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コワーキングを飛び越えて
まだ世の中にない
空間をつくるチーム

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

視界に入るもの。他者の存在。広さや風の通り抜け具合。

人は空間からさまざまな影響を受けつつ過ごしています。ただ、その多くは無意識的なもので、まだまだ解明の余地がある。

東京・目黒で事業をつくる人たちの拠点を運営してきたImpact HUB Tokyoのみなさんは、空間と人がどんな相互作用を与え合って成り立っているのか、その問いに向き合い続けてきた人たちだと思う。そして今、その培ってきたノウハウを活かして、ホテルや公共の場所などさまざまな空間づくりにまつわるプロジェクトを立ち上げはじめています。

今回は、目黒のコミュニティ・ビルディングに携わりつつ、内外の空間プロジェクトにも関わっていく人を募集します。

世の中にない空間をどうつくるか。実際にコミュニティを動かしてきた人たちだからこその、新しいアプローチがありそうです。

 

東京・目黒。

飲食店が並ぶ長い下り坂をおりてゆき、目黒川をわたる。駅から歩いておよそ10分。目黒通りから一本入った住宅街のなかに、2階建ての大きな建物が見えてきた。

この印刷工場の跡地を活用し、Impact HUB Tokyo(IHT)がオープンしたのは2013年2月のこと。もともとは、イギリス・ロンドンで2005年に誕生したImpact HUBに刺激を受け、代表の槌屋さんたちが立ち上げたコミュニティだ。

扉を開けると大きなスペースが広がっていて、中央にはキッチンもある。手前にはコーヒースタンドの「FITZROY」。メンバーでない人もテイクアウトで楽しめる。

向かって左手にはイベントスペースがあり、失敗談をカジュアルに語り合う「FuckUp Nights Tokyo」をはじめ、これまでにさまざまなイベントが開催されてきた。今はフランス発のプログラミングブートキャンプ「Le Wagon Tokyo」の参加者たちが、わいわい作業している様子。

奥にも空間は続いていて、少しこもって作業できるようなスペースもあれば、スタンディングデスクや会議室も。そして2階は、ガラス扉でいくつかの部屋に分かれている。

ここにはIHTの取材で何度も来ているのだけど、訪れるたびに家具の配置やスペースの使い方が変わっていておもしろい。統一感や明確なエリア分けはなく、さまざまな要素が混在している感じ。使う人自身が、その時々の気分や目的に応じて使い方を選べるような設計になっているのかもしれない。

ちょうどこの日は、週に一度「TOKYO SPICE CURRY」が出店する日だった。中央のキッチンからは、カレーのいい香りが漂ってくる。

「まずは一緒に食べましょうか」ということで、IHT共同創業者のポチエさん、コミュニティ・ビルダーの高橋さんと食卓を囲むことに。

ポチエさんは代表の槌屋さんのパートナーで、以前はロンドンで起業家のコンサルティングやテック系スタートアップへの投資などを仕事にしていた。

現在は、コミュニティ運営は現場のコミュニティ・ビルダーに任せて、空間をプロデュースする役割を主に担っているという。

「もともと財務とか金融の仕事だったので、全然別ですよね。建築やデザインの勉強はしてこなかったんですけど、最近はスケッチしたり写真撮ったり、アートの方面にも動いていて。まあ楽しいです」

IHTの目指すものやコミュニティの質感も、この8年で少しずつ変化してきた。

「WeWorkをはじめ、“コワーキング”業界に大きな資本も入ってきて。うちらみたいな小さな老舗のコミュニティは、脅威と捉えたことはないし、やろうとしてることも全然違うんだけど、じゃあ一体何を大切にしていけばいいんだろう?って考えるきっかけにはなりましたよね」

最新の機材があって、設備がいつもきれいで…。そうした「スペック」に重きを置く限り、大きな資本をもった企業には敵わない。

「ひとつ言えるのは、スペックで人の心は動かせないと思うんですよ。けど、美しいものには反応する。たとえマイノリティーだとしても、美学だとか哲学を表現していくチームであるべきだし、少なくともうちの市場はそこだと。だからコワーキングって言葉も、辞められる日がきたら辞めたくて」

“コワーキング”を辞めたい。

「飛び抜けたいというか。いろんな人が集まってインスパイアし合うことに変わりはないんですが、それは起業家支援だけにとどまらない。個人的な興味関心も含めて、文化をつくるとか、そっちのほうに向かっている感じですね」

次に目指す「それ」がなんなのか、まだしっくりくる表現は見つかっていないという。でも、新しいフェーズに向かっていることはたしか。

ポチエさんたちチームは試行錯誤を続けている。

具体的には今、どんな空間のプロジェクトが進んでいるんですか?

「ひとつは、この目黒の拠点の意味を更新していきたいんです。ここをもう少し、我々の表現ができる場所に改装しないといけない。あとは長野のほうで、ホテル経営者と一緒に“泊まること”の意味を再構築していて。旅先でも一日2時間仕事したい、みたいな需要ってあるじゃないですか。むしろそのほうが落ち着くとか。そういう新しい意味や価値をもったリゾートづくりにチャレンジしています」

それから、よい物件が見つかれば、都内にもうひとつの拠点をつくりたいのだとか。

コロナ禍でさまざまなことが制限されるなかでも、唯一最後まで残る自由があるとすれば、それは思想の自由だと考えたポチエさん。同じく思想の自由を守っていきたいと考える人たちのための、クローズドな空間をつくっていきたいという。

「ちょっと怪しい会員制のクラブになっていくんだろうなって(笑)。うちらは一匹狼で、どこの企業にも媚びてないんですけど、どうしても“真面目なコワーキング”っていうブランドがあるので。そこから外れて、もっといろんな空間をつくっていきたいんです」

今回募集する人は、コミュニティ・ビルダーの一人として、これらの空間プロジェクトに携わってほしい。

どんな人に来てほしいですか。

「たとえばわたしが抽象的にしゃべっちゃう人なので、横でスケッチや図のような具体像に描き起こしてくれる人がいたらいいなとか。建築系のバックグラウンドがありつつ、一般的な建築のプロセスにはしっくりきていない人とか。あとはDIYや技術に強い人が自分のほかにもう一人いてくれたら、相談しながら進められてありがたいですね」

「コロナもあって今東京は空き家だらけなんで、いろんな話が舞い込んでくるんです。『ないものをつくる』って言ったときに、ビビるよりワクワクする人。あとは人が好きでないとむずかしい。社交的というよりは、人に対して好奇心がある人がいいです」

チーム内でどんな役割を担うかは、その人の経験や適性を見つつ、相談して決めたいそう。建築やデザインの経験者でももちろんいいのだけど、まったく異業種での経験が活きることもあると思う。

 

いずれにしても、まずはIHTらしい空間のあり方を知ることから。外部の空間プロジェクトに加わりつつ、並行して目黒のコミュニティ・ビルディングにも関わってもらいたい。

今回募集する人とまさに同じような働き方をしているのが、コミュニティ・ビルダーの高橋さん。3年前の日本仕事百貨の記事がきっかけで入社した。

「定型のタスクは少ないですね。雑談も含めてメンバーの壁打ち相手になったり、一緒にイベントを企画したり。わたしの場合は大学でグラフィックデザインをやっていたので、印刷物やロゴをデザインすることもあります」

やることは臨機応変に変わるなかで、根底にあるのは「人の行動から空間をつくる」という考え方。

IHTでは、昨年から人類学者の比嘉夏子さんを顧問に迎え、文化人類学のアプローチを空間に落とし込む挑戦をはじめている。そのひとつが「パーマネントベータ」プロジェクト。

「永遠のβ版、という意味ですね。空間と人は相互に影響を与えて変わり続けるので、終わりがないんです。たとえば、ここの家具には全部キャスターをつけていて」

空間のなかに間仕切りや壁が少ないのも、メンバー自身の解釈にもとづいて柔軟に使ってほしいから。

コロナ禍を経て電話会議をする人が増えてからは、組み立て式のブースを設置。ここも完全に壁で囲わず、ゆるやかに全体とつながりながらこもれるようなスペースになっている。

「わたしたちにとっては、一緒につくるとか、つくり変えていくことが大事で。図面や模型から考えるのではなくて、はさみやカッター、段ボールの切れ端といったその場にあるものを使い、手を動かすことでどんどん解決策を出していくような感覚です」

「変わり続けるコミュニティだからこそ、外部のデザイナーさんには頼まずに、常に現場にいるわたしたちコミュニティ・ビルダー自身があれこれメンバーさんと話しながら、空間をつくっていくのがいいんじゃないかと思うんですよね」

正解もマニュアルもない。コミュニティをよく観察し、自分の頭で考えていける人でないと、不安になったり無力さを感じたり、苦しくなってしまう仕事かもしれない。

ただ、アイデアや気づきは、立場にかかわらず率直に共有できる雰囲気があるという。

「みんなでアイデアを出し合いながら、議論をよくするので。まちや社会に対しても、何か持論がある人だといいかもしれませんね。『東京にこんな場所があったら絶対おもしろいよね』って話もできたらうれしい」

 

一人ひとりのさまざまな視点や個性が重なるなかで、IHTは動いている。

最後に話を聞いた柿澤さんは、細かな気配りや表立って見えにくい部分でコミュニティを支えている方。

「ここではファシリティホストという位置付けで、週に3日働いていて。電球が切れていたら交換しようとか、植物に水をあげようとか、メンバーさんが取り上げられた雑誌にポップを添えて掲載してみようとか。そういう部分に目を向けて動いています」

もともとはショールームでお客さんの話を聞き、建築士に引き継ぐアドバイザーの仕事をしたり、日本各地のいいものを扱うお店で売り場づくりを担当したりしてきた柿澤さん。

いつも軸にあったのは、人が集まる空間をつくりたいという想いだったそう。

「最近、(高橋)まみさんと一緒にメンバーさん向けの小さな集まりを開いていて。紅茶とお菓子を用意して、ちょっと休憩しましょうっていう時間なんですけど。一緒にものを食べることから、いろんな会話がはじまるんです。それってすごく重要だなと思って」

そういえば今日も、一緒にカレーを食べるところからはじまったおかげで、気持ちよく取材のスタートを切れた気がする。

「人は集まる場に何を求めているんだろうとか、どんな要素が関係しているんだろう、たとえばカウンターとテーブルで違いはあるのかなとか。いろんなことを考えながら空間をつくれるのがおもしろいですね」



みなさんの話から、研究のような仕事だと感じました。人と向き合うことから、空間をつくる。それも机上の話にとどまらず、実装できる場があるからおもしろい。

働き方やライフスタイルも大きく変化するなか、これからの空間のあり方を模索するにはとても魅力的な環境だと思います。

(2021/3/9 取材 中川晃輔)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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