられている。「今日はピカールだよ」というと、子どもが喜ぶようなものらしい。
日本でプロモーションをしていくには、まずその文化的なギャップを埋める必要があった。
そこで岡野さんたちは、ピカールのジャーナルをつくることを提案。日本の消費者がピカールのある暮らしを楽しくイメージできるように、フランスの食やパーティの文化などを紹介した。
与えられたオーダーに答えるだけでなく、プロジェクトの核になる部分から自分で考えて提案していくことも、GCCならではの特徴だという。
「サクッと仕事をこなして、毎日定時に帰りたいという人にはちょっと難しい環境だと思います。ものをつくる仕事ってやっぱり楽ではないし、がむらしゃらにしがみついていかないといけない場面もあります」
「その分、本当に深い部分からプロジェクトを考えていけるから、納得感のある成果が得られると思います」
前職では、美容系企業の広告を専門に手がけるデザイン会社で働いていたという岡野さん。
GCCでは、ジャンルを問わずいろんなクライアントと関われることが新鮮だという。
「本当に、飲食のパッケージデザインからイベント用の車のデザインまで、いろんなものがあるからね」
と、言葉を添えてくれたのは、グラフィックディビジョンのリーダーである土井さん。
「専門分野に特化したデザイン事務所ではないから、グラフィック領域以外のことも経験できる。自分のデザインがめちゃくちゃ巨大な空間に展開されるとか、新しい経験をするたびに、つくり手としての感覚が鍛えられるように思います」
スペースデザインやインテリアなど、自分の専門とは異なる視点でデザインに向き合う人とも、直接コミュニケーションをとりながら仕事を進めていく。
同じチームとして波長を合わせてひとつのものをつくっていく意識も必要だと思う。
「デザインの経験だけじゃなく、いろんなことに好奇心を持って雑談できる人がいいと思います。僕たちもよく映画の話とかしていますよ」
GCCのメンバーは全部で15人ほどで女性が多い。デザインの経験者がほとんどだけど、そのキャリアはさまざまで、年齢も20代半ばから50代まで幅広い。
今回求めているプランナーという職種は、一般的な広告代理店の企画職とは少し違い、プランナーとしての経験よりも個人の柔軟なアイデアやネットワークを活かしていけると思う。
最後に話を聞いたのは、スペースデザインディビジョンのデザイナー皿田(さらだ)さん。この部署では、空間設計から内装デザインまでを一緒に担っている。インテリアデザイナーとして加わる人は、このチームに所属して働くことになる。
「GCCに依頼をくださるクライアントは、普通とは違う何かおもしろいものを期待していることが多いので、デザイナーとしても型にはまらない提案ができておもしろいです」
店舗やオフィスだけでなく、ホテルやデパ地下など、空間領域としてもさまざまなバリエーションがある。
「すごく興味深かったのは、熊本にある桜十字病院っていう医療機関のプロジェクト。病室ではなくて、エントランスなどの共用スペースのデザインを担当しました」
オレンジアンドパートナーズとの共同プロジェクトで、普通の病院にはないような仕掛けがたくさん散りばめてある。
カフェやライブラリーのほか、入院している人や家族がゆっくり時間を過ごせるシェアルーム、手紙を書くための専用の部屋というのもあるらしい。
「お見舞いに来られた方が入院されている方に直接伝えられなかったこととか、あるいは入院されている方自身が未来の自分に対するお手紙とかを書いて、投函できるんです」
医療とは直接関係のない機能ではあるけれど、そのスペースがあることで、入院中の過ごし方や人との関わり方が変わってくる。
天野さんが「空気感をつくる」という言葉で説明してくれたようにGCCの仕事は、ワクワクする気持ちを演出するだけでなく、ときには人を癒したり、行動を変えたりする可能性を含んでいるように感じました。
デザインを通して、人やまちに変化を起こしていく。
キャリアアップを考えたとき、自分の経験や専門性をどう生かしていくか、クリエイターとして、デザイナーとして、さらに自分を一歩前に進められるチームなんじゃないかと思いました。
(2020/9/2 取材、2021/4/1 再募集 高橋佑香子)
※撮影時にはマスクを外していただいております。