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言葉にできない
空間の心地よさ
答えは植物に聞いてみる?

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かっこいい、心地いい。

空間から感じる印象のようなものを、具体的な言葉で説明するのは難しいけれど、目を凝らせばちゃんと理由が見つかる。

たとえば、床の木の質感が足に触れて気持ちがいいとか、壁紙の色が心を落ち着かせるとか、窓から柔らかい光が入ってくるとか。

一つひとつのディテールが、全体の雰囲気を醸し出しているのだと思います。

世田谷にオフィスを構える古賀造は、ディテールにこだわったリノベーションで、心地いい空間を提案している会社です。

タイルの組み合わせ方、石や木といった素材の選び方など。そのこだわりようは職人気質というか、ちょっとマニアックと言えるほど。

今回は、ここで働く設計・施工管理の担当者を募集します。建築図面が読めるくらいのリテラシーがあるとなじみやすいけれど、経験は必須ではありません。補佐的な施工管理から、仕事を覚えていくこともできます。



東横線の学芸大学駅から、住宅街を歩いて10分ほど。3階建ての白い建物が見えてきた。

1階はガレージで、2階が入り口、事務所は3階。なかに入ると、レコードがずらりと並んだ棚や、大小さまざまな観葉植物が配置されていて、カフェか雑貨屋のような雰囲気。奥のテーブル席にかけて少し待つことに。

代表の古賀さんに挨拶しようと椅子から立ち上がった拍子に、頭上の植物に頭をぶつけてしまった。

本当に、部屋中いたるところに植物がありますね。

「うちは今、植物の販売もやっているんですよ。以前、ある仕事で植物の仲卸の業者さんと知り合いになって」

小さなサボテンのようなものから、大きな葉を持つものまで。窓際の光を受けて、調子も良さそう。

スタッフの方がコーヒーを準備してくれている間、古賀さんはその横のターンテーブルでレコードをセッティング。曲が流れ出して、空間はさらにリラックスした雰囲気に。

「お客さんやデザイナーとの打ち合わせのときも、いきなり間取りの話をするんじゃなくて、ここに座って『この曲いいよね』って話をしながら、趣味や価値観を探るようにしているんです」

10年ほど前に、個人事業主として工務店をはじめた古賀さん。今は4人のスタッフと一緒に仕事をしている。

もともと美術大学を卒業した直後は、アトリエ系の建築事務所で働いていた。

「学生のころはアカデミックな建築にも憧れがあった。だけど、アトリエでの仕事に忙殺されているうちに、自分がなにをつくっているか、わかんなくなってきて」

そんなとき、友達から誘われて、工務店で施工管理の仕事をしてみることに。

工務店には、いろんな設計事務所からプロジェクトが持ち込まれる。次々に違う事例に触れられる環境は新鮮だったという。

「本当にいろんなプロジェクトがあって、素材を使うのがうまい人もいれば、コストをうまく抑えて工夫する人もいる。アトリエで10年くらいかけて経験することを2〜3年で勉強するような感じで。建築って、いろんなスタンスがあっていいんだなって思いましたね」

意識が変わったもうひとつのきっかけは、20代後半のころ。自分で小さな家を買ってリノベーションし、人に貸すという不動産投資を経験してみたこと。

建築はビジネスなんだということを、あらためて実感したという。

「今、都内で一生同じ家に住み続ける人ってあまりないと思うんです。いつかは人に売る。デザインをつくりこみすぎると、売るときに苦労する。入口だけじゃなく、出口も考える大事さがよくわかりました」

「新築の場合、一からコンセプトをつくれる楽しさはあるけど、その表現って住み手とはあまり関係ないことも多い。むしろつくり手のエゴみたいなところもあって。その点、リノベーションはある程度条件があるから、やるべきことを絞りやすいんです。そのなかで自分たちのこだわりを突き詰めていくほうが、僕はいいなと思って」

デザインの楽しみとビジネスと。古賀さんはそのバランスを大切にしている。

そう聞くと、ただシンプルな空間のイメージが浮かんでくるものの、これまで古賀造がつくってきた物件は、何かこだわりを秘めていそうな感じがする。

デザインの面で、古賀さんが大事にしていることってなんでしょう。

「そうだなあ…。なるべく空間全体に日光が入って、風が抜けるようにっていうことだけはいつも意識しているかなあ。さっき、植物もやっているって話しましたけど、植物って日光と風がないと育たないので、どこでも植物が育つような環境にしたい。それが気持ちいい空間の基準にもなるのかな」

事務所から歩いて5分ほどのところある古賀さんの自宅は、まさにその考えを生かしたつくり。

古いマンションの最上階で、大きなルーフバルコニーから街をぐるりと見渡せる。打ち合わせや食事会などで、会社のメンバーも普段からよく出入りするらしい。

話の続きは、古賀さんの家へ移動して聞くことに。

なかに入ると、たしかにいろんな方法で光や風が取り込まれている。そして、ここにも植物が多い。

リビングルームの入り口脇には、マーブル模様の石の表情が印象的なキッチンがある。

「素材の使い方を工夫してみるというのも、うちの特徴かもしれない。タイルで模様をつくってみたり、石のどの面を使うか細かく指示したり。普通そういうのって、職人さんからめんどくさいって言われるんですけど、僕らが一緒にやっている人たちは、一緒におもしろがってくれる感覚の持ち主なので」

「それに、自分たちも現場に入って一緒につくるから、ときには設計図を書かずにスケッチで伝えることもあって。イメージを伝えるための時間のロスや行き違いを省けるのはいいところですね。そういうつくり方は、僕たちが『デザイン事務所じゃなくて、工務店』っていうスタンスだからできるのかもしれない」



古賀造のプロジェクトは今、古賀さんがメインで企画を立て、担当スタッフとペアで施工を進めている。

続いて話を聞いたのは、入社して3年目になる神山(こうやま)さん。

「以前は建築会社でプロジェクトマネジャーとして働いていたんですが、現場で職人さんとやりとりしながら進めていく施工管理はここがはじめてです。つくり方がわからないところは、現場で職人さんにイメージや素材の雰囲気を伝えて、相談しながら進めています」

仕事に慣れていくうちに、より細かいところにこだわりが芽生え始めたという神山さん。

たとえば、壁と床が交わる“見切り”と呼ばれる部分のおさまりがうまくいくと、「ニマニマしちゃうんです」と笑う。

「この前の物件は、キッチン台のカウンターがカーブになっていて難しかったんですけど、きれいにおさめられて。お客さんが求めるからじゃなく、きれいになってないと自分たちが気持ち悪いんですよね」

スタッフがだんだん“ディテールオタク”になっていくことも、古賀造ではよくあることらしい。

ディテールにこだわった事例が増えるにつれて、「床のフローリングをヘリンボーンにしてみたい」など、こだわりを持ったオーダーをするお客さんも増えてきた。

同じ事例はひとつもないので、現場ごとに最適な方法を模索していく。

「ただ頼まれたことをやるだけじゃなくて、『今回はタイルで模様をつくってみよう』みたいに、自分たちの挑戦テーマを持ってやっていることが多いです。やればやるほどまだまだだなって感じるし、もっと勉強したいことも見つかるんです」

施工管理を通じて身につけたテクニックやアイデアを、今度は設計で活かせるように。神山さんは今、一級建築士の資格取得に向けて勉強中だという。

今後は古賀さん以外のスタッフも企画に携われるよう、会社の体制も整えはじめたところ。

自分たちで企画してつくっていく。そのおもしろさにのめりこめる現場だからこそ、時間や工程をうまく管理していく必要もある。



「最初はそれが難しかったんです」と話すのは、入社して間もなく1年になる鳥海(とりうみ)さん。

「図面と工事が同時進行みたいなときもあるんです。全部のディテールが決まらないまま着工する。そうすると、遅くまで図面の続きを書いて、次の日は朝一で現場に行くことになるので、設計、施工、すべてを担うことの感覚をつかむまでは結構大変でしたね」

「慣れてくると、どのくらいまでに準備しておけばいいかがわかるようになるので、資材の発注とか職人さんの段取りとか、スムーズにできるようになる。人と人の間に入る仕事でもあるので、前もって誰に何を伝えておくといいか、みたいな想像力やコミュニケーション力も大事ですね」

着工したらほぼ毎日現場に顔を出し、荷受や進捗確認を続ける。クロス剥がしなどの簡単な作業は、自分たちでやることもある。

スキルや経験に応じて案件を分担していくので、まずは補佐的な立場から関わることもできる。ただ、少人数のチームなので、新人教育にたくさんの時間を割けるほどマンパワーもない。自分から学びとりにいく姿勢は必要だと思う。

「今ここで一緒に働いている人たちは、みんないい人すぎるというか。ちょっと現場片付けに行こうよっていうと、みんな『行こう行こう〜!』ってなるし、会社の雰囲気が険悪だったことはないですね」

子育て中のスタッフがいることもあって、慢性的な残業もないという。

気持ちいい風が吹き抜けるルーフバルコニーでスタッフお二人の話を聞いていると、古賀さんがポツリとこんなことを言う。

「こうやって、スタッフが普段何を考えているか聞く時間、いいですね。取材終わるの、ちょっと名残惜しいな…」

そう言ってもらえると、聞き役だった私もなんだかうれしくなる。

晴れた初夏の夕方。このままお酒でも、という流れになったら楽しそうだけど、この日はお互いに仕事の続きがあるということで、お開きに。

今度はここに新しく入る人が加わって、どんな話が続いていくのかなと、想像が膨らみました。

(2021/6/21 取材、2023/3/7 更新 高橋佑香子)

※撮影時はマスクを外していただきました。

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