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【西粟倉11の挑戦:その11】
テクノロジーとローカルが
出会う未来予想図

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2020年7月、岡山・西粟倉村に新しい研究所ができました。名前を「西粟倉むらまるごと研究所」といいます。

山に囲まれたこの小さな村は、交通や住環境の面では不便なこともあるし、高齢者福祉などの問題に都市部より早く直面するかもしれません。

その中にありたい未来を見出し、実現するために研究開発をしていくのが、このチームの仕事。

マンパワーに乏しい地域だからこそ、テクノロジーの力をうまく借りながら、人にも自然にも心地よい社会の形を探ります。

今回は、地域おこし協力隊や地域おこし企業人としての採用を予定していますが、業務委託や企業からの出向など働き方は柔軟に相談できるそうです。


新しい研究所について、オンラインで話を聞かせてくれたのは、代表理事を務める大島奈緒子さん。

「はじめまして、大島です。もともと11年前に西粟倉に移住して、『ようび』というチームの建築設計室長を務めてきました。今は研究所と建築、二足のわらじです」

公共建築のプロジェクトなども多く手がけてきた大島さん。ファシリテーションの実績を買われ、研究所でも中心的な役割を務めることになった。

そもそも、この研究所の発起人は村役場に勤める向原さんという方。4年ほど前のこんなやりとりから計画はスタートした。

「村にこんなものがあったらいいなっていうテーマでアイデアを出し合っているとき、向原さんが、『テクノロジーの力を借りて、農業の楽しい部分だけ携わりたい』っていうプランを出して」

西粟倉において、農業は産業というより、地域のコミュニケーション手段に近い。だから、完全に機械化するのではなく、人の手も入れつつ楽しく田畑を育てる方法を探りたいという。

とはいえ、目指すところが「楽をする」ではなく、「楽しい」というのはどういうことでしょう。

「向原さんが出したプランは、草刈りをゲーム化するっていうもの。ただ草を刈るんじゃなくて、ロボコンみたいな大会になったらおもしろいと思います。企業や学生からも参加を募って、いろんなロボットが草刈りするところをドローンで撮影して中継するとか、遠隔操作もいいかも。村を紅白2チームに分けて競い合ったらおもしろそうでしょう」

「あとはロボットに雑草の種類を学習させれば、刈るものと残すものを選別できるかもしれない。そうすれば、速さや量だけじゃなくあぜ道の美しさで競い合うとか、『ホタルブクロを刈ったら減点!』みたいにルールを複雑化すれば勝負も白熱するし」

その戦い、いろんなドラマが生まれそうですね。ぜひネット配信してほしい!

「草刈り」のような、極めてローカルな問題もゲーム化することで、関係ないはずの自分まで興味をそそられる。

自分たちで完結せず、村内外の人を巻き込む仕掛けづくりも、この研究所が担う役割のひとつ。

ほかにはどんな研究テーマがあるんですか。

「交通、高齢者、教育、住居、農業…。いろいろテーマはあるんですが、どれも全部つながりあっていて、別々の問題ではないんです。この前ワークショップで描いたイメージがあるので、ちょっとこの図を見てください」

村のさまざまな営みが、自然環境と結びつきながら生態系のようにぐるりとつながっている。“生態系の本領発揮”や、“壁のない村づくり”など、指針となるようなキーワードもある。

この目標に向かって、研究所のメンバーはどんな役割を担っていくのでしょうか。

「プロジェクトマネージャーというと分かりやすいと思いますが、仕事はかなり幅広くて。ワークショップの運営や、計画書づくり、資金調達もするし、現場で土を運ぶこともある。かと思えば、おじいちゃんにヒアリングをすることもある」

「必ずしもオールマイティである必要はありません。デザインや絵が得意だとか、データの分析が得意だとか、何か特化した部分が活かせることもある。大事なのは自分の役割を、周りとの関係性のなかで活かしていきたいという気持ちだと思います」

これからさまざまなプロジェクトを通して、村のつながりをつくっていく研究所。

大島さんは私生活でも、ある実証実験に取り組んでいる。それは、大島さんご夫婦と7歳になる娘さんのほか、3世帯と一緒にシェアハウスに住んでみるというもの。

「この地域に限らず、移住者が子育てをしていくには、思った以上にいろんな課題がある。道具や空間、いろんなものがシェアされるように、子育てもシェアできないかなっていう思いでシェアハウスに住んでみたんですが、大正解でしたよ。孤独じゃないって実感できるから」

「たとえばこれから、いろんな職場に地域のおばあちゃんが駐在して、働くお父さんお母さんのそばで、赤ちゃんを抱っこしているとか、そんなアイデアも実現できたらいいですよね。テクノロジーだけではなくて、社会の制度設計と合わせて考えていく必要はあると思います」

中山間地域のリアルな現状をヒントに、さまざまなテーマで研究の枝葉を広げようとしている研究所。運営スタッフとして加わるだけでなく、企業から出向などの形で研究に参加する人にも出会いたいという。


研究所のオフィスは現在改修中ではあるものの、地域の方々もふらっと立ち寄ってみんなで話せるような休憩スペースもあるという。

新しい活動拠点の準備などを担う事務局の秋山さんも声を届けてくれました。

「この村には僕たちと同じように、地域のリソースを活かして、新しい世界を見たいと思っている人がほかにもいる。人口は少ないけど、協力しあえる同志がいるっていうのはいいなと思います」

こうしていけたらと思い描く、未来のコミュニティの姿。それを形にするまでの長い道のりを信じて進んでいくのは、簡単なことではないと思う。

研究に失敗はつきもの。それを結果とまとめてしまうか、成功につながる道の途中だと信じられるか。

想像した未来を疑わずに進んでみる。新しい価値を生み出す研究には、そんなマインドが必要なのかもしれません。

(2020/1/28 オンライン取材 高橋佑香子)
※写真はご提供いただいたものを使用しています。



※特集ページでは、西粟倉村という地域のこと、村内のほかの企業についても紹介しています。合わせてご覧ください。
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