求人 NEW

野原のような
ほがらかさを
日々の暮らしのなかに

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

涼しい風を感じてベランダに出たら、アパートのそばのハナミズキが赤い実をつけていた。

忙しく単調な毎日であっても、少しずつ変化していく植物の姿を見ると、ちょっとほがらかな気持ちになれるような気がします。

花の色や形だけでなく、そこで静かに息づいていることにも親しみを感じる。

そんな植物ならではのみずみずしさを、暮らしのなかに届けていく仕事を紹介します。

福岡県大野城市にある「ハナモミジ」では、切り花ではなく根っこがついた状態の植物を、ブーケのようにかわいらしくアレンジして楽しむ提案をしています。

今回募集するのは、オンラインショップの運営を中心に担っていくスタッフ。同時に、花のお世話やワークショップの準備など、チームみんなで取り組む業務も多い職場です。

 

朝9時、自宅でZoomをセットして待っていると、「こんにちはー」と明るい声で代表の小森妙華(みょうか)さんが画面にあらわれた。

背景はなんだか家のような雰囲気。今どちらにいらっしゃるんですか?

「お店の2階です。もともと1階がお店で2階が住居っていう造りの建物だったので、押し入れとかもあって。今も、ちゃぶ台にパソコンを置いてお話ししているんですよ」

Web用の写真撮影などもできるよう、壁はDIYで塗り替えたという。アンティーク調の家具が置いてあったりして、居心地がよさそう。

二棟つづきの建物を店舗兼事務所として使っていて、そこで花苗の販売や寄せ植えのワークショップを行っている。

ハナモミジで扱う花や植物は、切り花ではなくすべて根っこがついた状態のもの。

その寄せ植えは、Webサイトの「野原をそのまま切り取ってバスケットに植える」という言葉が、たしかにしっくりくる感じ。

自然な雰囲気とデザイン性のバランスがちょうどいい。

「小さなベランダや部屋の中でも育てられるんですよ。お仕事が忙しくて、夜しか帰ってこられなくても、部屋のなかに生きた植物があるといいですよね」

土ではなくヤシの実チップを使って植え込むので、水やりも簡単。小さなグラスに入れてワーキングデスクの上で楽しむこともできるらしい。

話を聞いていたら、なんだか自分でもやりたくなってきた。ワークショップはどんなことからはじめるんですか?

「うちのレッスンは簡単な植え方を説明するだけで、材料や器は自由に選んでつくってもらうんです。『うまくいかない』っていう相談があっても、『どこが気に入らないの?』って話をする感じです」

直感に従って花を選んでいく作業は、そのときの自分の心と向き合う時間にもなる。

コミュニケーションのとり方も、ちょっとカウンセリングやセラピーに似ている気がする。

色や形だけでなく、生きた植物の持つみずみずしさも、人の心を惹きつける。だからこそ、小森さんは「根っこがついた状態」にこだわっている。

お店で扱う花苗は、小森さんがさまざまな農園を訪ねて直接買い入れている。市場のようなセリは行わず、必ず生産者の決めた値段で仕入れるそうだ。

以前日本仕事百貨でも紹介した、東京の秋田緑花農園も仕入先のひとつ。

「生産者さんの思いをエンドユーザーに伝えるのも花屋の仕事だと思うんです。だから、花そのものの質だけじゃなく、思いに共感できる人から仕入れることを大切にしています」

つくり手の思いに耳を傾けながら、花を選んでいく。

小森さんが生産者さんと話していて「この人と一緒に仕事をしてみたい」って思うのは、どんなときですか。

「言い方が難しいんですけど、キラキラしている人? 花の仕事に対して『楽しい!やりたい!』っていう気持ちが素直に湧き上がっているところを見ると、いいなと思います。私もちょっとそういうところがあって。もしかしたらスタッフは苦労しているかもしれない(笑)」

花で人を喜ばせるアイデアを思いつくと、すぐに実行に移したくなる。

小森さんの行動力は、ハナモミジのお店ができるまでの経緯にもよくあらわれていると思う。

子どものころから花屋に憧れて、専門学校で園芸を学んだあとは、園芸店や生花店での仕事を経験してきた。

「シングルマザーになってからは、デザインの仕事で生計を立てるようになったんですけど、これから花屋をやるにはどうしたらいいかなってずっと考えていました」

そこで小森さんが思いついたのは、移動販売というやり方。

月に一回、友人のフレンチレストランの前に場所を借り、寄せ植えの販売をはじめた。

お客さんのリアクションを見ながら品揃えを工夫していくうち、月1回が隔週になり、毎週になり、回を重ねていった。

「売り上げが伸びて、そろそろお店をと思っていたころに、友だちが『カフェをやるから、一緒にお店を持たない?』って声をかけてくれて、ここでお店をはじめたんです。でもその友だちは3ヶ月くらいでリタイアしちゃって、結局一人で花屋をやることになりました」

そのときに残されたカフェの設備は今、ワークショップのあとにみんなでお茶とお菓子を楽しむために活用されている。

与えられた環境で工夫するのが好きだと話す小森さん。

残されたキッチンの使い方がもうひとつ。

「うち、お昼にまかないが出るんですよ。子育てをしながら働いていると、自分のことが後回しになるでしょう? だから、おにぎりとお味噌汁をつくってスタッフに提供したのがはじまりで、今はじゅんこさんっていうスタッフがかなり本格的にやってくれています」

「ハンバーグが出てくる日もあるし、おやつも出してくれるし。じゅんこさんの愛でみんな3kgくらい太っちゃって。本当にお母さんみたいな感じです。じゅんこさん、何歳だったかな…」

と小森さんが後ろを振り返ると、遠くから「68!」という返事が、画面を通してこっちまで聞こえてきた。

実家みたいなやりとりに、つられて笑ってしまう。

「お花屋さんは過酷な仕事っていうイメージもありますよね。でも、私はそれがあんまり好きじゃない。もちろん、土で汚れるとか重いものを運ぶことはありますけど、せっかくかわいい花に囲まれた仕事だから、もっと楽しんで働いてほしい」

「小さい会社だし、まだ安定とは程遠い状況ではあるんですけど、スタッフ一人ひとりも『楽しそう!やってみよう!』って、失敗を恐れずにいろんな挑戦ができる職場にしていきたいなと思います」

 

仕事のやりとりだけでなく、お互いの生活も気遣いながら健やかに。

スタッフの曜子さんは、3人のお子さんの子育て中。代表の小森さんとは、いとこの奥さんという関係らしい。

「ここはすごく働きやすい環境だと思います。子どものことで急に休ませてもらうことになっても、『ごめんね、今度忙しくなったら別の日に出るね』っていう感じでカバーし合えるので」

一人ひとりの担当がきっちり分かれているわけではなく、みんなで手分けして行う作業も多い。

主に発送や梱包業務を担っている曜子さんも、花の水やりや、ワークショップの準備など全体の仕事と並行しながら自分の仕事を進めている。

「高いところの作業やちょっとした修理もあるので、男性スタッフがいたらなあと思うこともありますね」

「知識や経験はなくてもいいので、臨機応変さは必要だと思います。私たちはもう慣れたんですけど、社長の妙華ちゃんは『思いついたら即行動!』の人なので(笑)」

たとえばこの春、外出自粛要請のために東京や大阪など遠方でのレッスンが難しくなったときは、急遽、出張レッスンを通信講座に切り替えた。

配送担当の曜子さんは、レッスンで使う花材や資材の配送作業に急ピッチで取り掛かることに。

さらにオンラインショップの注文が急増した時期とも重なり、通常は月に30〜40件の出荷作業が100件近くになったことも。

「必死で発送作業をして残数を減らしていくんですけど、夜ライブ配信をすると、また新しい注文がきて、翌日出勤したら前日より増えているような状況で。あのころは終わりが見えなくて、ちょっと心折れそうだったな(笑)」

「そういう大変なときもやっぱり『じゃあ、やろう!』って、みんなと一緒に前向きに頑張れる人が来てくれるとうれしいですね。私たちはいつもケラケラ笑って明るい感じなので、新しく入る人のことも、みんなあったかく迎えてくれると思います」

 

ハナモミジで、この春から一緒に働いている宇賀神(うがじん)さんにも話を聞いた。

宇賀神さんは、ポップの作成やWeb用の写真撮影などのデザイン業務を担当しているので、新しく入る人とは比較的近い立場で仕事をすることになる。

「実際に花を見せれば、かわいさはすぐわかってもらえるんですが、それを文章や写真でどう伝えるか考えるのは難しいですね」

オンラインショップなど、直接言葉を交わせないお客さんとのコミュニケーションにおいても、普段の接客などで得た経験がヒントになる。

頭で考えるだけでなく、体を動かしながら花に関わる時間を通して伝え方を考えていく。

「花が入荷したときはいつも『わー、かわいい!』って思うんですけど、ゆっくり愛でている時間はないんです(笑)。すぐに出して、水をあげて…って、いろいろやることがあって」

伸びすぎた葉っぱの手入れをしたり、気温や湿度に応じて置き場所を変えてみたり。

一方で宇賀神さんの場合は、小森さんとふたりで事務所にいる時間も長いので、新しいアイデアについて話し合うことも多い。

「小森は出張に出ると、大量のアイデアを持ち帰ってくるんです。ペンキをお店で扱いたいとか、花屋という枠に収まらないようなこともあって。私はそれに優先順位をつけながら、整理して現実的な業務に落とし込んでいく役割かなと思っています」

「今はサイトのリニューアル中でもあるので、少し残業になることもありますけど、私は自転車で20分くらいのところに住んでいるので生活は楽ですね。もともと関西のニュータウンで生まれ育ったので、こんなふうに暮らしと仕事の距離が近いのは新鮮です」

お店は、博多や天神など福岡市の中心部から15分ほど離れたJR水城駅のすぐそば。周辺には住宅や飲食店などが混在している。

行きつけの居酒屋に花を納品しに行くなど、地域のなかで、お客さんとお店の人という関係が逆転することも。

自分の生活と地域、仕事、すべてがひとつながりであることを感じながら暮らし、働いている。

花を見て素直に「かわいい!」と心動かされること、一緒に働く仲間を思いやりあうこと、きちんとご飯を食べること、自分の時間を持つこと。

ハナモミジのお店では、人が生きていく上での基礎となるような、自然で健やかな関わりを大切にしているのだと思いました。

それは花屋として「根っこがついている」植物にこだわる理由にも、つながるような気がします。

(2020/8/25 オンライン取材 高橋佑香子)

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