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波乗りするような建築
自然のダイナミズムと
あたたかな営みと

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

STUDIO MONAKAは、京都と沖縄に拠点を置く一級建築士事務所です。

京町家をリノベーションしたり、住宅を建てたり。いわゆる「建築」の仕事も手がけるのですが、あるときはマルシェやライブを企画したり、またあるときは、芸術祭を支える黒子になったり、地域団体を立ち上げたり。

あらゆる分野のプロフェッショナルや職人、地域の人たちを巻き込みながら、従来の「建築」の枠組みを超えたプロジェクトを次々に立ち上げてきました。

遊びやたわいもない会話のなかから、仕事が立ち上がってゆく。その過程に触れていると、建築にとどまらない「仕事」の本質について考えさせられます。

なぜそれに取り組むのか。誰のため、なんのための仕事だっけ? そういった問いかけや議論を、絶えず繰り返している人たちだと思います。だからこそ自由で柔軟で、おもしろい仕事ができている。

そんなSTUDIO MONAKAの沖縄事務所で働く設計スタッフを募集します。

 

11月初旬。

関東はすでに肌寒い季節。

沖縄・那覇空港に降り立つと、もわっとした空気に包まれた。外は30℃に迫ろうかという気温らしい。

空港から車で10分ほどの事務所へ。高台に位置しているので、眺めがよくて気持ちいい。

いったん荷物を置かせてもらい、向かったのはMONAKAにとって沖縄の第一号案件となった住宅。ここで共同代表のひとりである岡山さんが迎えてくれた。

お会いするのは7月の取材ぶりだ。

「暑いですね〜。京都を出るときは気温2℃とかだったので、ギャップにちょっと浮かれてます(笑)」

沖縄の亜熱帯気候は、じつは建築と密接に関係している。

たとえば、断熱。年間通して温暖なため、屋根以外に断熱材を使う必要がなく、半屋外の開放的な設計にも挑戦しやすい。

一方で、台風の猛威や強い紫外線を受けるという側面も。

「建物に何か起きても直せばいいっていう寛容さというか、ゆとりみたいなものは地域性としてあるのかなと。だからと言って我々が手を抜くわけじゃないんですけど、仕事はしやすいように感じますね」

建築をつくる過程でも、完成して使われるようになってからも。「許容力」は、MONAKAが大切にしてきたキーワードのひとつ。

設計者のイメージをただ形に起こすのではなく、職人や施主さん、地域住民を巻き込みながら、長く残るものをつくっていく。状況の変化や、多様な立場の人の想いを受け止められる建築が、よい建築。

そんなMONAKAのスタンスと、沖縄のゆったりとした地域性は、相性がいいように思う。

「余白はすごくある土地だと思います。たくさんのプレイヤーがいる都市部で切磋琢磨するのもいいですけど、沖縄は自分のアイデアや好奇心を落とし込んで広げていけるよさがあるように感じますね」

沖縄での仕事が増えてきたのはここ1〜2年のこと。

今は新しく保育園をつくるプロジェクトや、20年以上地元で愛されてきたカフェの建て替え、北部の“やんばる”と呼ばれる地域の古民家をリノベーションした宿の計画など、さまざまなプロジェクトが進んでいる。

とくに多いのが、住宅と小商いの分野。京都に比べて沖縄は、個人の小さな「やってみたい」からはじまる仕事が多いのだとか。

というのも、沖縄には大手ハウスメーカーがあまり進出しておらず、設計事務所や工務店に依頼するのが一般的。自然と個人のお客さんも多くなる。

「ぼくは小商いって、まちの顔をつくる仕事だと思っていて。地域にひとつお店ができることは、そのまちの個性やコミュニティにも関わってくると思うんですよね」

本島中部のうるま市では、「神元商店」のリノベーションプロジェクトが進んでいる。

もともとは日用雑貨や食料品などを揃え、80年近く集落の人たちの生活を支えてきたお店。3年前に店主のおばあちゃんが引退して空き家になっていたものの、名前を継いで何かはじめたいという孫たちの声からプロジェクトが立ち上がった。

そして「神元商店」はかき氷屋さんとして生まれ変わることに。

「ただおしゃれなお店をつくるんじゃなくて、地域の人たちに愛着を持ってもらえる場所にしたい。テーブルとか一部の家具は、今ワークショップで一緒につくっています」

京都ではマルシェやライブを企画したり、芸術祭の運営をサポートしたりと、「建てない」活動にも取り組んできたMONAKA。

沖縄でも、その代表的な例として「琉球弧リペア」というイベントを2年前から開いてきた。

「北のやんばるから南の那覇まで、毎日イベントをやってつないでいくような3日間のプロジェクトで。ポートランドから、シティリペアっていうまちづくりの市民活動を続けているマット・ビボウさんを呼んで、一緒に回るんです」

アーバンパーマカルチャーやまちづくりに関心がある人、自由な生き方をしている人、地域の家族づれなど。いろんな人が集まってきて、同じ時間を共有する。

今年はコロナ禍を受けて中止になってしまったけれど、これからも続けていきたいという。

「建築って、単純に建物をつくる仕事じゃないと思うんですよね。その土地に暮らす人の営みやカルチャー、環境も全部ひっくるめて建築で」

「戦争でいろんな分断が起きてしまった沖縄で、何ができるか。ぼくたちはアカデミックな専門家ではないですけど、自分たちなりの感覚で、ひとつずつ、つないでいけたらおもしろいんじゃないかなと思って、今いろんなことをやっているような感じですね」

 

続いて話を聞いたのは、岡山さんと一緒にMONAKAを立ち上げた共同代表のひとりで、沖縄出身の仲本さん。

今は京都と沖縄を行ったり来たりして働いているものの、来年にかけて徐々に重心を沖縄へと移していく予定だそう。新しく入る人にとって、もっとも身近な存在になると思う。

出身地とはいえ、仕事で関わるようになってみて、あらためて驚くことも多いという。

たとえば、ユタと呼ばれる占い師の存在。大事な決断をするときにはユタに話を聞く風習がいまだに残っているそうだ。

「そこで設計プランがひっくり返ることもあります。玄関は南じゃなくて東のほうがいい、とか。今は建てるタイミングじゃない、とか」

わあ、すごい影響力。

「ユタのアドバイスは覆せないんです。今から変えるのは大変なんだけどな…と思いながら、プランを練り直して(笑)。エリアにもよりますが、わりと本当に起こります」

「あとは、京都だと区画整理されていることがほとんどですけど、沖縄では土地の要件整理からはじめることも多くて。崖の近くとか、こんなところに建てるんだ!ってびっくりすることもあります。制約が少ないのは、大変だけどおもしろい部分ですね」

変化に富む自然環境と、スピリチュアルな世界観。そういったものが、人々の暮らしと密接に関わっているのがおもしろい。

一方で、“うちなーぐち”と呼ばれる方言やさまざまな風習が、時代の流れととともに薄れていくのも感じるという。

それは自然な流れではあるけれど、建築を通して残していけるものもあるかもしれない。

「ぼくの目標としては、沖縄の建築のモデルをつくっていけたらと思っていて。一緒に形にしていける人に来てほしいですね」

今回募集するのは設計スタッフ。少なくとも3年は実務経験を積んだ人を求めている。

とはいえ、机に向き合うばかりの仕事ではない。

「自分の作家性を発揮していきたい人は向かないかもしれません。どちらかと言うと、黒子に回って職人さんの技を引き立たせたいとか、チームでいいものをつくっていこうっていうメンバーが集まっているので」

頭や手だけでなく、足を動かしていろんな人と対話しながら、空間をつくっていく。そんなふうに設計という仕事を捉えられる人には、とてもいい環境だと思う。

 

そんな働き方を地でゆくのが、沖縄事務所のチーフを務める伊佐さん。

生まれ育ちは那覇。大学時代を除けば、ずっと沖縄を拠点に活動してきた。

「沖縄で仕事するなら、地場のつながりが大事だってことはわかっていたので、大学を卒業してすぐに帰ってきて。設計事務所に勤めながら、コミュニティをつくっていきました」

そのつながりは、どうやって広げていったんですか?

「まず自分を知ってもらうために、何か表現したいなと思って、写真を撮ってたんです。その流れで誘いを受けて、東京の戸越銀座で写真展やったり、異業種交流会を開いたり。なんでもやってましたね。ぼくが建築やってることをいまだ知らない友だちも多いと思います」

伊佐さんが20代のころから築いてきたネットワークは今、多方面に活かされている。

本島北部の“やんばる”では、最近次々にプロジェクトが生まれているという。

「たとえば国頭(くにがみ)っていう場所で、村が所有していた中古物件を活用してくれないかって依頼があって。まあ予算が少なかったんですよ。それで、いい空間をつくるなら廃材を使うしかないと思って、探し回って」

自然豊かな沖縄のなかでも、林業の成り立つ土地は限られている。曲がりくねった樹種が多いためだ。

国頭は数少ない林業の村。伊佐さんは、土建屋さんのバックヤードから廃材をもらったり、格安で買い取ってカンナをかけ、家具に仕立てたりと、工夫しながら空間をつくっていった。

「国頭ヘントナラウンジっていうコワーキングスペースが今できていて。そんなことをしていたら『伊佐さんっていう変な人がいるよ』って、やんばる内で噂が広まって(笑)。住宅の依頼を受けたり、本島の最北端にある辺戸(へど)っていう地域に宿をつくる計画があったりとか。そういう感じで、どんどん広がっていっているような状況ですね」

宿をつくるというのも、ハードの設計をするだけでなく、大学教授と地域をリサーチしたり、自然体験のツアーを考えたりと、ソフトの構想・企画から関わっているという。

やわらかくも真剣に、ときに遊ぶように働いているみなさん。

話を聞いていて、いいなと思う一方で、ふと疑問が浮かび上がってきた。

一体いつ図面を書いているんだろう…?

「自分をコントロールできないと、飲まれちゃいますね」と岡山さん。

「穏やかに流れていく沖縄の時間に、身を委ねるのは心地いいんです。でもそうすると、何も進んでいかなくなる。自分のリズムも保ちながら、自然のダイナミズムに合わせて波乗りするように働けるといいのかな」

のんびりマイペースに働けると思っていたら、きっとギャップを感じると思う。

打ち合わせ続きの日もあるだろうし、夏場は移動しているだけでも体力を削られる。そのなかで時間をつくって、デスクワークも進めていく。

都市部での仕事とは、違った意味合いでメリハリをつけて働くことが大切になってきそうです。

そのぶん、うまくリズムを掴めれば、健やかに働ける環境だと思います。沖縄の気候や文化的背景、京都とのつながりがあってこそ挑戦できることもあるだろうし、自然を身近に感じながら働けるのはやっぱり魅力的。

まずはMONAKAのみなさんと話して、お互いの感覚を共有してみてください。

(2020/11/9 取材 中川晃輔)

※撮影時にはマスクを外していただいております。

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