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日本のどこにでもある典型的な田園風景。どこか懐かしさを感じるこの風景を後世に残していくために、新たな農業の仕組みが求められています。

お米とお茶が特産であるこの村では、高齢化に伴う後継者不足や耕作放棄地の増加に悩んでいました。
そこで4年前に立ち上がったのが、みのりの郷東白川株式会社です。
会社で大型機械を所有し、田おこしや田植え、稲刈りなどの作業を受託。村の農作業を一手に引き受けています。
今回は、みのりの郷で働く人を募集します。
自分の興味に合わせて、取り組む農作業の幅を広げたり、別の生業と組み合わせたり。農業を軸に、いろんな挑戦ができる環境だと思います。
岐阜県の白川口駅を目指して、名古屋駅から約80分電車に乗る。目的地へ近づくにつれ、山が目の前にせまってくる。
白川口駅からさらに清流沿いに車を走らせること20分ほどで、東白川村に到着した。

テレビを消すと、外からザーッという音が聞こえてくる。雨が降ってきたのかと思い窓をあけると、近くを流れる川の音だった。
耳をすますと虫の音も聞こえてきて、すっかり秋なんだと気がつく。
翌朝村役場を訪ねると、東白川村の村長で、みのりの郷の社長も務める今井さんが出迎えてくれた。

「甘みがあって、もちもちしているんですよ。森林に囲まれた村だから、水がきれいっていうのが美味しさの一番の要因やと思うね」
そういえば、宿の朝食で食べたお米も東白川村産だった。
美味しくて、いつもよりご飯をたくさん食べました。
「お茶も美味しかったでしょう。僕らにとっては子供の頃から馴れ親しんだ味だけど、飲みやすいとよく言われますね。朝晩の寒暖差と、川からあがる朝霧がいい影響を与えて、良質なお茶になるんですよ」

村のお米やお茶が全国で高い評価を得ている一方、農業を取り巻く状況は厳しかった。
「農家さんの高齢化が進んでいるから、農作業を続けるのが大変でね。それに、農作物の価格低迷によって、農業だけでは生活が苦しいという現実もあって。農地を手放す方が増えています」
東白川村の農地や農業を守っていくためには、農家さんをサポートする仕組みをつくり、次の担い手もつくっていかなければならない。
そんな想いから、4年前に立ち上がったのが「みのりの郷」。
トラクターやコンバインといった大型機械を所有して、農家さんから農作業を受託。専任の機械オペレーターが、田おこしから田植え、稲刈り、乾燥調整までの作業を引き受けている。

「僕らが子供の頃は、みんな田んぼで野球をやってねえ。木の棒でうって、手でとって。そんなふうに、田畑はずっと村の一部だったんです」
「手入れをしなくなると、田んぼには草が生えて、茶畑は葉が伸びる。そうやってどんどん荒れていってしまうんですね。先祖代々残してくれた田畑を、荒らしてしまうのは悲しい。稲穂の金色や茶畑の緑が輝くこの村の風景を、ずっと先まで守りたいと思っているんです」
みのりの郷では、具体的にどんな仕事をしているんだろう。支配人の安江さんに話を聞いてみる。

そのほか、機械オペレーターとして登録している方が12人。農業のほかにも生業を持っていて、空いた時間でみのりの郷の作業を請け負っている。
「オペレーターは、長年農業に携わってきた方が多いから、経験値が違いますね。田んぼを見て、どういう風に稲を植えたり刈ったりするのが一番いいか、瞬時に見極めて判断してくれます」
田んぼそれぞれの形や深さ、乾き具合に合わせ、機械の動きを調整していく。見かけよりずっと繊細な作業なんだそう。

農業の経験がなくても、できるものでしょうか?
「もちろん最初からできるものではないね。まずは、補助員としてサポート業務からやってもらうよ」
「補助員は、機械の故障の原因となる石が落ちてないか調べたり、タンクにたまった稲を袋に入れたりしてね。オペレーターの仕事を見て学びながら、ゆくゆくは機械の免許をとって技術を習得してもらいたいですね」
日々の作業も、安全面を考慮してオペレーターと補助員がセットになっておこなうことが多いそう。

「それと、事務所は農家さんの相談窓口にもなっていて。毎年、天候によって田んぼの状態も変わってくるので、農作業に関する相談をよくもらうんですよ」
そんな話をしていると、ちょうど農家さんが事務所を訪ねてきた。
農家さんの質問に素早く答え、必要な資料を渡す安江さん。知識と信頼があるからこそ、みんな安心してここにくるんだろうな。
「コミュニケーションが一番大切ですよ。仕事ができる・できないより、人との関わりを大切にできる人にきてもらいたいね。農地の維持には、農家さんとの協力が必要なんです」
「最近はお茶の栽培も進んでいて。肥料をあげて、機械を使いながら複数回にわたって剪定をしています。今回募集する人も、農家さんやオペレーターに教えてもらいながら、お茶の栽培技術も身につけてほしい」

田畑を荒らしたくない一心で、体力を削りながら頑張っている高齢の農家さんもたくさんいるという。
ここには、田んぼや茶畑のある景色が欠かせない。村の多くの人がそう思っているのかもしれない。
「お米とお茶は微妙に作業時期が違うので、お米がある程度終わったら次はお茶っていうふうに、やることはいつもある。とくに農業という職業柄、春から秋までがとても忙しいです」
繁忙期は通常より休みが少なくなることもあるものの、春から秋にかけて頑張るぶん、冬にまとめて休みをとることもできるそう。
「まとめたら、冬の間に最大2ヶ月休めますよ。旅が好きだったら、その期間に旅行しまくるっていう生活もできると思います」
「うちで面白い働き方をしてる子がいるんですよ」と、安江さんが紹介してくれたのが、みのりの郷で働く志村さん。

そのひとつが、しめ縄づくりのワークショップを通じて日本文化を広める団体の支援だった。
「お正月になるとお正月飾りの準備をしたり、初詣に行ったりするけれど、その理由を知らない人が多い。みんなが習慣としてやっているからやらなきゃと思っているだけで、その意味は忘れられているんですよね」
「お正月は本来、新年の神様である『年神様』を各家庭でお迎えして1年の家族の健康や幸せを願う習慣です。忙しくなると、今年のお飾りは鏡餅だけ用意しておけばよいかと思ってしまうかもしれませんが、門松、しめ縄、鏡餅にもそれぞれ意味があるんですよ」
そこに込められた意味を知ることで、文化を残そうという意識にもつながる。日本文化を残すために、まずはお正月の文化からたくさんの人に伝えたい。
東白川村のことは、しめ縄の原料である藁の調達場所を探していたときに知ったんだとか。
「この村は、明治時代の廃仏毀釈によって、今もお寺のない日本唯一の村。神道文化が色濃く残っていて、一年中多くの家の玄関にしめ縄が飾ってあるんです。そこに縁を感じて、この村で原料をつくりたいと思い、移住を決めました」

そこから4年が経ち、今はみのりの郷の事業として、しめ縄用の藁づくりに取り組むようになった。
「しめ縄に適した品種を育てて、米が実る前の青々とした状態で刈りとっています。藁を育てて、乾燥させるまでがみのりの郷としての仕事です」

志村さんのように、自分の興味関心がみのりの郷の新事業につながることもあるかもしれない。
「ここで働いていたら、生活するためのスキルは身につけられる。そのぶん、ほかのことにも挑戦しやすいんです。私を含め今働いているメンバーは、なにかしら別の仕事にも挑戦していますね。前職のWeb関連の副業をしたり、他の土地で身につけたスキルを活かして、東白川に合った野菜づくりに取り組んだり」

農業を軸にしてここに根づきながら、自分なりにできることを考えてほしい。
「もちろん、農業は楽ではないですよ」と志村さんは続ける。
「最初は特に、体力面がきつかったですね。体が悲鳴をあげます。家についたら、ご飯より先にとりあえず寝る生活が続いていました。東京にいた時はデスクワークや営業で外を少し歩く程度だったので、肉体労働になれるまでが大変でした」
「あと、農業は天候に左右されるから、頭で計画しているようには物事が進んでいかない。そのせいか、こちらに来てから自然と、太陽のことを“お天道様”って呼ぶようになった気がします。普段食べている食料も、当たり前でなく農家さんの努力があってこそのものなんだなって考えるようになりましたね」
かつては、誰もが「百姓」だったといいます。
農業を地域みんなで行いながら、それぞれ別の仕事もしているのが当たり前。そんな働き方から、百の生業を持つ「百姓」と呼ばれるようになったそうです。
ここでの仕事も、きっと同じ。農業を軸にしながら、どんなことに取り組めるだろう。
そんなふうに考えられる人には、おもしろい環境だと思います。
(2020/9/15 取材 鈴木花菜)
※撮影時にはマスクを外していただいております。