求人 NEW

井戸端会議で考える
395人の小さな里山
農のある暮らし

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

日本の原風景のような里山が残る和歌山県高野町。

東部の富貴(ふき)地区では、寒暖差の大きい高冷地の気候を生かして少量多品目の農業が行われています。その品種の多さは、町の野菜だけで八百屋さんができるほど。

今回はここの農業をテーマに、PRやコミュニティづくりを進めていく地域おこし協力隊を募集します。

たとえば産地直送の仕組みをつくったり、農泊のような体験ツアーを企画したり。高野町の農業の魅力を伝え広めていく役割になります。

といっても、いきなり大きなイノベーションを起こすことを期待されているのではありません。農業とともにある豊かな暮らしを守るために、自分の得意なことをどう活かせるか。3年間かけてじっくり考えていくイメージです。

ひとりで最短ルートをひた走るのではなく、ときには寄り道やおしゃべりもして、雑談の中からヒントを拾いながら、目指すべきゴールをみんなで一緒に探っていく。

人と人との距離が近い地域だからこそ味わえる、仕事や暮らしの醍醐味がある気がします。

和歌山県北東部に位置する高野町。

大阪市内から電車で2時間ほど。最後は極楽橋という駅からケーブルカーで、急な山道を上がっていく。

「ようこそ世界遺産の町へ」という看板に迎えられ、到着したのは高野山駅。後から聞いた話では、このあたりの標高は800mだという。

役場の近くには、空海が開いた金剛峯寺(こんごうぶじ)もあるらしい。日本史の勉強に熱心だったわけではないけれど、「教科書で見たところ」に来ると妙にワクワクする。

駅から乗り換えた路線バスのアナウンスも、ちょっと懐かしい口調で情緒がある。きっと、古くから多くの旅行者を受け入れてきた町なんだろうな。

協力隊のフィールドとなるのは、町の東側にある富貴地区。以前は富貴村という独立した集落で、同じ高野町内でも少し雰囲気が違うらしい。まずは役場職員の民農(たみの)さんに話を聞かせてもらう。

「金剛峯寺があるこの一帯は高野山地区といって、寺院だけでなく宿泊やお土産物などの観光産業も盛んです。一方の富貴地区は、どちらかというと農業が中心の里山なんです」

高野町は昼夜の寒暖差が大きい高冷地。農業に適した気候を生かして、少量多品目で野菜づくりが行われている。

キャベツや大豆など家庭で馴染みのある野菜のほか、「当帰(とうき)」など珍しい薬用植物の数少ない産地でもある。

当帰は薬用というだけあって、養分が豊富な土地でないと育たない。医薬品業界からも優良性を認められた産地である富貴は、それだけ農業に適したポテンシャルがあるということ。

「地域全体で大規模な農業をしているわけではなく、本当にいろんな野菜を少しずつつくっているので、市場の価格で出荷すると利益にならないんです。富貴の農業をブランディングしながら、もっと発信していけないかと思って、プロジェクトに取り組む協力隊を募集することになりました」

たとえば、地域の野菜を直接全国の消費者に届ける生協のような仕組みをつくったり、地域でつくった味噌などの加工品を販売したり。

あるいは、農泊のような体験ツアーで地域の魅力を伝えていくという関わり方もある。

「高野山地区は観光も含めて消費が多いのに、富貴の野菜に出会う機会が少なくて。町内で生産と消費の循環を回していくというのも、今後取り組みたいことのひとつです」

ほかにも後継者不足など、取り組むべき課題はいろいろあるものの、今回はあえて明確なミッションを決めないようにしているという。

「まずは地域のなかに溶け込んで、地元の方とあれこれ話しながら、活動の方向性を探っていくことが大事なのかなと思います。富貴の人たちに会えば、その感じがきっとわかります!」

富貴地区へは、役場がある高野山地区からは山を隔てて車で50分弱。さっそく向かうことに。

その車中、民農さん自身がはじめて富貴地区を訪ねたときの話をしてくれた。

「会って間もなく、『あんた結婚してんの? なんや、せっかくええのがおったのに〜!』って、親戚みたいな距離感で話しかけてくれる方々で。最初はびっくりするかもしれないけど、すごく温かいんです」

「初対面から仲良く話をしていたつもりだったんですけど、後から聞いたら内心『この子、何を偵察に来てんねやろ』って思っていたらしくて」

実は警戒されていたんですね(笑)。

「たしかに、あとで振り返ると、突撃取材みたいに自分が必要なことだけ聞こうとしていたかもしれないなって反省して。地域コミュニティでは、用件だけじゃなくて『最近どうしてる?』みたいな世間話が、本当はすごく大切なんですよね」

富貴地区に入ってしばらく行くと、小学校が見えてきた。民農さんが案内してくれたのは、その向かいにあるお家。

4年前に大阪から移住してきたご夫婦が、自宅の一部をコミュニティスペースとして地域に開き、地元の人と一緒に子どもの見守りや食育などの活動をしているという。

話を聞かせてもらったのは、その活動に関わるメンバーのみなさん。

富貴地区にはこのほかにも、住民が共同で畑仕事をする「畑耕し隊」や、コミュニティカフェ「焼きもちカフェ」など、さまざまなサークル活動のようなものがある。

活動ごとにグループを分けているものの、どれもほぼ同じメンバーで運営しているらしい。

「全部ボランティアの活動なんですけど、ただみんなで集まって機嫌よう遊んでる感じ。たとえばカフェも、みんなで食材や道具を持ち寄ってやってるんです。ただ集まっておしゃべりするよりは、餅でも焼こうか、みたいな感じで」

「そうそう、畑仕事もなあ。ほんまにゆるい、ホリホリの畑」

ホリホリ?

「そう。放っとくの。みんなで大豆育ててるんやけど、『なんか数減ったなあ、鹿が食べてるんちゃう?』『気のせいやろ』で済むような。できたらできたで、まあお味噌つくろかって。作業してるより、お茶飲んで話してる時間のほうが長いんちゃうか」

冗談を交えつつ、テンポよく話が進んでいく感じは、民農さんから聞いていた通りだった。

一方で、今回募集する協力隊の話題になると、急に心配そうな表情に。

「富貴の農業を発信するために、外から人を募集して生業にするって…。正直、難しいと思うわ」

難しい?

「富貴は、ほんまに農業に向いてる。お米も野菜もおいしいし、都市部へ出てった子どもらもやっぱり味や匂いが違うって言うてくれる。でもそれはここに住んで、食べてこそわかる味であって、縁もゆかりもない人に『おいしいですよ』って、どうやって伝えていくんやろ」

「それに、ここらはみんな専業農家じゃないから、安定して出荷するのも難しい。今年は気候があかんかったから水菜がちょっと硬いんよって、みんな言うてるわ。高齢化してきてるから、量も約束できひんしなあ」

なるほど。大規模に農業を展開している地域のマーケティングやPRとは、ちょっと違う考え方が必要なのかもしれない。

そういう「つくり手の温度感」をあえて残してみるのはどうですか。お店に並ぶ均一な商品じゃなくて、季節ごとにふるさとから届く小包のようなかたちで届けてみるとか。

「ああ、そういえば私ら、つくった大豆を出荷するとき、手紙書いてたことあったな。『こうやって収穫しました』みたいな日々のことを一筆添えて送ったら、それがうれしいって言ってくれて。そのときはちょうどお手紙が上手な人がおったんやけど、最近はできてへんなあ」

手紙、いいですね。協力隊として入る人は、まずはそういうところからはじめても良さそう。

さっきの「今年の水菜はちょっと硬い」っていう話でも、お母さんたちに取材して「硬いときはこうやって食べたらいいよ」とレシピを提案すれば、付加価値になるんじゃないかな。

いずれにせよ、まずは地域の人にあれこれ話を聞くところからですね。焼き餅のつくり方とか、お味噌のつくり方とか、みなさんにとっては当たり前のことでも、掘り下げるとおもしろいストーリーが出てきそう。

「それなら、協力隊の任期の3年間で、町のドキュメンタリー映画みたいなのをつくるっていうのはどうですか」

そう提案してくれたのは、ここの家主である嘉積(かづみ)さん。4年前に大阪から移住してきて、地域の暮らしぶりに心動かされることがよくあるという。

「たとえば玄関のしつらえとか。どこの家も、クリスマスやお正月には季節ごとの飾りを手づくりできちんと整えていて、なんというか楚々とした美しさがあるんですよね。自分らもああいうふうに歳を重ねたいなって思います」

「あとは町のなかでのコミュニケーションもおもしろいですよ。道歩いてたら、『キャベツ持って帰り、大根持って帰り』っていろいろもらうんですけど、あとでお礼言いにいったら『あんた誰やったかいな』って(笑)。タレントよりおもしろい人、いっぱいいると思います」

道で出会えば「どこ行くの?」「何してんの?」と、誰彼ともなく声を掛け合う。予定を詮索しているのではなく、それがこの地域の挨拶のようなもの。

自分一人のペースで暮らし働きたいという人には、慣れない環境かもしれない。だけど、そうやってご近所同士、気にかけあって暮らすことの温かさに、今あらためて価値を感じる人も少なくないと思う。

嘉積さんの家を出て最後に向かったのは、当帰農家の梶谷さんの畑。そのそばには、秋に収穫した当帰がずらりと吊るされ、壁のようになっていた。

これが当帰か…。すすめられるまま、ちょっとかじってみると、思いのほか甘くセロリのような味がした。

根の部分は薬用に出荷されるので、一般に二次利用はできないけど、葉っぱは食用で薬味などに使うことができるらしい。

梶谷さんも、もともとはシソやミョウガなどの香味野菜の栽培から農業をはじめたという。ハーブやスパイスの文脈から、この地域の農業を紐解いて発信していくのもおもしろそう。

畑仕事を手伝いながら、その魅力を探るというのも選択肢のひとつだと思う。

自分の得意なこと、活かせるスキル。

自覚していることだけに限らず、案外、人と関わるなかで思わぬ活かし方が見つかることもあるような気がする。

まずはおしゃべりの輪に加わりながら、自分の新しい活かし方を探ってみてください。

(2020/12/23 取材 高橋佑香子)
※撮影時はマスクを外していただきました。

※2/10(水)の朝9時からは、高野町役場の民農さんをゲストに、イベント「朝なのにしごとバー?おいしい野菜とやきもちの話」を開催しました。ぜひ、映像でもご覧ください。

この企業の再募集通知を受ける

おすすめの記事