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移ろう自然を舞台に
人を楽しませる
エンターテイナー

「あ、今、チリリリって鳴きましたね。多分この声はエナガっていう鳥です。どこにいるかわかりますか?」

浅間山の北麓を歩いている途中、ガイドの森本さんが不意に立ち止まる。

どこだろう?と探すものの、なかなか見つからない。少しずつヒントをもらって、ちょっと離れた先の枝で休んでいたエナガを見つけた。

森本さんに、浅間山で暮らす鳥や植物について教えてもらったあとは、少しだけ森の見え方が変わったような気がします。

浅間山のふもとにある長野原町営浅間園「浅間山北麓ビジターセンター」で働くみなさんは、そんなふうに自然をより楽しんでもらおうと日々活動しています。

自然遊歩道の整備や、ビジターセンターを訪れたお客さんとのコミュニケーション。希望があれば、一緒に歩きながらガイドをすることも。

今回は、地域おこし協力隊としてビジターセンターで働くスタッフを募集します。自然が好き、人が好き。そんな人にぜひ読み進めてほしいです。


東京から北陸新幹線に乗って約1時間。軽井沢駅で降りると、東京よりもぐっと冷え込んでいて、空気も澄んでいた。

ここから、車で浅間園へ向かう。山をぐんぐん上っていき、30分ほど経ったころ、浅間園内にあるビジターセンターに到着。

2021年4月にリニューアルオープンしたばかりとのことで、建物の中はとてもきれい。

入り口から入ると、長野原町の職員で浅間園の責任者を務める塩野さんが迎えてくれた。

塩野さんにお会いするのは、一年ぶり。前回の取材は、まだここがオープンする前でしたね。

「お久しぶりです。ここの準備も、取材の後くらいからかなり大変だったんですよ。今年度で任期を終える隊員と非常勤の方、そして僕の三人で、いろいろ展示物も運んで。オープンしたときは、ここからがスタートなんだなって、感慨深かったですね」

浅間園は、群馬県長野原町が運営している自然公園。浅間山をより多くの人に楽しんでもらおうと、1963年に設置された。

「浅間山には、未完の美しさがあるんですよ」

未完の美しさ?

「浅間山では、1783年に大規模な溶岩流があって。植生がすべてなくなり、240年かけて少しずつ苔や草木、樹木が育っているところなんです。年単位で変化しているので、久しぶりに訪れたお客さんがびっくりするくらいで」

「植生の遷移もまだ完成してないから、浅間山には多種多様な植物が存在しています。それを目指していろんな小動物も集まる。実はこれって、かなりめずらしい風景なんですよ」

浅間園を訪れたお客さんは、まずはビジターセンターで受付をしたあと、実際に外に出て、浅間山の自然が広がる遊歩道を自由に探索していく。

「コロナ禍の前は団体客が多かったんですが、今は個人のお客さまがよく来てくれています。リニューアル前より施設がコンパクトになったぶん、お客さまとお話しする時間を前以上に大切にしていて。館内の掲示物も、そのフックになっているんですよ」

「たとえばあれとか」と塩野さんが指さしたのは、施設の一角にあるホワイトボード。

遊歩道で観察できる冬鳥の絵が描かれているみたい。

ほかにも、スタッフが目撃した動物の写真を飾っていたり、手書きイラストの鳥の塗り絵が用意されていたり。

手づくり感があって、一つひとつ立ち止まってじっくり見たくなりますね。

「今年度からほかの業務がメインになった関係で、僕は週に1日くらいしか浅間園にこれてなかったんです。でも、今いるスタッフみんなが自主的にどんどん動いてくれて。気づいたら、館内がいろんな掲示物であふれていたし、パンフレットやチラシもつくってくれたんですよ」

遊歩道を歩く前に「今はこんな花が咲いてるんですよ」と教えてもらったら、ただ歩くだけじゃなく、その花を探すという楽しみもプラスされる。

知識がない人でも、気軽に自然に親しめるような仕掛けをつくっていくことも、スタッフの大切な役割のひとつなんだろうな。

「ここでの仕事って、いかにお客さんに楽しんでもらうかが大切だと思っていて。それをみんな大事にしてくれてるなって感じています」

「スタッフのみんなが、常連さんとすごく親しげに話しているのをよく見かけるんですよ。こんな花咲いてたよって写真を見せ合ったりしていて。1年も経たない間に、そういう関係性を築けているのが、ほんとすごいなあって」


「浅間山の自然が主役なので。僕たちは黒子として、またここに来たくなるような雰囲気をつくっていくことが役割だと思っているんです」

塩野さんの話を聞いてそう伝えてくれたのが、今年の4月からビジターセンターで働く新田さん。

「日本中を旅してきたなかで、この地域をすごく気に入って。7年前にこっちへ引っ越してきてから、浅間山にもよく来てたんです。ビジターセンターの募集を知ったときに、ここで仕事ができるならぜひやりたいなと思って」

ビジターセンターは現在、金曜日から日曜日の3日間限定で開園している。

そのほかの勤務日は、掲示物等の作成やSNS発信といった事務作業のほか、施設の掃除や遊歩道の整備などをメインにおこなっているとのこと。

伸びすぎた木の枝を伐ったり、溜まっている落ち葉を掃いたり。お客さんが安全に遊歩道を歩けるよう、手を動かしている。

「ガイドだけが仕事ではないので、人によっては地味だと感じる仕事のほうが多いかもしれないですね。だけど、僕自身はこの仕事であまりつらいと思ったことはなくて」

「出勤したらまず、遊歩道のパトロールに出るんです。それが、僕にとっては旅をしているようで。日々見える景色がまったく違うので、毎日見ても全然飽きないんですよ。浅間山も浅間園も、春夏秋冬で表情が変わりますから」

自然を通じて季節の訪れを感じることができるのも、ビジターセンターで働いているからこそ。

毎日のように遊歩道を歩いていると、いろいろな植物が少しずつ育っていく様子もよくわかるんだとか。

時期によって見頃の植物も変わってくるため、浅間園の“今”を伝えたいと、「週刊遊歩道」という来館者に手渡しするチラシをつくっているそう。

5月から毎週作成しているものを、実際に何枚か持ってきてくれた。

写真の下にはちょっとした豆知識が書かれている。その花が咲いている場所もわかるようになっているんですね。

「写真は、できる限りその週に撮ったものを使うようにしていて。文章も毎週、ちょっとずつ変えているんですよ。これを見ながら遊歩道を歩いているお客さまを見かけたときは、つくってよかったなあって、うれしかったですね」

「僕たちが、お客さまにいろんな形で知識をお伝えすることで、浅間園で過ごす時間がより良いものになるといいなって思っています」

施設を訪れたとき、そして遊歩道から帰ってきたタイミングで、こちらから話しかけにいく。

お客さんが見た植物の名前はなんなのか、どんな名前の由来や特徴があるのか。

何かひとつでもエピソードを伝えることで、「ただ綺麗な景色を見た」だけじゃない、プラスアルファの思い出も持ち帰ってもらいたい。

「自分が持っている知識を伝えたときの、『へ〜!』っていうリアクションを見るのが好きなんですよね。喜んでもらえるのがうれしい。子どもたちも、キラッキラした目で見てくれるんですよ」

「僕もこっちに来てから学びましたから、自然に対する知識がない人でも全然大丈夫ですよ。知識よりも、誰かを楽しませるのが好きな人っていうか。大げさかもしれないけど、エンターテイナー気質の人だと、うちでの仕事も楽しめるんじゃないかな」


ビジターセンターでは、希望に応じて自然遊歩道のガイドもしているとのこと。

せっかくの機会なので案内してもらおうと外に出ると、新田さんの同期である森本さんが落ち葉を掃いているところに遭遇した。

「彼女は、鳥のスペシャリストなんですよ」と、新田さん。先ほどホワイトボードに描かれていた鳥の絵も、森本さんが描いたものなんだとか。

今回募集する人は3人目のメンバーとして、新田さん森本さんとともに働くことになる。

森本さんは小さいころから鳥が好きで、大学でも鳥類について学んでいたそう。

「絶滅危惧種の鳥について研究していました。絶滅の危機にある動物のことを、どうしたらみんなに知ってもらえるんだろうって考えたときに、まずは自然と仲良くなってもらうことが最初の一歩なのかなって。それで、ここで働きたいと思ったんです」

話しながら遊歩道を歩いていくと、池のような場所にたどり着いた。

「ここは人工の貯水池なんですけど、よく鳥が集まっているんです。静かにそーっと隠れていると、結構近くまで来てくれるんですよ。ガイドしているときに、お客さまと一緒に双眼鏡で観察することもよくあります」

「今日の昼間も、水を飲もうとしているところを見かけたんです。ちょっと待っていたら、また来てくれるかもしれないですね」

木の近くにしゃがみ、鳥の訪れを待つことに。

…今日は、もう来てくれなそうですね。

「残念です…。こうやって、鳥にいつも会えるとは限らなくて(笑)。植物や浅間山の歴史についても学んで、幅広くガイドできるように準備しています。塩野さんや、地元のボランティアガイドさんにいろいろ教えていただきました」

「何よりの教科書は、この遊歩道だと感じていて。実際に歩いているなかで『このお花って何だろう?』って思ったら、写真を撮ってあとでみんなで調べるんです。そうやって、ひとつずつ地道に覚えていったことが、一番身についているのかなと思います」

自分たちで楽しみながら得た知識を、今度はお客さんに伝えていく。

その結果、お客さんが自然をより楽しんでくれている姿を見て、また新しい情報も覚えようと思う。

そんな良い循環が、ここでは生まれているんだろうな。

「都会に住んでいるお子さまだと、自然豊かな場所を歩くのが初めてということも多いんです。最初はあんまり興味なさそうな様子だったのに、『チョウチョ見つけたよ!』って興奮して教えてくれる瞬間が、私とっては一番のやりがいで」

「ガイド中に鳥を一緒に観てから、バードウォッチングにハマったっていうご夫婦もいました。双眼鏡を買って、いろんな山を訪れるようになったそうです。自然とつながるきっかけになれたのかなって思うと、すごくうれしいですね」


浅間山の自然が好き。お客さんに自然を楽しんでほしい。そんな想いが、表情や行動からたくさん伝わってきた取材でした。

浅間山の自然の良さはもちろん、新田さんや森本さんがいるからこそ、お客さんが何度も訪れたくなる場所になっているのだと思います。

二人とともに、何よりも自分が自然を楽しみながら、楽しさを伝えていきたい。そんな想いのある方の応募を待っています。

(2021/11/25 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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