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やさしいイノベーションを
起こしてきた町で
ピンチをチャンスに変える

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「上勝って、これまでもピンチをチャンスに変えてきた町なんです」

そう話すのは、合同会社パンゲア代表の野々山さん。

上勝町は、徳島県の山間に位置する人口1500人ほどの小さな町です。

たとえば、ある年の大寒波で特産品のみかんがすべてダメになってしまった。そこで立ち上がったのが、料理を彩る“つまもの”を栽培・出荷する事業です。この「葉っぱビジネス」は、今では年商2億6000万円を超える町の一大産業へと成長しました。

2003年に全国の自治体ではじめて「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表したのも、ダイオキシンの排出を規制する法律が定められたことで、既存の焼却炉が使えなくなったためでした。

ゴミを出さない町を目指す取り組みの数々は注目を集め、メディアの取材や国内外からの視察が相次ぐように。2020年の夏にはホテルやラボ、ゴミステーションが一体となったゼロ・ウェイストセンターが町内にオープンしました。

葉っぱという資源や、ゴミ処理の課題。どこにでもあるものに新しい角度から光を当てることで、地域のブランドへと変えてきた上勝町。

さて、コロナ禍というピンチを、どうチャンスへと変えていけるだろう?

そのひとつのきっかけとなりうるのが、今回紹介する「上勝起業塾」という取り組みかもしれません。

一昨年度に開催された第1回では、参加者は1週間のフィールドワークを通じて事業プランを立案。最終日に町長や地域のキーマンたちに向けたプレゼンテーションを行い、その後も事業化に向けたサポートをしていくという内容でした。

今回はそんな上勝起業塾の参加者を募集します。

上勝町のことは気になっていたけれど、今まで訪ねる機会がなかったという人。これからのライフスタイルや働き方を考えているという人も。興味が湧いたらまず読んでみてください。 

 

上勝町へは、徳島空港から車で約1時間。

信号のほとんどない山道をくねくね進んでいくと、やがてパンゲアフィールドというキャンプサイトが現れる。

ここで迎えてくれたのは、合同会社パンゲアのスタッフ田中さん。起業塾の立ち上げから運営に携わってきた方だ。

みんなからは「Tくん」と呼ばれ親しまれている。今回参加する人も接点が多くなると思う。

一昨年度、はじめての起業塾をやってみて、率直にどうでした?

「参加者のみなさんと1週間、ちょっと鬱陶しいくらいに朝から晩までご一緒させていただいて。ぼく自身にとってもすごくいい時間になりましたね」

1月と2月に、計3回開催。全体で7名の方が参加したという。

前半は町民へのインタビューやフィールドワークを通じて、上勝の資源や課題に触れる時間。それと並行して、自分は何がやりたいのかを深掘りするワークショップの時間も設けた。

後半の過ごし方は人それぞれ。田中さんたちと事業プランの壁打ちをする人もいれば、黙々と発表の準備を進める人、滞在期間ギリギリまでいろんな人に会って話しまくる人も。「起業塾」という名前ではあるものの、かちっとした流れは決まっていないという。

最終日のプレゼンテーションを終えたあとも、何人かは継続的に上勝と関わっている。今日はそんな3名の方にもリモートで話を聞けるとのこと。

 

まずは東京でファッションデザイナーとして活動している大澤さんと画面をつないだ。

「ファッション系の専門学校を出てから、ずっと服づくりに関わる仕事をしてきました。その過程で出るゴミの多さだったり、大量生産して一気に捨てられる現場を見たり。そこから、エコとかサステナブルな考え方をファッションに取り入れた活動ができないかなと思っていたんです」

そんなタイミングで、日本仕事百貨を通じて上勝町と起業塾のことを知った。

もともと長野県出身の大澤さん。ゆくゆくは地元も含めた地方で働きたいという想いもあり、参加を決めたそうだ。

初日に驚いたことがあるという。

「集合場所に行ったら、参加者はわたしともうひとりの梅西さんだけで。こんなに少人数でやってもらえるんだってことにまず驚きましたね。そのぶん運営のみなさんは、一人ひとりに対して真剣に、すごく柔軟に動いてくださって」

葉っぱや河原の石を集めたり、廃棄されてしまうものを集めて再生している「くるくる工房」を見学したり。1週間という短い期間でも、上勝のさまざまな素材や人の想いに触れることができたという。

滞在中に制作までは至らなかったものの、その後上勝での学びを持ち帰って臨んだイタリアの世界的コンテストでは、ファイナリストに選出。さらにはパンゲアのユニフォームや上勝のグッズ制作などの話もあるそうで、いい縁がつながっているみたい。

「起業塾に参加するなら、自分のやりたいことや目的のある人がいいと思います。そのほうがきっと時間を有効に使えるし、上勝のためにもなるのかなと」

たしかに大澤さんの場合、ゼロ・ウェイストの文脈と地域に拠点を増やしていきたいという目的が、上勝という土地、そして起業塾にぴたりとはまっていたのかもしれない。

とはいえ、そこまで明確なイメージを持てていない人もいると思う。

 

大澤さんと同時期に参加した梅西さんのモチベーションは、もう少しゆるやかなものだったという。それでも、起業塾をきっかけに、昨年4月に上勝町へ移住した。

「最初から移住しようとか、熱い気持ちで来たわけじゃなくて。いろどりさんがすごくいい取り組みをされているから、見てみたいなと思って参加したんです」

起業塾を知るきっかけとなったのは、ある新聞記事だった。その内容は、いろどりが農業と福祉を組み合わせた事業に取り組んでいこうとしている、というもの。

介護士として働く梅西さんは、以前は13年ほど給食をつくる仕事をしていた。

食と福祉と農業を組み合わせて何かできないか。塾を通じて、そんなアイデアが浮かんだという。

「三世代交流の子ども食堂みたいな場をつくりたいと思ったんです。小さな子がご飯を食べる横で、元気なお年寄りがいろどりの仕事をしている。そこに子どもたちの親世代が来れば、いろどりの後継者も自然と見つかっていくんやないかなって」

移住する前から、月に一度上勝に通っていろどりの農家さんを訪ねたり、農作業を手伝ったりしてきた梅西さん。現在は地域おこし協力隊として活動しながら、独立して食べていく方法を模索中だという。

起業塾で発表したプランも、そのうち形にできるかもしれないですね。

「ここで何かしたいって言うと、『そんなんやめとき』って反対されることがなくて。むしろ『やるんだったらこの人に会って、こうしたら?』ってアドバイスをもらえる。協力してもらえる空気があったから、最終的に移住まで気持ちがいったんかなっていう感じはしますね」

 

そんなおふたりとは、また少し違った視点で参加した人もいる。東京で建設会社を経営する北田さんだ。

「ここ数年は、新規事業を探していろいろなことに取り組んできました。そのなかで、テクノロジーを使って農業の現場で何かできないか、と考えるようになって」

ドローンを活用して農薬を散布したり、センサーで栽培環境を管理したり。スマート農業と呼ばれる取り組みは、ここ最近実験的に導入されはじめている。

なかでも北田さんが注目したのは、養蜂だった。

「養蜂家の親戚が『蜂の管理が難しい』と話していたんですよ。それに上勝町では、広葉樹林を増やしていこうという計画があって。広葉樹はいい蜜源になるんです。町の方向性にも合っているし、事業化の可能性も感じました」

さらには、幼少期からテクノロジーに触れて自ら考える力を育むSTEM教育にもつなげていけば、中山間地域で特色ある教育を進めていけるんじゃないか。

そんなプランのもと、2022年の2月からは地域活性化企業人の制度を活用して上勝町に拠点を構え、着々と事業化の準備を進めているという。

参加の動機も、起業塾を通じて生まれたアイデアも、三者三様。

ただひとつ、みなさんが口を揃えていたことがある。それは「自分と向き合えた」ということ。

北田さんはこんな言葉で話してくれた。

「起業塾って、経営的なことを学ぶのかなってイメージもあったんです。でもどちらかというと、自分の人生とこれからやりたいことをつなげる時間が重視されていて、結果それがすごくよかったなと。この歳になって自分を振り返れる時間って、なかなかないですからね」

ニュアンスとして、“自分探し”とはちょっと違う感じがする。

いろんなバックグラウンドをもった参加者や、町民の人たちと出会い、この地の素材に触れながら、事業プランを考える。目の前の日常にどっぷり浸かるなかで、大切にしたいことが自ずと見えてくるような。そんな時間なのかもしれない。

 

最後に話を聞いたのは、パンゲア代表の野々山さん。スタッフの田中さんと一緒に、参加者にみっちり伴走してくれる。

自身も移住者として、この地で事業を起こした野々山さん。山深い地域ということもあって、なんとなく排他的なイメージがあったものの、実際にやってきて驚いたという。

「排他的どころか、ものすごくオープンで。それはなぜかというと、町としての成功体験があるからだと思うんです」

上勝町には葉っぱビジネスやゼロ・ウェイストといった、長年続いてきた取り組みがある。

それらを通して、メディアの取材を受けたり、国内外から視察があったり、映画の撮影が入ったり。外から人がやってきて光を当てることで、町に対して誇りを持つ人が増えてきた経緯があるそう。

「昔は違ったみたいですよ。でも小さな成功体験を積み重ねるうちに、少しずつオープンな空気が生まれていって。最近は外から人が入ってくると、『今度は何をするのかな』って興味を持ってくださる方が多いんです」

ここ8〜9年で、10を超えるお店や企業が立ち上がっていることからも、その変化は感じられる。山間の町ではあるけれど、少しずつ新しいことをはじめやすい土壌がつくられている。

昨年度は体育館でバレーボールをしたり、飲み会に混ざったり、ごはんを一緒につくったり。地域の人と関われる機会も多かった。

今回はコロナ禍の影響で、どうしても制約が生まれる部分もあると思う。ただ、なるべく体験の濃度を落としたくはない。

そのため、事前のPCR検査を必須として、最大1万円まで補助するとのこと。感染防止対策もじゅうぶんに行ったうえで、上勝町を存分に体感してもらえるようなプログラムを考えている。

「葉っぱビジネスもゼロ・ウェイストも、ピンチから生まれた取り組みです。だから今回のコロナも、ピンチをどうチャンスと捉えるかだと思っていて。一緒に挑戦する気持ちで参加してもらえたらと思っています」

これまでも、さまざまなピンチを自分たちの力で乗り越えてきた上勝のみなさん。そんな土地だからこそ、新しく掴めるチャンスもあるように感じました。

移住や企業に限らなくてもいい。上勝町との関わりを築いていく一歩目として、うまく活用してもらえたらと思います。

※2020/11/13(金)に開催したオンラインしごとバーのアーカイブはこちら。よければ、あわせてご覧ください。

(2020/10/6 取材 2022/1/24 再編集 中川晃輔)

※撮影時にはマスクを外していただきました。

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