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自販機で。立ち寄ったカフェで。自宅でも。つい、コーヒーを探してしまいます。
いつから好きになったんだろう?と振り返ると、いくつか思いあたる節はあるのですが、そのひとつが堀口珈琲のコーヒーに出会ったことかもしれません。

都内5店舗と中国・上海へも進出。ビギナーからプロまで、幅広い層に向けたセミナーを開いたり、自宅でコーヒーを淹れる習慣のない人でも、手軽にスペシャルティコーヒーを楽しめる「コーヒーバッグ」をいち早く開発したり。さまざまな形でコーヒーの楽しみを広げてきました。
今年はコロナ禍を通じて自宅で過ごす時間が増えたこともあり、オンラインストアの売り上げは2倍近くになっているそう。そんな状況のなかで、ますます重要性の増している流通・EC担当を募集します。
会社の心臓部を担う仕事です。受注・出荷の管理や問い合わせ対応に加え、 Webサイトを通じて堀口珈琲の世界観を伝えたり、異なる部署のつなぎ役にもなったりします。
コーヒーづくりの上流から下流まで。これほど幅広く関われる仕事は、珍しいかもしれません。
向かったのは、昨年完成したばかりの横浜ロースタリー。堀口珈琲の焙煎所だ。
元町・中華街駅から歩いて20分弱。バスを使っても、最寄りのバス停から少し歩くことになる。
多少不便な立地でも、港にある生豆の貯蔵庫からの近さを優先。運搬の時間が短いほど、生豆が劣化するリスクを抑えられるからだという。こんなところにも、品質を重視する堀口珈琲の姿勢が表れている。
ふいにコーヒーのいい香りがしてきた。遠くに見える三角屋根の建物がロースタリーのようだ。

工場でありながら、家のような温かみもある。天井の全体に木材を使ったり、製造エリアの照明に自然光を活用したりと、ロースタリーで働く人たちが快適に過ごせるための工夫を重ねているという。
2階にある打ち合わせスペースで、代表の若林さんが迎えてくれた。

気さくな雰囲気に、するりと肩の力が抜けていく。
じつは今年の7月に社長に就任したばかりだという。
「過去に社長経験もないし、事業を立ち上げたこともない、まさに“新米社長”です。わたし今40なんですけど、社内に年上は何人かしかいなくて。全体的に若い会社ですね」
現会長の堀口俊英さんが1990年に立ち上げた堀口珈琲。会社としては今年で30周年を迎えたわけだけれど、若い人にもどんどん挑戦の機会をつくっていく文化がある。
以前は独立志向の強いスタッフが多く、若林さん自身もそのひとりだったそう。
「最初は店舗の接客から入って。学生のころは研究者になりたくて、研究室にずっといた人間だったので、はじめてのことだらけでした。周りを見よう見まねでやるんですけど、まあ下手で」
やがて仕事の幅も広がっていき、焙煎や生豆の管理も任せてもらえるように。一日も早く自分のお店を持ちたかったから、どんどん新しいことに挑戦していった。
「ただ、そのうち『これひとりでやるのは無理だ』って思うようになって。堀口珈琲よりおいしいコーヒーを自分ひとりでつくり上げることは、おそらくできないだろうなっていう結論に達したんです」
創業者の堀口さんが30年前に脱サラして、海外の展示会へと足を運ぶなかで一から築いていった生産者との関係性。焙煎やブレンドへのこだわり。お店に来てくれる人や、豆の卸先であるカフェやレストランとのつながり。
幅広く関わるほど、堀口珈琲として積み重ねてきた価値を感じるようになっていった。

たとえば、焙煎機は中型のものを2台使用している。大型のほうが効率はいいけれど、豆の銘柄や状態に合わせて個性を最大限に引き出すためには、このやり方がちょうどいいのだとか。
昨年ロースタリーが完成したことで、品質はさらに向上し、生産効率も高まった。今年はオンラインストアが好調で、例年の2倍近くまで売り上げが伸びているそう。
会社が少しずつ成長するなか、代表のバトンを渡された若林さん。
社長に就任してすぐに、宣言したことがある。
「ブレンドの価値を高めたいんです。我々にとってはブレンドってすごく価値の高い商品なんですけど、お客さんにはその価値が必ずしも認められていない。わるく言うと混ぜ物というか、安価なイメージがあると思っていて」
たしかに、単一産地のシングルオリジンと呼ばれる豆のほうが、珍重されているイメージはありますね。
「ブレンドっていうのは、消費国で価値をつくり出す行為です。異なるシングルオリジンを組み合わせることで、新しい風味を創造できる。高品質で個性豊かな生豆が世界中から集まるからこそできることです。その意味でブレンドは、堀口珈琲の技術と知識の粋を結集したようなものなんですよね。その価値が認められていないのはすごくもったいないことだし、そのよさをもっと知ってもらいたくて」

価格設定の問題だけではないし、どちらが優れているというのでもない。ブレンドも香味の幅やコーヒーの可能性を広げるひとつの表現方法と捉えてほしい、と若林さん。
「焙煎者やブレンダーが何を考えてつくっているかとか、味の奥深さ、本当におもしろいものだっていうことを伝えたい。それで今、Webサイトを根本的に見直しましょうっていうことに取り組んでいます」
今回募集する流通・EC担当者にも、ぜひここに関わってもらいたいとのこと。
どんなコンテンツを発信していくのか。どういうサイトの構成がいいか。Web上で伝える役割を担うことになる。
「ただおもしろければいいわけではなくて、売れることも大切です。我々はコーヒー屋ですから、豆を捨てるようなことはしたくない。楽しい企画を回しながら、製造から販売までのラインをしっかりとつなげていくバランス感は必要になってきます」
産地の歴史やコーヒー農家さんを取り上げて紹介したり、季節ごとの特集を組んだり。現在は隔週ペースで新しい企画を打ち出しているという。
日々の受注・出荷の管理や問い合わせ対応と並行して取り組むとなると、なかなか大変そうです。
「すべてひとりで抱える必要はなくて。たとえば、先日公開したゲイシャっていう品種についての記事は、生豆事業部のスタッフが英語の文献を2、3本読んで書いてくれました。あっちの部屋でテイスティングしてる彼なんかは、世に出る堀口珈琲のコーヒーをすべて飲んでいるので、話を聞いたらおもしろいだろうし」

今回募集する人の直属の上司にあたる、流通部シニアマネージャーの小川さんにも話を聞いた。

当時参加したセミナーの講師だった、前社長の伊藤さんに誘われて9年前に入社したそう。
はじめはどんな印象でした?
「とにかくおいしいものをつくろうっていう会社なんだなって。でも売り方が下手だなってことは、外から見ていて思いました。チェーン店は価格や打ち出し方でどう選んでもらうかっていう世界だったので、その経験が活かせると思ったんです」
もともと職人肌な人が多いこともあり、意見が対立すると受け入れてもらえない時期もあった。
それでも地道に声を上げ続けるうちに、対話が起こりはじめるのを肌で感じたという。

ペーパードリップのコーヒーの淹れ方や、アイスコーヒーのつくり方、産地の空撮映像など。Webやパンフレットで紹介している内容でも、動画のほうがより伝わりやすいこともある。
コロナ禍によって、今はまだ海外への渡航は難しいけれど、仕入れに同行して産地の様子を伝えるようなコンテンツもつくれるかもしれない。

何か、あるといい経験や必要になってくるスキルはありますか。
「基本的なITスキルは必要ですね。HTMLやCSSへの理解があって、ECサイトの運営をやったことがある人だとなおいいかなと思います。あとは何より、コーヒーが好きな方。社長がこういう感じなので、ついていける人がいいですね」
そう話す小川さんも、なかなかのコーヒーマニア。10年以上前にQグレーダーという国際的なコーヒーの資格を取得している。
今ではだいぶ普及したものの、当時その資格を個人で取っている人はかなり珍しかったそうだ。

話をしていると、コーヒーにまつわるエピソードやストーリーが見えてくるし、自分自身にも思い当たることが出てくる。そこから、その人の人となりも感じられる。
コーヒーそのものの味わいはもちろん、コーヒーと人の関わりやストーリー、ルーツを辿るような企画もおもしろそう。発想次第でいろんなことができると思う。
とはいえ、「原点を忘れたくない」と代表の若林さんは言う。
「やっぱりうちってコーヒー屋なんですよ。適切な生豆を海外から調達して、それを焙煎して、お客さまにきちんと説明して届けるっていう会社。その中でもブレンドっていうのを大切にしていて。そこを間違えないでほしいというか」
「おいしいコーヒーをつくる、っていうことをやりきりたいし、そのおもしろさを伝えたい。この“伝える”役割として、めちゃくちゃ大事な役割の人を今求めています。つくっているものには自信があるので、これからもっと多くの人に手にとってもらいたいですね」
コーヒー文化の裾野を広げながら、同時に深めていく。それはどこか、ブレンドの魅力に通じるものがある気がします。
まだ見たことのない人は、堀口珈琲のオンラインストアを覗いてみてください。いろんな産地も記事もあって、ちょっと旅するような気分にもなりますよ。
(2020/8/18 取材 中川晃輔)
※撮影時にはマスクを外していただいております。