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ものづくりの仕事を取材しに行くと、つい、その製品を買って帰りたくなる。それは、つくり手の思いをたっぷり聞いて、つくっている現場を見て、そのものに対する気分が高まってくるからだと思います。
いいなと思ったものを手に入れるだけでなく、帰ってから、そのストーリーを誰かに話すのも楽しみだなあと、ホクホクしながら持ち帰る。

サイトを見ていると、百貨店のバイヤーさんと直接話をしているような、ものを選ぶときは「ここを見て!」と、目利きのコツを教わっているような。コンテンツのつくり方にも、独自のこだわりがあります。
今回は、このサイトを運営していくディレクターなど、いくつかの職種でスタッフを募集します。まずは一つずつ仕事を覚えながら、ゆくゆくはマネージャーを目指していくイメージ。
縦割りではなく、お互いに連携しながら仕事を進めていくチームなので、会社の考え方に興味がわいたら、まずはコンタクトをとってみてください。
藤巻百貨店を運営している株式会社caramoは、渋谷のオフィスに加えて青海に執務スペースを増やした。
新橋からゆりかもめに乗って、ぐるりとお台場湾岸方面へ。テレコムセンター駅から少し歩いた先にあるビルを目指す。

広い室内はフリーアドレス制らしく、スタッフもなんだかのびのび作業しているように見える。
まずは中村さんのデスクを挟んで、取材をはじめることに。

「新たな取り組みとしてテレワークをやってみて、感触が良かったので、サービス向上しつつ働き方を変えるなら今かなと思って。それで、以前から使っていた倉庫物流センターの事務所棟のなかに、執務スペースを設けることにしたんです」
メールやチャット、オンライン会議などのシステムを使えば、業務のほとんどはどんな場所でも進めていける。
ECサイトとして、アフターサービスの質を高めていくために、倉庫物流センターのすぐそばに拠点を移すことを決めた。
「まあ渋谷と比べるとちょっと交通の不便さを感じますけど、今は週2出勤が基本。あとはテレワークなので、そんなに負担はないと思います。それにここは思った以上に良い環境で、仕事にも集中できますよ」
世の中のライフスタイルにも大きな変化があった。
お客さんのニーズに、何か影響はありましたか?
「藤巻百貨店はもともとファッションアイテムがメインなんですが、この半年はキッチン周りのアイテムがよく売れますね。みんな家にいる時間が長くなって、せっかくなら質のいいものを使って暮らしたいっていうふうに、意識が変わってきたんじゃないかと思います」
たとえば…と中村さんが見せてくれたのは、表面に独特の凹凸を持つコーヒーポット。

サイトに掲載されている写真はすべて撮り下ろし。職人さんの工房やメーカーを直接訪ねて取材した、制作工程や道具も見られる。
商品の正面、側面、ヒョイと外した蓋の裏側まで紹介されている。
たしかに、お店で触っていると、何気なくこういうところ見るなあ…。
「この注ぎ口の細さも、お客さんによろこばれているポイントだと思います」

商品説明というよりは、読みものみたいですね。
「そうですね。ただ、メディアをつくっているのか、商売をしているのかを見失ってはいけないと思うんです」
「こういう商品を扱うとき、ついクールでおしゃれなサイトにしたくなるけど、それだけでは、お客様に魅力が伝わらないことが多い。ちゃんと自分ごととして商品の魅力を感じてもらうために、親近感のある表現も必要だと思います」
普段の伝え方でも特に大切にしているのは、リアリティ。
実際に手にとって使っているシーンを想像できる写真やコンテンツを考えていく。
「たとえばグラス単体で紹介すると『もの』なんですけど、こうやって泡の立つビールを注ぐと『こと』になる。一枚の写真でどうやってストーリーを伝えるかっていうことですね」

多くのECサイトが、いかに他社より安く売るかという発想で競合するなか、藤巻百貨店は商品の魅力をしっかり伝え「少し高くても、それだけの価値がある」と感じてくれるファンを着実に増やしてきた。
「自分の感性に響くものなら、定価でも買いたいと思うんですよね。さっきのポットでも、コーヒー淹れながら『美味しさの秘訣は、ここの伝統工芸技法がね…』って人に言えたら、楽しいじゃないですか」
「僕は普段から万年筆を使うんですけど、気に入った筆記具があると、気分が高まって集中できる。ちょっと字もきれいに書ける気がするし。そういう楽しさが分かるって大事なことだと思います」

使い手の気持ちに作用して、暮らしの時間を前向きに変えていくものが、本当の「いいもの」なのかもしれない。
世の中にある無数の選択肢のなかから、どう「いいもの」を選び出すか。それは中村さんたちの目利きの仕事でもあり、お客さんに対して藤巻百貨店が投げかけるテーマでもある。
もともと、「もの余り時代の、もの選び」というコンセプトで藤巻百貨店を企画したのは、カリスマバイヤーとして伊勢丹のショップなどを手がけてきた藤巻幸大さんだった。
「生前、藤巻さんはメディアにも多く出ていて、一般的にはカリスマバイヤーっていうイメージが強いと思うんですけど、ご本人を知っている人たちは『電話魔だった』とか『いろんな人を紹介してくれる人だった』とか、明るい人柄のことをよく思い出して話すんです」
「あと藤巻さんは何でも『直当たり』だった。それは僕らも同じで、ものづくりの現場は必ず見に行きます。職人さんはいいものをつくっていても、自分からアピールしないので、こっちから探すしかない。だから、行くといいものが見つかりますよ」

「どんな職種でも、まずはうちのノウハウを身につけないとできない仕事なので。経験の有無にかかわらず、一から覚えて、ゆくゆくはマネージャーやリーダーを目指していきたいっていう意欲のある人のほうが馴染みやすいと思います」
実際にサイトの運営に携わっている人たちは、どんなことを考えているんだろう。
マーケティングを担当している野中さんにも話を聞かせてもらった。

これまでコンテンツの編集やメルマガ担当、プレスリリースの発行など、いろいろな役割を兼務しながら、仕事を続けてきた。
「ページをつくっていく過程にはかなり泥臭い面もあるんです。あと、中村さんはいつも、ちょっと難しめな数値目標を出してくるところがあって。たとえば、それまで月間の新規顧客数が数千人くらいだったところを、『今の10倍になるように何か考えて』とか」
自分のなかにあるステレオタイプで「お客さんはこういうものだ」と決めつけてしまうと、先に進めない。
レビューのコメントだけでなく、その日の天気、お客さんの年代、決め手になったテキストなど、いろんな視点から分析する。
「藤巻百貨店は本当にいいものだけを集めた、知る人ぞ知るサービス。まずは、このお店のお客さんやサービスのこと、ノウハウをよく理解したうえで、少しずつ自分なりの工夫を重ねていくことが大切だと思います」
取材から約半年。代表の中村さんが近況を聞かせてくれるということになり、Zoomをつないでみた。
あれ、外出先ですか?

相変わらず、どんどん新しいことに挑戦しているみたい。
今後は新たに、クラウドファンディングを活用した伝統工芸品の開発の仕組みをつくっていく予定だという。
「僕らはずっと日本の職人さんを応援してきて、新商品を期待しているお客さんも増えています。一方で現場では、予算などのリスクから、なかなか商品開発に踏み出せないらしくて」
「そこで、クラウドファンディングを使って開発資金を集めて、予約制で新商品をつくる。寄付をしてくれた人限定のオンラインコミュニティをつくれば、試作途中でいろいろ希望を伝えるコミュニケーションもできるから、双方にとって魅力が大きいんですよね」
それは、逸品を選びたいという藤巻百貨店のお客さんのニーズにもマッチしそう。
売るだけじゃなくて、つくる過程から一緒に考えられるお店になるんですね。
「今ちょうど、江戸切子の作家さんと一緒に商品開発しているものがあって。ワイングラスなんですけど、足がなくて、バルーンの形で切子の模様が入っている。めちゃくちゃかっこいいのができそうですよ」
中村さん、楽しそう(笑)。やっぱりモノが好きなんですね。
「この仕事、モノが好きじゃないとやれないですよ。一緒に働く人も、せっかくならプロを目指してほしい。言われたことをやるだけじゃなくて、自分で工夫して、考えて。自分磨きをするつもりで来てほしいです」
ECという仕組みに、根を張り、枝葉を伸ばし、ぐんぐん広がっていこうとする藤巻百貨店。ここで仕事をすれば、さまざまなノウハウが身につくはず。
前例のない挑戦や、編集のクオリティなど、求められるレベルは決して甘くはないと思います。何かを極めようという気持ちで、挑んでみてほしいです。
(2020/10/1 取材、2021/4/30 更新 高橋佑香子)
※撮影時にはマスクを外していただきました。