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地域の魅力を発掘する
広がれ!曽爾の輪

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旅をしたいと思ったとき、旅先でどんな体験ができたらうれしいだろう。

たとえば、その土地でしか採れない旬の野菜を収穫し、料理も教わりながらつくって一緒に食卓を囲む。

いわゆる観光地だけをめぐる旅も楽しいけれど、もっと地域に根ざした体験ができたら、その時間はよりかけがえのないものになるかもしれません。

奈良県宇陀郡曽爾村(そにむら)。

三重と奈良のちょうど間に位置し、漆塗り発祥の地といわれている場所。トマトやほうれん草などの高原野菜が豊富で、ススキが群生する曽爾高原は年間およそ50万人が訪れる観光地でもあります。

一方で、曽爾高原だけを見て帰る人も多く、地域の魅力を面的に伝えきれていないことが長年の課題でした。

それを解決すべく今年立ち上がったのが、一般社団法人そにのわGLOCAL。

村の魅力を掘り起こし、村人を巻き込んだ体験コンテンツとして提供することで、新しい観光の形をつくっています。

今回は、そのコンテンツづくりに携わる人の募集です。自然が好きで、人と話すのも好き。そんな人は、ぜひ続きを読んでみてください。


曽爾村へは、名古屋から近鉄とバスを乗り継いで2時間半ほど。車だと大阪から1時間半ほどの位置にある。

村に到着し、まず向かった先は、2年前に古民家を改修して建てられた漆復興拠点施設「ねんりん舎」。曽爾村役場の高松さんに話を聞かせてもらう。

「曽爾高原や良質な温泉など、いわゆる観光資源は昔からあって、それなりに観光客も来てくれています。けれども、もっと村のことを深く知ってもらい、経済も回していけないだろうか、というのが長年の課題でした」

これまでの曽爾村観光は、大型の観光バスでやってきて、曽爾高原を見て温泉に入って帰るという行程がほとんど。

村人もどんな人が村に来てくれているのかわからず、どれほど観光客が来ても、ツアーの代金は村外の旅行会社に支払われるだけという状況だった。

「役場でも、村がもっと豊かになる観光の形があるんじゃないかという話になって。高原だけじゃなく、山や川、田舎だからこそ残っている村人の暮らしぶりや、漆発祥の地という歴史的背景も。全部ひっくるめて曽爾村の魅力やと思うんです」

「その魅力を掘り出して、観光に来た方に体験してもらえるコンテンツにする。なおかつ、村内にお金が回る仕組みをつくる。そにのわGLOCALは、そんな目標を実現するために立ち上がりました」

現在は役場の企画課のみなさんがサポートしつつ、地域おこし協力隊の林さんがコンテンツづくりや地域との調整役を担当している。

新しく入る人はそにのわGLOCALの契約社員として、林さんと一緒にコンテンツづくりに携わることになる。

「林さんは、村の人の気持ちをうまくすくいあげて、良さを引き出してくれてるんですよ。少人数で進めているぶん、自分で考えて動いていける人に来てもらえたらうれしいですね」


続けて高松さんが紹介してくれたのが、協力隊の林さん。

昨年の12月に曽爾村へ移住。コンテンツづくりを主に担当してきた。

「もともと東京の広告代理店で働いていました。曽爾村のことはまったく知りませんでしたが、結婚相手が曽爾村の元地域おこし協力隊だったんですよ。村を気に入って、そのまま定住したいということで、私も移住することになりました」

「地域活性化に関わる仕事ができたらいいなと思っていたときに、そにのわGLOCALのことを紹介してもらって。今までの仕事でも、人と向き合うなかで課題や魅力を見つけ出すことをしていたので、その経験を活かせているんじゃないかなと思ってます」

村の自然や人、物など、さまざまな要素から観光コンテンツになるものを探し出し、観光プログラムとして形にする仕事。

初めての土地で、0から企画を立ち上げるのはむずかしそうですが、どんなふうに進めていったんでしょう?

「じつは移住する1年ぐらい前から、月に1回ほど曽爾村には来ていました。その期間に、少しずつ村の人との関わりができていって」

「移住してきてからは、ひたすら地域の人の話を聞きに回りました。『村にちゃんとお金が入って、来てくれた人によろこんでもらえる仕組みをつくりたいので、力を貸してください!』って」

最初は不審がっていた村の人たちも、林さんの地道なコミュニケーションで、だんだんと心を開いてくれるようになった。

「特技や趣味があるとか、村の歴史や自然の知識があるとか。本人は気づいていないことでも、『それってすごく価値があることですよ』って、丁寧に掘り起こしていきました」

つまみ細工が得意だったり、料理上手だったり。豊かな自然を生かして暮らしている人や、曽爾弁で曽爾のことを語れるアメリカ人の移住者もいる。時には紹介してもらいながら、次第に人の輪がつながっていった。

魅力的な人を見つけたあとも、体験内容の企画や料金設定まで。じっくり話し合いを重ねつつ決めていった。

こうした体験コンテンツをひとつにまとめたのが、心身健美ツアー。一泊二日で、心と体が健康になれるようなプログラムになっている。

たとえば初日は、地元食材を使ったランチを食べた後に、体験の時間がある。

「お寺で念仏・祈祷・鐘つき体験」「村民宅でつまみ細工」「村内のサイクリングと獅子小屋見学」「田舎こんにゃくづくり体験」など、全部で7つの体験を用意しているそう。

その後は夕方の曽爾高原をガイドと一緒に散策し、温泉に入って宿泊。2日目はハーブやトマトなど、作物の収穫体験ができる。

どれも村民が関わっていて、ツアー代金の一部は直接村民に支払われる仕組みになっている。

「今は一泊二日のツアーのみですが、国内旅行だと半日だけのコースや、その場で申し込める単発の体験のニーズが高まっています。心身健美ツアーはインバウンド向けで企画したので、今後は国内向けのものをつくっていきたいんです」

すでに体験として形になっているものをアレンジしたり、地域に入って新たなコンテンツをつくったり。

地元の人を巻き込んで進めていく事業なので、地道にコミュニケーションを交わしていく力が必要だと思う。

「正解がわからないものをつくるって、すごく大変なんです。本当にパワーがいるし、先頭に立って進める役割なので、いろんな責任とかプレッシャーもある」

「本当にこれで人が来てくれるようになるの?」という声もあったし、ボランティアではなく、事業として成り立つモデルをつくらないと続いていかない。

「でも、自分が開拓したら次の人が続いていけるし、応援してくれる人も出てくる。だったらしんどくてもやったほうがいいし、やるかやらないかだったら、やるしかないって、私は思うんです」

曽爾村には現在、林さん含め8人の協力隊がいるそう。若い世代の移住者も多い。

「私もサポートするし、役場の高松さんも『負けないでやっていこうぜ』って、一緒に現場に立ちながら支えてくれていて」

「大変なことがあっても、村の人の『ありがとう』って一言で吹っ飛ぶんですよ。それをやりがいに感じてくれる人だったら私もうれしいですね」


村の人ともぜひ話してみてください!と、林さんが連れていってくれたのは、農家さんのお宅。

迎えてくれたのは、ほうれん草の栽培や手づくりこんにゃくの製造をしている奥西さん。地域では料理上手で有名だそう。

煮物や佃煮など、素朴な田舎料理が得意だという奥西さん。そにのわGLOCALでは、田舎料理体験やこんにゃくづくり体験の先生として関わっている。

「声かけてもらったときは、たいしたもんつくってないのに、これでいいのかなあと思てたんやけどね。田舎の味を若い人にも知ってもらえたらええなって、引き受けたんです」

手づくりのこんにゃくとごぼうの煮物、ふきの佃煮に、山菜の天ぷら。どこか懐かしい田舎の味は、外国人の参加者にも好評だったそう。

「最初に体験ツアーをしたときは、前日寝つけれんくらい緊張してね(笑)。でもやってみると楽しくて。普段つくってるものを喜んでもらえるのはうれしいですね」

「安心して食べられるものっていうのは、料理の基本なんです。食べるものから体はつくられるからね」

料理体験だけでなく、レシピ化して自宅でもつくってもらえるようにしたり、村内のレストランでも提供できるようにしたり。

奥西さんと林さんのアイデアは、さまざまな方向に広がっている。

「昔はね、曽爾村出身っていうのが恥ずかしいって、子どもが言うてたんです。田舎すぎて学校でばかにされるって」

「今は若い人が移住してくれたり、旅行で人が来てくれたりして。みんながええとこやって言ってくれるのがうれしくてね。林さんもがんばってくれてるから、ありがたいことやと思ってます」

その後、ほうれん草畑も案内してもらった。

家で食べて!と、どっさりおすそ分けをいただく感じも、村の人と直接関わるからこそ経験できること。

まずはどっぷり、この村での生活に飛び込んで楽しむことからはじまるんだろうな。


最後に案内してもらったのは、村内にあるゲストハウス「月陽(つきひ)」。Iターン移住者で、林さんが村のガイド役をお願いしているおふたりが迎えてくれた。

まずは「月陽」を運営している森岡さん。

「僕は6年前に曽爾村の地域おこし協力隊第1号として移住してきました。任期後もそのまま残って、去年からゲストハウスを運営しています」

自然療法やパーマカルチャーに関心があるという森岡さん。有機栽培の畑や、クロモジや竹を使ったものづくりをしながら、その暮らしをゲストハウスのお客さんにも体験してもらっている。

「林さんが、僕の暮らしぶりが面白いって声かけてくれて。森の中でのヨガやものづくり体験やったら、自分も協力できるなと思ったんです」


もうひとりの大藤さんも、林さんに声をかけられてガイドを務めている方。

2年ほど前に移住し、フリーランスで翻訳の仕事をしている。

「曽爾で暮らしていると、いろんなものに感動するんですよ。山の風景も日々変わるし、星もすっごくきれい。初めて見たとき、びっくりして夜空を二度見しました(笑)。移住してきたからこそ気づく魅力を伝えていけたらいいなと思っています」

「奥西さんもご近所なんですよ。村の人たちはみんな素敵で、親切にしてくれるからありがたいなって。村の力になれるように、林さんたちと一緒にがんばっていきたいですね」


魅力は表に見えないだけで、ちゃんとそこにある。

入り口さえつくれれば、旅の選択肢ってもっと広がるし、いろんな人がその面白さを味わうことで新しい可能性が広がっていくこともあると思います。

これから広がっていく輪に、自分も加わってみたい。そんなふうに思った人は、ぜひ応募してみてください。

(2020/10/15 取材 稲本琢仙)
※撮影時にはマスクを外していただいております。
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