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日本一の黒豆屋さん
丹波のいいものを
ぎゅっと詰め込んで

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

お正月の主役といえば、色とりどりの料理が詰まったおせち。

かまぼこ、栗きんとん、伊達巻に数の子。そして欠かせないのが、黒豆です。

全国さまざまな産地があるなかで、兵庫県の丹波篠山(たんばささやま)でとれる黒豆は、大粒でもっちりとやわらかく、やさしい甘さがあると古くから有名だったそう。

そんな丹波の黒豆を専門に取り扱ってきた老舗が、小田垣商店です。国内でもめずらしい黒豆の専門会社として、およそ150年前から黒豆を販売してきました。

丹波の黒豆のおいしさと物語、丹波篠山の文化を、日本と世界の人に伝えて黒豆文化を未来へ繋げたい。そんな想いから、来年の春、新たにカフェを併設したショップを改装オープンすることになりました。

今回は、カフェのシェフと、カフェとショップで働く接客スタッフを募集します。

(取材はオンラインで行いました。現地の写真は、ご提供いただいたものを使用しています。なお、店舗と庭園の写真は改装前のものです。)


兵庫・丹波篠山。

車だと、京都や大阪、神戸からそれぞれ1時間ほどで到着するそう。

古くは「丹波国(たんばのくに)」と呼ばれ、京都との交通の要として栄えてきたこのまち。中心には篠山城跡があって、大きな石垣が当時のまま残っている。

小田垣商店がお店を構えているのは、城跡を囲うように広がる城下町の一角だ。

「篠山は畑や田んぼが広がるのんびりとしたところなんですが、このあたりは、武家屋敷や商家のまちなみが残っていて。わたしたちの店舗も、江戸時代に建てられた建物なんです。毎年大勢のお客さまでにぎわうんですよ」

まちの様子を教えてくれたのは、小田垣商店の代表、小田垣昇さん。

1734年、将軍・徳川吉宗の時代に創業した小田垣商店。

もともとは鋳物商(いものしょう)といって、刀や錫をつくってお城に納めることを生業としていたものの、江戸時代の末期から商売がだんだんと厳しくなってきた。

「明治時代からは、篠山の農家さんに野菜の種を販売する種物商に転業しました。先代はそのなかで、この地で古くから黒豆がつくられていることを知ったようなんです」

丹波篠山では、400年以上前から黒豆が栽培されている。

ただ、当時は稲作が奨励されていたため、栽培していたのはごく一部の農家のみ。収穫量もわずかで、地元の人にもほとんど知られていなかった。

「丹波の黒豆はほかに類を見ないほど大粒で、豆本来の甘みが強くて、本当においしいんです。水戸の黄門さまに献上したという記録も残っています」

「先代も、こんなにすばらしいものが知られていないのはもったいないと思ったようで。収穫できた黒豆はすべて買い取るから一度つくってみてほしい、と農家さんにお願いしたんです。それが当店の黒豆屋としてのはじまりだと聞いています」

以来、およそ150年にわたって、丹波の黒豆「丹波黒(たんばぐろ)」に特化して商売を続けてきた小田垣商店。

現在では、農家さんへの種の販売はもちろん、料亭や和菓子屋に向けた豆の卸売や、一般家庭向けの大豆や煮豆、豆菓子など加工品の販売もおこなっている。

大粒で、甘味が強いという丹波黒。ほかにはどんな特徴があるんですか?

「乾燥豆は白い粉を吹いているんですが、煮るときれいな漆黒の色つやが出てくるんです。よく膨らむけど皮は破れづらくて、噛むともちもちしている。とにかくおいしい!という言葉に尽きますね」

「全国にあるさまざまな品種のなかでも、丹波黒は最高級品種として知られています。そのぶん栽培は非常に手間暇がかかる豆で、生産者のみなさんは『黒豆やなくて、苦労まめや』と言うくらいなんです」

数百年間、特別な品種改良をおこなわず、その年に実った良い豆から種をとり、また植えて…。地道な作業を繰り返すことで受け継がれてきた丹波黒。

そのため病気や天候不順に弱く、豊作は四年に一度あればよいと言われているそう。ほとんどの年で、ほかの品種の収量の半分にも及ばないのだとか。

「丹波黒の栽培は、6月の種まきから1月の収穫までほとんどが手作業なんです。一般的な黒大豆と比べると、同じ面積でも10倍近く労力がかかるといいます」

「我々の商売は、生産者のみなさんがいてはじめて成り立ちます。畑や農協さんに社員が出向いて相談に乗ったり、栽培のアドバイスをしたりすることもよくあるんですよ」

そうして収穫された豆は工場に運ばれ、職人たちの手によって選別されていく。

皮は破れていないか、虫食いはないか、ひび割れはしてないか。職人の厳しい審査に合格した豆だけが、「小田垣ブランドの丹波黒」として世に出るのだそう。

現在、国内で生産される丹波黒のおよそ7割を取り扱っている小田垣商店。

丹波黒を身近に楽しんでもらおうと、近年はアイスクリームや黒豆茶など、新しい商品の開発にも取り組んでいる。

「近ごろは黒豆といえば健康というイメージも根付いてきて、お正月以外でも黒豆を楽しんでいただけるようになりました。これに満足せず、もっと多くの方に丹波黒のおいしさや、産地である丹波篠山のことを知ってもらいたいと思っています」

そんな想いを実現する場所をつくろうと、現在、小田垣商店では店舗の改装を進めている。

第一期に改装するのは、国の登録有形文化財に指定されている10軒の建物のうち、5軒の建物。さらに庭の改装も行い、工事が完了する来年の4月、カフェを併設したショップとしてリニューアルオープンする。

「歴史を感じる建物の中で、黒豆をゆっくり味わっていただいて、丹波篠山の文化に触れる。黒豆をメインに、この地のいろんな良いものを紹介したいと思っています」

核となるのは、庭を眺めながら黒豆スイーツを味わえるカフェと、こだわりの黒豆商品、そして丹波の良いものを集めたセレクトショップ。

かつて丹波国として栄えたこの地には、黒豆のほかにも、伝統の丹波焼や丹波布、地元の作家さんがつくったガラス製品など、魅力的なものがたくさんある。食品も、地酒やお菓子など地域のものを取り揃える予定だそう。

今回は、カフェの厨房で働くシェフと、カフェとショップで働く接客スタッフを募集したい。

接客スタッフは、商品や店内のしつらえ、丹波の物語を伝えるスペシャリストとして、今後「コンシェルジュ」を名乗る予定。仕事を通してそれらを勉強してみたい、伝えてみたいという人に、ぜひ来てほしいと小田垣さん。

そしてシェフは、カフェで提供するお茶と軽食の調理を担当する。今は来年のオープンに向けて、社内でメニューのアイデアを募っているところだそう。

会社にとってもはじめての飲食店。今回は、具体的なメニュー開発やオペレーションなど、厨房の中心を任せられるような調理経験者に出会いたいそう。

「まずは日本の多くの人に、黒豆や篠山の魅力をあらためてお伝えするというのが大きな目標です。ゆくゆくは海外の方にも、『このお店を目当てに丹波篠山に行ってみよう』と思ってもらえたらうれしいです」

「当店が黒豆と丹波の文化、芸術の発信拠点となって、黒豆と丹波篠山のファンを世界中に増やすことができたらとてもいいなと思っています。シェフも接客スタッフも、チームメンバーとして同じ目標に向かって一緒に励んでいきたいですね」



続いて話を聞いたのが、20〜30代のスタッフが集まる接客チームをまとめている中野さん。カフェのホールとショップは、中野さんが中心となって運営していく予定だそう。

取材中も、周りのスタッフに慕われている雰囲気が伝わってきた。きっと新しく入る人にとっても、頼もしい先輩になるはず。

「わたしは篠山出身なんですけど、よそから来られたお客さまのほうがまちのお店や文化に詳しいことがよくあって。これからは豆のほかにも、器や紙、お酒も扱うので、ちゃんと自分の足でまちを歩いて勉強しないといけないなと思っています」

お客さんは、観光客の方が多いんですか?

「そうですね。毎年うちで黒豆を買うことを楽しみに来られる方もたくさんいらっしゃいます。年末になると『今年も小田垣商店の時期がきたわー』といらっしゃって、最後に『じゃあ、また来年!』って(笑)」

「10月は枝豆の季節なんですけど、この時期や年末はとくにお客さまが多くて。本当に忙しくて、お祭りのような雰囲気ですよ」

豆の特徴や調理方法をお客さんに尋ねられることも多い。中野さんも、小田垣さんや工場の職人さんの話を聞いたり、仲間と情報交換しながら知識を蓄えてきた。

「蒸し豆にしてサラダやスープに入れてもおいしいですよってお伝えしたら、それは思いつかなかった!って喜んでもらえたり。逆にお客さまに『どんなふうに料理されてます?』ってお聞きして勉強させてもらうこともあって」

お店のスタッフを信頼して、何十年と通い続けてくれるお客さんもいる。長く続く関係性は、歴史を積み重ねてきた老舗だからこそ。

「お客さまにご迷惑をおかけしないことと、喜んでいただくこと。その点に関しては、厳しく指導することもあると思います。はじめて来店される方も、いつも来てくださる方も気持ちよくお迎えしたいですよね」

「わたしもまだまだ勉強中なので、いろんな人とコミュニケーションを取りながら、一緒に頑張っていきたいです」




黒豆には、「みんながマメに、達者で暮らせるように」という願いが込められているといいます。

黒豆をおいしく味わい、心を満たすお店をつくりたい。そしてたくさんの人に、丹波篠山の魅力ごと黒豆を知ってもらいたい。

“日本一の黒豆屋”を掲げるみなさんらしい、前向きな姿が印象的でした。

(2020/09/10 取材 遠藤真利奈)
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