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みんなでつなぐ
森からのバトン

※この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。

日本のどこにいても、ちょっと足をのばせば山がある。

自宅で過ごす時間が増えたいま、休日にキャンプや山登りに出かけたいという人も多いかもしれません。

日本は国土面積の7割が森林で、その大半は建築など木材加工用の人工林。一方で新築の需要は減っていて、山には木が余っている状態なんだとか。

森で出番を待っている、多くの木々を使っていくために。そして、あたたかくて柔らかな日本の木のよさをもっと知ってもらうために。

手間と月日をかけ、国産の木だけを使って学習机や家具をつくっているのが、株式会社キシルです。

製材から加工、販売まで、すべて自分たちでおこなうキシル。今回募集するのは、そんなキシルの家具とお客さんをつなぐ店舗スタッフです。

単に「もの」を売るだけではない仕事だと思います。

 

キシルは、浜松、名古屋、横浜、東京に2つ、計5つの直営店を構えている。

今回は、門前仲町駅から歩いて5分ほどの場所にある深川店を訪れた。

なかに入ると、学習机やランドセル、テーブルにベッドなどさまざまな商品が並んでいて、マスク越しにも木の香りがする。

営業時間外の広い店内を貸し切って、まずは代表の渥美さんにお話を聞かせてもらう。

もともとはIT業界で働いていた渥美さん。家具のある空間が好きで、いつかは家具に携わる仕事がしたいと思っていたそう。

「売ってみたいなと思う家具を雑誌で見つけて、青森の森林組合まで訪ねたことがあって。限定的につくったものだから売るのは難しいと。だけど、せっかく来てくれたからって、木や山のことをいろいろ教えてくれたんです」

そこで知ったのが、日本には戦後に植えられた針葉樹林がたくさんある一方で、その多くが使われずに余っているという現状だった。

日本の木を使って自分の好きな家具をつくれば、山の問題に貢献できるかもしれない。

渥美さんは、日本の木にこだわった家具ブランドをつくろうと決意する。

「実際やってみたら、えらい大変で。流通している木材は建材用だから家具には使えないとか、ひのきはデリケートだから加工には高度な技術が必要だとか」

「完成直前に商品が全部割れてしまったこともありましたね。1年かけてつくった商品が、あるときどんどん壊れていって。パシッ、パシッ、って音が工場に響くんですよ(笑)。そこで、割れや反りを防ぐために、通常の何倍もかけて木を乾かさないといけないことが分かったりして」

たくさんの失敗と試行錯誤を繰り返し、いろいろな人の協力を得ながら、商品を改良していったキシル。

創業から19年経った今では、山主から直接丸太を仕入れ、製材から生産まで自社工場でおこなっている。

「日本の木にこだわった商品をつくるために、全部の工程を自分たちでやりたかったんです。製材の段階で、これは学習机用、テーブル用って考えながら木目の具合を見て切っていくから、仕上がりの綺麗さが全然違うんですよ」

学習机を中心に展開していたキシルが、ベッドや収納棚など暮らしの家具も本格的に手がけはじめたのは、2年前のこと。

「日本の木の良さは、自分で商品を使うなかでも感じていて。もっといろんな人に知ってもらうために、より暮らしに取り入れやすいものをつくってみたいなと思いました」

木製家具の触り心地がいいのは、熱伝導率が低いため。熱がゆっくりと伝わるおかげで、どんな季節でもべたべたせず、ひんやりもしない。

「お店にいると、子どもたちが机にほっぺたをくっつけて『気持ちいい』って言っているんですよね。それも、一人、二人じゃないんです。木の良さは実際に触れてもらえば伝わると感じているので、商品はとにかく使いやすさにこだわっていて」

たとえば、テレビボードには散らかりがちなコードを収納できる棚を設け、転倒防止用のベルトも装着できるように。

ベッドは、ひとり暮らしから結婚、子育てと、変化するライフステージに合わせて連結できる構造になっている。

「最近は、保育園やオフィス、公共施設の家具を手がける機会も増えてきています。関わる空間がどんどん増えていくのは、すごく楽しいですね」

「計算してみたら、東京23区の敷地が全部丸太で埋まるくらい、この1年間で日本の木を使っていたようです。山の資源を有効活用していくために、これからもたくさん商品を届けていきたい」

学習机に始まり、家具へと展開してきたキシル。今後、商品のバリエーションをさらに増やしていく予定とのこと。

「日本の木の良さを、海外にも広めていきたいんです。あと、山のなかにお店をつくりたいなと思っていて。そこにはキシルの家具があって、そのまま宿泊もできるような。自然な形で触れてもらえる空間をつくれたら面白いなって考えています」

「キシルっていうブランドは、生産から販売まで、みんなでつくりあげている総合芸術だと思っています。僕たちの思いに共感してもらえる人が来てくれたらうれしいですね」

 

キシルの店舗スタッフとして、吉祥寺店で働いているのが脇川さん。2年前の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社した。

「前職ではCD屋さんで働いていました。アーティストの作品をお勧めするのも楽しかったですが、もっとつくり手に近いものを販売したいと思うようになって応募しました」

「実際に店舗へ来てみたら、ひのきの香りにすごく惹かれて。お店にいると“森林浴”って感じがして気持ちいいんです。商品の箱を開けるときも、香りが心に届くような感覚になるんですよね」

商品を購入したお客さんには、必ず伝えていることがあるそう。

「たとえば学習机は玄関までお届けするんですが、『ぜひ家族全員が集合してから、箱を開けてください』ってお話ししていて。箱を開けたときのひのきの香り、あれはもう格別なので、ぜひ皆さん一緒に体験してもらいたいんです」

わあ…いいですね。

わくわくしながら箱を開けて、ふわーっと広がるひのきの香り。それをみんなで胸いっぱいに吸い込む姿まで浮かんでくる。

「マスクを嫌がっていたお子さんが、学習机にマスクを入れるようにしたら、ひのきの香りがするからつけてくれるようになった、っていうお話を聞かせてもらったこともあります」

「その使い方いいなって思ったことは、自分でも試してみたり、ほかのお客さまにもお伝えしたりするようにしています。大事に使ってくださっている方からお話を聞くと、私も商品のことがもっと好きになるんですよね」

店舗スタッフの仕事は、接客や販売、商品のディスプレイなどが基本。加えて、売上や商品の在庫管理など、バックオフィスの仕事も含まれる。

接客では、商品に触れてもらうことを大切にしているそう。仕事用のパソコンを持ってきて、デスクの使い心地をじっくり確かめる方もいるんだとか。

「悩んでいる方には、徹底的に試してもらっていますね。ベストなものが見つかるように、用途を詳しく聞かせてもらいながら、『これは高さが調整できるんですよ』とか『こんな商品も組み合わせられますよ』と提案しています。話すうちに、お客さんと仲良くなることもよくあるんですよ」

「上の子がキシルの学習机を使っているから、今度は下の子用を買いにきました」とか「テレワークが増えたから、家での仕事時間を楽しくするためにデスクを変えたいんです」とか。

80代のおばあちゃんが、「初めて机を買ったんだけど、うれしくて一緒に撮ってもらったのよ」と写真を見せてくれたこともあった。

社内SNSには、日々お客さんとのエピソードがあふれているそう。

「みんな書きたいことがたくさんあるんですよね。ほかの店舗にヘルプに行くこともあるんですが、どこでもお客さまや木の話で盛り上がります。合同ミーテイングもあるので、店舗同士の関わりも結構あるんですよ」

お客さんとのコミュニケーションは楽しいものの、難しい面もある。

「商品の良さや注意点をちゃんと伝えられただろうかっていうのは、今でもハラハラする部分ですね。伝え漏れがあったら、お客さまをがっかりさせることに繋がってしまうので」

送料無料の商品なのか、付属品は別売りなのか。細かな認識の違いがないか、しっかりと確認することが大切となる。

「お客さまが求めているイメージをきちんと引き出せなかったな、と反省することもあって。私の好みではなく、お客さまにとって良いものを見つけてもらいたいからこそ、話を聞く力が大切だなと痛感しています」

新しく入る人も、まずは商品のラインナップを把握するところから。カタログやホームページに載っている情報など、覚えることはたくさんある。

また、思いがけない質問をされることも。

「『このオープンラックに水槽は置けますか?』って聞かれたことがあって。そのときは、水槽の重さや構造を調べた上で、『防水加工はされていないので、水に濡れてしまうと良くないかもしれません』と注意点もお伝えしました」

「使い方はさまざまなので、提案の引き出しはたくさん持っておいたほうがいいなと思っていて。商品を単体として見るだけじゃなくて、使っているところをイメージしてもらえるようにお話ししています」

全部の商品を私生活で実際に使えるわけではない。

日々の接客のなかで、お客さんやスタッフの声を参考にしながら、引き出しを増やしていくことが大切なんだろうな。

「キシルの商品は、森で育った木を伐採して、製材、加工と、たくさんのスタッフがバトンをつないでできているもの。それを最後にお客さまにそっと渡すのが、店舗スタッフの役割だなと感じています」

 

帰り際にいただいたのは、ひのきのコースター。

家に帰って袋を開けると、木のいい香りがふわっと広がりました。仕事中にひと息つきたいとき、手にとって香りを楽しんでいます。

たくさんの人の日常に、ほっと安らぐ時間と、森のかけらを届けていく仕事だと思います。

(2021/2/25 取材 鈴木花菜)
※撮影時はマスクを外していただきました。

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