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私たちは、動物や植物から命をいただいて生きている。ときどきその実感を忘れてしまいそうになるけれど、やっぱり、いただく以上は最後まで丁寧に扱いたい。
岡山・西粟倉村にあるエーゼロ株式会社では、農業や林業の獣害対策として捕獲される鹿肉の有効活用の方法を探っています。
すでにはじまっている「森のジビエ」は、ミシュランの星付きレストランでも好評なほど質がいいのだとか。
一方で、骨や内臓、お肉のサイズや部位によっては人の食用には使いにくい部分もあります。
森からいただいた命を、あますところなく生かしていくために、着目したのはペットフードとして活用する道。
今回はそのプロジェクトに加わるスタッフを募集します。
まずオンラインで話を聞かせてくれたのは、エーゼロの道上(みちがみ)さん。
以前、北海道の厚真町でお会いしましたね。
「もともとエーゼロの厚真チームとして、主にふるさと納税に関わる仕事をしていたんですが、今は西粟倉の自然資本事業部というチームで、鹿肉の解体加工や販売企画などを担当しています」
エーゼロではこれまで、うなぎの養殖や、西粟倉産のお米の販売など、一次産業の可能性を伝える事業を続けてきた。
昨年から養蜂事業がはじまり、拠点となっている旧影石小学校の校庭には、鶏の小屋もできた。
そのなかでジビエのチームは、村内や近隣の猟師さんから捕獲された鹿を買い取り、解体・加工・販売している。
「命を大切に扱うために、肉の価値を最大化していくのが僕らの仕事だと思います。これまでもレストランのシェフに協力してもらったり、家庭で簡単に調理できるように冷凍の味付け肉を提案したり、いろんな工夫をしてきました」
一方で、骨や内臓などの部位は、人の食用として生かしきれず廃棄していた。
「廃棄する部分をなんとか減らせないかと思って、鹿肉を自宅の猫に与えてみたところ、喜んで食べるし毛艶もよく元気になって。今まで捨ててきたものを、新しい価値として生かしてみようと、昨年からはペット向けジビエの商品開発もスタートしました。ふるさと納税の返礼品としてもご好評をいただいています」
もともと動物が好きで、獣医を目指したこともあるという道上さん。事業を軌道に乗せることで、動物と人、自然とがうまく共存できる社会づくりにつなげたいという。
そのためにも、まずは現場で解体加工を担える右腕人材を探している。
知識や経験は必要ないけれど、ある程度の体力はあったほうがいい。
初めのうちは鹿を一頭解体するのに3時間くらいかかるし、立ちっぱなしの作業も多い。野生動物なので、夏場はマダニに気をつけながらの作業になる。注文が多くて、カットやパック詰めなどの加工が忙しいときもある。
「だけどやっぱり購入者から『新鮮でおいしそうに食べていました』とか『ペットの体調がよくなりました』とか、良い感想をもらえると励みになるし、丁寧に応えられる仕事をしたいなと思います」
「僕自身、子どものころから犬猫と生活してきて、彼らと暮らすことがいかに人生を豊かにしてくれるか、喜びをもたらしてくれるかを日々感じています。だから大事な家族であるペットが元気でいられる、飼い主さんとの関係がもっと良くなるようなフードを提供できることにはこの上ないやりがいを感じています」
まだはじまったばかりの取り組みではあるけど、地域で見過ごされていたものに価値を見出して事業をかたちにしていく手応えはあるはず。
新しく枝葉を伸ばしている挑戦。エーゼロ代表の牧さんはどんなふうに見ているんだろう。
「プロジェクトを動かしていくためには、本当にやりたいっていう熱量のある人が必要だし、道上本人がやる気満々なのはいいことだと思いますね。ペット向けジビエってニッチな業界のようで、競合がますます増えそうな気配もある。まだ収益的に厳しい事業ではあるけど、ここで仲間を加えて勝負をかけていきたいです」
「森のうなぎ」の養殖も、始まるきっかけは、牧さん自身が「やりたかったから」。
エーゼロの自然資本事業部では、今ジビエやお米、鰻に養蜂など、いろんな広がりを見せている。西粟倉村だからできること、今後はどんなふうに考えているのでしょうか。
「村内のほかの企業でも、間伐した木の樹皮を土の代わりに使ったいちご農園など、いろんな挑戦が始まっているんですが、今まで捨ててきたものも、その気になれば資源として価値が生まれると思っていて」
「自分が生態系とつながって存在している幸福感みたいなものを伝えていくためには、食材を売るだけでなく、体験として自然や一次産業に関われる機会をつくっていきたい。僕たちは『生態系エンターテインメント』のような方向を目指していくんじゃないかと思います」
いろんなものとつながり合いながら、バランスを保っていく。ここでの働き方も、それに通じるところはある。
主に一次産業に特化したこのチームでは、それぞれの繁閑のリズムに合わせ、メンバー同士で補完し合いながら事業に取り組んでいる。
ジビエ担当の道上さんがうなぎの串打ちをすることもあるし、ほかのチームから解体の手伝いに来てもらうこともある。
みんなが2つ3つの仕事を掛け持ちする“多能工”というあり方。仕事の組み合わせは例えば、「加工作業とWebまわり」や「鹿肉とうなぎと養蜂」など、その人の興味や意欲も踏まえて柔軟にカスタマイズできる。
「何かひとつのことだけをやるなら大企業のほうがいいけど、あれもこれも、いろいろやりたい人はここが向いていると思うし、小さな会社だからこそ学びながら成長できる部分もあると思います」
大きな循環のなかの一部分だけではなく、面的に自然に触れながら命と向き合っていく。
動物とのつながりのなかに日々の食があることを、あらためて考え伝えていく仕事だと思います。
(2021/1/27 オンライン取材 高橋佑香子)
※取材はオンラインで行いました。写真は提供いただいたものを使用しています。
※特集ページでは、西粟倉村という地域のこと、村内のほかの企業についても紹介しています。合わせてご覧ください。