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高尾山と聞くと、気軽に登れる山、というイメージが強いと思います。都内から日帰りで行ける距離感や、初心者にも登りやすい山道が人気の理由。年間の登山客数は200万人を超え、なんと世界一の数なのだそう。
今年の7月、その高尾山の麓に新しい宿泊施設がオープンします。
施設の名前は、「タカオネ」。個人利用だけでなく、合宿などの団体向けにも開かれた宿泊施設で、レストランやショップがあり、周辺でのアクティビティの拠点にもなります。
手がけているのは、全国各地で合宿施設やキャンプ場を運営している株式会社R.project。日本各地の未活用不動産を活かし、地域と共に新しい人の流れをつくろうとしている会社です。
今回は、タカオネでフロントをとりまとめるフロントリーダーと施設スタッフ、そして併設されるカフェレストランのシェフとそのアシスタントを募集します。
高尾で始まったこの新しいチャレンジを、自分から面白がれるかどうか。まずは職種にしばられず、読んでもらいたいです。
新宿駅から京王線に乗ること約50分。八王子を過ぎ、高尾山口駅で下車する。
登山用のザックを背負っている人もいるけど、平日のお昼ということもあり人は少なめ。
改札を出たところで、「どうも!ようこそ高尾へ」と、R.projectの壽榮松(すえまつ)さんが迎えてくれた。
壽榮松さんはタカオネの施設マネージャーを務める予定の方だ。
「駅の目の前で工事してるあの建物がタカオネです。1階はショップやレストラン、テラスがあって、2階から上は団体さんが使える大部屋や客室になる予定です」
高尾山口駅前にあった旧ホテルを京王電鉄がリノベーションし、R.projectがその運営に入っている。
「高尾って高尾山のイメージが強いじゃないですか。年間200万人超が訪れるすごい場所なんですけど、都内から来て、山登ってすぐ帰るっていう人がほとんどで。宿泊施設はこの辺りにほとんどないんです」
「だからこそ、高尾山以外の楽しみ方や、泊まるからこそできることをタカオネから発信していきたいと思っていて。というわけで、早速山に行ってみますか!」
山?と思いつつ、壽榮松さんの案内でタカオネの裏山へ。家と家の間にある細い道から入っていき、そのまま山道を進む。
「こっちは高尾山とちがって人がほとんどいないんですよ。15分くらいで登れるので、よく歩いたり走ったりしてるんです。上まで行ったら気持ちいいですよ」
話しながら歩くうちに、一番高い尾根の部分に到着。
東側が一望できるので、八王子はもちろん、ビルが密集する新宿も見える。この日は天気が良かったので、目をこらすとスカイツリーも確認できた。
景色がひらけてすごく気持ちいいですね。
「でしょう! 夜景も見れるし、東側だから朝日もすっごくきれいなんです。ナイトハイクや早朝の散歩で案内したいなと思っていて」
「タカオネのテーマとして考えてるのが、“裏山”なんですよ。都内に住んでる人も、思い立ったときにすぐ来れて、焚き火したり、ハイキングできたりする。カフェとか居酒屋に行くような感覚で高尾に来てもらえるようになったらいいなと思ってます」
澄んだ空気を心ゆくまで吸って、下山。
そのまま駅から3分ほど歩き、この辺り唯一の登山客向けゲストハウス「Mt.TAKAO BASE CAMP」へ。R.project代表の丹埜(たんの)さんが待っていてくれた。
R.projectは丹埜さんが2006年に立ち上げた会社。千葉や山梨など、都会からアクセスしやすい場所を中心に、団体向けの宿泊施設を運営している。
「高尾には子どもの頃からよく来ていて。都内からも近いし、アウトドアやアクティビティのポテンシャルがある地域だなと感じていたんです」
そんななかで見つけたのが、廃業した駅前のホテル。
調べてみると、京王電鉄が建物を購入したものの、どう活用するか検討している段階だったそう。そこで丹埜さんは、R.projectとして施設の企画・運営に入ることを提案。2年前からタカオネのプロジェクトがスタートした。
「都心から近いぶん、宿泊需要は今のところ少ない地域だと思います。けれど僕らは合宿がメインなので、これだけの自然があって都心から近いというのは、大きなメリットなんです」
「企業の研修やゼミ合宿といった、これまでほかの施設で得意としてきたものをベースに採算を合わせつつ、高尾の魅力を活かして新しい人の流れも生み出していきたいと思っています」
たとえば合宿だけでなく、企業向けにテレワークやワーケーションのプランをつくってもいいかもしれない。
テラスやレストランは宿泊客以外も利用できるので、そこに地域の人も混ざり合えばより面白いことが生まれそう。金曜の夜にふらっと電車で来て、焚き火を見ながら飲んで翌朝山を登る、なんてこともできる。
できることの余白はたくさんありそうだ。
とはいえ、現在は宿泊業自体が厳しい時期。R.projectの運営するほかの施設でも、昨年から予約が激減しているという。
「残念なことですが、これだけ合宿業界が厳しいと廃業を決める方々も増えていて。そのなかでも僕らはなんとか持ちこたえようとがんばっているところです」
「むしろ、持ちこたえた先にはチャンスがあると思っていて。今後需要が戻っていくタイミングが必ずくると思うんです。応募してくれる人も、そんなふうにチャンスだと捉えて来てくれたらうれしいですね」
今回の施設の軸となるのが、アウトドアの視点から高尾を生かすアクティビティ。
先ほど山を案内してくれたマネージャーの壽榮松さんは、それまで培ってきたアウトドアの知識や経験をもとに、このプロジェクトに参画することになったそう。
あらためて、関わる経緯を聞かせてもらう。
「以前は富士山の麓にある自然学校でガイドをしてました。ガイドを続けていくか悩んでいたときに、タカオネに関わっていた知り合いから『高尾でどんなアウトドアアクティビティができるか調べてほしい』って頼まれて。二日間、山を走ったり、沢に行ったり、いろいろして。すごくいいところやと実感したんですよ」
どんなところがよかったんでしょう。
「山は広葉樹が広がっていてきれいだし、トレイルランができるコースもある。植物で見ても、1600くらいの植生があるエリアなんです。さっきみたいにふらっと行ける山もあって、高尾山を登るだけじゃない魅力が、高尾にはたくさんあるなと」
「そんなふうに感じたことを報告して終わりの予定が、じゃあ一緒にやってみない?って話をいただいて。迷ったけど、飛び込んでみることにしたんです」
現在は、オープンに向けた準備をしつつ、新しいアクティビティや体験コンテンツを企画しているところ。
京王電鉄や企画会社と一緒に、高尾の魅力を発信するメディア「タカオのカタヲ」を立ち上げたり、クラフトビールづくりやゲストハウスの運営など、地域で面白いことをしている人と新しい企画を考えたり。高尾の魅力を掘り起こし、広げようとしている。
「クラフトビールをつくってる人とは、タカオネオリジナルビールをつくりたいねと話していたり。この前はみかんをひたすら剥くお手伝いもしました(笑)」
「トレイルランの専門ブランドの人と100マイルレースをやれたらいいねとか、昆虫食に詳しい人と子ども向けの昆虫食キャンプをしたいねとか。面白そうなことを、いろんな人を巻き込みながら形にできるように動いています」
オープン後も、経営面などの数字は見つつ、引き続き地域に飛び出して動いていきたいという壽榮松さん。そのため、今回募集するフロントリーダーには、施設を守っていく役割を任せたいそう。
基本的な業務は、予約管理や接客、アルバイトスタッフのシフト管理など、宿泊施設のフロント業務全般。
宿泊業界の経験があればそれを活かしてほしいし、その上で経験にとらわれない柔軟さも持っていてほしい、とのこと。
「ファンができるような人がいいと思うんですよね。均一的に接するんじゃなく、どうしたら喜んでもらえるだろうってちゃんと考えられる人、っていうのかな」
「壽榮松マネージャーはいつも難しい顔してるけど、あの人はいつもニコニコして17時からまた飲んでるよ、みたいな(笑)。それくらいの軽やかさや人懐っこさがあるのが、ちょうどいいと思うんです」
団体宿泊も受け入れていくが、合宿もその目的はさまざま。企業研修で集中する時間がほしいということもあれば、学生のゼミ合宿で交流やアクティビティを取り入れたいということもある。
ただ場所を提供するだけでなく、どんな合宿にしたいのかをしっかりヒアリングして、ここでの時間の過ごし方や企画まで一緒に考えるところまでがスタッフの役割だ。
とくに今回は、施設の立ち上げ段階。決まったことだけをするつもりでいると、場が回らなくなってしまう。
併設されるカフェレストランにおいても、「一人ひとりが自分で考えて動いてほしい」と話すのは、宿泊施設全体の統括をしている野村さん。
「規模としては40人くらいが入れるカフェレストランで、宿泊のお客さん以外でも気軽に立ち寄れる場所にしたいと思っています。団体さん向けの大部屋や、バーベキューや焚き火ができる場所もあるので、それらも活用していきたいと考えているところです」
団体向けの料理も、いわゆる“合宿めし”にとらわれず、食べる人が喜んでくれることを軸に考えていきたいそう。
「人数が多いからこそ楽しかったり、よりおいしく感じたりすることってあるじゃないですか。たとえばバーベキューも、焼く過程が楽しいし、その時間が大事だったりする。そういうところに勘所があって、お客さんと一緒に楽しめる人だったらいいですよね」
「ちょっとお腹が空いてそうだったら、おにぎり握ってあげるとか。これをしたら喜んでもらえそうだなってことを、行動に移せる人。人を惹きつける要素ってそういうところにあるんだと思うんです」
メニューには、高尾近辺で採れる野菜をふんだんに取り入れ、クラフトビールなどのお酒も飲める場所にしていきたいそう。
今は壽榮松さんと野村さんでその土台をつくっているところ。新しい人が決まり次第、仕入れ先や細かいメニューの調整などに取り掛かりたい。
調理経験がある人なら、そのまま活きてくる環境だと思う。けれど、一番大切なのはタカオネをいい場所にしたいという思いの部分。
「フロントやレストランも役割は分かれていますが、タカオネというチーム全体でいい場所にしていこうっていう気持ちが大事だと思うんです」
「壽榮松さん、本当に施設や地域のことが好きなので(笑)。思いを持って動く人がいる施設って、ぜったい良くなる。ついていくだけじゃなくて、負けないように一緒に走ってくれる人が来てくれたらうれしいですね」
取材の終わりに、R.projectのみなさんが大切にしている価値観について話してくれました。
それは、「自分でハンドルを持つ」ということ。
どんな立場であっても、自分なりの意見を伝える勇気を持つ。それを素直に受け止めつつ、能動的に次のアクションへとつなげていく。
たしかに、取材を通じて、チームとしてのフラットさが印象に残りました。誰からでもアイデアが出るし、率直な反応がかえってくる。そしてどんどん、形にしている。
このチームのなかで輝ける人は、きっと少なくないと思います。
(2021/1/13 取材 稲本琢仙)
※撮影時はマスクを外していただきました。