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葉っぱビジネスと
ゼロ・ウェイストの町に
新しい旗を立てるとき

いつかはじめたいことがある。でも、いつ? どうやって?

そんなふうにタイミングを逸してきた人には、この機会をぜひ活かしてほしい。

徳島県上勝町。県中部に位置する小さな町で、「上勝起業塾」という取り組みがはじまります。

端的に言えば、1週間のフィールドワークを通して町の魅力や課題を見つけ、事業プランをつくる短期滞在型起業プログラム。よい事業プランが生まれたら、その後の移住や起業をサポートする体制も整っています。

今回はこの上勝起業塾の参加者を募集します。

ここで考えた事業プランを、自分の地元に持ち帰って実現してもいいとのこと。では、なぜ上勝町で「塾」をひらくのか? その理由は町を訪ねてみてわかりました。

具体的なイメージを持てなくても、興味が湧いたらまずは読んでみてください。

 

徳島空港でレンタカーを借り、1時間ほどかけて上勝町へ。

山道を運転しながら、予習してきたことを思い返してみる。

料理に添える「つまもの」の栽培・販売などを通じ、高齢者の雇用を生み出している“葉っぱビジネス”の株式会社いろどりが生まれた町として。あるいは、2003年にゴミを出さない町を目指した「ゼロ・ウェイスト宣言」を全国ではじめて発表した自治体として。上勝町の名前を聞いたことがある人も多いと思う。

人口およそ1500人、高齢化率50%を超える小さな町ながら、先端的な取り組みの発信地にもなっている。

町内で起業する人も増えていて、レストランや映像制作会社など、ここ7年の間に10を超えるお店や企業が起ち上がった。

今回連絡をもらった合同会社パンゲアもそのひとつ。豊かな自然環境を活かしたキャンプ場やツアーの企画運営を行なっている会社だ。

このあたりの特産品である乳酸発酵茶「阿波晩茶」をすすりながら、代表の野々山聡さんに話を聞いた。

「上勝で『起業塾』をはじめます。今回はその塾生を募集したいんです」

上勝町に1週間滞在し、事業プランを立案。

プランの新規性やビジネスとしての持続性などで審査をし、採用されれば地域おこし協力隊や地域おこし企業人の枠組みを活用して、移住と起業のサポートを受けられるというもの。

野々山さんが塾長を務め、株式会社いろどり代表の横石さんをはじめとする起業の先輩たちがメンターとなって伴走してくれるという。

「近年はSDGsのような世界的な流れもありますし、上勝町が長年取り組んできたゼロ・ウェイストの考え方を取り入れた事業なら、それだけでアドバンテージになると思います」

「ただ、必ずしもそこに事業の軸を置かなくていいと思っていて。上勝町の『資源』をどう活かすか、これに尽きると思うんですよね」

2013年に地域おこし協力隊として上勝町に移住してきた野々山さん。活動のテーマは「観光」の振興だった。

「うーん、観光かあと。でも考えてみれば、当時すでに視察に来る方はたくさんいて。外から町に光が当たるという意味で、視察も観光の類。だったらその文脈で教育ツーリズムができるな、修学旅行も引っ張ってこれるな、とかね」

「88%が山に囲まれた町だからこそ、自然の価値を伝えたいし、滞在できる場所もつくりたい。そうやって広がっていって、ツアーやキャンプ場をはじめることになったんです」

資源は、わかりやすく目に見えるものとは限らない。地域の人にとっては当たり前のものや風景かもしれないし、町の課題にヒントがあるかもしれない。

外からの視線でこの町の資源を見つけてほしいという。

「起業塾で考えたプランを地元に帰って実践してもいいと思っていて。上勝に関わるきっかけは生まれるわけですし、地域で暮らすぼくたちにとっても、新たな事業の種を見つけたり、刺激を受けたりすることにつながるので」

お話を聞く限り、「起業塾」という名前のイメージよりもゆるやかな印象を受ける。

1週間のプログラムも、フィールドワークや事業プランの構築、最終発表までの大まかな流れはあるものの、かなり自由度の高い設計になっている。

会いたい人に会い、行きたい場所に行く。現地での人とのつながりは、野々山さんをはじめ講師やメンターのネットワークをフルに活用してほしいとのこと。

 

「何かはじめるにはちょうどいい環境だと思いますよ」

そう話すのは、合同会社RDND代表の東輝実さん。地元の上勝町にUターンし、7年前に「Cafe polestar」を立ち上げた方だ。

今回の起業塾にもメンターとして関わることになっている。

「中学3年生のときから、将来は上勝に戻ってカッコいい仕事をしながら子育てしたいと思っていて。高校大学と進んで卒業するタイミングで、その『将来』っていつなのかなと考えて、戻ってくることにしたんです」

お母さまが上勝町役場でゼロ・ウェイストの推進担当だったこともあり、町の取り組みやその意義についてはよく話を聞いていたそう。

それに、幼いころから世界中の人たちが視察に訪れる様子も目にしてきた。

この小さな町でなら、自分も何かを起こせるんじゃないか。そう思っていざ開業準備をはじめると、周囲からいろいろな声があがった。

「このあたりはまだまだ浄化槽の入っているお宅って少ないんです。なので、生活排水がそのまま川に流れることも多くて。君たちはお店の排水をどうするんだとか、人口1500人の町じゃお客さん来えへんわ!って話もされましたね」

そういった声は、住民の町に対する想いや、地域ではじまる事業への関心の表れでもある。

コーヒー豆や米の量り売りをはじめ、ゼロ・ウェイストの考え方をお店の経営に取り入れ、伝えていくことで、次第に応援してくれる人も増えていった。

そんなCafe polestarでは今、カナダから来たインターン生のリンダさんが働いている。

小説家の卵を集めた合宿でたまたま上勝町を訪れ、この土地が気に入って長期滞在することに。上勝での就労を目指して、日本語を猛勉強中なのだとか。

「わたしたちは3食の食事と寝るところを無償で提供しますよ、と。その代わりここで働いたり、町内で困っている人がいたら助けてねと言っていて。インターンは、お金を介さずどこまでやれるかの実験でもあるんです」

一緒に暮らしていれば、ゴミの分別も体験する。

上勝町では、各家庭のゴミを町内のステーションまで運び、45分類にわけて処分することになっている。そのおかげで80%以上の高いリサイクル率を実現しているそうだ。

とはいえ、ゴミを洗って乾かして、分別して出すのは決して楽ではない。そのことを事例として知っているだけなのか、実体験を通じて知っているかの違いは大きい。

「もともとこの会社をはじめるときに、“2週間楽しく過ごせる町にするには?”ってテーマがあって。自分は何があったら楽しく過ごせるかなと考えたときに、単にリラックスするだけじゃなくて、コミュニティに参加したり、何かを学んだりする要素が大切だなと思ったんです」

「たとえば一緒に生活するなかで、『この容器は分別がめんどくさいから、次はこっちを買おう』って発想が自然と生まれるとか。地域の人と出会って恋が生まれるとか(笑)。そういうの、楽しいじゃないですか」

ゲストハウスをつくろう、コーヒーの焙煎もしてみたい、上勝のマインドを学ぶ体験プログラムを考えたい…。東さんの想像はどんどん膨らんでいく。

小さな町でカフェを営むことや、ゼロ・ウェイストの思想を事業に取り入れていくこと。簡単ではないけれど、楽しみながらその可能性を拡張しているように感じる。

「メンターとしてわたしは何を伝えられるかなって考えていて。何かをはじめるときに批判を受けたり、不安を抱えることは当たり前にあると思うので、わたし自身の経験をもとに寄り添いながら話ができるかな、というのがひとつ」

「あとはこの春に家を改装したんですけど、いろんな人を招いて一緒にご飯を食べていて。行き詰まったらゆったりと過ごせるカフェもあるし、こういう空間が提供できるのもわたしの役割かなと思っています」

2週間楽しく過ごせる町にするには、何があったらいいか。そんな視点から東さんと一緒に想像を膨らませているうちに、新しい仕事が生まれるかもしれない。

「起業っていうとハードルが高いかもしれないですけど、単純に“コーヒーが好き”とかからはじまって、何ができる?って考えてもいい。上勝はこれまでも何かやりたいっていう人を受け入れてきた地域だと思うし、面倒見のいい人は多いですよ」

 

上勝町役場の地方創生担当として今回のプログラムに力を注いでいるのが、企画環境課参事の桑原定夫さん。

これまでも行政の立場から、新たな事業が生まれるようなフィールドづくりに取り組んできた方。

「世界中どこにいても仕事はつくれる時代になってきた。ほんなら上勝ではじめるのはなぜか、って話になるわな」

「それは集落のあり方と同じで、小さな隙間を埋めながら、絡み合って生きてる、っていうかな。そういう暮らしの価値観、もっと言えば生き方が事業にも映し出される。それこそ地域で事業をする面白さやと思う」

今や上勝町の2大ブランドとも言える「葉っぱビジネス」と「ゼロ・ウェイスト」が生まれ、広がっていく過程を目の当たりにしてきた桑原さん。

この2つには共通点があるという。

「どちらも危機のなかからはじまったんよ」

危機?

「もともと上勝はみかんの一大産地やった。ところが、1981年にごつい寒波がきて全滅してしまった。これをどないかせんといかんってことで、当時JAの職員やった横石さんが葉っぱビジネスを立ち上げてやな」

「ゼロ・ウェイストもなぜ宣言したかっていうたら、上勝にはゴミの焼却場がなかった。野焼きをしようにも、ダイオキシンの問題から規制が強まって。自分たちで考えないといかん、っていう状況からはじまったことなんよな」

避けては通れない課題や危機的な状況を、どう自分たちの力で変えていくか。

そして、ワクワクすることを増やしていかに町を魅力的にしていくか。

ベクトルは反対のように見えるかもしれないけど、やっぱりこれも、野々山さんの話していた上勝の「資源」をどう活かすか、という話だと思う。

自分にとって「お金」や「時間」、「働くこと」ってなんだろう。きっとこの町で過ごす1週間には、そんな問いを突きつけられる瞬間が何度もあると思います。

決まった正解は、きっとない。答えを探す過程で、新しい仕事や次の一歩が見えてくるかもしれません。

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(2019/10/21 取材 中川晃輔)

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